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2009年7月1日 本会議 請願について討論 村上あつ子議員 |
請願「原爆ドーム・平和記念公園周辺地区景観計画について」に対する反対討論 バッファーゾーンに対する市の認識の甘さ 市民同意を得ながら世界遺産守るあらゆる手立てを |
請願「原爆ドーム・平和記念公園周辺地区景観計画について」に対する反対討論 バッファーゾーンに対する市の認識の甘さ (村上あつ子議員) 日本共産党市会議員団を代表して、請願第24号「原爆ドーム・平和記念公園周辺地区景観計画について」に対する討論を行います。 原爆ドームと平和記念公園周辺の高さ制限について、私たちはこれまでも再三取り上げてきたところですが、今年3月の予算特別委員会では、皆川議員が「このままでは、市はレストハウス、三井マンション建設に続いて3つ目の過ちを犯すのではないか」、つまり、個人の財産権に係ることを簡単に進めてよいのかと危惧して発言しました。 1996年、被爆者と市民、行政が一体となって取り組んだ原爆ドームの世界遺産登録が実現しました。この日から、原爆ドームは人類共通の「遺産」となりました。 登録に際して「バッファーゾーン(緩衝地帯)」の設定が義務付けられたわけですが、バッファーゾーンは原爆ドーム本体を取り巻く環境や景観を保護するために設けられる利用制限区域で、その設定に伴い、エリア内の開発規制や景観保全のために「景観条例」を制定しなければなりません。しかし、市はバッファーゾーンが世界遺産にとって重要な問題であることへの認識が甘く、この十数年間、「要綱」で対応してきました。 3年前から、原爆ドームすぐそばに建設された三井マンションをめぐり、バッファーゾーン内の高さ規制が大きな問題となりました。2006年11月、国際記念物遺跡会議(イコモス)の国際委員会は、遺産登録後、バッファーゾーン内に5つの高層建築が建設されたことに加え、原爆ドームの至近距離に新しいマンションが建設されたという事実に対し、大いなる遺憾と失望の念を表明し、世界遺産保護のために、建物の高さ、色、美的側面及びその他の補完的要素の観点から開発計画を制限する、拘束力ある規制を求めた勧告を採択しました。 2004年の「危機遺産リスト」に登録されたドイツのケルン大聖堂は、ドイツ政府の努力で、高層ビル建設計画の縮小によって2年後に危機遺産リストから削除されたことはすでに紹介したところですが、先日の新聞報道では、ドイツのエルベ渓谷が世界遺産から抹消されることが決まったとありました。建設中の橋が文化的な景観を損ねたことがその理由です。 原爆ドームと平和公園周辺の景観はどうなってもいいと思っている市民は、一人としていないと思います。ましてや世界遺産登録を抹消されても構わないという人はいないはずです。 市民同意を得ながら世界遺産守るあらゆる手立てを 「核兵器廃絶」という被爆者の叫び、ヒロシマの願いが大きな国際世論となり、その実現に向け大きく動き出している今、世界で唯一の核廃絶のシンボルとしての「平和の遺産」である原爆ドームと、その周辺の景観を守ることに対して、議会も一丸となって取り組んでいかなければなりません。 一方、市が、世界遺産「原爆ドーム」の景観を守るための市民的コンセンサス(同意)を得る努力をどれだけしてきたかという点では、大いに疑問を持たざるを得ません。 予算特別委員会で宇治市の取り組みを紹介しましたが、宇治市では、世界遺産である平等院の背景にあたる宇治橋通りの商業地域に、20mの高さ規制を設けました。そこに至るまでの間、住民意向調査を行い、その上で20mという数字を出し、都市計画審議会、景観審議会でそれぞれ議論を重ねて景観計画を決定しました。 強調したいのは、こうした取り組みを通じて、宇治市民の多くが、文化遺産としての平等院の価値に改めて関心を持ち、景観を守ることの重要性について認識を深めていったということです。広島市も積極的に市民のコンセンサスを得る努力をすべきです。 その際、請願に込められた関係住民の思いを重く受け止める姿勢が求められます。国民の財産権は憲法が保障しています。条例によって住民の財産権を冒してはならないのであって、将来の建替えの際、その補償をはっきり示すべきです。 そのために、例えば岩国市が錦帯橋の架け替えのための費用を積み立てているように、広島市もバッファーゾーンを守るための基金を検討する必要があるのではないでしょうか。 国も、団体・個人を対象に、景観を形成する上で重要な建造物の修理や買い取りなどに要した費用の一部を補助する制度を創設しました。こういったことも視野に入れ、「世界遺産を守るためにはあらゆることをする」くらいの覚悟を示していただきたい。 そして、私たち議会も、今拙速に多数決で採択するのではなく、継続審査とし、市民とともに「世界遺産原爆ドーム」を守るため、更に議論を尽くすべきではないでしょうか。 以上の理由で、請願を採択することに反対します。 上にもどる |
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