議会での質問・答弁

2025年03月04日

2025年第1回 2月定例会・予算特別委員会 厚生関係 清水てい子

1.介護保険制度について

(清水てい子)
 日本共産党の清水てい子です。よろしくお願いします。
 介護保険介護保険制度は2000年4月から導入されました。家族の介護負担から、介護の社会化によって主に女性が担っていた介護の苦しみを解消するという政府が掲げた理念に多くの国民が期待を寄せました。
 私の義母は2005年から2008年まで要介護4で、訪問介護や訪問看護や訪問診療を受けながら自宅で過ごしました。介護保険が充実していたので、私は働きながら見ることができました。
 しかしその後、介護保険制度は、相次ぐ改悪でサービスの制限や保険料の引き上げが行われました。このままでは保険あって介護なしになりはしないかと懸念しています。
 政府は昨年、2024年度の介護報酬全体では報酬を1.59%増やしましたが、訪問介護の基本報酬を2から3%引き下げました。その理由は、厚労省による介護事業所経営実態調査2022年度の決算で、訪問介護の利益率が7.8%となり、全介護サービスの平均を上回ったとして訪問介護の報酬を引き下げたのです。
 このデータに対して、介護関係者らはすぐに実態と違うと声を上げました。地域の高齢者宅を1軒ずつ回る従来型の訪問事業所は、多くは不採算で赤字に苦しんでるからです。高い利益を上げてるのは、サービス付き高齢者住宅などの集合住宅を移動時間なく訪問する事業所です。
 厚労省はこうした利益率の高い特殊な事業所と従来型事業所を混ぜて、訪問介護の報酬を引き下げました。
 訪問介護の報酬引き下げは、介護業界でも特に人員不足やコロナ禍や、訪問のための燃料高騰など、経営が苦しい訪問介護事業所に大きな打撃を与えています。
 東京商工リサーチの調査によれば、2024年度の介護事業所、老人福祉介護事業を含めての倒産は172件発生しました。そのうち、訪問介護事業所の倒産は過去最多81件です。
 過去最多だった昨年の67件を超えました。訪問介護事業所の休廃業は448件合計529件となりました。
 しんぶん赤旗によると、昨年12月末で全国の自治体で訪問介護事業所がゼロの自治体は107町村です。広島県では1件で、安芸太田町です。訪問介護事業所が残り一つの自治体は272市町村です。これらの自治体で最後の砦になっている事業所の9割が社会福祉法人などの非営利法人です。中山間地域などで赤字が常態化し、営利事業として成り立たないのです。自治体として深刻に捉えるべきではと思います。
 広島市は、先ほどもありましたように、第9期広島市高齢者施策推進プランを作成されており、一人暮らしや要介護者が、できる限り在宅生活を継続でき、介護人材の確保と質の高い人材の育成を図るとされています。介護事業者の声に耳を傾け、自治体としての役割を果たしていただきたいと思います。
 そこでお聞きします。広島市は国の交付金を活用して、訪問介護事業所に車両1台あたり、年間7,000円の支援を行っていますが、そのことは評価できると思います。ですが、市として上乗せする独自の支援を行うことは考えておられませんか。お答えください。

(介護保険課長)
 今回の訪問系事業所への物価高騰支援は、燃料油価格激変緩和補助の段階的な縮小に伴い、ガソリン代の負担増が見込まれることから、訪問系事業所がサービスの質を維持しつつ、安定的な事業運営ができるよう、本市として国の交付金を活用した事業実施を判断したものです。
 本市としては、介護サービスの事業運営は、国が設定する介護報酬で賄われるものであることを踏まえ、他の政令市等と共同して、国に対し、適正な報酬単価の設定を要望しているところであり、今後とも国の動向を見据えつつ必要に応じて要望を行います。

(清水てい子)
 わかりました。国以上の支援は考えてないということでした。広島民医連の介護事業福祉委員会がアンケートを行いました。
 訪問介護事業所向けの影響について、広島市と福山市合わせて432事業所のうち、100の事業所から回答がありました。
 アンケートの質問は、次の4項目です。第1に、基本報酬の引き下げについて聞いたところ、納得できないという回答は、実に93%です。第2に、現在の経営状況を聞いたところ、厳しい、やや厳しいを合わせて86%です。3番目に報酬改定で経営状況の変化を聞いたところ、事業継続が難しくなった、または悪化した事業者を合わせて68%です。4番目に現在の人材充足について聞いたところ、74%の事業所が、充足してないという答えでした。
 そこでお聞きします。こういう状況について主はどのようにお考えでしょうか。

(介護保険課長)
 令和6年度の介護報酬改定では、訪問介護について基本報酬は引き下げられた一方、職員の処遇改善加算の加算率が他のサービスと比べて高く設定されるなど、全体としてはプラス改定とされた他、処遇改善に係る加算が一本化され、加算取得に係る事務負担の軽減が図られています。
 国においては、訪問介護関係者から事業の持続可能性の低下等を懸念する声もあることから、今回の報酬改定の影響を踏まえ、次期報酬改定の検討の基礎資料とするための介護報酬改定の効果検証および調査研究に係る調査を実施しており、この調査結果を踏まえた国の動向を見据えつつ、必要に応じて国に要望を国に行います。

(清水てい子)
 はい。アンケートに答えた事業所から悲痛な意見が寄せられています。その一部を紹介します。
 ヘルパーステーションの危機です。なくてはならないサービスなのに、報酬は下がる。ヘルパーの給料を上げないと、ヘルパーは確保できない、どうしたらいいのか。
 低賃金で質の高いサービスを提供できない。最低賃金の改定があるのに、基本方針の引き下げはないと思う。コロナ禍介護の最前線として、自分とその家族を犠牲にし、心身ともに大変な疲弊を抱え、乗り越えてきた職員にも十分な賃上げもできず、未来もますます暗くなり、このまま続けていく意味が見いだせない。
 年配のヘルパーが職員の半数を占めており、若い方はなかなか応募がなく、入社してもすぐ辞めてしまう。他業者に比べて賃金が安すぎるため、若い人材が入ってこない。などの意見がありました。 これらの声は、低すぎる賃金や、それに見合わない厳しい労働環境、長時間過密労働を苦にした介護職員の離退職により、ヘルパーやケアマネージャーが不足する事態が進行し、訪問介護を申し込んでもヘルパーがおらず、受けてもらえないなどの状況が各地で起こっています。
 そこでお聞きします。市として、これら寄せられた意見をどのように受け止めておられますか。

(介護保険課長)
 本市としては、質の高い介護サービスを安定して提供できる体制作りを推進していくためには、介護人材の確保定着を図ることが不可欠と考えております。
 本市では、国、地方公共団体、介護サービス事業者の役割分担を踏まえつつ、国の介護職員等処遇改善加算の取得促進を図る事業として、事業者向けに、加算制度の理解を促進するためのセミナーを開催している他、社会保険労務士等を派遣して、個別の助言指導を行っているところであり、先ほどご答弁した令和6年度の介護報酬改定を事業者がしっかりと活用できるよう支援していきたいと考えています。

(清水てい子)
 政府は今後さらにですね、改悪を予定しています。利用料の2割負担の対象拡大や、ケアプランの有料化や、要介護1、2を介護保険から外すことや、福祉用具のレンタルから買い取りへの変更などの制度改悪を計画をしています。
 政府の制度改悪に対して、元広島国際大学上原千寿子教授は、民医連のアンケートの結果に、次のようなコメントを寄せています。
 要介護の低い人や身体介護を必要としない人を法的サービスから切り離していくことは、決して介護予防には繋がらない。介護保険制度の本来の目的とかけ離れていくことになるし、むしろ国として方向転換を目指しているように見えるが、それは長い目で見れば、むしろどんどん深刻な事態を生み出していくことになるのではないかとのことです。
 そこでお聞きします。この上原千寿子教授のコメントに対して、市の認識はいかがですか。

(介護保険課長)
 国では介護保険の利用者負担が2割となる一定以上所得の判断基準の見直しの他、ケアプラン作成の有料化、要介護認定が軽度の方への生活援助サービス等に関する給付のあり方等について、令和9年度からの第10期介護保険事業計画期間の開始前までに検討を行い、結論を得るとしています。
 このような国における検討は、介護保険制度の持続可能性を高めるために、様々な観点から行われているものと認識しています。
 本市としては、保険者としてその動向を注視するとともに、保険者および被保険者にとって大きな影響を与えるような改正内容については、あらかじめ保険者の意見を聞きながら内容を検討するよう、これまでも他の政令市等と共同して、国に対し要望してきたところであり、今後も国の動向を踏まえ、必要な対応を行いたいと考えています。

(清水てい子)
 持続可能な介護制度にするためには必要な制度ではないかというようなことでしたね。
 いやもう本当に深刻な声が、もうヘルパーから事業所からあるわけですよね。本当に介護1、2を生活支援というどういう中身になるかわからないんですけど、今でも高齢者の方がヘルパーさんを来てほしいけど、息子と孫と同居しているので、それができないというようなね、声もあるわけですね。
 だから本当にこの深刻な介護の実態をねしっかりと市はあの見ていただいてお願いしたいと思います。
 私は安佐北区で、安佐北区は広島の中でも地域が広くて高齢化率が高い地域なんですが、その安佐北区の小規模な訪問介護事業所、訪問させてもらいたいということで連絡をしまして、2ヶ所の訪問介護事業所を訪問させていただきました。
 1ヶ所はNPO法人で、訪問介護と障害者福祉サービスを運営されているところなんですけど、理事長夫妻に話を聞きました。
 本当に理事長夫妻がですね献身的な運営をされて、この事業者が成り立ってるなというふうに感じました。
 その事業所はですね、訪問介護と障害者福祉サービスを運営されてるんですが、ヘルパーさんが26人で、利用者100人を訪問されてるということです。
 ヘルパーさんの平均年齢は65.5歳。最高齢は82歳ということでした。そこに働くヘルパーさんからですね、訪問介護で困ってることがあるということでお聞きしたのが、利用者がこれをやってほしいということがですね、事柄が、それはヘルパーがやってはいけないことなんだと。それを断るのにとても心苦しさを感じると。だからそれぞれの利用者の支援の中身をですね、「これはしてはいけない、あれはしてはいけない」ではなく、ヘルパー利用者が望む支援の中身を見直してほしいというふうな要望を出されました。
 一人暮らしで、視覚障害者の生活支援をされている例を話してもらいました。そこへ週3回、月水金と訪問してると。金曜日は土曜日と日曜日の3日間の食事の支度をしないといけないと。その3日間の食事を準備するためには、規定の時間内ではとてもできないので、施設の持ち出しになっているんだというふうにお聞きしました。
 そこでお聞きします。介護報酬を引き上げていく必要があると思いますが、市の認識はいかがでしょうか。

(介護保険課長)
 介護保険制度は、高齢化や核家族化の進行、介護による離職の社会問題化などを背景に、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的として創設されたものであり、制度全体の枠組みやその定期的な見直しについては、国の責任において行われています。
 今後、更なる高齢化が進展していく中で、本市としては、訪問介護事業所を含む介護サービス事業所が、将来にわたり質の高い介護人材を安定的に確保して、介護サービスを提供できるよう、他の政令市等と共同で、これまでも国に対し、適切な報酬単価の設定を要望してきており、今後も国の動向を見据えつつ、必要に応じて要望を行います。

(清水てい子)
 もう一点はですね、訪問介護で3人のヘルパーさんで運営しているということでした。
 本当にね、小規模で在宅介護を支えてくださる事業所にはですね、感謝しかないなと思っています。
 そこでお聞きします。国の責任で介護職員の賃上げと削減された訪問介護の基本報酬を元に戻し、介護保険の国庫負担増を市として求めていくつもりはありますかお聞きします。

(介護保険課長)
 先ほどご答弁しました通り、介護報酬単価の適切な設定や、介護職員の処遇改善の他、保険料や公費負担、利用料といった負担のあり方などについては、国による制度設計の中で行われるべきものでありますが、自治体としても、介護保険制度の持続可能性を確保し、その内容の充実を図っていく観点から、国の動向を見据えつつ、介護事業者等からの声も踏まえ、引き続き必要に応じて他の政令市等と共同して働きかけを行ってまいります。

(清水てい子)
はい。以上で終わります。

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