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(中原ひろみ)
日本共産党の中原ひろみです。党市議団を代表して、令和7年度第1回広島市議会定例会に上程された議案について討論を行います。
反対する議案は、
第1号議案 令和7年度広島市一般会計予算
第8号議案 令和7年度広島市後期高齢者医療事業特別会計予算
第9号議案 令和7年度広島市介護保険事業特別会計予算
第10号議案 令和7年度広島市国民健康保険事業特別会計予算
第11号議案 令和7年度広島市競輪事業特別会計予算
第15号議案 令和7年度広島市開発事業特別会計予算
第26号議案 広島市個人番号の利用に関する条例及び広島市市税条例の一部改正について
第32号議案 広島市競輪条例の一部改正について
第39号議案 広島市立中央図書館条例の一部改正について
第41号議案 広島市郷土資料館条例の一部改正について
第42号議案 広島市映像文化ライブラリー条例の一部改正について
第44号議案~第46号議案 連携中枢都市圏形成に係る連携協約の締結に関する協議について
第48号議案 広島高速道路公社定款の変更に係る同意についての15の議案です。
意見を付して賛成する議案は、
第12号議案 令和7年度広島市中央卸売市場事業特別会計予算
第30号議案、広島市指定地域共同活動団体の指定等に関する条例です。
その他の38議案には賛成です。
反対の議案について理由を述べます。
第1号議案 令和7年度広島市一般会計予算についてです。
新年度予算規模は、一般会計で約7228億円、対前年度の当初予算と比べると約383億円 5.6%の増となり、2年連続で政令市移行後、最大規模となりました。
市税収入が増えたのであれば、この予算は、子どもの医療費補助制度の所得制限撤廃、給食費の無償化、就学援助制度の要件緩和、放課後児童クラブの無料化復活など、「子育てと教育にお金がかかりすぎる」という子育て世帯の願いに応え、安心して子供を産み育てられる環境を整えていく予算にすることこそが求められていました。
また、広島市が3年連続で転出超過になっていることが問題として指摘されるなか、市は、ひとり親世帯や産後ケアの拡充をはじめ、UIJターン就職学生支援として東京圏から市内に移住した場合には約10万円、関西圏は約8万円など、引っ越し費用の補助金を拡充されます。
これらの事業により、広島市で就職する若者が増え、転出が抑制できることを期待しますが、若者や子育て世帯の転出を止める最大の力は、やはり「子どもの予算を抜本的に増やすこと」さらに、「若者用に家賃の安い住まいの確保」こそ必要と考えます。
しかし、広島市は「自助・共助・公助」を振りかざし、200万人都市圏構想に基づく「選択と集中」のもと、従来型の「賑わいづくり」が最優先で進められてきました。
広島高速5号線建設事業をはじめ、広島駅南口再開発事業でもアストラムラインの延伸事業でも、「公共工事のコスト縮減」と言いながら、開発事業費ばかりが大きく膨れ上がっています。その結果、市民生活予算が犠牲にされるもと、市債残高は1兆2647億円、市民一人当たり約107万円もの過去最高の借金を抱えています。
市は「長年のデフレ・停滞から脱却し、賃上げとインフレの好循環の創出に向けた歩みが着実に進んできている」という認識のもとに予算編成をされていますが、この市の認識が間違っている事を指摘しなければなりません。
2025年2月5日に厚生労働省が発表した2024年の毎月勤労統計調査では、従業員5人以上の事業所では、物価変動を考慮した一人当たりの実質賃金は、前年度比、0.2%減で、3年連続でマイナス。名目賃金である現金給与総額は33年ぶりに高い増加率だったものの、物価高に追い付いていないとしています。
賃上げがされているのは従業員30人以上の事業所であり、すべての市民の手取りが増えたわけではありません。多くの中小零細事業者や年金暮らしの高齢者をはじめ、非正規雇用を余儀なくされている ひとり親世帯では「お米が高すぎて買えない」など、長引く物価高騰に苦しんでいます。
市民生活を脅かす国の政策から、市民の命とくらし・福祉、財産をいかに守るかが自治体の役割であり、目の前の苦しい市民生活の実態を見ようとしない予算編成には賛成できません。
さらに、被爆80周年記念事業のうち、「毛利輝元没後400年記念事業」「東京ガールズコレクションを活用した広島の魅力発信」「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭の開催」「アーバンフューチャーズ広島」の開催などの事業については、市民から「80年」に合わせて、数合わせで事業をかき集めたのではないかと疑問を持つ方も少なくありません。どの事業も、それぞれ魅力的ではありますが、なぜ、被爆80年の事業で行わなければならないのか、その必然性には疑問が残ります。
一過性のイベントでなく、被爆70年事業で実施された50事業の検証と効果を踏まえ、被爆の実相を語れる被爆者が亡くなっていくもとで、いかに被爆の非人道性を若者に伝えていくのか、例えば、広島ユースホステルの復活整備や、人権侵害の検査を被爆者に強要した「負の遺産」として放射線影響研究所を活用するなど、被爆地ヒロシマにしかできない事業、被爆地ヒロシマに求められている事業こそ必要と考えます。
次は、第8号議案 令和7年度広島市後期高齢者医療事業特別会計予算についてです。
日本は、1980年代まで「健康保険の本人は無料」「老人医療費も無料」の制度でしたが、2008年4月に廃止され、代わりに75歳以上の高齢者のみを囲い込む後期高齢者医療制度が始まりました。
後期高齢者医療保険料は2年ごとに見直しされ、今年度も保険料改定が行われました。広島県後期高齢者医療広域連合議会では世帯主の収入が200万円、配偶者の収入が80万円の場合の年間保険料は、2年前と比較して5200円の増額となっています。保険料も窓口の医療費も上がるなか厚労省の発表でも深刻な受診抑制が起きていることが明らかです。
国は、「社会保障が高齢者に偏っている」「現役世代との負担の公平」を理由に高齢者に負担を押しつけるなか、市が何の対応もせず、世代間対立をあおるやり方は問題です。
次は、第9号議案 令和7年度広島市介護保険事業特別会計予算についてです。
東京商工リサーチによると、訪問介護の報酬単価引き下げと物価高騰で介護施設は経営が悪化し、介護事業所の倒産、休廃業が過去最高になっています。大企業のように賃上げができず、逆に、賃下げに転じる事態になっており、地域に密着した小規模・零細事業所の倒産が目立っています。
このままでは、いまでも深刻な介護労働者の人手不足に拍車がかかり、市内でも事業所が消滅し、必要な介護が利用できない、居宅での生活は不可能など、住み慣れた地域で暮らし続けることが難しい事態になりかねません。
外国人労働者頼みでなく、介護労働者の処遇を抜本的に改善し、介護事業所の経営を守る措置こそ必要です。
次は、第10号議案 令和7年度広島市国民健康保険事業特別会計予算についてです。
高すぎて払えないと悲鳴が出ている国保料は、昨年に続き引き上げられました。2025年度の国保料の平均年額は、一人当たり16万6013円で、1万1439円も負担が増えています。市は、国保料の引き上げを押えるため、一般会計から約10億円を繰り入れていますが、低所得者が多く加入する国保にあって、毎年の保険料の引き上げは、暮らしを脅かすものになっています。
命を守るはずの国保が命を脅かす実態は政治の責任で解決することが求められます。国に国庫負担金の増額を求めるとともに、広島市には、窓口の医療費負担の一部減免制度の復活を求めておきます。
次は、第11号議案と第32号議案についてです。いずれも公営ギャンブルである競輪に関する議案です。
ギャンブル依存症は脳の状態が変化して、欲求をコントロールできなくなり、「やめたくてもやめられない状態」に陥る病気ですが、昨今では、インターネットなどにより場外での車券売り上げが8割を占めています。競輪場に出向かなくてもオンラインでギャンブルが出来ることから日本の若年層にギャンブル依存症が増加しています。特に、高校生や大学生が大金をつぎ込んでしまうケースも出ています。
自治体がギャンブル依存症をつくる施設は廃止すべきです。
次は、第15号議案 広島市開発事業特別会計予算についてです。
市民の税金を使って開発した土地の売却益は、開発事業特別会計に繰り入れられ、次の開発に使う仕組みになっています。これでは、不要・不急の開発を見直すことにはなりません。開発事業で得た収益は市民の暮らしに使えるようにすべきです。
次は、第26号議案 広島市個人番号の利用に関する条例及び広島市市税条例の一部改正についてです。
これは、特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、つまり、マイナンバー法の改正に伴い、規定の整備を行うというものです。本来、マイナンバーカードの取得は義務ではないにもかかわらず、国が、保険証を「人質」に、マイナンバーカードの取得・利用を強制していることは大問題です。
もともと、国民の税、社会保障情報を一元的に管理する「共通番号」の導入を求めてきたのは財界でした。各自が納めた税・保険料に相当する「対価」を受取るだけの仕組みに社会保障を変質させていくという大改悪を狙ったものです。
政府は、マイナンバー制度によって、「公平・公正な負担と給付」を実現するというのですが、安倍政権以降だけでも、11兆円を超える減税が大企業に実施され、大企業の優遇税制は聖域とされたままです。国民の所得・資産・社会保障給付を把握し、徴税強化と給付削減を押し付けるマイナンバー制度は、廃止すべきです。
次に、第39号議案 広島市立中央図書館条例の一部改正について、第41号議案 広島市郷土資料館条例の一部を改正する条例について、第42号議案 広島市映像文化ライブラリー条例の一部改正についてです。
これら、3つの議案は中央図書館をエールエールA館に移転することに伴う議案ですので、一括して反対の理由を述べます。
図書館は「自治体の文化度を表す」と言われています。
中央図書館を築25年も経過した中古の商業ビル、広島駅南口エールエールA館へ移転させることに、多くの市民が心を痛めてきました。国際平和文化都市の名に恥じない中央図書館を整備してほしい、その為には現地建替えこそ最善であるとの強い思いで、議会にも「広島市立中央図書館等移転の再検討を求める」など、3つの請願が提出されています。
2022年度に市が提出した図書館の整備場所を事業費で比較検討する資料では、現地建て替えは122億円、移転は96億円で、移転の方が26億円も安いというものでした。
この事業費の差が、現地建て替えを封じ、商業ビルに移転する「口実」となりました。
しかし、土地価格の上昇を理由に、エールエールA館の床の買い取り価格を7億円増額したことをはじめ、匿名随意契約により業者の見積もり価格をそのまま契約額にするなど、契約額の妥当性に疑問も指摘されるなか新年度は、約68億円の事業費が計上されています。
中央図書館の移転に要したこれまでの事業費累計総額は146億円を超え、整備場所の検討時に示された事業費からは50億円も膨らみ、現地建て替えの方が安いという結果になっています。
そもそも、中央図書館の整備にあたり、被爆地ヒロシマの文化の拠点としての中央図書館はいかにあるべきかという議論ではなく、もっぱら南口開発街株式会社の経営難を救うために、究極の手法として、自治体施設である中央図書館をエールエールA館に移したというのが事の本質です。
広島駅前の賑わいづくりに貢献するために、市民の大切な財産である中央図書館や映像文化ライブラリーを移転させるやり方には賛成することはできません。
次は、第44号議案から第46号議員 連携中枢都市圏形成に係る連携協定の締結についてです。これは、島根県出雲市、益田市、鹿足郡吉賀町(かのあし郡よしか)町との「連携協約」を締結しようとするものです。
国は自治体間における行政サービスの広域連携を推進するため、75万人の圏域人口を抱える拠点都市に2億円を交付し、連携協定を結ぶ市町村にも交付金を分配するという財政面の誘導を行っています。この度の連携協定を含めると広島市は県内だけでなく山口県、島根県の30市町と連携協定を結ぶことになります。
島根県出雲市から市内まで高速バスで3時間以上かかります。中国山地を超え、日本海に面する市町と、特産品や観光だけでなく、保育や医療などの機能・分野にまで圏域を広げて、広島市に中枢都市の責任が果たせるのでしょうか。
本来は、島根県が責任をもって県内市町のくらしや福祉を支えることが基本です。何よりも国が、人口減少と少子高齢化により自治体が直面する課題を解決するために、必要な予算を確保し、だれもが住み慣れた市町で住み続けられるようにすることこそ必要です。道州制につながる連携協定には賛成できません。
次は、第48号議案 広島高速道路公社定款の変更に係る同意についてです。
広島高速5号線整備については、必要性・緊急性・採算性がないだけでなく、シールドトンネル工事に関する契約では、トンネルの内壁に不可欠なセグメントが契約金額から抜けていたとして事業費を87億円も増額する前代未聞の杜撰な工事が行われてきました。世間の常識ではあり得ないことです。
その後も、費用対効果のつじつまを合わせるために、凍結していた広島高速2号線と5号線を連結する道路整備を復活し、347億円もの事業費が増額されました。不要・不急の巨大事業に「選択と集中」させる税金の使い方は見直すべきです。
意見を付して賛成する議案について意見を述べます。
まず、第12号議案 広島市中央卸売市場事業特別会計予算についてです。
新中央市場は、令和14年度の完成を目指し、約518億円の事業費で整備する計画です。市場の機能だけでなく、物販・飲食によるにぎわい施設、余剰地には物流施設を一体的に整備するというものです。
老朽化した市場の建て替えは必要ですが、20年前と比べて青果物は約25%減、花卉は35%減、水産物は41%減少しており、実際の取引量に見合うコンパクトな施設にされるように求めます。また、賑わい施設と併設することで、衛生管理上の問題が起きないようしっかりとした安全対策も求めておきます。
最後は、第30号議案、広島市指定地域共同活動団体の指定等に関する条例についてです。
質疑を通じて、LMO(エルモ)の活動と一体的に行うことで住民の福祉の増進が図られると認められる市の事務がある場合は、LMOと合意があれば事務を委託することはあるとの考えが示されました。
これは、LMOとの合意が「歯止め」ということだと受け止めましたが、そもそも広島市と各LMOは対等の立場になれるでしょうか。各LMOは市から毎年、600万円もの交付金をもらうという立場です。市の求めに応じなければ交付金がどうなるのかと不安材料を持つ弱い立場にあります。交付金が人質になり、やむなく市の事務を担うことにならないよう各LMOとの対等で民主的な運営を求めておきます。
また、作成中の規則やガイドラインにおいて、地域住民の誰もが参加できる話し合いの場の設置や、営利を主たる目的とする活動を禁止するなど、事業者の位置づけを定めるとともに、LMOの活動が市民間で不信感や不公平感を招くことのないよう、自主的で民主的な共同活動になっているか、適宜 検証し見直しを図ることを求めます。
最後に、私たち日本共産党市議団は、2014年の第一回定例会、及び2014年度の新年度予算特別委員会において、「自分たちのまちは自分たちでつくる、住民参加の仕組みづくり」を提案してきた経緯があります。
住民自治に基づく自治体運営により自分たちの将来の在り方を住民自身が決定する仕組みづくりの必要性を議論してきました。
今後、集会所や老人いこいの家など市民に親しまれている公共施設の在り方をどうするのかを含め、自治体が決めるのでなく、地域の住民とともにまちづくりを考えることが大切です。その出発点として、LMOが貢献することを期待するものです。
以上で討論を終ります。
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