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1.平和行政のあり方について
2.子育て支援策のあり方について
3.MOBIRY DAYSの導入について
4.生活保護制度のあり方について
5.ひろしまLMOについて
(中森辰一)
日本共産党広島市議団を代表して、総括質問を行います。
日本原水爆被害者団体協議会が昨年末ノーベル平和賞を受賞されました。これは、被爆者への援護措置が何もない時から、被爆者援護と核兵器廃絶の声を上げ続け、長年にわたって原爆被害の非人道性を語り、拡げ続けてこられたことが世界の世論を動かして、ついに核兵器禁止条約の成立と発効に実らせたこと、核兵器問題を、国同士のパワーバランスの議論から、人道の問題に転換させたことが評価されたものと言われています。また、いま新たに核兵器の危機が広がっている中で、警鐘をならし、世界に行動を促したものと言われています。
その日本被団協のみなさんが、いまの国際情勢の中での、ノーベル平和賞受賞を歴史的にも重要な時であるとお考えになり、高齢の身を押して、NATO諸国など核の傘の下にある国々で被爆体験を訴えて回る取り組みを計画され、すでにそれを始めておられます。その前に、何としても唯一の被爆国政府を動かしたいと、過日、石破首相と面会されました。
ところが石破首相は、被団協の方々の訴えを聞いた後、核兵器禁止条約のことなど一言も触れず、核抑止体制の必要性などを述べただけで面会は終わったそうです。石破政権にとって、日米同盟が最優先であり、ノーベル平和賞受賞など自分たちの政策には関係ないということでしょうか。被団協のみなさんは、ひどく落胆されると同時に、これからも一層強く要請し続ける強い意思を表明されました。
今日、被爆80年の節目ということとはお構いなしに、核兵器をめぐる世界の情勢は厳しさを増しています。そのような中で、「80周年」だと言って、記念の事業などをやることだけで、被爆都市・平和都市広島市の役割が果たせるわけではありません。また、平和文化を広げることは大事ですが、広島市でないとできないことではありません。核兵器をめぐる危険な情勢や日本被団協のノーベル賞受賞といった今の情勢を受けて、ヒロシマにしかできないことがあると考えるものです。
広島市も日本被団協とともに、核兵器廃絶の世論を世界に広げるために努力し、また、松井市長も核兵器禁止条約採択に向けた取り組みを進められたはずです。
その広島市として、また広島市だからこそ、日本被団協のみなさんの、政府に働きかけを一層強めるという強い意志、命が尽きる前にと、高齢を押して世界中に出かけていこうとしておられる強い決意にも応えていくことが求められていると考えますが、市としてどのように取り組まれるお考えか、お聞かせください。
(市長)
中森議員からの質問にお答えします。「平和行政のあり方について」のうち、「日本被団協の決意に応える本市の取り組み」についてのご質問がございました。
本市の平和の取り組みは、広島平和記念都市建設法において、広島を「恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴」として、広島市長は「平和記念都市を完成することについて、不断の活動をしなければならない」とされていることなどを踏まえつつ、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を目指しているものであります。
また核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を訴えるにあたっては、「ヒロシマの心」を原点に、被爆の実相守り広め伝える取り組みを通じて行ってきておりますが、この「ヒロシマの心」は過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和の実現を祈念するものであります。
そうした中で、日本被団協のノーベル平和賞受賞は、被爆者の方々の、自らのつらい体験や憎しみを乗り越えた末に、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という願いを人類全体の平和を願う崇高な理念へと昇華させ、強い決意を持って被爆の実相や核兵器の恐ろしさを世界中に訴え続けてきたことを高く評価するものであり、世界中の被爆地への関心と平和への意識を高めるものであります。
被爆者自らが各地に出向いて証言することが難しくなる中、国内外から多くの人々が被爆地を訪れ、被爆の実相に直接にじかに接し、被爆者の思いを共有していただける「迎える平和」の重要性が一層高まってきているものと考えております。
本市としては、被爆者の平和への思いである「ヒロシマの心」は、若い世代を含む市民社会共通の価値観となって、市民社会の総意として、平和への願いが世界各国の為政者に届くよう、世界の約8,500の平和首長会議の加盟都市とともに、平和意識の醸成を一層増進するための取り組みをさらに強力に推進していきたいと考えています。
その他のご質問については関係局長から答弁いたします。
(中森辰一)
広島市はこれまで、政府に対して、核兵器禁止条約への参加とその前段でのオブザーバー参加を要請するとともに、核兵器を持つ国と持たない国との「橋渡し役」を要請してきました。しかし、核兵器のさらなる開発まで進めている米国に逆らうどころか、オバマ政権の核体制の縮小の考えに反対さえした自民党を中心とした政権は、現状では完全に核兵器保有国の側に立っていると見るほかはありません。
政権の枠組みが変わらない限り、「橋渡し役」への期待を持つことなどできず、いたずらに「橋渡し役」への期待を語ることは、その可能性をうかがわせることになり、却って、いまは完全に核兵器国の側に立っている政権の実態を見えにくくしてしまうことになると考えます。
今年の8月にも市長が平和宣言をされますが、我が国政府の姿勢をこれまで以上に厳しく批判し、核抑止論の放棄を要求すると共に、核兵器禁止条約への参加を強く要求する必要があります。しかし、もはや「橋渡し役」を要請しそれへの期待を語るべきではないし、政府への要望などの文書を含めいっさい「橋渡し役」などを述べるべきではないと考えます、市長のお考えを伺っておきます。
(市民局長)
本市は、日本政府が核兵器禁止条約への対応として、核保有国や同条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たすという考え方を示してきていることから、これまでも平和宣言や国への要望において、その責任をしっかり果たしていただくよう求めてきたところです。
昨日、政府において、このたびの締約国会議にオブザーバー参加しないとの発表がありましたが、今後も引き続き国際情勢や、各国の行動などを踏まえつつ、日本政府に対し、「ヒロシマの心」を原点に、締約国会議へのオブザーバー参加を、唯一の戦争被爆国として現実的な取り組みとして進めるとともに、一刻も早く締約国となるよう求めていきます。
(中森辰一)
また、一昨年、広島市でG7首脳会議が開かれたことを機に、米国政府の要請に応えて、米国のパールハーバー国立記念施設と広島市の平和記念公園との姉妹協定を締結しました。
その際、米国政府が原爆投下への反省も謝罪もしていないにもかかわらず、故に、一層の核兵器開発の意思さえ明らかであるにもかかわらず、あえてその問題を「棚上げ」しました。
これは、核兵器廃絶問題で最も著名な都市である広島市が、米国政府の核兵器拡大政策を見えにくくしてしまうものではないかと考えます。
パールハーバー国立記念施設は、ハワイの米軍基地の中に存在しますが、この基地は、アジア太平洋を睨む最も重要な米国核戦略の拠点の一つです。米国での核兵器廃絶、核兵器禁止条約の世論を高めていくというなら、パールハーバーの国立記念施設との姉妹協定は見直すべきです。
それよりも、米国の中で積極的に核兵器禁止条約を支持し、自国の政府に同条約への参加を呼び掛けている全米市長会議加盟の各都市に、計画的に平和首長会議への加盟を働き掛けていくべきではないかと考えます。姉妹協定の見直しと合わせて、市長のお考えをお聞かせください。
(市民局長)
全米市長会議においては、2006年以降毎年の総会において、核兵器廃絶等の平和の取り組みについての決議文が採択されるとともに、2011年には170都市であった米国の平和首長会議加盟都市数が、現在では229都市となるなど、本市は長年にわたって全米市長会議との連携を図ってきているところです。
またパールハーバー国立記念公園との姉妹協定は、こうした中で、被爆者と両国の若者が平和への思いを共有できるような交流を実施するなど、和解の精神を具現化した未来志向の取り組みを進めていくために行ったものであり、今後も「平和文化」を米国側の市民社会に根づかせ、核兵器廃絶に向けた機運を醸成するために、姉妹協定に基づく取り組みを推進してまいります。
【再質問】
(中森辰一)
3点再質問をしたいと思います。まず政府がね、核兵器の問題で言ってる、私はねこれは欺瞞だというふうに思っております。
ノーベル平和賞の授賞式で日本被団協の田中煕巳さんは、米国政府に加えて、当時の日本政府も、被爆者に対して何らの支援も行わなかったというふうに告発をされました。
アメリカ政府は原爆投下の後、占領軍としての命令で原爆による被害の実態を報道することを禁止した。それだけではない。日本の医師や科学者が放射線被曝による人体の影響を調査研究し、それらを国内で共有し、被爆者の治療に生かすということさえも許しませんでした。
被爆者は10年以上にわたって経験したことのない被爆の苦しみを抱えたまま放置され続け、次々と亡くなっていったわけです。
アメリカ政府は原爆による初期放射線の殺傷能力を検証するために、ABCCを立ち上げて、長期にわたって強制的に被爆者の調査をしましたが、治療は一切行わず、集めた膨大な被爆者の資料を全てアメリカに送り、被爆者を原爆による障害研究のモルモット扱いにしました。
それに対する被爆者の怒りは、この広島にも長崎にもあります。そういうことに対する米国政府の謝罪の言葉も聞いたことはありません。
原爆投下責任の問題に加えて、被爆者を放置させ、長年にわたって苦しめたことについても反省していないし、謝罪もしていない。これが、今日に及ぶ米国政府の態度です。
だから核兵器開発もやめようとはしない。これは決して、広島市が棚上げにしてはいけなかったことだと思います。
そのような米国に最大限忖度する我が国政府の姿勢は今も一貫していて、被爆者に対する国家補償も拒否し続けてきました。賠償責任の追及と原爆使用の禁止を目的とした1955年のいわゆる原爆裁判に始まり、原爆症認定裁判や救護被爆裁判黒い雨裁判と、被爆者の皆さんは病気の体をおして裁判でたたかわざるを得ませんでした。
このように、我が国政府もまた被爆者を苦しませ続けてきたわけです。
そうしたことへの反省がないからこそ、核抑止論にしがみついて、核兵器の共有さえ言い出すようになっているんじゃないですか。そういうことを市長はどのようにご認識なのか、お答えください。
広島市の行政のトップである市長は、広島の被爆者の怒り、悲しみ、思い、願いを代表して政策を進めていかなければならないと考えます。
そのあり方は、長年にわたる被爆者の苦しみをしっかりと受け止めて、原爆の被害とそれへの対応に関わる問題、核兵器に関わる問題だけは、米国政府にも、我が国の政府にも決して曖昧な態度をとらずに厳しく対峙し、要求していくということだと考えます。
そうした点からも、アメリカ米国パールハーバー国立記念施設と広島市平和記念公園との姉妹協定には多くの市民、被爆者の方々からも批判があります。
見直しの検討もする気はないのかどうか、もういっぺん答弁を求めます。
(市民局長)
本市の平和行政推進についての再質問いただきましたけども、日本政府の姿勢ですとか、米国による核政策、あるいは謝罪等がないこと等々ですね踏まえまして本市の平和政策についてのご質問かと思います。
いろいろ原爆投下責任とかですね、主体についていろんなご意見があるというご指摘があるというのは理解しておりまして、そういったことも踏まえましてですね、本市としましては、核兵器は非人道兵器の極みでございます。
被爆者のこんな思いを他の誰にもさせてはならないという平和に対する切なるいわゆる原点ですね、それに応えるべく、本市としましては、核兵器のない世界に向けて核保有国が具体的な措置を取るよう促していくための環境作りこれに取り組んでいく必要があると考えております。
それからパールハーバーとの協定の見直しにつきましては先ほどもご答弁しましたけども、被爆者と両国の若者が平和への思いを共有できるような交流をですね、昨年第1回目開始しましたけれども、非常に成果もございました。
こういったことをですね、継続して取り組んでいくことによりまして、和解の精神を具現化した未来志向の取り組みをですね、継続して行うことによりまして、平和文化を米国の市民社会に根づかせていきたいと考えております。
(中森辰一)
それから、被爆80周年だというふうなことですけども、これは決してアニバーサリーではないし、今年は被爆から80年だけれども決して記念すべき年でもないというふうに思います。
80年経っても今の被爆者は苦しめられ続けております。これは現在もなお進行中です。80年経ったのに、核兵器保有国だけではなくて、我が国の政府でさえも、核兵器禁止条約に背を向けている。これが今の現時点の実態だということです。
被爆者が自ら起こしたたくさんの裁判闘争がある。これが今日の被爆者援護制度を切り開いてきたし、核兵器の非人道性の告発として核兵器禁止条約にもつながってきた。むしろ、これらの裁判しばしば広島市は被告という立場に立ってきたんじゃないかと思います。
最近の黒い雨訴訟では、国とともに控訴して、そのための解決を見ないまま、9人の原告が亡くなっております。
さらに国とともに受入れた控訴審判決にきちんと広島市の行政が向き合ってくれないから、多くの申請者が却下された。すでに90歳の歳になって、体力も衰えてですね、体調にも問題があるのをおして、これらの人たちは第2次訴訟を提起せざるを得ない状況に追い込まれているじゃないですか。
そう考えるとですね、実は、今の広島市も政府と同じ側に立っているんじゃないかとこういう疑問が湧いてくるわけですよ。どう考えるか、答弁を求めます。
それから、やっぱりこういう、先ほど申し上げたアメリカの実態、こういうことを考えるとですね、やっぱりあの姉妹協定ってやっぱり見直しを検討するということが必要ではないかなというふうに思っております。これは改めて言っておきます。
(市民局長)
本市の平和政策についての再質問でございますけども、日本政府と同じ立場ではないかというご質問でしたが、先ほどもご答弁しました通り、本市の平和施策の原点はですね、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という憎しみやつらい体験、これを乗り越えた末にですね、人類共通の大目標、平和への願いという崇高な理念に昇華させたということを踏まえまして、本市が平和施策に取り組んでいるものです。
本市としましては、この被爆者の平和への思いであるヒロシマの心ですね、これを市民社会の総意として、平和への願いが世界各国の為政者に届くよう、世界の平和首長会議8,500加盟都市と一緒にですね、平和意識の醸成に取り組んでまいりたいと考えております。
(中森辰一)
次に、私たち日本共産党市議団は、広島市を、子育てするなら広島市で、と言えるような街に、との思いから、まずはこども医療費補助制度の抜本的な改善や学校給食の無償化、放課後児童クラブの利用料を無料に戻すなどを提案してきました。
しかし、こども医療費補助は、やっと今年の1月から対象を中学生まで広げましたが、所得制限の枠の中にさらに中間の所得基準を設けて、それを超えるかどうかで窓口負担に大きな格差を持ち込んだままです。
そのため、全国的には最低水準のままです。学校給食の無償化や放課後児童クラブ利用料を無料に戻す課題には見向きもしてくれません。それどころか、この間、就学援助制度の所得基準を切り下げて1,000人もの子どもたちを制度から排除するなど、子育て支援とは逆行することさえ行われてきました。
そうした中で、市が実施した市民へのアンケートでは、広島市は子育てしやすい街だと思う、との回答が半数を大きく下回り、年々減少して3割台にまできています。市民は広島市は子育てしにくい街だ、という評価をしているわけです。
このことについて、広島市として、どのように受け止めておられるかお答えください。
(こども未来局長)
広島市市民意識調査は毎年度実施しているものですが、平成31年度まで上昇していた「子育てしやすいまちだと思う市民の割合」は、令和2年度に下降し、その後も上昇と下降を繰り返し、令和5年度は前年度より上昇したものの、令和6年度は再び下降しています。
これは、コロナ禍において、オープンスペースなどの各種子育て支援サービスの縮小・休止を余儀なくされ、子育て家庭の孤立感が高まったことや、昨今の物価高騰により、子育て家庭の経済的な負担感が高まったことなどが要因と考えられ、本市のみならず全国的に子育て環境が厳しい状況にあることの現れとして受け止めています。
こうした中で、令和5年度に実施した「広島市子どもの生活に関する実態調査」によると、支援制度を利用していない理由として「制度を知らなかった」や「手続きがわからない、利用しにくい」との回答が一定数あり、支援策につながっていない子育て家庭が存在していることから、本市としては、個々の家庭の状況に応じ、適切な支援を確実に行えるように、来年度、身近な相談場所として地域子育て相談機関を市内16ヶ所に新たに設置し、支援が必要な家庭を早期に把握するとともに、各区のこども家庭センターにおいて、家庭訪問などアウトリーチ型支援を積極的に行い、支援制度の確実な利用に繋げていきたいと考えています。
(中森辰一)
広島市のそんな状況に対して、福岡市では、市政に対する市民の満足度が何と97%もあり、子育てしやすい街との評価も70%を超えるなど、広島市とはまるで反対の評価になっています。
なぜ、そういうことになっているのか考えるため、先月、党議員団として福岡市に伺いました。
福岡市の施策で私が第一に注目したのは、子ども医療費補助制度の対象を高校生まで広げ、所得制限がないことです。通院の窓口負担はひと月に500円のみ。2歳までは無料。広島市とは大きな違いです。
他にも、出生届けの提出があったら「おむつと安心定期便」という施策の対象となります。最初に絵本とおむつなどが入っている「お祝いボックス」を届け、その後は、3歳になるまで定期便ということで、市内の1400か所におよぶ子育て関連施設やサービスを利用した際に電子的なスタンプをもらうと、月に1回2,000円分のクーポンを受け取ることができます。それを使って220品目の育児用品から選んで買うことができる。
そのようにして行政が子どもの状況を把握できるようにする、虐待防止などを目的とした取り組みもあります。
2人目の子どもからは保育料が無料となり、子どもが増えて住み替えるときには最高25万円まで補助金が出ます。産前産後のヘルパー派遣は、これも1回500円の利用料で40回まで利用できるなど、福岡市独自の個人への助成制度がいずれも所得制限なしで利用できます。
そのような独自の施策がなされる中で、単純計算ですが、福岡市は広島市に比べて子どもに関わる予算額が市民1人当たり3万円程度高くなっています。広島市の人口に当てはめると、その差は、およそ57億円ほどになります。
実際には、広島市にはあるが福岡市にはない施策もあって、すべて福岡市がいいというわけではありません。しかし、そのような差し引きはあっても、市民の子育て支援施策に対する評価が、広島市と福岡市ではこんなにも大きな違いになって表れているのはなぜか。私は、どの子どもも大事にするんだという考え方に立っているかどうかだと考えます。
それは、当然に所得制限、受給要件に表れてきます。
広島市はなぜ、こども医療費補助制度の所得制限をなくさないのでしょうか。
なぜ、中間所得基準までつくって窓口負担の大きな差を設けているのでしょうか。
なぜ、対象年齢の拡大が全国の市町村の流れから大きく遅れてきたのでしょうか。
(保健医療担当局長)
国の調査によれば、こどもの医療費補助については、財政力等により自治体間で格差が生じている実態にありますが、本市としては、社会福祉や社会保障などに関わる事業は、国において全国的な視点で実施することが基本であり、自治体間の競争の具にすることなく、一律の制度とするべきであると考えております。
こうした中、本市の制度において所得制限や一部負担金の基準額については、経済的な理由によって必要な医療が受けられないことがないよう配慮した上で、持続可能な制度となるよう、所得に応じた負担を求めているものであり、補助対象年齢については審議会の付帯決議や他都市の状況を踏まえ、本年1月に中学3年生まで拡大したところでございます。
今後も国や他都市の状況等を注視しつつ、制度のあり方について検討してまいります。
(中森辰一)
就学援助制度の所得基準については、国の調査では生活保護基準をもとにしている市町村のうち7割を超える市町村が生活保護基準の1.3倍にしている中で、なぜ、これ以上下げられない1.0倍に切り下げて、1,000人もの子どもを対象から除外したのでしょうか。
(教育長)
本市の就学援助制度については、認定基準の基礎となる生活保護基準額が平成元年度のままとなっていたことや社会保険料等を二重に考慮する算定式となっていたことなどの課題を解消し、制度の持続性を高める観点から、令和4年度に見直しを行っております。
この見直しでは、認定基準の算定に用いる生活保護基準額に乗じる係数を1.13から1.0にすることで、社会保険料控除の重複を解消するとともに、審査用所得の算定においては、社会保険料等の控除額を差し引く取り扱いは継続することといたしました。
他の自治体においては、審査用所得の算定にあたり、社会保険料を控除しない代わりに、生活保護基準額に一定の係数を乗じる算定方法を採用している場合もあり、係数だけで単純に比較できるものではないと考えております。
(中森辰一)
せっかく何十年も無料でやってきたのに、利用できない子どもが出てくるということを無視して、放課後児童クラブの利用料を有料にしたのはなぜでしょうか。
以上について、改めてお答えください。
(こども未来局長)
放課後児童クラブについては、利用児童の保護者を対象に行ったアンケート調査において、回答者の9割近くはサービス向上を求めていることや、7割以上が、事業費が年々増加している中「サービスの維持・向上のためには、一定の利用者負担もやむを得ない」と考えていることが明らかになりました。
このため、市民における公平性確保の観点から受益者の負担能力を考慮した適切な措置を行い、将来にわたって安定的に運用できるようにするという考え方に基づき、令和5年度から保護者ニーズの高いサービス向上策の実施にあわせて、経済的理由で利用できない児童が出ることのないよう、適切な負担軽減措置を組み込んだ上で、利用者負担を導入したものです。
(中森辰一)
私は、これらのことはすべて、広島市の子どもはみんな大事にする、施策の対象にするという考え方に立っていないからではないか、いつも受益者負担の考え方が前提にある、もっと言えば、子育て支援施策を貧困対策の一環と考えているからではないか、と思うのです。
しかし、子どもたちは、親の経済状況には何の責任もありません。すべての子どもたちが、健やかに未来に向かって育っていく権利を持って生まれてきたのです。所得によって何らかの線引きをすれば、必ずボーダーライン層が生まれ、所得だけに拠らない様々な事情で、必要なサービスや支援措置が受けられず、困難に陥る子どもが出てきます。そういうことを防ぐためには、所得による線引きをなくすことが必要です。
市長のお考えをお聞かせください。
(こども未来局長)
子育て支援策については、こども基本法において、全てのこどもが適切に養育され、健やかな成長・発達と自立が図られるなど、こどもの権利が保障されるよう、国は施策を総合的に策定・実施し、地方公共団体は国等と連携を図りつつ、区域内の子どもの状況に応じた施策を策定・実施することとされています。
このため、本市としては、全国共通の課題として、国民における公平性確保の観点から、統一的に策定・実施すべき子育て支援策については、地域によって格差が生じることのないよう、所得制限のあり方等を含め、国の責任において適切にやるべきものと考えています。
また、国の責任において講じられ、本市が実施する役割を担う施策については、円滑な制度運用に向けて取り組むとともに、本市が地域の実情等に応じて策定・実施する施策については、限られた財源の中、将来にわたって安定的に運用できる制度としていくため、市民における公平性確保の観点から、受益者の負担能力を考慮した適切な措置を行い、一定の利用者負担や所得による基準を設けているものです。
(中森辰一)
この項目の最後ですが、こども医療費補助制度の就学前までの制度運営の費用は県と市が半分ずつ負担するとしていたのを、広島市だけ県が4割、市が6割にすることで合意したと聞きました。
新年度の予算ではその分がどれだけの負担増になっているのか、これまでずっと、そのような理不尽なことは拒否してきたのに、なぜ合意したのかお答えください。
(保健医療担当局長)
こども医療費補助制度の費用に係る令和7年度当初予算においては、従前の補助率2分の1で算定した場合と比較して、約1億2000万円の補助減額になると見込んでおりますが、これは、「政令市は福祉分野において県と同等の権能を有している、本市に財政的な余力がある、県としてのネウボラなどの子育て政策の拡充や若者減少・人手不足対策など喫緊の課題への対応のため」などの理由により、県が補助率の引き下げを行った結果でございます。
本市としては、県の主張に合理的理由がなく、引き下げに対し反対してきたところですが、歳入予算である県補助が削減されたことから、子育て世帯の支援に遺漏がないようにするため、歳出予算はこれまで通り確保したものです。
【再質問】
(中森辰一)
子育て支援の問題ですが、子育て家庭が第一に望んでいるのは、子育てに関わる経済的支援策の充実なわけです。その中で、こども医療費補助制度というのはいわば子育て支援策の柱であって、一番比較される施策です。しかもこの制度は子どもたちの命を守る制度でもあります。
それだけにこの制度のありようで、自治体としての子育て支援への本気度を見られるということもありますし、自治体の評価も左右するんではないかというふうに考えます。
どこの自治体もこの制度は国がやるべきだというふうに言ってるわけですよ。だけども、それを待っているわけにはいかないから、住民の要望に応えて、制度を拡充してきました。そこが遅れるようなことになっている、だから人口比で57億円も福岡市に差をつけられているんじゃないかというふうに思うんです。
一つは、子育て支援策全体の財源をもっと増やすべきじゃないかというふうに思います。
ついでに言いますと、このこども医療費補助制度の中間所得基準、これがあるから、やっぱり全国の最低水準にとどまっているわけですしそれから、就学援助制度の問題も、これは先ほど答弁あったけれども、しかしそれでもですね、制度から1,000人外れているというこの事実をどう見るのかということもあるんじゃないかというふうに思います。
いずれにしても、この子育て支援策全体の財源をもっと増やすという、そういう立場にぜひ立っていただきたいと思いますがどうでしょう。
(こども未来局長)
子ども子育て予算に関して、それをもっと増やすべきではないかという再質問いただきましたけれども、子ども子育て支援に係る予算につきましては、児童福祉費あるいは母子保健等に係る衛生費教育費等合算した予算額につきましては年々増額を図っているところでございます。
来年度につきましても、先ほども申しましたけれども、子育て家庭等が地域の身近な場所で気軽に相談できるような地域子育て相談機関の設置、一時預かり保育や病児病後児保育の利用に係る予約、それから放課後児童クラブの利用申請をオンライン化する等のシステム導入、それからヤングケアラーの早期発見のための相談体制の強化といったところに力を入れて取り組んでいきたいと考えております。
現在策定中の広島市こども若者計画、これに基づきまして今後も子ども若者と子育てしやすい、子育てに優しいまち広島に続きに向けて取り組んでいきたいと考えております。
(中森辰一)
次に、今年の4月からPASPY(パスピー)が廃止され、広電グループ3社とHD西広島によるスマートフォンの利用を前提とするMOBIRY DAYS(モビリーデイズ)と、それ以外のバス事業者とアストラムラインによるICOCA(イコカ)の、2種類の運賃支払いシステムが併存することになりました。
市民にとって、二つのやり方を使い分けなければならなくなった上に、2種類の運賃支払いシステム相互の乗り継ぎ割引もなくなって、不便な上に不利益も被ることになりました。さらに、それ以前の問題として、障がいのある人やスマートフォンを使えない、少なくとも2割を超える市民を置き去りにして進めてきたという重大な問題があります。このMOBIRY DAYSの導入には、広島市行政が多額の補助金を拠出していて、広島市行政の姿勢も問われています。
市民誰にでも利用が保障されているはずの公共交通機関であるのに、2割を超える市民の利用に障害を持ち込むやり方を、広島市の行政が容認し、多額の補助金を提供して一緒に推進していました。MOBIRY DAYSへの切り替えは、スマートフォンを使わない、使えない市民には新たな不便を押し付けるものです。
12月議会本会議では、少なくとも2割の市民がスマートフォンを使えない、視覚障がいのある方はスマートフォンの利用は事実上不可能、簡易型読み取り機でも使えると言っても、障がいによっては運転手にどこから乗ったと申告することが難しい場合もある、そうした様々な問題があることに何の配慮もないことを告発しました。
障害のある人たちやその家族、支援者の団体が、こうした問題を指摘し是正を求めて声をあげられましたが、それまで広島市行政は何もしなかったように見えます。
広島市はなぜ、市民が声を上げるまで気が付かなかったのでしょうか。市民が声を上げて、問題が明らかになった後も、そのままMOBIRY DAYSを4月から導入する立場、つまり広電側の立場に立っていたように見えます。そんなことでいいのでしょうか。
日本国憲法第13条は、個人の尊厳を謳っています。広島県のホームページを見ると、このことについて、「個々の人間は、その多様な存在のまま尊重されなければならないこと」と説明されています。
そもそも、これまで広く便利に利用されていたPASPYを廃止して新しいシステムを導入するにあたって、様々な条件を持った利用者がいることを前提に、どのような身体条件などがあっても、最大限問題が生じないように考えなければならなかったはずです。スマートフォンが使えない人や、とりわけ障害のある人がどのように不便になるのか、どのような支障が生じるのか、最初の段階で、その当事者や当事者団体に意見を聞くのは当然ですが、そういうことをきちんと行ったということは聞いていません。
広島電鉄株式会社や、それを擁護する広島市の姿勢は、2割に上るスマートフォンを使えない人や障害のある人を、尊重すべき対象としていないのではないかと強い疑問がわいてきます。
なぜ、2割を超えるスマートフォンを使えない市民や障害のある市民を置き去りにしてしまったのか、また、なぜ、広島市はそれを容認し支援したのか、その考え方をお答えください。
(道路交通局長)
広島電鉄が導入しておりますMOBIRY DAYSは、スマートフォンを用いたQRコード決済の他、これまでのPASPYと同じ使用方法で乗降できる専用ICカードも準備されており、スマートフォンを使えない方や障害をお持ちの方も利用可能なシステムであることから、議員の御指摘は当たらないものと考えます。
またMOBIRY DAYSは、クラウド型の新たなシステムを採用しており、本市が中心となって取り組んでいるバスの共同運営において、今後新たな運賃サービスを展開していく際に、柔軟かつ容易に対応できることや、そうした新技術に対し、国からの手厚い支援を受けられる見通しだったことから、当該補助金を活用し、支援を行うこととしたものです。
(中森辰一)
私たちは、デジタルによる利便性をより高めていくことは必要なことだと考えています。ただし、その恩恵はすべての市民に行き渡らなければなりません。むしろ、デジタル技術の発達によって、現状で様々な不便を強いられている市民にこそ、より高いレベルの利便性がもたらされるようにしなければならないと考えます。
ところが今回は、新しいデジタル技術を採用することで、スマートフォンが自在に使える市民には高いレベルの利便性を提供するが、そうでない市民には、逆にこれまでより不便を、あるいは利用不能な事態を押し付けることになりました。
これはデジタル技術の利用という点では本末転倒ではないかと考えます。この点についての市の見解をお聞かせください。
(道路交通局長)
先ほどご答弁したように、MOBIRY DAYSには専用ICカードも用意されており、スマートフォンを使えない方も利用可能です。
また専用ICカードにおいても、QRコードと同様に、オートチャージ機能なども使用可能であり、デジタル技術の利用という点において、スマートフォンを使える人だけに高いレベルの利便性が提供されているものではないと考えています。
(中森辰一)
いわば、身体的・精神的条件に何の支障もない多数派へのより高い利便性のために、高齢であったり何らかの障がいがあったりなどの少数派への不便を強要する、そのような判断が広島の公共交通事業者によってなされた、広島市の行政はそれを容認し支援したということになります。
これは、少数派に対する差別的な考えかたではないのかと考えるわけですが、広島市行政のお考えをお聞かせください。
(道路交通局長)
繰り返しになりますが、MOBIRY DAYSはスマートフォンを使えない方などに向けて専用ICカードを用意されており、ご指摘は当たらないものと考えます。
(中森辰一)
広島市男女共同参画推進条例の前文には、市民の平和的生存権の考え方が謳われています。いやしくも、平和都市広島市の行政が、少数派に対して差別的な取り扱いをしてもいいと判断したとしたら、これは平和都市とは言えません。
補助金を出す事業であるにもかかわらず、そのような判断がなされる場合、それにストップをかけて、少数派が差別的な取り扱いをされることがないように十分に指導し、場合によっては補助金の支出を差し止める対応が必要だったと考えるものです。
広電側は、デジタル技術によってMOBIRY DAYSでICOCAを読み取ったり、バスなどの車内で現金チャージができるように検討するとしているようですが、それを実施するかどうかは不明です。そういうことができるなら、最初からやればよかったのです。しかし現状では、多数派の利便性と企業の利益のために、少数派の差別的取り扱いのままスタートすることになります。
そうならないように、少なくともPASPY廃止までに、MOBIRY DAYSによるICOCA読み取りと車内での現金チャージが実現できるよう取り組むべきであり、広島市としても強く要請するべきだと考えますが、どうされるか答弁を求めます。
(道路交通局長)
本市としては、より一層の利便性向上のため、これまでも広島電鉄に対し、MOBIRY DAYSによるICOCAの読み取りと、車内での現金チャージの早期実現を要請してきているところではございますが、同社からは「関係事業者との調整やシステム改良も必要であり、PASPYまでの実現は困難である」と聞いています。
(中森辰一)
合わせて、広島市は憲法第13条を守る立場に立っているのかどうか、お答えください。
(道路交通局長)
本市は日本国憲法含むあらゆる法令を遵守し、事務の執行に当たっているところです。
【再質問】
(中森辰一)
MOBIRY DAYSに関しては中国新聞の最近の記事が示しておりましたけれども、結局ICOCAの方が便利で使いやすいということになっているわけですよ。この点についてはどういうふうにお考えなのか、答弁を求めておきます。
(道路交通局長)
中国新聞の記事でMOBIRY DAYSよりもいくつかの使う方が多いということでICOCAの方が便利ではないかというご質問だと思います。
中国新聞の記事がですね、対象者が中国新聞の読者モニターを対象とされてるということで、どういった方が対象になっているかというのがはっきりわからないというデータですので、これをもってICOCAが便利だとか、MOBIRY DAYSが不便だということは言えないとは思いますが、私としてはですね、MOBIRY DAYSだけが良くて効果が駄目だというスタンスではありません。
地域によってやはりJRを使われる方が多い方はICOCAは選ばれるでしょうし、デルタ内、広電とかですね路面電車を主に使う方っていう方は、MOBIRY DAYSを選ばれるかもしれませんし、それは利用者の方によって選んでいただけるということだというふうに思います。
以前もご答弁しておりますが、この二つの方式っていうのは今回PASPYが終わるということで、バス事業者交通事業者の中でですね、どうするかという中で、二つの方式、全国的に流通している方を使いたい、あるいはもっとPASPYよりも柔軟な運賃政策が展開できるやり方を使いたいという二つにわかれたということですので、本市としてはこれは一本化というのが当然いいということは我々も思っているところでございまして、今過渡期だというふうに思ってます。
こういう将来に向けてのですね、一本化に向けてですね、利用者にとってより高いレベルのサービスが提供できるような取り組みというのは引き続きやっていきたいというふうに考えております。
(中森辰一)
はい。ICOCAの方が使いやすいという評価を市民がしておるということなんでね、ここはよく考えていただきたい。
(道路交通局長)
中国新聞のデータに基づいて、ICOCAの方が使いやすいというご意見だと思います。
結果としてICOCAが選ばれてる方多いという結論になっておりますけれども、一つはご答弁でも申し上げましたが、MOBIRY DAYSはいろんな運賃サービスといいますか、運賃割引とかですね、こういうものに柔軟に容易にできるという特性がありますので、この4月にバス協調共創プラットフォーム、実質的に稼働いたします。
こういったプラットフォームの中でですね、しっかりそういうことが市民の皆さんに感じていただけるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
(中森辰一)
次に、かつて安倍政権が強行した二度に渡る生活保護基準切り下げによって、それ以前に比べて平均して1割も生活保護基準が引き下げられたことに対して、違法な切り下げを元に戻せ、という生活保護裁判が今でも全国で続いています。
一方、安倍政権の切り下げ強行のための事実を無視した理屈とは別に、以前から行われていた、生活保護基準を年々切り下げていく生活保護基準の決め方が、生活保護を利用せざるを得ない人たちを苦しめてきました。
それは、生活保護基準以下の収入しかないが生活保護を受けていない人たちの消費状況と、生活保護を利用している人たちの消費状況を比較するやり方です。実は、活用できる資産もなく収入が生活保護基準以下しかない人たち、つまり生活保護を受けるべき人たちのうち、生活保護を利用できている人の比率は2割程度だと政府の調査でも明らかになっています。
生活保護を受けるべきなのに生活保護にたどり着いていない人たちが、生活保護を受けている人たちの4倍近くも存在している。それは、日本社会では生活保護を受けるのは「恥だ」という意識が植え込まれてきたことが大きな原因です。そのために、二つも三つも仕事を掛け持ちして、子どもとの時間を犠牲にしたり、自分自身が体を壊しそうなのに、「死んでも生活保護だけは嫌だ」と、頑として生活保護受給を受け入れないひとり親家庭などが沢山あります。
資産もなく生活保護基準より収入が少ない人たちの消費水準が生活保護受給者を上回ることはありえません。消費水準が生活保護受給者を下回ることが明らかな人たちと比べて生活保護基準を決めるやり方は、際限なく生活保護基準を切り下げていくことを目的としたやり方にほかなりません。
市民生活の安寧を市政の目標の一つに掲げているはずの平和都市広島市の行政として、このような生活保護基準の決め方をどうお考えか、お答えください。
(健康福祉局長)
国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度は、法定受託事務であり、生活保護基準については、生活保護法に基づき厚生労働大臣が定めることとされています。
その上で国は、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から検証を行うことを基本としつつ、消費実態との比較によらない手法につきましては、今後も議論を継続していくとしていることから、本市としてはその議論を注視してまいりたいと考えております。
(中森辰一)
また、現状の生活保護基準の低さについて、どのようなご認識かお答えください。
(健康福祉局長)
議員ご指摘の生活保護基準については、国において、5年に1度、社会保障審議会で社会経済情勢等を踏まえ、専門的かつ客観的な見地から検証されているところです。
生活保護法により保障される最低限の生活を満たすように定められているものと考えています。
(中森辰一)
実際に、この数年ずっと物価高騰が続いているにもかかわらず、政府は2023年度も2024年度も、そして2025年度も、生活保護基準を切り下げようとしました。しかし、あまりにも物価高騰がひど過ぎるなかで、厳しい批判を浴びることを怖れてできなかっただけです。来年度、2025年度は一部の世帯について、わずか500円だけ引き上げると決めたようです。生きていくために必要な食料品が1割以上も上がっている状況の中で月に500円という感覚が、貧困者の生活などどうでもいいと考えている政府の実態を如実に表しています。
広島市の新年度予算案についての「予算編成の基本的な考え方」という説明文の中で、賃上げとインフレの好循環の創出に向けた歩みが着実に進んできているとの認識が語られています。しかし、多くの中小企業労働者は実質賃金はマイナスだし、賃上げの財源に苦しんでいる事業者もたくさんおられます。年金も社会保障給付もこの物価高騰を全く反映していません。所得が増えた市民がたくさんおられるから個人市民税が増えたのは間違いありませんが、市民全体の生活実態についての広島市行政の認識は甘すぎるのではないでしょうか。
すでに、物価高騰が続く今の日本社会では、低すぎる生活保護基準が、人間としての肉体の生存を維持する限界に至りつつあります。全国の例を見ると、とりわけ子どもを抱えている世帯では、子どもたちを食べさせることを優先して母親が食事を制限しなければならないという悲惨な例も出てきています。
市民生活を守ることに責任を負っている広島市の行政として、生存維持にさえ関わるほど低くなっている生活保護基準を放置している政府に、厳しく抗議して、直ちに物価高騰に見合って生活保護基準を引き上げるよう要求するべきだと考えますが、どうされるか答弁を求めます。
(健康福祉局長)
生活保護基準につきましては、国家が国民に対して保障する最低限の生活水準を確保するという観点から、国において議論されるべきものであり、本市としては、今後の国での議論を見守りたいと考えております。
なお、国に対しましては、生活や住宅をはじめとする扶助基準につきまして、物価高騰の状況や地域の生活実態を踏まえた見直しを図るよう、全国市長会等を通じて要望しているところです。
(中森辰一)
また、電気代も灯油代も値上げが続いている中で、冬は暖房費を節約するために家の中にこもって服を何枚も重ね着して外へ出ないようにして凌いでいる、夏は電気代を気にしてエアコンがあっても利用しない生活保護世帯がたくさんありますが、政府は知らん顔をしたままです。
こうした生活保護受給者市民の命と健康を守るために、市として独自に冬季加算を上乗せし、夏の手当てを創設して支給する必要があると考えますが、どのようにされるかお答えください。
(健康福祉局長)
国は一般低所得世帯の消費実態との均衡が、季節による一時的な需要を含めて適切に図られているかを定期的に検証した上で、生活保護の生活扶助基準に反映することとしていることから、本市独自に季節に応じた加算措置を創設するということは考えておりません。
なお、現在の生活保護基準におきまして、夏季加算がないことから、国に対しましては、夏季の冷房器具使用にかかる電気料金相当分を扶助する夏季加算を創設することなどを、全国市長会等を通じて要望しているところです。
【再質問】
(中森辰一)
それから夏季手当の答弁がありましたけども、この夏季手当、生活保護ですね。生活保護の夏季加算の必要性というのは、あなた方も市も認めていらっしゃるということだと思います。
実際にはですね、夏にエアコンが動いてない状態の中で孤独死で発見された、こういう市民もいらっしゃいます。
そういうことが起きているにもかかわらず、政府がやってくれるまで待っている。こういうことでは市民の命を守れないじゃないですか。
市民の命を守るためにエアコンを使うための電気代を手当する夏季手当、これ緊急に措置する必要があるんですよ。
やらないということになると、国がやるまで市は今の状態を放置するのか、こういうことになると思います。この点、改めて答弁を求めます。
(健康福祉局長)
生活保護の夏季加算それから熱中症についてのご質問がございました。
まず熱中症に関する認識でございますけれども、夏場の気温の高い日が続く季節に備えてですね、熱中症予防の普及啓発や注意喚起を行うことが重要であるというふうに考えております。
特に体温調整が困難な高齢の方や障害者の多い生活保護世帯につきましては、そうした熱中症予防は特に留意する必要があると考えております。
その上で、制度としましては、エアコンにつきましては生活保護制度上、日常生活に必要な生活費においてですね、そのやりくりにおいて計画的に購入するということをされておりまして、一定の要件を満たす場合には、臨時経費としての支給も可能となっております。
またそういった保護制度以外にもですね、購入が困難な場合には県の社会福祉協議会が行っている貸付などを利用して購入することも可能とされております。
こうしたエアコンを付与していない生活保護世帯につきましては福祉事務所におきまして健康状態や必要性の聞き取りを随時行うこととしておりまして、窓口などにおきまして指導する、あるいは国が啓発チラシを配布しておりますので、そういったもので、注意喚起を図っていくということを行っているところです。
引き続き制度の活用や、そういった周知の継続によりまして、生活保護世帯の熱中症予防、熱中症対策を図っていきたいというふうに考えております。
(中森辰一)
それから生活保護の夏季加算というのは、電気代がないから、エアコンが使えない、どうするんだということを言ってるわけですよ。もっと的確に答えていただきたいと思います。
(中森辰一)
次に、政府は「自治体戦略2040構想」を軸に、人口減少などにより行政が従来担ってきた機能が果たせなくなるとして、自治体の徹底したスリム化、デジタル化、職員の半減化、公務の外部化・民間化を推進してきました。
その流れの中で、第33次地方制度調査会答申を踏まえ、地域共同活動団体に関する内容を盛り込んだ、改正地方自治法が昨年6月に成立しました。その内容は、①市町村は地域の多様な主体と協力して住民の福祉の増進を図る、②地域住民の生活サービスの提供に資する活動を行う団体を市町村長が指定できる、指定要件の具体的な内容は条例で定める、③市町村は団体への支援を行い、団体の求めに応じて調整等を行う、④市町村は団体に対して行政財産の貸付、随意契約による関連する事務の委託ができる、というものです。
これは、要約すると“地域社会を取り巻く環境変化によって生じる人手不足などに対応するためには、これまで行政が担ってきた様々な機能について、コミュニティ組織などの多様な主体が連携・協働して主体的に関われるようにすることが必要である”という33次地制調答申を具体化したものです。この改正法を土台として、いわゆるひろしまLMO条例の案が提案されているものと認識しています。
市はこれまで、LMOを推進するために広島市社会福祉協議会の地域福祉推進課に地域連携支援担当を新設し、職員を6名増員、LMOの運営に必要となる会計処理や、事務局員を雇用する際の諸手続きを支援する税理士・社会保険労務士を派遣するとともに、認定団体には600万円の補助金を出すなど、カネとヒトを動員して力を入れてきました。
今後、法と条例に基づいて、地域共同活動団体としての「ひろしまLMO」に指定されると、市から財政的な支援や、行政財産の貸付、随意契約等の特例措置を受けて公共サービスを担うことになると考えますが、その通りかお答えください。
(企画総務局長)
LMOは、「自分たちのまちは自分たちで創り、守る」という考えのもと、共助の精神に基づき、地域の多様な主体が連携して地域課題の解決に取り組む団体であり、どのような活動を行うかは地域が自ら決定するものであることから、LMOに指定されると公共サービスを担うことになるというものではございません。
(中森辰一)
そうだとすると、今後の「ひろしまLMO」による共助のしくみづくりは、拠点となる場所や財源が保証されるというだけではなく、地域団体の活動のあり方も公共サービスのあり方も、大きく変えるものだと考えますが、市の見解をお答えください。
また、すでにLMOの事務局員の人件費として税金で300万円を補助する仕組みがありますが、市は「ひろしまLMO」やその雇用者に、行政が行ってきたどんな事務を委ねていくお考えなのかお答えください。
(企画総務局長)
先ほどご答弁しました通り、LMOは行政が実施する公共サービスを担う団体ではなく、また本市としては、LMOに対して公共サービスの提供を義務付けするようなことは考えておりません。
(中森辰一)
法で、特定地域共同活動の定義があり条例で定めるとなっています。条例案で16項目の活動の種類が載せてありますが、祭りなどのイベントも含まれるのかどうか、また、どの活動種類も、もともとは市の行政が担っていたものが含まれると考えますが、その通りでしょうか、お答えください。
(企画総務局長)
LMOが実施する祭りなどのイベントは、条例案第3条第1項第3号の「地域住民の交流促進に資する活動」に該当いたします。
また同項第1号から第15号までの特定地域共同活動については、LMOにおいて、自ら企画し実施している活動をもとに分類し整理したものを掲げており、住民の福祉の増進を図る観点から、行政が協力して実施する事業も含まれますが、行政が実施すべき事業をLMOに委ねる意図を持って活動を設定したものではございません。
(中森辰一)
法には、市の事務を随意契約で委託することができる、とありますが、どのような事務を委託することが考えられるのか、お答えください。
(企画総務局長)
本市がLMOへの委託を想定している具体的な事務は、現時点でありませんが、今後、LMOが行う特定地域協働活動等を一体的に行うことにより住民の福祉の増進が図られると認められる本市の事務がある場合には、本市とLMO双方の合意のもとで、当該事務を委託することはあり得ると考えております。
(中森辰一)
この点で、条例第3条の(16)にある「市長が必要と認める活動」とは、どのようなものが想定されているのか、お答えください。
(企画総務局長)
議員ご紹介の、「その他市長が必要と認める活動」の規定は、条例案第3条第1項第1号から第15号までのいずれにも該当しない活動であって、法で定める特定地域共同活動の定義に該当する有益な活動が企画された場合に適用されるものですが、具体的な活動は現時点では想定しておりません。
(中森辰一)
地域で共同の活動を行っている諸団体は、高齢化と加入者の減少、財政的な問題、担い手・後継者の問題などを抱えています。地域の共同団体が活動を継続・発展させていくためには、行政の支援が必要であることは共通の認識です。
同時に、現状では、学区によっては、指定の条件を満たせないところもあるものと考えます。しかし、条件が満たせず指定されなくても、現に地域で力を合わせて地域のために活動しておられるわけで、「ひろしまLMO」に指定されなくても、最低限、これまで通りの補助金を提供して活動を支援するべきだと考えますが、どのようにされるお考えかお答えください。
以上、私の総括質問と致します。
(企画総務局長)
本市としましては、LMOの指定の有無にかかわらず、地域の各種団体の活動を支援する立場であることには変わりないことから、LMOの指定を受けていない地域で活動する各種団体の補助金につきましては、従前どおり交付することにしております。
【再質問】
(中森辰一)
最後に1年前にLMOのあり方の議論をしたときにですね、市長が繰り返しLMOの意義を強調されましたけれども、これまで市が説明してきたLMOは、地域の共同組織を活性化させていこうということだったと思います。
しかし、改定された地方自治法にある地域共同活動団体、すなわち法改正を受けた今回のひろしまLMO条例にあるLMOっていうのは、これ1年前に市長が説明されたものとは違うと思います。
33次地制調が意図したもの、自治体のスリム化などを目指して、自治体の機能を地域の住民団体に担わせようという、そういう意図を持ったものに、これは変わってきてるんじゃないかなと思うんですよ。
市はその違いを認識していらっしゃると思いますけれども、やっぱりこのことはですね、広島LMOの指定団体とか、各地域団体、市民にこの違いをきちんと説明するべきじゃないかというふうに思うんですが、どうされるかお答えください。
(企画総務局長)
LMOについて今議員の方から今回の法改正により、自治体の事務を今回のLMO等活動団体に担わせようとしているのではないかというですね、そういったような認識でおっしゃられましたが、まずその認識をちょっと改めていただきたいというふうに思ってます。
そもそも地方自治法の改正での国会審議では、おそらく議員がおっしゃっておられるのは、随意契約による委託ができるということをもって、この指定地域協働活動団体がいわゆる行政の下請け組織化するんじゃないかと、そういった質疑があったことからそういう発想でおっしゃっておられますけど、そもそもこの随意契約は当然契約行為ですので、双方の合意がないとできません。
したがいまして、我々も広島市からそういった事務を押し付けたりすることはないということは先ほども答弁で申し上げました。
そもそも、昨年来これまでLMOのですね活動やってますのは、元々我々の方では地域に関わるあらゆる主体が一緒になって、地域の実情に応じた諸課題を解決できる持続可能な地域コミュニティの実現を図るために、このLMOを基盤とした市民主体のまちづくりを推進してきたと。今回それが、我々が先にしてやってきたことを法が後からついてきたというぐらいの形なんで、その法と我々の認識とは違ってません。全く一緒です。
そういう思いのもとでこれからLMOの推進をやっていきますので、議員の認識を改めていただければ思ってます。