議会での質問・答弁

2024年06月21日

2024年第2回 6月定例会 一般質問 中原ひろみ

1.被爆地ヒロシマの役割について
(1)殺傷兵器の輸出解禁及び基地強化について
(2)地方自治法改正について
2.医療・介護について
(1)高齢者の孤立について
(2)訪問介護の報酬単価引き下げについて
(3)県立広島病院の移転について
(4)舟入市民病院の子ども救急について
3.子育て支援について
(1)子ども・子育て支援金制度について
(2)子どもの生活に関する実態調査結果について
4.パスピー廃止について

1.被爆地ヒロシマの役割について
(1)殺傷兵器の輸出解禁及び基地強化について

(中原ひろみ)
 お疲れ様です。日本共産党の中原ひろみです。市議団を代表して一般質問を行います。
 朝日新聞社が5月5日に実施した全国世論調査では、平和憲法9条があることで「日本は戦争をしないですんできた」との意見に8割もの国民が共感を示すなか、岸田自公政権は憲法を蹂躙し、平和と命、暮らしを壊す危険な「戦争国家づくり」を強行しています。
とくに、日本政府が1976年以来 平和国家として国際紛争の助長を回避するために禁じてきた武器輸出三原則を踏みにじり、イギリス、イタリアと次期戦闘機を共同開発し、殺傷武器の第三国への輸出を決めたことは、憲法の平和主義に背き、日本を「死の商人」国家におとしめる許し難い暴挙です。
 輸出国にはイスラエルやサウジアラビアなど中東の国々も含まれています。イスラエルでは、イギリスやイタリアが輸出した戦闘機が、ガザで国際法に反する攻撃に使われています。ガザやウクライナが空爆にさらされ、おびえ泣く子どもたちの映像に日本でも多くの人が胸のつぶれる思いをしていますが、日本が開発した戦闘機が他国の罪のない人々の命を奪う事態につながりかねません。
 岸田首相は、「現に戦闘が行われている国」には輸出しないとしていますが、輸出後に「戦闘国」となり空爆に使用されない保証はありません。
 最新鋭の戦闘機の開発には数兆円の開発費が必要で、巨額の開発費を回収し利益を出すために大量に第三国に売りさばくのは当然というのがこれらの国の発想です。
 一旦、「死の商人国家」に足を踏み入れると、そこから簡単には抜け出せなくなる、まさに平和国家のあり方が根本から問われています。
 言うまでもなく軍需産業は、武器が売れなくなれば、つまり平和が続けば企業の死活問題となります。軍事的緊張が厳しくなればなるほど、戦争が起きれば起きるほど利益が上がる、まさに、平和とは真反対の方向を求める軍需産業に、国家の判断や利益が左右される国になっていいはずがありません。
 さらに今、日本製鉄呉地区の跡地を防衛省が一括で購入し、広島市民球場36個分の広大な土地に多機能な複合防衛拠点が整備されようとしています。
 これは、戦闘機の外国への輸出と同様、岸田政権が軍事大国化に暴走する危険な動きの一つです。世界恒久平和を訴える広島市にとって、看過できない問題です。
 すでに、県内には、海上自衛隊呉基地及び呉地方総監部、陸上自衛隊海田駐屯地、この敷地の半分は広島市内です。米軍川上弾薬庫、広弾薬庫、秋月弾薬庫、灰ヶ峰通信施設、呉第六突堤と、米軍施設が5つも存在しています。海上自衛隊呉基地には自衛隊が保有する艦船のうち4割が所属しており、さらに、呉市に多機能防衛拠点が整備されるとなると、被爆県広島は全国有数の軍事拠点となります。
 その中に、恒久平和を世界に訴える広島市が存在することになります。
 岸田政権は、日本の国土がミサイルなどの攻撃を受けても、基地の機能が損なわれることがないように基地施設を守るための自衛隊基地の強靭化を推し進めています。これは、米国の戦争に自衛隊が参加すれば、日本の国土が攻撃されることを想定しているからに他なりません。
 しかし、攻撃を受けて、自衛隊基地が生き残ったとしても、その周辺に暮らしている国民の逃げ場はなく、いまロシアから攻撃を受けているウクライナのような惨状が全国で発生することは目に見えています。
 何よりも大事なことは、アメリカの戦争に参加するために軍事力を強化することではなく、いかに地域の緊張をなくし、周辺国との相互の信頼関係を高め、戦争がない東アジアを実現する事に、本気で取り組むことです。
 差し迫っている米中の緊張関係の中で、平和憲法を持つ日本がやるべきことは、米中の間に立って、戦争にならないように仲介を行う独自の平和外交です。
 国内で軍備を増強し、他国へ武器輸出を解禁することは、日本に戦争を呼び込むことになると考えますが、市の見解をお聞きします。
 核兵器廃絶とともに戦争のない世界を訴え続けてきたヒロシマは、日本政府に、平和外交にこそ力を尽くせと申し入れるべきですが、市のお考えをお聞きします。

(市民局長)
 軍事施設を増強し、他国への武器輸出を進めることは、本市が訴えている戦争のない世界の実現を遠ざけ、困難にするものであると考えています。したがって、国の安全保障や外交・防衛に関することは国の専権事項ではありますが、国民の生命と財産を守るべき政府としては、自国の利益を最大にするための外交努力を尽くし、国民の多くが納得できるようにするという視点に立って対処することが極めて重要であると考えています。
 このため日本政府に対しては、こうした広島の思いをしっかり受け止めてもらうためにも、これまでも毎年、平和宣言を行うなどしてきているところです。

【再質問】
(中原ひろみ)
 それから、最後は広島の役割ですが、結局国は今回の審議での紛争当事国には殺傷武器を輸出しないということなんですが、この輸出しない紛争当事国はどこかという質疑をされました。
 そうしたらですね、現時点ではそういう国は存在しないということです。
 これ荒唐無稽な発言でしょ。現にロシアとかウクライナとかガザとかあるのに。これはつまり、紛争国にもメイドインジャパンの武器が輸出されるかもしれないということでしょうか。
 これは大変危険だと思うんですが、聞きたいのはこの被爆地広島にそういう危機感があるのかっていうのをまず聞きたいんですがいかがでしょうか。

(市民局長)
 先ほどの繰り返しになりますけども、今回軍事施設を増強し他国への武器輸出を進めることは、本市が訴えている戦争のない世界の実現を遠ざけ困難にするものであると受け止めています。

【再再質問】
(中原ひろみ)
 広島には平和推進基本条例というのがありましてね、ここには平和の定義として、世界中の核兵器が廃絶され、かつ戦争その他の武力行使がない状態というふうに明確に戦争を否定しております。
 よってですね、私は非核三原則と並ぶ日本の国是である武器輸出三原則を崩壊させることは許されないんだということを、この8月6日の平和宣言で私は指摘すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

(市民局長)
 本市としましては、日本政府において広島の思いをしっかり受け止めた上で、国際社会が対話による信頼醸成に一層努め、相互不信に陥ることがないようあらゆる外交努力を尽くしていただきたいと考えており、これまでもこうした考えを平和宣言や国への個別の要望など様々な機会を通じて日本政府に訴えてきております。今後も継続していきたいと考えております。

(2)地方自治法改正について

(中原ひろみ)
 憲法は、戦前の中央集権的な体制の下で自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省から、地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ「団体自治」と住民の意思にもとづく「住民自治」を保障しました。2000年に施行された地方分権一括法は国と自治体が対等平等の関係にあるとし、国の関与は限定・抑制する仕組みになっています。
 ところが今国会では、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば、地方自治体に「指示権」を発動し、自治体を国に従属させる仕組みをつくる地方自治法改正案が強行されました。狙いは、沖縄の辺野古新基地建設の強行に見られるように、民意を無視して自治体を国に従わせ、自治体の職員を戦争に動員する仕組みと言わざるを得ません。
 有事を理由に、地方自治法を破壊する国の過剰な関与は許されないと考えますが市の見解をお尋ねします。

(企画総務局長)
 このたび成立した地方自治法の一部を改正する法律のうちの、国の補充的な指示に関する規定に係る議員のご指摘につきましては、付帯決議において、指示権の行使を必要最小限とすることや事前に十分に地方自治体と協議すること等が規定されることで処理されたものと考えております。したがいまして、本市としましては、今後の運用についてしっかりと注視してまいりたいと考えております。

(中原ひろみ)
 私は、5月末に能登半島地震の被災地に出向き、焼失した輪島市の朝市通りなどを視察するとともに、仮設住宅で暮らす被災者の要望をお聞きしました。5ケ月が経過したにもかかわらず、「公費解体」は全く進まず、被災家屋は手つかず放置され、時が止まったのではないかと感じるほどでした。能登は見捨てられたのかと被災者に言わせる政治を延命させることはできません。
 国は大規模災害やコロナ対応のために地方自治法改正が必要と説明しますが、それは口実です。法律に不備があるのではありません。コロナ時に安倍政権は布マスクの配布や、一律の休校などで右往左往しました。能登半島地震が発生した元旦、岸田首相が新年会を3つも梯子したことも批判されましたが、国の危機管理意識にこそ問題があるというべきです。
 災害時は現場の実情を知る自治体の判断を国がサポートすることが必要です。国の役割は、迅速な対応ができる権限、財源、人を自治体に保障することです。
 大規模災害時における広島市の職員体制や国等との連携の必要性について市の考えをお聞きします。

(危機管理担当局長)
 本市では、災害発生時には、災害対策本部を設置の上、避難所の運営などの災害応急対策業務に取り組むこととしており、災害の規模等により、人員の不足が生じないよう、必要に応じて全庁的な職員の調整や他自治体への応援要請等により、職員体制を確保することにしています。
 また、近年、地震や豪雨・台風等による災害は頻発化していることに加え、その形態も激甚化、広域化、複合化し、人命救助・救護、食料・生活必需品の供給やライフラインの復旧など、多岐にわたる災害対応が同時に必要となり、個々の自治体だけでは迅速かつ的確な対応が困難となっている状況が見られることから、本市としましては、平常時から訓練等を通じて、国や広島県、民間事業者等との連携・協力体制を強化しています。
 加えて、想定を超える災害に備え、民間事業者等から幅広く支援を受けられるよう、連携・協力体制の輪を広げることにしています。

【再質問】
(中原ひろみ)
 災害時の職員体制でありますけれども、これは要望です。先ほども輪島市に行ったと申し上げましたが、輪島市では死者が100人を超えました。住宅の半壊全壊は8000ということで、とてつもない被害なんですけど、そういう中でその行政機能は麻痺したということなんです。
 自治体職員さんは自らも被災しながら、やっぱり自治体公務員として、被災者の命を守り暮らしをさせるということで奮闘されているわけですが、やっぱり行政改革ということで、ずっとそのマンパワーが減らされてね、3割ぐらい減ってきたんだと、そういう中での災害ということになったわけです。
 それで通常の業務と災害対応と両方こなすということで、300時間を超えるような長時間労働を余儀なくされているという実態であるというふうにも聞きまして、行政改革というのは輪島市だけがやったわけでなく全国が行ったわけですが、全国では48万人ぐらいこの間減ったというふうな報道でした。
 私の記憶でも、広島市でも人員削減1000人を目標にするというようなことがあったというふうに記憶をしております。
 やはり職員不足は大規模災害時に大変な過密労働にもなるし、それは職員さんのストレス、健康被害にも直結すると同時に、何よりもやっぱり被災された方の復興や支援が遅れるということになりますので、さっきおっしゃったように、他都市から支援をもらうとか、民間事業者から支援をもらうとかこれも当然必要なことではありますけれども、やはり基本的には当該自治体の職員をしっかり確保しておくという、自治体で備えるというのが私はこれが基本であろうというふうに思いますので、日頃から十分な人員体制を確保されるように求めておきたいと思います。

2.医療・介護について
(1)高齢者の孤立について

(中原ひろみ)
 憲法25条は国民の生存権を謳っており、医療・介護を大切にすることが政治の使命ですが、日本は、医療も介護も危機に瀕しています。一方、パーティー券を購入してもらった大企業の利益を生むために税金の使途が決まる「歪んだ政治」は国民の力で終わらせなければなりません。
 厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、66歳以上の高齢者の貧困率の国際比較で、日本の相対的貧困率はアメリカに次いで世界で第二位です。相対的貧困の基準は世帯年収が127万円とされ、貧困率は15.4%です。日本人の6人に一人が貧困ライン以下の生活をしているということです。2011年から2019年の8年間だけでも1.4ケ月分の年金給付費が削り取られ、物価はこの4年間で、20%を超えて高騰しています。
 政府は100年安心の年金制度と言ってきましたが、どこに安心があるのか、人生百年の時代と言われるなか、日本は老いることで貧しくなる国になっています。老いることがこんなに不安なのは政治の責任と考えますが、市の見解をお尋ねします。

(市長)
 少子・高齢化が一段と進展し、高齢者の医療や介護に対する支援ニーズが増加する中、我が国では、幅広い世代の安心を支えていくための年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般について、そのあり方を見直すことが国民的な重要課題になっており、それに正面から対処することが政治の責任になっていると考えています。
 その際、社会保障に係る制度について、次の世代にいかに円滑に引き継いでいけるようにするか、世代間の公平性をいかに確保するかといった視点に立って現状を十分に分析し、国民が納得できる改革案を提示することが極めて重要になるとも考えています。
 高齢者、とりわけ一人暮らしや支援を要する高齢者は今後も増え続ける見込みであること等、地方の実情に配慮した制度運営に努めてきている本市としては、今後も引き続き、自助・共助・公助の適切な組み合わせにより地域福祉を再構築するという基本的な考え方のもと、国が進めようとしている「全世代型社会保障改革」が「支える側」と「支えられる側」に二分されることなく、「お互い様」の精神のもとで、いきいきと安心して暮らし続けられることができる社会の実現に資するものとなるよう、取り組んでいきたいと考えております。

(中原ひろみ)
 1人暮らしの高齢者数、社会的孤立の実態、広島市が行政的対応として実施された埋葬件数をお聞きしておきます。

(健康福祉局長)
 本市の一人暮らしの高齢者数は、令和2年に行われた国勢調査におきまして、6万3569人でした。
 また、昨年12月に本市で65歳以上の人を対象に生活実態と意識に関するアンケート調査を行った結果、「週に1回以上外出しているか」との問いに、「ほとんど外出していない」または「週1回」と回答した方は15.8%、併せて親族友人などの「心配事や愚痴を聞いてくれる人」がいないと回答した人は1%でした。
 また、昨年度「身元が判明しない」または「身元が判明しているが引き取りを拒否された」との理由から、本市が管理する合葬墓に納骨した件数は291件でした。

(2)訪問介護の報酬単価引き下げについて

(中原ひろみ)
 曽野綾子氏は週刊ポスト2016年2月8日号で「適当な時に高齢者には「死ぬ義務」があるとの記事を掲載し、成田悠輔氏は「高齢者は老外化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」などの発言がされ高齢者の人権を切り捨てる発言に驚くばかりです。が、すでに厚労省は2005年の社会保険審議会医療保険部会等で「自宅での死亡割合を4割」に引き上げれば、2025年に約5000億円の医療給付費が節減できるとの試算を発表し、終末期ケアの費用は医療政策から外しています。
 この間の介護保険の改定、公的病院の統廃合は「団塊の世代」が、後期高齢者になる2025年~2040年にピークを迎える超高齢化社会において、増大する社会保障コストを抑制したいと政権が考えているからに他なりません。個人の命や尊厳が見捨てられ、国の負担が減る方向へ医療も介護も変えられようとしています。
 実際、今年の4月から訪問介護の基本報酬が2%を超えて引き下げられました。「弱った事業所にとどめを刺すようなやり方は許せない」と抗議の声が広がっています。厚労省の調査では、訪問介護事業所の約4割が2022年度以降3年連続で赤字であるにもかかわらず、政府はこの現状を無視して、今回の改定で訪問介護の基本報酬を引き下げました。
 広島市内にある訪問介護事業所に実情をお聞きしました。2005年140人いたヘルパーさんは、今では48人へと減少し、全員が65歳以上で最高齢は75歳といいます。基本報酬の点数が減らされたことで、年間100万円近い減収となるだけでなく、ガソリン・電気代も上がるなか、経営は厳しいと訴えられました。
中小・零細事業所は、大手が断る困難なケースを引き受けて雨の降る日も猛暑のなかも片道10分、20分かけて訪問し、身体介護、生活援助サービスを提供し地域を支えているのに、収益率の高いサービス付高齢者住宅などに併設した訪問介護とひとくくりにされ、収益率の平均があがったことを理由に訪問介護の報酬が引き下げられるのは理不尽の極みだと訴えられました。
 また、国は地域包括ケアシステムを構築し、地域で高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援をめざすといいながら、その最善線で奮闘している訪問介護事業所が維持できない状況に追い込むやり方は理解できないとも話されました。
 さらに、訪問介護先に駐車場がない場合、有料パーキングの駐車料金はヘルパーの負担だといいます。ガソリン代や駐車料金の全額を事業所が負担できないのが、心苦しいとも話されました。ヘルパーステーションで働く介護福祉士さんは、「ヘルパーの未来をつぶすような改定は撤回してほしい」「ヘルパーを守ってほしい」と訴えられました。
 ヘルパーの給与は長年の給付費抑制策で基本報酬が引き下げられ、常勤でも全産業平均を月額約10万円も下回ります。厚労省は訪問介護の報酬は下げたが、処遇改善加算を高い率にしたからトータルでプラスになるとし、24年度に月約7500円、25年度に月約6000円のベースアップになるとしていますが、この程度では介護人材の確保は困難です。何より処遇改善加算の引上げだけでは経営状態の改善にはなりません。
 事業所の経営には、物価高への対応も急務であり、基本報酬の引き上げこそ必須です。

①訪問介護の基本報酬の引き下げは、ヘルパー不足をより深刻化させ、小規模・零細事業所を撤退に追い込み、要介護高齢者に「必要なサービスが提供できない」事態につながるのではありませんか。
 また地域包括システムの構築にむけて訪問ヘルパーは地域の頼みの綱ですが、ヘルパーの重要性について市の認識をお聞きします。

(健康福祉局長)
 令和6年度の介護報酬改定では、訪問介護について基礎報酬が引き下げられた一方、職員の職員会前かさんの加算率が他のサービスと比べて高く設定されるなど、全体としてはプラス改定とされたほか、処遇改善に係る加算が一本化され、加算取得に係る事務負担の軽減が図られているところです。
 本市としましては、質の高い介護サービスを安定して提供できる体制作りを推進していくためには介護人材の確保定着を図ることは不可欠と考えており、訪問介護事業者向けのセミナー開催や社会保険労務士等による個別の助言指導など事業所の処遇改善加算の取得の支援等にしっかりと取り組んでいくこととしております。
 また、医療・介護・住まい・生活支援等を日常生活で包括的に確保する地域包括システムにおきまして、訪問介護サービスは、在宅支援を支える大変重要な役割を担っていただいていると認識しております。

②何より訪問介護の基本報酬の引き下げは、政府の「失策」であり、次期改定をまたず、撤回するように国に求めるべきですがいかがですか。

(健康福祉局長)
 先ほどもご答弁した通り、訪問介護につきましては、基本報酬は引き下げられた一方、職員の処遇改善加算の加算率が他のサービスと比べて高く設定されているなど、全体としてはプラスに改定されております。
 国においては、訪問介護関係者から事業の持続可能性の低下等を懸念する声もあることから、今後、介護報酬改定の影響等について、各種調査を通じて利用者や事業者の状況の把握を行い、その結果も踏まえ、加算取得に向けた更なる工夫を行うなど、必要な取り組みを進めるとされています。
 本市では、これまでも適切な報酬単価の設定や処遇改善の拡大などについて他の政令指定都市等と共同して国に要望してきましたが、引き続き、こうした国の動向を踏まえ、事業者の声を伺いながら必要に応じて働きかけを行っていきたいと考えております。

③介護保険制度は、介護現場の報酬を上げると保険料の引き上げに直結するしくみです。保険料を上げずに介護職員の処遇を改善するため、広島市独自に公費による処遇改善の加算を復活すべきではありませんか。

(健康福祉局長)
 介護職員の処遇改善など給与水準の直接的な増加につきましては、本来、国の責任において全国一律の扱いとなるよう介護報酬の改定等により調整されるべきものであり、本市は、介護職員の資格取得や福利厚生の支援、介護の魅力発信といった間接支援を担うものであると考えております。
 平成26年度まで実施していました民間社会福祉施設職員給与改善費等補助につきましては、その対象が社会福祉法人のみであったこと、地域区分に応じた人件費の上乗せ割合の引き上げを含め介護報酬等の改定が行われてきたことを総合的に判断し廃止したもので、その制度の復活は考えておりません。

④事業所の倒産が増えれば必要な介護が提供できません。市が責任をもちへルパー派遣できるよう福祉サービス公社を復活すべきではありませんか。

(健康福祉局長)
 財団法人広島市福祉サービス公社は、ホームヘルプサービスを実施する団体として平成7年に設立されましたが、介護保険制度の開始から7年が経過し民間事業者の参入が進み、介護ニーズに対してサービスを安定的に供給できる体制が整備されたこと、また、本市が多額の補助金を出して当該法人を存続させなければ、介護サービスを提供できない状況ではなくなったことから、平成20年3月末をもって解散しており、その状況は変わっていないことから福祉サービス公社の復活を考えてはおりません。

⑤過去5年間で、訪問型サービスを中止した事業所数、閉鎖休止の件数、ヘルパー有効求人倍率、ヘルパー人数の推移、居宅介護事業所の休廃業数とケアマネジャーの推移、一人のケアマネジャーが担当されている要介護者数ついてもお尋ねします。

(健康福祉局長)
 訪問介護事業所について、サービスを休止している市内の事業所数は、令和元年度が22事業所、2年度が20事業所、3年度が13事業所、4年度が7事業所、5年度は6事業所でした。
 また廃止・取消を行った市内の事業所数は、休止の事業所と重複するものも含め、令和元年度は25事業所、2年度は17事業所、3年度は17事業所、4年度は19事業所、5年度が17事業所でした。
 次に、訪問介護員につきまして、全国の有効求人倍率は、平成30年度が13.1倍、令和元年度は15.0倍、2年度が14.9倍、3年度が14.8倍、4年度が15.5倍でした。
 また、全国の訪問介護員数を基に、全国と本市の訪問介護事業所数の割合から算出した本市の訪問介護員の数は、平成30年度は7087人、令和元年度が6511人、2年度が6638人、3年度が6763人、4年度が6551人となります。
 次に、居宅介護支援事業所について、サービスを休止している市内の事業所数は、令和元年度は26事業所、2年度が27事業所、3年度が25事業所、4年度が16事業所、5年度が19事業所でした。
 また廃止・取消を行った市内の事業所数ですが、休止の事業所と重複するものも含め、令和元年度が24事業所、2年度が23事業所、3年度は21事業所、4年度は14事業所、5年度は16事業所でした。
 最後に、ケアマネージャーにつきまして、広島県の登録者数は、令和元年度が1万9345人、2年度が1万9491人、3年度は1万9666人、4年度は1万9903人、5年度は2万179人でした。
 またケアマネジャー1人当たりの介護サービス利用者なんですが、介護サービス利用者数を介護支援専門員の従業者数で除した数となります。令和元年度が27人、2年度が28人、3年度が29人、4年度が30人、5年度は30人でした。

⑥国の24年度予算の軍事費は約8兆円です。国に対し、軍事でなく暮らしに予算を充てて介護保険の国庫負担割合を増やし、保険料・利用料の軽減、介護報酬を抜本的に引き上げるよう求めるお考えはありませんか。

(健康福祉局長)
 本市では保険料および利用料の軽減につきまして、介護保険制度の持続可能性を高めるため制度設計の中で負担と給付のあり方を適切に検討するよう、これまでも他の政令指定都市等と共同して国に要望してきており引き続き国の動向を見据えつつ、必要な必要に応じて働きかけを行っていきたいと考えております。

⑦10期の介護保険の改定では利用料の2割負担の対象者拡大、要介護1・2の生活援助サービスの保険外しなどの改悪案が出されていますが、生活援助が介護保険事業から外されたら、親の介護のための「介護離職」の増大とともに、介護サービス受けられず「在宅放置」が広がることになります。国にこれ以上の改悪を止めるよう求めるべきではありませんか。

(健康福祉局長)
 国では、介護保険の利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しのほか、要介護認定が軽度の方への生活援助サービス等に関する給付のあり方などにつきまして、令和9年度からの第10期介護保険事業所事業計画期間の開始前までに検討を行い、結論を得たとしております。
 本市としては、保険者としてその動向を注視するとともに、保険者および被保険者にとって大きな影響を与えるような改正内容につきましては、あらかじめ保険者の意見を聞きながら内容を検討するよう、これまでも他の政令指定都市等と共同して国へ要望してきたところであります。今後も今後動向を踏まえ、対応してまいります。

【再質問】
(中原ひろみ)
 それから介護保険ですが、国が6月5日の衆議院厚生労働委員会で全国から抗議の声が殺到してね、訪問介護の報酬改定引き下げるのはあいならんという抗議のもとに、異例の全会一致での議決をされております。
 それは介護障害福祉事業者の処遇改善に関する決議というわけですね。報酬の引き下げの撤回等、報酬の再改定をという中身なんです。
 この異例の決議はやはり全国で訪問介護の報酬の引き下げがいかに大変な事態になるかということの象徴です。ですからこの国会の決議を後押しする形でですね、ぜひ広島市も国へ報酬引き上げよと言うべきだと思いますがいかがでしょうか。

(健康福祉局長)
 国に対して要望の声が多数寄せられているということですけれども、国におきましては訪問介護の関係者からですね、事業を継続の可能性の低下を懸念する声もあることから、その介護報酬改定の影響等についての調査を行うというふうにしていると聞いております。
 その上で加算取得に向けた工夫などを行うなど必要な取り組みを進めるというふうに考えされております。
 本市としましては、これまでも適切な報酬単価の設定や処遇改善拡大などにつきましては、国に要望してきておりますけれども引き続きこうした国の動向や、事業者の声を聞きながら必要な働きかけを行っていきたいと思います。
 本市としましては、質の高い介護サービスを安定して提供できる体制作りを推進していくためには介護人材の確保定着を図ることが不可欠であるというふうに考えておりますので、引き続き加算の取得であるとか、その他の支援事業を例えば社会保険労務士等による個別の助言指導などによって、加算取得を図っていただくということをそういったことがスムーズにいくように支援していきたいというふうに考えております。

(3)県立広島病院の移転について

(中原ひろみ)
 厚生労働省は、新型コロナの感染症5類移行後も、高齢者施設のコロナ患者は原則入院としながら、医療崩壊を回避するため高齢者施設内での療養を認めてきました。その結果、全国平均で死者の16.5%が、感染拡大と重症化リスクの高い高齢者施設で死亡しています。
 施設療養中に容態が悪化しても、入院を断る例もありました。感染症の体験から学ぶなら、広島県地域医療構想による病床削減でなく、適正な病床数と専門職の確保に努めることが必要です。
 現在の県病院には緩和ケア病棟が19床ありますが、新病院には整備しない方針です。県病院に統合されるJR病院・中電病院と合わせると40床もの緩和ケアが消えるのです。
 終末期医療は医療保険から外すという国の方針に沿ったものだといわざるを得ません。
 県は市民との交渉の場で、脳梗塞など命に直結する三次救急以外の入院は在宅でお願いしますと言い切りました。新病院建設による病床削減は、患者の追い出しです。入院する病床がなければ入院できず、医療費抑制につながるということでしょう。
 多くの高齢者世帯は、在宅介護ができる環境にある人は少なく、訪問介護が崩壊寸前では、介護サービスも使えず、人としての人権が脅かされる事態が容易に想像できます。
 県は病院跡地に健康相談、検査機能、持病・慢性疾患の継続的な医学管理を整備するとし、地域が望む病院を整備すると言いません。
 こんな中身では、地域医療は守れません。県病院が北口に移転すれば、医療へのアクセスが困難になります。島しょ部からの患者には遠すぎて通院できません。
 県病院は、急な出産や困難事例、未熟児にも対応してきた地域の安心の核でした。地域から安心を奪う県病院移転はどのような理由にせよ納得できるものではありません。
 跡地に緩和ケア病棟や産科を残すとともに、一次・二次救急を受け入れる有床の自治体病院を整備し、市民・県民の命を守る責任を果たすよう県に求めるべきではないか。

(保健医療担当局長)
 県の新病院計画は、本市が目指す質の高い効果的効率的な医療提供体制の構築に資するものであると考えておりますが、その一方で、現在の県病院周辺の地域の方が病院の移転についての不安を感じておられることは十分に理解しているところであり、本市としてはこれまでも県に対し、地域住民に誠実に対応し、理解が得られるよう求めてきたところでございます。
 地域の方が病院移転後も必要な医療サービス等を受けることができる体制のあり方については、現在県で検討していると承知しており、今後もその検討状況を注視しながら、県に対し、地域住民への丁寧な対応を求めてまいります。

(4)舟入市民病院の子ども救急について

(中原ひろみ)
 また、地域医療構想では舟入市民病院から子ども救急を新病院に移すことになっています。しかし「舟入・こども病院」が2003年に24時間・365日の診療体制を確立させたのは長年の市民運動に行政が応えたものです。
 子ども病院を求める市民運動は、1993年に未熟児で生まれた赤ちゃんの収容先が見つからず、たらいまわしにされた結果、亡くなるという最悪の事態を契機に始まり「生まれた命を大切にしたい」と15年にも及びました。すなわち、舟入病院の子ども救急は、市民と医療従事者の願いが実った医療体制なのです。県の地域医療構想に乗じて舟入病院からこども救急を無くすのは市民の願いを踏みにじるものと言わざるを得ませんが、市の見解をお尋ねします。
 舟入病院の子ども救急は年間に、約4万人が利用しています。子どもは容態が急変することがあり、身近な場所に医療があることが必要で、広島駅北口では西部方面からのアクセスが難しいとの声が多数寄せられています。
 これらの市民の声を受け止めるなら、舟入市民病院にも子ども救急を残すべきではありませんか。市のお考えをお聞きします。

(保健医療担当局長)
 本市では県の新病院計画において、限られた医療資源を集約し、1次救急から3次救急まで全ての小児患者に対して高度かつ迅速な対応が可能になるなど、地域の小児医療機能の向上が図られることから、舟入市民病院の機能を新病院に移管することとしたものでございます。
 また、新病院の立地については、本式において総じて考えれば、交通の利便性を踏まえたものであると考えております。

【再質問】
(中原ひろみ)
 一つ答弁もれというふうに私は受け止めましたけれども、舟入病院の子ども救急です。
 これは15年にも及ぶ、生まれた命を大切にしたいという市民運動が実ったというふうに紹介しましたが、それについての評価といいましょうか、市の位置づけについてはお答えがなかったように思うんですがあとまた聞かせてください。

(保健医療担当局長)
 子ども専門の病院をつくるということで、過去に請願が出て、たくさんの署名があったということも承知をしておりまして、設置されて以来は長年市民にも定着して重要な役割を担ってきたものというふうに認識しております。
 その上で、この度の新病院につきましては、機能移管することで全ての小児患者に対して、より高度かつ迅速な対応が可能になるということで市域の小児医療機能の向上が図られるということで、移管をすることにしたものでございます。

3.子育て支援について
(1)子ども・子育て支援金制度について

(中原ひろみ)
 国は、子ども・子育て支援法を改定し、2028年度までに児童手当の拡充などをすすめるとしています。
児童手当の所得制限撤廃は、「子どもは社会が育てる」という理念に照らして評価できるものですが、「少子化」を招いたこれまでの政策への反省もなく、国の負担を大幅に減らし、支援金や社会保障費削減で3・6兆円の財源を国民から徴収しようとしていることは大問題です。
特に、「こども・子育て支援金」を医療保険に上乗せして徴収するやり方は禁じ手というべきものです。
 支援金の負担額は、加入する保険で異なります。こども家庭庁が試算した被保険者1人当たりの平均月額負担額が最も高いのは共済組合の月950円で、年額1万1400円の負担増です。
 国民健康保険は1世帯当たり月600円、年間7200円、後期高齢者医療は月350円、年4200円の負担増となることが明らかになりました。今でも負担が重い75歳以上の後期高齢者や市町村国保は、現在の保険料に対する負担増額の比率が高く、公正ではありません。今まで以上に矛盾や格差が広がります。
 国は、国保と後期高齢者医療制度には低所得者向けの「負担軽減措置」を設けるとしています。しかし、2024年度の公的年金額は物価上昇率に追い付いておらず、年金は実質減です。物価高で生活が逼迫するなか、暮らしが一層脅かされることは必至です。
 だいたい日本は、所得に対する税金や社会保険料の負担を示す「国民負担率」が高すぎます。1970年は24.3%ですが、2022年度は47.5%と所得の半分が税金・社会保険料で消えています。
支援金は新たな「増税」であり、暮らしを一層圧迫するものですが市の見解をお尋ねします。

(こども未来局長)
 子ども・子育て支援金制度については、国の説明によると、「少子化対策に充てる費用について、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く拠出していく仕組み」であり、「徹底した歳出改革等によって社会保険負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で子ども・子育て支援に要する支出の財源とし、新たな負担は生じさせない」としています。
 本市としては、この説明が国政の場における議論を踏まえてのものであると承知していますが、国の責任において講じられ、本市がそれを実施する役割を担う施策については、その円滑な制度運用に向けて取り組み、子どもや子育て世帯をしっかりと支援していく必要があると考えています。

(中原ひろみ)
 そもそも少子化は国の存続に関わる課題です。よって抜本的な子育て支援のための財源は、医療保険に上乗せして徴収するのでなく、大企業・富裕層に応分の負担を求める税制へと変えて財源を確保することが必要です。社会保障費削減で生み出すという1・1兆円は今年度の軍事費増額分と同じです。税金は、軍拡でなく暮らしに使うべきだと自治体として国に物申すことが必要ではありませんか。市の考えをお聞きします。

(こども未来局長)
 先ほどご答弁しましたとおり、本市の役割は、国の責任において講じられた政策が、子ども・子育て世帯の支援に確実につながるよう、円滑な制度運営に向けてしっかりと取り組んでいくことであると考えています。
 なお、経済的負担の軽減など全国共通の課題については、国の責任において統一的に政策が講じられるよう、これまでも他の指定都市と共同して、財政措置の更なる拡充等を要望しているところです。

(中原ひろみ)
少子化の原因は、非正規雇用や長時間労働、低賃金です。若い世帯は子育てにお金がかかりすぎて出産を諦めています。今こそ、最低賃金の大幅な引き上げを始め、正社員が当たり前の社会に転換し、若者の生活不安・将来不安を解消すること抜きには「少子化対策」をうたっても前には進みません。
そのためには、行政が率先して会計年度任用職員の正規化や、正規・非正規に限らず外郭団体の職員の賃上げ・待遇改善に力を尽くすべきではありませんか。市の見解をお尋ねします。

(企画総務局長)
 本市では会計年度任用職員制度を導入する際に、全ての非常勤職員および臨時職員について、職の再設定を含む抜本的な見直しを行い、個々の業務の内容や責任の程度などを踏まえた職務の性質により、正規職員と会計年度任用職員の役割分担の整理を行いました。
 今後も正規職員と会計年度任用職員の役割分担のもと、適切な任用形態の職員を組み合わせながら、効果的かつ効率的な執行体制を確保していきたいと考えております。
 また、公益的法人等の職員の給与等勤務条件につきましては、各団体において、職員のモチベーションの向上や人材の確保に意を用いながら、市職員との均衡や団体の経営状況等を踏まえて設定するよう、引き続き適切に指導調整を行ってまいります。

(2)子どもの生活に関する実態調査結果について

(中原ひろみ)
 市が令和5年8月に実施された広島市子どもの生活に関する実態調査結果では、ひとり親世帯や暮らしの状況が苦しいと回答した世帯においては、保護者のうつ・不安障害相当と考えられる割合が6年前の調査と比べて増え、20%以上と高くなっています。この要因はどこにあるとお考えですか。生活困窮世帯は解消されつつあるのか深刻になっているのか市の受け止めもお聞きします。

(こども未来局長)
 今回と平成29年度の前回の調査結果を暮らしの状況で比較したところ、小学5年生および中学2年生の各世帯全体では、「ゆとりがある」と回答した割合が増加し、「苦しい」と回答した割合が減少しています。
 その一方で、収入水準の低い世帯やひとり親世帯では、他の世帯と比べて暮らしの状況が「苦しい」と回答した割合が高く、依然として厳しい生活環境にあるものと受け止めています。
 こうした世帯では、頼れる人が「いない」と回答した割合が高い傾向が見られることに加え、食料や衣服は買えなかった経験や公共料金の未払い経験がある割合も高い傾向が見られました。
 こうしたことから、頼れる人がおらず孤立化した子育て世帯が、経済的に厳しい状況にある中で、昨今の物価高騰の影響を受けたことなどにより、前回の調査と比べて、「うつ・不安障害相当」と考えられる保護者の割合が高くなったのではないかと考えています。

(中原ひろみ)
 また、市に求める施策として、最も多いのは「子どもの教育・保育にかかる費用の軽減などの支援」です。この願いに応えるなら、就学援助制度の所得要件の緩和、放課後児童クラブを無料に戻す事、給食費の無償化、子ども医療費補助制度の所得制限の撤廃など、子育て世帯の経済的な負担をなくし安心して子育てできる支援を実施すべきと思いますが、市の考えをお聞きします。

(こども未来局長)
 今回の調査結果と同様に、令和3年の国の調査や、令和5年の県の調査においても、収入水準の低い世帯やひとり親世帯においては、食料や衣服が買えない経験をした割合が高くなっているなど、厳しい生活環境にある傾向がうかがえます。
 本市では、今年度、国が実施する予定の児童手当の拡充について、円滑な制度運営に向けて取り組むとともに、昨今の物価高騰による経済的負担の増加等を踏まえた多子世帯の保育料・副食費の負担軽減等、支援の充実に取り組むこととしています。
 また、子育て世帯への経済的負担の軽減は、本市に限らず全国共通の課題であることから、これについては、地域によって格差が生じることがないよう抜本的な解消が必要であると考えており、国の責任において統一的な施策が講じられるよう、引き続き、他の政令市と共同して国に要望していきたいと考えています。

【再質問】
(中原ひろみ)
 それから子育て支援ですがね。あの児童手当があるからということでしたけれども、これは一つの支援策には間違いありませんが、この財源はね、これはさっき言ったように、新たに全世代が負担するんですよ。国民が負担するんですよ。国会の質疑でも、国は3歳未満のこれまでの児童手当持ち出し0ですよ。国は持ち出さずに、その減らした分は全世代の国民でお願いしますっていう、広く負担してもらう、冗談じゃないですよ。まずは国がきちっと責任持つべきでしょう。そこんとこがあやふやになったんじゃ命を守る自治体の役割を果たせません。
 それで広島市をこの間振り返りますとね、就学要件が引き下がりました。これ1000人の子どもが対象外になったということですよ。それから放課後児童クラブは有料化されましたね。広島県は未だに子どもの医療費は、未就学児までだったと思っております。
 お粗末の極み。国もお粗末。県も市もということになると、一体子どもを育てる人たちはどこに希望があるのか。SNSを見ますとね、「子育て罰」というのが出てくるんですよ。それは何かというと、子育てにお金がかかると、それは産んだあなたの責任だと、貧しいのに産んだんだから、子育てにお金がかかって苦労するのは当たり前というそんな意味のようです。裕福でない世帯が子どもを持ったことに罰が与えられているんだというような中身まで飛び出している。これは私は非常に悲しい思いでこの発信を受け止めましたけれども、やっぱりこれは追い詰められてるんですよ。子育て世帯が。だからうつ・障害相当というような親が増えているということなんでしょう。
 やっぱりこれは政治の責任ですよ、追い詰めてきた政治の責任、ここで一気に解決をしてですね、希望が持てるようにしてあげてほしいと思います。
 そのためには改めてですね、広島市で言えばこの生活実態調査の自由筆記欄はたくさん書いてありましたね。私も少し見てみますと、医療費を減らしてほしいと。年収に関係なく、医療費を助成してほしいというようなことは書かれております。
 東京は無料なのに、なんで広島では負担があるのかというようなことも書かれていて、やはりこの際医療費を無料にするというところへ大胆に踏み込んでいただきたいと思いますが、その点の検討についてお聞きしたい。

4.パスピー廃止について

(中原ひろみ)
 広電が来年3月でパスピーを廃止し、モビリーデイズという新しいシステムの導入に対し、市民から利用が難しくなるとの不安の声とともに、広電は市から低床路面電車の導入支援や、広島駅の2階に電車を乗り入れる巨大事業により、広電の利益につながる多額の税金投入を受けているのに、なぜ、市民サービスを後退させるのかと抗議も届いています。なぜパスピーを廃止するのか。

(道路交通局長)
 パスピーは平成20年のサービス開始から約16年が経過し、システムの老朽化による大規模な更新が必要となる中、県内のバス事業者等で構成するパスピー運営協議会において今後の対応を検討した結果、システム更新等に多額のコストが必要となることから、パスピーを廃止することとしたものです。

(中原ひろみ)
 過去3年間に市が広電に投じてきた低床路面電車の導入支援の総額もお聞きします。

(道路交通局長)
 本市が行っている低床路面電車の導入支援については、公共交通における利用者の移動円滑化を図ることを目的にするものであり、広島電鉄の利益につなげることを目的に行っているものではありません。
 これは高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、いわゆるバリアフリー化法に基づく基本方針において、公共交通に係る車両等の移動円滑化については、国や地方公共団体、交通事業者等が連携協力し実施すること、とされていることから、各事業者が低床路面電車やノンステップバスの車両を購入する際に、国の補助に合わせて、本市も補助を行っているものです。
 その上で、広島電鉄は、過去3年間で低床路面電車を3編成導入しており、これに係る車両購入費14億円に対し、本市は、その約18%にあたる2億5100万円を補助しています。

(中原ひろみ)
 広島市は、広島型公共交通システムの構築により「市民にとっての使いやすさ」を目指していますが、広電のモビリーデイズは社内でチャージができません。
イコカを利用する場合、他のバスでは読み取り機にタッチするだけで支払えますが、広電グループのバス・電車では、簡易型イコカなので乗車時に整理券をとるか、降車時に電停や停留所名を運転手に告げる必要性も発生します。アストラムラインを始め、バス会社でやり方がちがうのは混乱のもとですが、市の受け止めはいかがですか。

(道路交通局長)
 本市ではパスピーに替わる新たな乗車券システムの導入にあたり、システムの一本化を目指して各事業者と調整を図ってきましたが、各社の経営判断として、「全国共通のサービスの提供やJRなど鉄道系交通機関との連携」を重視すべきという考えと、「広島の特性に応じたきめ細かく機動的なサービスの提供」を重視すべきという大きく2つの考えがあり、一本化には至りませんでした。
 本市としては、こうした各社の考えを尊重しながらも、全体としていかにして利用者の利便性を確保するかという観点に立って、事業者と調整した結果、路面電車および路線バスにおいてはモビリーデイズとICOCAの双方を設置する方針となりました。
 当面はこの形でサービスが提供されることになり、市民の皆様にはご不便になることもあるとは思いますが、将来的には一本化され、利用者にとって高いレベルのサービスに移行するまでの過渡期における一時的な対応だと考えております。

(中原ひろみ)
 来春からの法人化を契機に、アストラムラインも含め、市内すべての交通事業者で同一の支払い方法にして、より便利になるよう市がイニシアチブを発揮すべきではありませんか。 
(道路交通局長)
 先ほどご答弁しましたように、新たな乗車券システムの導入については、これまでも本市が調整役となって利用者の利便性確保に向けて取り組んできたところであり、今後とも、将来の一本化に向け、本市がリードし国等の関係機関とも協議しながら、事業者とともに検討を進めていきたいと考えています。

(中原ひろみ)
 視覚障害者の方から意見が寄せられました。これまでは障害者専用のパスピー一つで市内の全てのバスに乗れ、読み取り機にタッチするだけで障害者割引も受けてきたが、パスピーが廃止されると、この利便性はすべて失われてしまう。アストラムラインから電車・バスに乗り換える場合、その都度、カードを使い分けることになり、一人で通所することが難しく、外出することが億劫になるとの訴えです。
 令和6年4月1日から、民間事業者に対し、障害のある人もない人も共に生き共生社会の実現を目指し「合理的配慮」の提供を義務付ける「改正障害者差別解消法」が施行されるなかで、広電が導入するシステムは障害者への合理的配慮や、広島市障害者計画が目指す「障害者が外出しやすいまちづくり」にも反すると考えますが、市の見解をお聞きします。

(健康福祉局長)
 改正障害者差別解消法により事業者に義務化されました「合理的配慮の提供」とは、個々の場面におきまして、障害のある方から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合に、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を行うことであり、本システムの導入は「合理的配慮」の観点で議論するものには当たらないと考えております。
 また、本市では、障害のある方の「外出しやすいまちづくり」を推進するため、バリアフリー法等に基づき、民間建築物や公共交通機関等のバリアフリー化に向けた計画的な整備・改善の誘導に努めていくこととしております。
 これから導入される乗車券システムは、今後利用者の利便性の向上を図りつつ、将来的な一本化に向け検討を行っていくと伺っており、「外出しやすいまちづくり」に反するものとは考えておりません。

(中原ひろみ)
 障害者公共交通機関利用助成制度では、利用実績に応じて年間最大6000円の助成がされています。この助成制度におけるパスピー利用者数とパスピー廃止後はこの制度はどうなるのかについてお聞きします。

(健康福祉局長)
 本市では、障害のある方の社会参加の促進と福祉の増進を図るため、身体障害者手帳等を所持されている方に対し、年間6000円相当額を限度として、市内の各公共交通機関の利用に対する助成を行う障害者公共交通機関利用助成制度を実施しております。
 そのうちパスピーを選択している方は、令和6年3月末時点で約1万5000人となっております。
 パスピー廃止後は今後導入される新たな乗車券システムに対応する形で本制度を継続することとしており、交通事業者等と協議・調整を進めているところであります。
 なお、本制度を利用される方には、今後改めて、新たな乗車券システムに移行することや、その利用方法、助成方法について、お知らせする予定としております。

【再質問】
(中原ひろみ)
 それからパスピーですけどね、請願も出たようですから詳しくは、委員会でも質疑をしたいとも考えるんですが、ここではもう一度、広島市の姿勢を問いたいと思うんです。
 先ほど障害者の方が、二つのパスピーを二つのカードを使い分けることが大変難しいんだと、そのことは結局サービスの低下だし、外出を困難にするという訴えがあったというふうなことを紹介しました。
 にもかかわらず、それは合理的配慮に欠けはないんだと、そんなものは合理的配慮とは言わないんだと、これから外出はしにくくならないんだというような答弁でしたでしょ、もうおかしいでしょう。そんなことではですね、もうこれは広島市が国際平和文化都市としてですよ。世界に名を馳せることが恥ずかしいというふうに、私は世界レベルからずいぶん後退したんじゃないんですか。その辺の市の姿勢をまず確認しておきたいと思います。
 差別解消法の理念は、共生社会に向けてハードであろうがソフトであろうが、努力義務であろうが、義務であろうが、目指す方向も同じなんですから、障害がある人もない人も、共生社会に向けて社会の意識を変えていこうというわけでしょ。その辺の市の態度がどうなのか、改めて答弁を求めたいと思います。

(道路交通局長)
 今回のシステムにつきましては、ご答弁申し上げましたように、パスピーが老朽化したということで、後継のシステムをどうしてもやらなきゃいけないということで、この新しいやり方になったものでございます。
 先ほどこの議員の方からは一例として、今度はなかなか使いにくいような方もいらっしゃるというようなご指摘もありましたが、確かにそういう方もいらっしゃいますが、一方で、例えば今までは機械とか車内でしかチャージができなかったものが、スマホでできたりとか、あるいはICOCAカードであれば、JRと例えばアストラムラインとかっていうのはICOCAでそのまま使えるとか、一方で便利になる方もいらっしゃるというようなことになっています。
 ですので、そういう意味でこのある一面だけを切り取って全てのシステムやりかえるというのは、合理的配慮の観点で議論するものではないという意味で、健康福祉局長は答えたということでございます。
 しかしながら、確かに使いづらいという方がいらっしゃいますので、合理的配慮という意味では、切り替えにあたって、そういう方に丁寧に説明したり、あるいはサポートをしたり、そういうことできちんと事業者と一緒に取り組んでいきたいというふうに考えております。

(健康福祉局長)
 以上のご質問があったと思いますのでお答えいたします。まず1点目の合理的配慮についてなんですが、これもう一度確認させていただきますと、どういったものが今回事業者に義務化されたかということなんですけれども、個々の場面において、障害のある方が何らかの配慮を求める意思の表明があったときに、負担になりすぎない範囲で社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を行うというもので、例えば具体的に言えば、障害のある方が改札口等でお困りの際にですね、事業者の方からお声がけしてお支払いを支援することなどが考えられると思います。
 こうしたものが合理的配慮になるわけなんですが、一方で障害者差別解消法第5条では、不特定多数の障害者の方を主な対象として事前に行われる改善措置を環境の整備というふうに位置づけております。
 この環境整備なんですけれども、合理的配慮を的確に行うための改善措置ということになりますけれども、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や、障害者との関係が長期にわたる場合などには、その環境の整備によって、中長期的に事業者のコスト削減効率化に繋げることが重要であるというふうにされております。
 今回新しく導入されます乗車券システムで、利便性の向上を図りながら、将来的な一本化に向けて検討を行っていくと伺っておりますので、今後そういった合理的配慮を的確に行うために必要な環境整備が図られていくものというふうに考えております。

【再再質問】
(中原ひろみ)
 これはやはり障害のある人に、新たな障害を持ち込むことになるのではないかというふうに思うんですが、それをもう一度聞きたい。

(健康福祉局長)
 その利用方法をどういうふうになるかということは今事業者と調整を進めておりますけれども、引き続きパスピーと同様の方法でですね、利用あるいは助成ができるような形で進めていきたいというふうに考えております。
 またこれに限らず本市としては、障害のある方からの要望やご意見等を全庁的に共有しながら、具体的な施策を反映する際には、関係部局と連絡を図りながら、引き続き外出しやすいまち作りの推進をしていきたいというふうに考えております。

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