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議員派遣案第1号
議員派遣案
地方自治法第100条第13項及び広島市議会会議規則第117条の規定により、次のとおり議員を派遣する。
1 派遣目的
公共交通、観光政策、国際交流、教育政策、環境政策、災害の復旧・復興の視察
2 派遣場所
シンガポール共和国 (シンガポール)、台湾(台北)、 大韓民国(ソウル)
3 派遣期間
令和7年5月11日から5月17日まで
4 派遣議員
八條範彦議員、宮崎誠克議員、山路英男議員、平岡優一議員、椋木太一議員、水野考議員、川口茂博議員、西佐古晋平議員、三宅朗充議員、豊島永子議員、沖本高博議員
(自民党市民クラブ・山路英男)
派遣案第1号について趣旨説明を行います。
令和7年5月11日から17日までの予定で韓国、シンガポール、台湾へ視察に行ってまいります。
視察項目としては公共交通政策、観光政策、災害対策、少子化対策、教育制度、環境政策、平和推進に向けた平和首長会議加盟都市への働きかけと、民間交流に基づく姉妹都市提携についてです。
まず韓国についてです。本市で現在検討している、共同運営システムによる乗合バス事業の再構築に向けた取り組みの参考とするため、韓国のバス運営事業者における準公営化の仕組みや、観光客への利便性向上策について視察いたします。
ソウルには観光客などにもわかりやすくするため、会社ごとではなく、市内バス、広域バス、マウルバス、住宅地巡回バスなどの路線ごとにバスの塗装色に変化をつけています。
また、観光客用のICカードの活用や交通結節点における乗り換えの状況、路線図や運行状況をリアルタイムで知らせる仕組みなどの交通系DXを視察いたします。
さらに、ソウル駅での航空機へのチェックインから、荷物の預け入れの仕組みについても実際に体験し、公共交通を利用した移動を体験いたします。
その他に、日本と同様に大きな課題の一つである少子化対策や、災害避難所のあり方、観光政策についても意見交換を行う予定です。
そして現在ソウル市は平和首長会議加盟都市ではありませんので、広島市長からの親書を手渡し、平和首長会議への加盟を働きかけてまいります。
続いてシンガポールについてです。シンガポール交通省、陸上交通省において、公共交通政策や二酸化炭素削減に向けた取り組みなどを視察いたします。
MRTとLRTの路線は市民の足としてだけではなく、観光客にも多く利用されており、ICカードやクレジットカードが利用できる他、観光客向けの専用カードがあるなど、観光客への利便性について視察いたします。
またこれら運行事業者であるSWATモビリティにも訪問し、民間事業者の取り組みについての視察も計画しています。
次に観光政策においては、令和6年度に瀬戸内4県都市連携観光プロモーション事業でファームツアーに参加された民間事業者と、在シンガポール大使館で交流し、シンガポールから広島への観光客誘致の課題等について具体的な意見交換を予定しています。
そしてコロナ前に就航していたシンガポールと広島空港への直行便の乗り入れについて要望を行う予定です。
教育についてはシンガポール文部科学省に出向き、ストリーミング教育の実態や問題点、英語教育の取り組みの実態について意見交換を行います。
最後に台湾についてです。台湾は、アジアを代表する親日国であることから、日本政府観光局に出向き、広島市への更なる観光客誘致への働きかけを行います。
台北市では、公益財団法人日本台湾交流協会に訪問し、台湾各都市への平和首長会議加盟の意見交換並びにヒアリ対策の実態について視察いたします。
平和首長会議の加盟については、現在台湾では台北市、台南市、高雄市の3都市の加盟しかなく、核兵器禁止や世界の恒久平和を目指す本市の取り組みとして、平和首長会議への加盟や意義について訴えてまいります。
また、本市においては特定外来生物であるアルゼンチンアリが分布域を広げつつある中、ヒアリにおいても今後いつ浸潤してくるかわからない状況となっています。台湾では殺人アリと呼ばれることもあるこのヒアリが全土に発生し、その対策は国を挙げて実施され効果を上げていることからその対策を視察いたします。
台中市では、台中市役所を訪問し、広島市に本社のある民間事業者とともに、副市長との面談を予定しており、その際、広島市長からの親書を手渡し、平和首長会議への加盟を働きかけるとともに、台中市と広島市の友好都市関係の構築を目的に意見交換を行い、市民と行政の更なる交流促進事業に努めてまいります。
また、令和6年4月3日に発生した花蓮地震の避難所開設においては、官民連携により、発災後数時間で設備の整った避難所が設営され、そのスピードと内容が注目されました。
台湾仏教慈善事業基金に訪問し、本市においてもいつ起こるかわからない大災害の災害避難所開設のため、開設の参考のためその内容を視察してまいります。
以上で議員派遣第1号の趣旨説明を終わります。皆様のご賛同をお願いいたします。
(中森辰一)
お疲れ様です。上程されました議員派遣案第1号について日本共産党市議団を代表いたしまして、質疑を行います。
今回の海外視察は、9年ぶりということでありますが、広島市議会では2017年度から2024年度まで8ヶ年度にわたって議員の海外視察は行われておりませんでした。
海外視察で渡航することに制約があったとすると、新型コロナの感染拡大の問題があります。このことで政府が海外渡航の自粛を要請したのは2020年3月だったと思いますが、その後、一昨年、2023年5月から新型コロナの感染症法上の扱いが変わって、インフルエンザなどと同じ扱いになり、日本社会でも新型コロナへの対応は、個人や個々の組織の判断に任されております。外国への渡航についてはそれより前の2022年10月以降、政府が渡航自粛を求める国は基本的になくなっております。
要するに、新型コロナによる制約が3年近くありましたが、それ以外の前後5年間は外的な制約はありませんでしたけれども海外視察は行われませんでした。
そう考えますと、少なくとも8年間は特別に税金を1人80万円も使って海外に出張してまで調査する必要性はなかったのだと考えます。
私たちもしっかり市議会議員として広い知識を得ておくことは必要なことであると思います。海外での生の体験は貴重であると思います。ただし、市民の税金も貴重です。
いま現に市政に外国に赴いて調査する必要のある課題があって、あえて貴重な税金を使って業務として渡航するのと、一般的に知識を蓄えたり、体験するために渡航するのでは、おのずと区別が必要だと考えます。
それに海外の様々な制度や事情は、今日、インターネットの活用によって、かなりのことを知ることができるようになりました。
また、外国と日本とでは社会制度も国民の習慣も異なっており、個々の国ではそうした状況に応じた施策、取り組みが行われてきたのであると思います。
そういう違いも踏まえた上で、あえて渡航してまで調査に行くからには、視察に行って実地調査しなければならない課題が広島市の行政課題に関わって存在する必要があるのではないかと考えます。
また、海外の友好都市との交流については、必要に応じて議会で検討して、議会として別途派遣してきたところであります。今日、政治家に対する税金の使い方についての市民の目が厳しくなっていて、議員の海外視察についても、最近の事例として、岡山で費用の返還を求める訴訟さえ起こされております。
つまり、それほど市民の批判が強い中で、また今では毎月30万円交付される政務活動費を活用することもできるようになっているにもかかわらず、あえて別立ての1人80万円の海外視察費を使って渡航して調査しようというわけです。そうであるからには、市民の検証に耐えられるだけの海外での調査の必要のある課題が現にあるかどうかが問われるものと考えます。
実は、日本共産党市議団も海外に視察に行ったことがあります。1995年2月、当時の中本康雄議員がニュージーランドに出張視察されました。公立保育園で3歳以上の子どもだけ牛乳ではなく脱脂粉乳を溶いたものを飲まされていましたが、子どもたちが嫌がるものはやめて、牛乳に変えるべきだという論戦を行っておりました。
論戦が平行線だった中で、これを生産している国では、脱脂粉乳がどういう使われ方をしているんだろうかという疑問が出されて、これは現地で具体的な実態を調査する必要があるとニュージーランドに出張されました。
インターネットで調査することが一般的でない時代です。そこでわかったことは、ニュージーランドでは、脱脂粉乳は子どもには飲ませない。牛乳を飲ませている。脱脂粉乳は子牛の飼料として使われているだけだということでありました。脱脂粉乳の輸入元の国では、飼料として使われているものを広島の子どもに飲ませるのかと出張の成果を生かして論戦を行った結果、3歳未満児と同じく牛乳が提供されるようになりました。
要するにその当時、差し迫った課題が市政にあって、その課題解決のために渡航して調査する必要があって、海外視察費を使って視察に行ったということです。
このとき以降、日本共産党市議団では、海外視察費は使っておりません。
2005年の国連でのNPT再検討会議の傍聴や各国から集まってきていた人々との交流で、私ども4人の同僚議員が米国に渡航したときは自費で行きましたし、原爆ドームと同じく負の遺産として登録されたもう一つの負の世界遺産アウシュビッツの視察でポーランドに行った際も自費で行きました。
昨年広島市の平和記念公園とパールハーバー記念施設との姉妹協定の問題で論戦を行うために、米国のハワイに渡航したときは、海外視察費ではなく、政務活動費を活用しました。
これは差し迫って市議会で論戦するためにどうしても必要だという課題があって渡航いたしました。
その結果、姉妹協定の対象施設と対象外の施設との位置関係や、見学するためにどのような手続きが必要かなど、平和記念公園との重大な違いがわかり、核兵器開発を推進する展示が、ビジターセンターやアリゾナ記念館へのボート乗り場と同じ敷地にある施設で行われていて、場所の区別も案内の職員の区別もないことなど、インターネットではわからない重要な情報を得ることができました。
ご承知のように、それらをもとに改めて本会議で論戦も行ったところです。そういう差し迫った課題があってどうしても必要な渡航だったからこそ、自費ではありませんが、海外視察費ではなく、政務活動費の活用が可能になっているので、政務活動費を活用しました。
ポーランドへの渡航は、広島市議会議員として必要な知識を得るのが目的でしたが、差し迫った課題だというものではなかったので自費で行きました。
先ほど海外視察調査の目的を説明いただいたところですが、広島市議会議員として、視察先のそれぞれについて、今どうしても海外で現地で実地調査しなければならないどのような課題が広島市にあるのかご説明をいただきたい。
また、諸事情で不参加の方を除いて、なぜ会派のほぼ全員が一緒に参加されることになったのか、その必要性についてもご説明ください。
議員の税金を使っての海外視察については、以前から「議員の特権ではないか」とか「視察とはいっても多くは観光旅行ではないのか」という市民からの批判がありました。
また岡山では、海外視察費の返還訴訟が起こされ、昨年広島県議会では、海外視察が行われたことに対して、議会事務局に抗議の電話が多く寄せられたと聞いております。
このような市民の批判についてどのように受け止めておられるでしょうか。以上3点について答弁を求めまして質疑といたします。
(自民党市民クラブ・山路英男)
議員派遣案第1号について数点のご質問に順次お答えいたします。
初めに、今どうしても海外で実地に調査しなければならないどのような課題が広島市にあるのかについてです。
課題と捉えている視察項目の主なものは公共交通、災害、観光であります。それぞれについて説明説明させていただきます。
まず公共交通ですが公共交通の機能強化と利用促進は最重要かつ喫緊の課題の一つと捉えています。
ご存知の通り、来年度、広島型公共交通システムの構築に向けた取り組みが予定されております。代表的なものとして、バスサービスが持続的に提供されるよう、広島市とバス事業者8社で構成するバス協調共創プラットフォーム広島が中心となり、乗合バス事業の共同運営システムの取り組みが挙げられます。
そうした中、例えば韓国のソウル市は、市内バスの他、多様なバスサービスが提供されており、また、運営面においては、準公営化の仕組みを導入するなど、広島市にとっては公共交通政策の先導的事例と言えます。
公共交通の機能強化と利用促進に関して様々な施策が令和7年度予算に計上されており、まさに現在進行形といえる課題であることから、今現地で調査する必要性を認識しております。
また、災害も広島市にとって最重要かつ喫緊の課題の一つであります。近年災害は頻発化、甚大化しております。この先、想定外の災害が起こる可能性は誰にも否定できません。
行政や議会には広島市民の生命、身体、財産を守る責務がございます。災害は起こってから対処していたのでは、市民の生命身体財産を守るという責任は果たせません。課題を認識し、問題意識を抱いたその瞬間が、今どうしても調査をしなければならないときだと考えております。
災害のパターンも多様化しており、防災減災の観点からは過去の経験則だけではなく、海外の取り組みといった新たな視点を取り入れることも重要なことだと考えます。
視察予定地の一つである台湾は過去に何度も大地震の被害に遭っています。
広島市を含めて、日本は南海トラフ地震の脅威にさらされています。だからこそ、なおさら今現地で調査をという必要性を感じているわけでございます。
最後に、観光ですが、国際平和文化都市を標榜する広島市にとって、これは切っても切り離せないものです。海外から多くの方々を受け入れ、恒久平和を追求する広島の心を知っていただくとともに、廃墟から蘇ったこの広島市の魅力に触れていただき、さらに多くの方々に訪れていただくという好循環が必要だと考えるからです。
コロナ禍により観光客が大幅に減少しましたが、2023年5月にコロナが感染症法の5類となり、人の流れも回復基調にあります。そうした流れの中、令和6年度には、観光誘致を狙う国や地域の旅行会社や、メディア、インフルエンサーなどに現地を視察してもらうファームツアーが行われています。
鉄は熱いうちに打てと言いますが、シンガポールにおいて、ツアーに参加した事業者と課題や今後の展望について直接意見交換することで、広島市などへのインバウンド増加に繋げられると考えています。
2点目のご質問、なぜ会派のほぼ全員が一緒に旅行することになったのかその必要性についての説明をさせていただきます。
まず、視察であり、旅行ではありませんのでこの点をお断りしておきます。
そして、以下は視察ということを前提にお答えいたします。なぜ会派のほぼ全員なのかということですが、会派とは同じ方向性の意見や考え方などを持った議員が集まって政治活動を行うために結成された団体です。
先に述べました公共交通や災害観光は、我が会派として最重要かつ喫緊に取り組むべき課題であるという認識に基づいております。だからこそ参加できる限りの会派メンバーがともに視察に訪れることとなります。
また、ほぼ全員である必要性ですが、あるテーマにおいて会派の方向性は一致していても、各論では様々な意見が出てまいります。合意形成には意見の集約が欠かせませんし、そうしたプロセスこそ民主主義の本質と考えます。
つまり、多様な意見を集約する過程を経て、練度を上げることが広島市民にとってよりよい施策に繋がるわけであり、参加できる限りの会派メンバーで視察することは必要性があると考えています。
最後に、昨年広島県議会では海外視察が行われたことに対して抗議の電話が多く寄せられたと聞いている。このような市民の批判をどのように受け止めているかについてです。
視察の趣旨、目的、そして視察の報告、さらにこの視察を広島市政にどうフィードバックしていくのかということが求められていると考えておりますので、丁寧に対応していきたいと考えております。以上で終わります。
(中森辰一)
議員遣案第1号について討論を行います。質疑で述べましたように、税金を使って行われる議員の海外視察には、ずっと以前から物見遊山ではないか、議員特権ではないかなどの有権者市民からの強い批判の声がありました。
広島市議会では、議会改革の課題として、費用弁償や海外視察をどうするかが議論されてきました。
そうした中で、費用弁償が一律の支給から市役所からの距離によって減額されたり、海外視察費そのものも100万円から80万円に減額されてきた経緯があります。
広島市の行政上、議会で論戦するために調査する必要があれば、渡航して調査に出かけていたでしょう。しかし、新型コロナの感染拡大で3年近くは渡航自粛の期間があったのは事実ですが、その期間を挟んで、その前後5年間、海外視察が行われませんでした。先ほど答弁で述べられた様々な課題については以前からあった課題であるというふうにも認識しております。
そうしたことを考えますと、今どうしても実施しなければならないものではないのではないか、こういう疑問が拭えないのもまた事実であります。
提案説明でなされました目的にしても、質疑に対してなされた必要性、現に渡航調査しなければならない課題があるかについての説明も、あえて1人80万円の税金を使って、会派を挙げて渡航調査する課題があるということを説明できてはいないのではないかと受け止めましたし、また災害対応のことが言われましたけれども、私どももかなり議論をして、この災害対応の問題はかなり議論をしてまいりましたが、特に公費を使って外国に出かけなければわからないものではないというふうに思ってきたところであります。
以上により、日本共産党市議団としては、今回の海外視察の議員派遣案には反対をいたします。以上討論といたします。
※日本共産党6人と無党派クラブ2人の反対少数で可決。
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