議会での質問・答弁

2023年02月21日

2023年第1回 2月定例会・予算特別委員会 総括質問 きせ康平

1.平和都市広島としての役割について
2.中央図書館等の再整備について
3.子育て支援について
・所得制限について
・こども医療費補助制度について
・学校給食について
・放課後児童クラブについて
4.可部地区学校給食センター拡張建替えについて


1.平和都市広島としての役割について

(きせ康平)
 日本共産党のきせこうへいです。党を代表して総括質問を行います。
 岸田首相が、2022年末に突然、敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換え、軍事費を2倍にすると国会にも図らず、閣議決定しました。
2月6日の予算委員会では浜田防衛大臣が「日本が攻撃されていなくても、集団的自衛権を行使して先制攻撃ができる」「攻撃を受けた報復で、日本は大規模な被害を受ける」と答弁しました。これは政府自身が防衛の基本方針としてきた専守防衛に反します。日本を守るものではなく、まさに日本を危険に導くものです。
 全国に54基もある原発が、もしも攻撃されたら、日本は住めないところになります。自衛隊が基地司令部の地下化を進めているのは、反撃を受けることを想定しているからだと思います。
 日本が軍事費を2倍にすれば、現在世界第9位の軍事力が、第3位の軍事大国になります。長距離巡航ミサイル・トマホークや極超音速兵器を保有し、軍事力を強化すれば、軍事的緊張を極限にまで高め、やがて戦争を呼び込むことになります。
 戦争の準備ではなく、平和の準備こそ必要です。日本共産党は、憲法9条を持つ日本こそが、東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力し、日本、アメリカ、中国、ロシアなども参加する東アジアサミットという地域のすべての国を包摂(ほうせつ)する平和の枠組みを発展させ、東アジアを戦争のない地域にしていくイニシアチブを発揮すべきと提案し、岸田首相も東アジアサミットは大事だと否定していません。戦争はしないと宣言した憲法を持つ我が国がやるべきことは、アメリカの戦略の枠にとらわれない独自の平和外交を展開することです。
 世界に核兵器廃絶と世界恒久平和を訴えてきた平和都市ヒロシマとして、日本がアメリカの戦争に参加するような政策を見過ごすことはできないのではないでしょうか。戦争が原爆投下につながったことを訴えてきた広島市の市長として、政府のこの決定にはっきりと異議の声をあげるべき時ではないかと思います。市長の明確な意思表示の答弁を求めます。

(市長)
 吉瀬議員のご質問にお答えします。平和都市広島としての役割についてのご質問がございました。
 私は市長に就任して以来、広島市の市長は広島平和記念都市建設法により恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴として、広島平和記念都市を完成することについて、不断の活動をしなければならないとされていることを踏まえながら、被爆地広島の使命として被爆者の平和への思いを根底に世界の都市や多様な主体との連携を図りながら、市民レベルで平和意識を醸成し、世界の為政者が対話を通じた信頼関係をもとに安全を保障し合う環境づくりに貢献すべく取り組んできているところであります。
 そうした中で、昨年12月に安全保障関連3文書が閣議決定され、本年1月には記者総理が施政方針演説において、憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国としての歩みをいささかも変えるものではないと述べられたものと承知しております。
 こうした政府による外交や防衛、安全保障など国家としての存立に関わる政策の決定については国民の生命と財産を守るという視点や自国の利益を最大にするという視点に立って十分に検討がなされ、国民の多くが納得できるようにすることが極めて重要であると考えているところであります。
 こうしたことから、日本政府には歴代内閣が踏襲してきた日本国憲法の前文にうたわれている恒久の平和を念願するという根幹的な理念を堅持し、広島の思いをしっかり受け止めた上で、国際社会が対話による信頼醸成に一層努め、相互不信にとらわれることのないよう、あらゆる外交努力を尽くしていただきたいと考えております。その他のご質問については安定局長から答弁いたします。

2.中央図書館等の再整備について

(きせ康平)
 次に、中央図書館等の再整備について伺います。
 2022年3月、当初予算のなかの中央図書館等の移転予算を市議会が承認した際に全会一致で決議した付帯決議の第2項目では、「図書館整備方針の作成後に、現地建て替え、中央公園内等での移転建替え、エールエールA館への移転、それぞれを詳細に比較検討できる資料を作成して、各資料について議会・利用者・有識者などの関係者に丁寧に説明し、理解していただいたうえで、移転先などを決定すること。」としています。具体的に示された、議会、利用者、有識者についてですが、市議会では今なお反対の議論があり、利用者・市民へのアンケート調査では賛成の意見よりも反対の意見がはるかに多く、市が有識者だと言われる図書館協議会でも社会教育委員会議でも、明確に理解できないと意思表明された方もおられことから、とても納得を得たという状況ではありませんでした。
 つまり、市長が記者会見で述べられたような、「付帯決議に沿った対応ができた」とはとても言えない状況に、今でもあると考えます。
 そもそも、この問題は2021年9月に突然、中央図書館等をエールエールA館に移転させると発表し、そのわずか4か月後には移転のための予算を出した、拙速で強行的なやり方に問題がありました。いったん議会の付帯決議で延期のようなことになりましたが、これまでの経緯を考えるとエールエールA館に移転させるとの市の考えは、いささかも変える気がなかったように見えます。
 実際、現地建て替えなどの3つの案を、項目を立てて比較検討した結果という文書を見ると、エールエールA館への移転の方が優位だという結論ばかりでしたが、その理由の多くは願望のようなもので根拠としては成り立たないものだったと思いますし、多くの市民のみなさんも「有識者」の方々もそう思われたのではないでしょうか。そのようなものを示されて納得せよと言われても、そういうわけにはいかないという声が出るのは当然です。
 結局のところ、エールエールA館に移転するという当初からの市の考えを変える気はなく、議会の付帯決議があるので、予算の執行を10か月間遅らせただけということではないかと思います。
 もう一点、市議会がつけた付帯決議には、「エールエールA館への移転整備、現地建て替え、中央公園内での移転建て替えの3案について、比較検討できる資料を作成して」、としていますが、実際には比較検討できる資料から中央公園内での移転建て替え案が除外され、それ以外の2案についての比較検討資料しか提出・説明がなされませんでした。
 しかし、これらの敷地は民間企業との契約や今後の計画などいろいろ制約があるとはいえ、少なくとも渝華園予定地とその西側のスペースの活用や、青少年センターの敷地の活用は大いに検討の余地があったと思われますが、すべての候補地を「事実上困難」との一言でくくって、検討の対象から除外してしまいました。この点を考えても、付帯決議をクリアしたとは言えないと思います。

 質問です。移転のための予算が議決されたことと同時に議会の総意で付帯決議がつけられ、条件付きとなったことそのものについて、市はどのように受け止めたのでしょうか、お答えください。

(市民局長)
 図書館等の移転整備に係る予算執行は認められており、本市としてはその執行に当たって、議会・利用者・有識者など関係者から広く意見を聞いた上で、広島市立図書館再整備方針を策定し、その後に再整備候補地の比較検討資料を作成して、関係者に説明するという手続きが課せられたものと受け止めております。

(きせ康平)
 また、3つの案の比較検討の結果、商業ビルへの移転の方が不利な状況になった場合に、これをあきらめるという選択が、市にとってありえたのかどうか、お答えください。

(市民局長)
 中央図書館等の再整備につきましては、これまでの議会での質疑において、具体的な移転の理由を提示され、それで間違いないかとの質問に対し、間違いないことを強調するために本市の判断が客観的に成立し得ないものであることが明確になるようであるならば、見直すことになるということを申し上げているところであり、再整備候補地の比較検討を行った結果においても、中央図書館等をエールエールA館に移転することが最も合理的であることは明らかになったところであり、議会をはじめとした関係者に丁寧に説明するという付帯決議に沿った手続きを行うことで進めていく方向性は変わっておりません。

(きせ康平)
 日本共産党市議団を含め、商業ビルへの移転には今でも反対だという声が市議会には厳然とありますが、それとは別に、市が具体的に市民の意見を集めた結果でも、商業ビルへの移転の賛否は反対の方が圧倒的に多かったことから、市民は決して理解も納得もしていないと考えます。市としてはそれでもいいとお考えでしょうか、お答えください。

(市民局長)
 昨年の7月から8月にかけて実施した市民意見募集は、あくまで「広島市立図書館再整備方針(素案)」に記載した図書館に求められる機能やサービスに関して意見を求めたものです。
 しかしながら、再整備の場所など意見を求めていない個別の意見が多数あったことから、改めて付帯決議に沿ってしっかりと説明する必要があるものと受け止めたところです。

(きせ康平)
 次に、市は「有識者」とされた図書館協議会や社会教育委員会議の方々に説明をして意見も聞いたから、それで理解を得られたと言っているわけですが、そもそもこの二つの会議は、市の側の諮問に対して意見を述べるというのが役割であって、委員に「納得」をいただく場ではありません。いくら異論を述べる方が多くても、聞き置くだけの場です。この会議では、そういう場だということも言われました。だからこそ、市が言っている意味はわかったが「理解」しないとおっしゃる方がおられた。これは意見を聞くだけの場であるのに議会の決議にある「有識者」としてこの方々に説明をしたことに対する抗議だったのではないかと思います。
 市はなぜ、意見を聞き置くだけにできるこれら2つの会議ではなく、図書館に関する専門的な知見をお持ちの専門家の方々を集めて、そこで出された意見は市が出した方針にきちんと反映させることを前提とした専門家会議や審議会等の場を設置しなかったのでしょうか。
 市がまとめた整備方針は、市の内部職員だけで検討してまとめられたものですが、だからこそ市がまとめた整備方針をそうした専門家に検討してもらうのは最低限必要だったと思いますが、そうしなかったのはなぜでしょうか。以上2点についてお答えください。

(市民局長)
 本市の審議会である広島市立図書館協議会および広島社会教育委員会議は、いずれも中央図書館等に求められる機能等について意見を聴取するにふさわしい専門家を選任していると考えております。
 したがいまして、新たな会議等を設置する必要があるとは考えておりません。

(きせ康平)
 この問題の市の進め方は極めて拙速です。同時に、市の方針に賛成の人たちが市長に面会を申し出たら翌日には面会したのに、それより前に反対の人たちが面会を求めてもなかなか実現しなかったところにも、賛否を超えて幅広い市民の意見を聞こうという姿勢が感じられない広島市政の実態が、今回現れたと思います。平和都市の市政がこんな一方的なやり方で行われていいのか強い疑問があります。
 いずれにしても、議会の総意となった付帯決議はクリアできてはいないと思います。この点をどのようにお考えか改めてお答えください。

(市民局長)
 現時点において議会としての判断がうかがえているわけではございませんが、本市としては先ほどからご答弁しておりますように、付帯決議に沿って手続きを果たしてきたものと考えているところです。

(きせ康平)
 民主主義を貫こうとすれば一定の時間がかかります。とりわけ広島の成り立ちや被爆の歴史を背負い多くの市民の思いが積み重ねられた市民の財産を、一時的な「にぎわい」への貢献ではなく、広島市民の知の拠点として発展させるために、幅広い市民や専門家の知恵を集めたもっと慎重な検討が必要だと考えます。このことについて、市のお考えをお聞かせください。

(市民局長)
 中央図書館等の移転整備につきましては、中央公園の今後の活用に係る基本的な方針などについて意見聴取を行うため、令和元年8月に有識者会議を立ち上げ、議論を重ねるとともに、市民意見募集を経て、令和2年3月に策定した「中央公園の今後の活用に係る基本方針」において、耐用年数を迎える公共施設を必要に応じて集約しつつ、機能更新を図ることなどを検討することを明らかにし、こうした取り組みを着実かつ円滑に進められるよう庁内の関係部局において検討を開始すると共に、中央図書館のあり方や再整備の方向性について、市民アンケートを実施するなどし、市としてのまち作りの方向性をも踏まえた上でしっかりと検討を行ってきたところです。
 こうした検討状況等は、本市議会の都市活性化対策特別委員会や総務委員会に報告し、ご意見等いただくとともに、広島市立図書館協議会および広島社会教育委員会議の委員からも意見聴取を行っており、十分検討を行ってきていると考えております。

【再質問】
(きせ康平)
 説明の中で、理解を得たということもあったかと思います。けれども、今議会の中でも中央図書館等の移転反対の請願が2件出されています。やはり理解を得たとは言えない状況だと思いますが、この点について改めてご答弁お願いします。
 また、答弁の中で丁寧に説明していくという言葉がありましたけれども、理解を得ていくという言葉が一つもありません。説明するだけで理解は得られなくてもいいのかというふうなお考えか、この2点についてお聞きします。

(市民局長)
 理解できていない状況をどう考えるべきかということと、そしてあと説明するだけで理解を得るということが言われてないというご質問だったというふうに認識しております。
 これはちょっとまとめて申しますけれども、先ほどもご答弁申し上げましたように、まず我々としては今回の付帯決議、これに沿ってきちんとしたそれぞれ重ねた手続きを果たしてきていると。そういう中で、当然議員もこの付帯決議をご覧になっていらっしゃると思いますが、この関係者に丁寧に説明し理解していただいた上でというところについては、我々理事者としては理解していただく状況にあるという状況を作るということでございます。
 したがいまして、それを納得されるということは別だと。理解と納得とは別だということで、我々は理解していただく状況を作る。そういった状況でございます。

(きせ康平)
 理解と承認を得るのはまた違うものという話ではありましたけれども、それはちょっと横暴です。
 付帯決議の話もありましたけれども、付帯決議が全くクリアできてないというのが今の現状だと思います。市が専門家としている先ほどの2団体というのも、異論を上げてもやっぱりそれを聞き置くだけ、特にそれを反映させないというものでもあり、本当に説明しただけの場だと思います。
 可部給食センターについても、当事者の話を聞かない、専門家の話を聞かないということもありましたけれども、このどちらもまさに結論ありきの事業の進め方となっていると思います。
 市民の声を聞かないやり方はあまりにも横暴でひどいと思います。改めてどちらも有識者を集めた審議会など多くの検討会を行うことを求めて、質問を終わります。

3.子育て支援について
・所得制限について

(きせ康平)
 次に子育て支援について伺います。
 厚労省が発表した2021年に生まれた子どもは81万1604人で、過去最少を更新し、出生数の減少は6年連続です。2022年は80万人を割るという推計も出されました。内閣府が2020年度に行った「少子化社会に関する国際意識調査」によれば、日本が「子育てしにくい国」と答えたのも最多(61,1%)でした。日本の子育て予算は国内総生産(GDP)比で1・73%と、スウェーデン(3・40%)、フランス(2・88%)とあまりに落差がありすぎます。日本が掲げるべき目標は軍事費の倍増ではなく、子ども予算の大幅引き上げの早期達成ではないでしょうか。
 今、自治体レベルで「子育て支援策」を拡充する動きが相次いでいます。仙台市は、今年から子ども医療費助成の所得制限を撤廃し、横浜市も今年8月から所得制限や一部負担金を撤廃する予算が提案されています。東京都や福岡市では、第2子以降の保育料完全無償化も打ち出されました。さらに、東京都は、児童手当の18歳までの年齢拡充と所得制限の撤廃を発表しています。
 全国の自治体の中で先駆的に子育て支援に取り組み、人口を増やしている明石市は18歳までの子ども医療費助成・中学校給食無償化・第2子以降の保育料・公共施設利用料・おむつ定期便の5つの無料化を実施していますが、特筆すべきことはどれも所得制限がないことです。
 泉市長は所得制限を付けない理由を著書の中で、「所得制限で対象外とされる方々もすでに多額の税金や保険料を納めている。行政サービスの利用料をすでに税金として「前払い」「支払済み」だとしています。今の日本は、中間所得層とて楽ではなく、給与は上がらず、負担も重くなるばかり。ましてや子どもを産み育てることにはお金も不安も大きな負担。しっかり税金を払っているにもかかわらず、何の恩恵もない。これでは、子どもを産みたくてもためらってしまうと指摘しています。
 1月26日、衆院本会議場で代表質問に立った自民党の茂木幹事長は「児童手当の所得制限導入は誤りであった」と述べて大きな話題になっています。かつて、自民党は、民主党政権が行った所得制限を設けない子ども手当を「子育ては家庭の責任だ」と目の敵にしていたからです。そのため、政権復帰後、一番に所得制限を復活させました。「子育ては家庭の責任。自己責任だ」と言っている間に、日本の子育て支援の予算は、先進国で最低水準にとどまり、少子化に歯止めがかかりません。
 本市では、安心して子供を産み育てる社会の実現のために子育て支援策についてどのようにお考えですか。新年度予算の中で市独自の支援策の拡充はありますか。

(こども未来担当局長)
 本市では、未来を担う子どもの育成こそがこれからの広島の発展の姿勢になるという考え方のもと、子ども子育て支援策の推進に当たっては、少子化など全国共通の課題解決のために国において基本的な制度設計をした上で、本市の実情を踏まえつつ、こうした制度を着実に実行するという立場で国と一緒になって取り組んでいくべきであると考えています。
 したがって、市独自の支援策ではありませんが、令和5年度予算での主な拡充については、昨年4月に発生した園児死亡事案を受けて保育園の安全対策のため、防犯カメラの設置や生垣のフェンスの改修と加配基準の見直しを行い、障害児保育の充実を図ることとしています。

(きせ康平)
 子育て支援は、「子を持つすべての世帯」を対象に社会が支えるものという考えが重要です。そのため、所得制限はなくすべきだと考えますが、どのように認識されていますか。

(こども未来担当局長)
 先ほど答弁しましたように、子ども子育て支援政策については国の責任のもと、社会全体で推進されるべきものであることから、所得制限は子ども政策の強化に向けた経済的支援のあり方をしっかりと検討することの一環として行われるべきものであり、その検討はまずは国において率先してまた早急に行われるべきものと考えています。

・こども医療費補助制度について

(きせ康平)
 子ども医療費無料化は、40年来の住民運動とともに議会でわが党も拡充を求めてきました。今や「中学校卒業まで」助成・無料化する自治体が95%を超え、さらに、その半数が高校卒業までになり、日を追うごとに広がっています。
 国は、自治体の努力にこたえ、「ペナルティー」をなくし、国の制度として高校卒業までの医療費助成制度を決断すべきです。
2016年、市議会は「他の自治体と比べて遜色のない制度に」という決議を全会一致で上げましたが、いまだ、広島市には二つの遅れがあります。一つは、対象年齢が低いことです。対象年齢が小学校卒業までというのは、全国1740自治体の中でわずか約4%にしかすぎません。政令市でも広島市と同じ対象年齢は、札幌市だけとなりました。県内では、新年度、三原市が4月から、呉市が10月から通院、入院ともに高校3年生まで拡充。所得制限なしで実施すると聞きました。また、熊野町は就学前までだったのが一気に中学卒業までに対象が拡充されました。
もう一つの遅れは、2段階の所得制限と窓口一部負担です。児童手当と同様の所得基準以上の世帯は医療費補助の制度の対象外です。さらに、その対象外となる所得基準の6割程度の所得の世帯は、入院費は無料になりますが、小学校に上がると通院時に1回1500円、月2回まで、最大6倍もの負担が求められています。
 先日大阪市が来年度システム改修をして再来年度から所得制限をなくすと発表しました。政令市で所得制限があるのは、広島市と札幌市の2市だけになります。
 「他の自治体と比べてそん色のない制度」となっているとお考えですか。
 すべての世帯を対象にした子育て支援の拡充が求められている今、低すぎる対象年齢と2重の所得制限による窓口一部負担という二つの遅れを解消すべきですが、どのようにお考えですか。

(保健医療担当局長)
 本市としては、「他の地方自治体と比較しても全く遜色のないものとすべく、さらなる充実に向けて取り組まれるよう強く求める」という、平成28年3月の市議会の付帯決議を踏まえて、これまで国に対して統一的な制度創設を強く要請してきています。また、それともに対象年齢の拡大などに取り組んでおります。
 今後は、こども政策の強化に向けて経済的支援についても検討するという、国の動向を注視しながら、引き続き、付帯決議を踏まえた対応を検討していくこととしております。

(きせ康平)
 国の姿勢が変わらない中で、市が最低レベルを改善して全国のスタンダードに並んでこそ、国に対して説得力をもって子ども医療費助成制度の創設を迫れるのではありませんか。

(保健医療担当局長)
 本市としては、政令指定都市等が一体となって国に対し、統一的な制度の創設を要請してきた中で、国において、こども政策の強化に向けて経済的支援についても検討するという動きが出てきたことをしっかりと受けとめ、引き続き子どもの医療の充実について検討していきたいと考えております。

【再質問】
(きせ康平)
 次に子どもの医療費補助についてです。
 医療費補助制度は他都市に比べて遜色ないのかというと、答弁に関して若干あやふやだったかなと思います。今より遅れているとの認識だと思いますが、それについて明確にお答えください。
 また、実際先ほど例に挙げたように、他都市に比べてかなり遅れていると思います。現在全国では高校卒業までが主流、95%が中学校卒業までとなっている中で、やはりせめて広島市でも中学校卒業までは早期に補助の拡大の実現と、改めて所得制限の撤廃を行うべきだと思いますが、この点についてお答えをお願いします。

(保健医療担当局長)
 先ほどもご答弁いたしましたけれども、この子ども医療費補助制度につきましては、社会福祉・社会保障ということで全国的に行われる施策でありまして、そうした施策につきましては国が統一的制度を創設すべきという考えでおります。
 現在各自治体が自助努力をしておりますけれども、そうしたことがあたかも都市間競争のような状況を呈しているということは、望ましいあり方ではないと考えております。
 こうした考えのもと、私どもといたしましては、これまで国に対して強く要請をしてきており、また対象年齢の拡大などにも取り組んでいるところでございますけれども、子ども施策を強化している現在の国の動向を注視しながら、引き続き、付帯決議を踏まえた対応を検討していくということでございます。

・学校給食について

(きせ康平)
 岸田政権の「異次元の少子化対策」は、国民がいちばん強く求めている教育費負担の軽減がありません。前に述べた内閣府の調査でも、育児支援の最重要政策はなにかとの質問に対し、日本では「教育費の支援、軽減」との回答が69・7%と最高でした。教育にかかわるお金の心配のないことが、子育てに希望を持てる社会の土台になっています。
 給食が教育の一環であるならば、憲法26条に保障されている「教育を受ける権利」と『義務教育は、これを無償とする』との精神に照らして国の責任で無償にすべきです。
 そうした中で、小中学校の給食費無償化は、全国250自治体をこえ、加速度的に拡大しています。東京都荒川区は2月6日、区立小中学校の給食を4月から完全無償化する方針を明らかにしました。所得制限は設けず、小学校で年5万円、中学校で6万円ある現行の自己負担をなくします。東京23区で給食完全無償化を打ち出した葛飾区、北区、品川区、足立区に続くものです。更に先日世田谷区も給食費の無料を発表しました。
 国がやるのを待っているのではなく、自治体としての独自の努力を始めるべきですが、どのようにお考えですか。

(教育長)
 本市では学校給食法第11条で定められた経費負担の原則にのっとり、食材費は学校給食費として保護者に負担していただいております。
 その上で、経済的な理由によって就学困難と認められる児童生徒の学校給食費については、就学援助制度や生活保護制度により援助しており、その他の世帯についても昨今の物価高騰下でも学校給食費の負担が増加しないよう措置を講じているところです。
 学校給食費の無償化といった国民における公平性確保の観点から統一的に実施すべきものは、基本的には国の責任において財源が措置されるべきものであると考えており、本市では引き続き、学校給食法で定められた経費分担の原則にのっとり、食材費は学校給食費として保護者に負担していただくことを基本としつつ、子育て世帯の実情を踏まえ、適宜必要な支援を行っていきたいと考えております。

・放課後児童クラブについて

(きせ康平)
 先進国では、無償化で子育て世帯の経済的負担をなくし、子どもが増えるほど手当などのインセンティブを与えて、少子化を克服してきました。日本も幼児教育保育の無償化をすすめて、幼稚園と保育園の3歳以上の子どもの保育料が無料となりました。
 ところが、広島市では、小学校に入学し、放課後児童クラブに入会するとそれまで無料であったのが、新年度から保護者の所得に応じて1か月3000円もしくは5000円の利用料を負担しなくてはなりません。
 すべての子育て世帯の支援が求められているときに、新年度からの有料化は、教育や保育の無償化を進める全国の取り組みや世界の流れにも逆行するものではありませんか。

(教育長)
 国は少子化対策として、幼児教育保育の無償化など子育て世帯の負担軽減策を講じていますが、放課後児童クラブについては、運営費の2分の1を公費負担残り2分の1を利用者負担という考え方を現在示しているところです。
 そうしたなか本市の放課後児童クラブについては、利用者が年々増加し、引き続き事業費の増加が見込まれるとともに、多くの保護者からサービスの向上が求められています。
 こうしたことを踏まえ、本市としては、子育て政策を全体として充実していくにあたっては、市民における公平性確保と将来にわたる安定的運用の観点から、受益者の負担能力を考慮した適切な措置を行うという考えに基づき、放課後児童クラブについては、本年4月から、保護者のニーズの高いサービス向上策を実施するとともに、適切な負担軽減措置を組み込んだ上で、利用者に一定の負担をしていただくこととしたものです。

(きせ康平)
 また、コロナ禍に物価高騰がかぶさり、子育て世帯のくらしの応援が求められているときに、負担を増やすべきではありません。せめて、新年度からの有料化は延期すべきではありませんか。

(教育長)
 放課後児童クラブの利用者負担の導入の考え方は先ほどお答えした通りですが、その導入にあたっては、利用者の約23%にあたる「就学援助を受けている世帯」については、引き続き無料にするなど、経済的理由で利用できない児童が出ることのないよう、政令市の中でも最も低い水準の料金設定としているところです。
 物価高騰が続いている中ですが、このような配慮をしているところですので、放課後児童クラブの利用者負担の導入については予定通り本年4月から実施するよう考えております。

【再質問】
(きせ康平)
 放課後児童クラブですけれども、海外の例を出しますが、フランスでは子どもを産めば産むだけ様々なインセンティブが受けられます。そのおかげで現在ではEUでトップの出生率となりました。フランスのようにしっかりと子育て支援を充実させることがやはり今求められています。
 日本では、所得制限や支援の低さに、子どもを産むとペナルティを課せられるとの声も上がっています。とりわけ今回放課後児童クラブについては、無料だったものを有料へと変えるものです。
 まさにペナルティを課すというふうに捉えることができると思いますがこの点について市はいかがお考えか、お答えください。

(教育長)
 放課後児童クラブについて、有料化というのがペナルティを受け取られるようなことになるのではないかというご質問がございました。
 今回有料化をするという理由というのは先ほどご答弁を申し上げた通りで、国の方で基本的に2分の1、利用者負担という考えが現在もそれがあるということ、また本市で子育て施策、今日いろいろご質問もございました。様々な施策がありますが、全体として充実していくにあたって、市民における公平性の確保と将来にわたる安定的運用と、そういう観点から受益者負担能力を考慮した適切な措置を行うんだという考えに基づいて行うということをご説明をさせていただいたところです。
 したがいまして、これからやはり子育て施策全体で広島市として充実をしていくという中で、放課後児童クラブについてはこういう措置をさせていただきますが、先ほど他都市の例でもございました、横浜市とか福岡とか政令市も多くのところが昔から有料化をされておりまして、ある意味ではそこで同じラインに立つというスタンスに立ちまして、またそこからいろんな充実に当たってどういうふうな形にしていくかというところが検討されていくべきものと考えております。

(きせ康平)
 ペナルティを課すわけではないといいますか、国の制度のこともいろいろ言われました。そもそも今の日本の子育て支援についての制度自体が遅れているというところでもありますけれども、子育て支援について国の法制度とあわせてというと、やはり一緒になって遅れていくことになります。
 ぜひともしっかりと少子化対策も含めて、やはりこの子育て支援、答弁の中で充実させていきたいという思いは出されましたけれども、今一度どういうふうに支援していくかというのを考えていただいて、産み育てやすい広島市に変えていただくことを求めておきます。

4.可部地区学校給食センター拡張建替えについて

(きせ康平)
 最後に可部地区学校給食センター拡張建て替えについて伺います。
これまで、五日市地区給食センターが成功事例だとして可部地区給食センターの整備手法として民設民営方式を推進してきました。しかし、1月の文教委員会で、DBOという公設民営方式に変更する大方針転換が報告されました。
 2022年3月、教育委員会は、民設民営方式での給食センターの整備について、民間事業者に参入意向調査を行いましたが、「事業者の負担が大きい」「ハードルが高い」という意見が多く出されています。あらためて、事業者の負担が大きいということは、裏返せば、民設民営方式は安定的な給食事業の実施について事業者のリスクが大きいということではありませんか。
 いつ、どのような理由で民設民営方式をやめられたのでしょうか。
お答えください。

(教育長)
 昨年3月から開始したサウンディング調査では、民設民営について様々な意見がありましたが、多くの事業者から説明とした方が参入しやすいとの意見が出されました。
 これに加え、特に安佐市民病院跡地においては、当該地の跡地活用推進協議会で了承された跡地全体の活用コンセプト等を踏まえた整備を行う必要があることを考慮し、公設で整備することが望ましいと考え、先月の文教委員会においてこのたびの事業手法を公設民営とすることを報告をしたところです。

(きせ康平)
 2021年12月1日に開催された安佐市民病院跡地活用協議会で跡地への給食センターの整備について説明されています。給食センターを整備した場合のメリットとして、「学校給食の充実」をあげています。
選択制デリバリー弁当から食缶方式に転換することで、中学校給食の充実は図られますが、自校調理方式の廃止で栄養教諭の配置数が減るという問題が発生します。
 新しく建て替える給食センターは、民設民営ではなく市の所有する公設の給食センターなので、栄養教諭の配置に国の財源が充てられます。国の配置基準では6,000食以上で3人の栄養教諭とされています。一方で、新センターの対象となる自校方式の学校と現行の可部給食センターには、合わせて栄養教諭が7人配置されています。今後、すべての自校調理校を廃止するとしているため対象区域の栄養教諭が現在の7人から3人になります。
 食育を進めるうえで、栄養教諭の役割は欠かせないのに、自校調理校の廃止で大幅に減らして「学校給食の充実」が図られるのでしょうか。
せめて、現行の栄養教諭数を市独自に配置すべきではありませんか。

(教育長)
 栄養教諭の職務には、児童生徒への食に関する指導、共同献立の作成の他、給食調理場の衛生管理や調理指導などがあります。
 議員ご指摘の通り、自校調理場を統合してセンター化することにより、給食調理場の管理に係る業務が軽減されることから、栄養教諭の標準法上の定数は減りますが、児童生徒への食育に関する指導等に支障をきたさないよう、必要な栄養教諭は適切に配置していきたいと考えております。

(きせ康平)
 また、給食センターの整備で、地域の「雇用の創出」につながると説明されています。雇用の創出なら自校方式に勝るものはありません。安佐北区内小学校25校・中学校14校それぞれに調理場が整備されて栄養士や調理員が配置されれば、雇用増が期待できるでしょう。
 雇用が増えるというのなら、新たな可部給食センターの整備で、現在の給食関係職員数より、どの程度増えると見込んでいるのですか。
 また、新たな給食センターと自校調理方式を比較するとランニングコストは年間4000万円削減できると試算されています。結局、雇用を増やすといっても人件費は安くなるということではありませんか。
以上についてお答えください。

(教育長)
 安佐市民病院跡地活用推進協議会で説明いたしました「地域の雇用の創出」とは、地域に新たに働く場所ができるという趣旨であり、自校調理方式からセンター方式への切り替えによって、地域全体で雇用が増える、あるいは方式の変更により雇用が増えるという趣旨ではございません。
 また、給食センター方式は、自校調理方式と比較して、スケールメリットや機械化などによって人件費を含めたランニングコストを低廉に抑えることができる。そのことにより経費が削減できると考えております。

(きせ康平)
 2019年、本市が行った学校給食のアンケートでは、食育にふさわしい給食提供方式について、給食センター78%に対して自校方式94%と答えた教員の割合が最も高い結果が示されています。
 これまで、党市議団は、老朽化した学校給食センターが建替時期を迎えていることについて、さいたま市や世田谷区などのようには自校方式に転換した自治体があることも紹介してきました。また、中学校給食について、デリバリー給食を廃止して福山市のように学校敷地内へ調理場を建てる自校方式にすべきともとめてきました。
 ところが、本市は自校方式の拡充ではなく、老朽化を理由に廃止して、将来的にすべてセンター集約化という方向を示されました。安佐北区の小学校の8割近くを自校の調理室が担ってきました。この自校方式を廃止するというのは、1946年に広島市の学校給食が始まって以来の大転換です。
 今回の可部地区学校給食センターの拡張整備について安佐市民病院跡地の活用にかかる地元協議会でもっぱら説明されてきました。教育の一環である給食の大きな方向転換を審議するための組織ではありません。学校給食の在り方を考えるのにふさわしい検討会を設けて市民に是非を問うべきではないでしょうか。

(教育長)
 学校給食をどのように提供するかについては、児童生徒や保護者のニーズ等をアンケート調査で把握した上で、経費面や衛生管理など総合的観点から設置者において責任をもって判断することとし、令和3年9月に給食センター方式を基本とする給食提供体制の方針を受け、策定いたしました。
 現在、その方針に基づき、給食提供を体制整備に取り組んでいるところであり、改めて検討会を設置することは考えておりません。

(きせ康平)
 安佐市民病院跡地活用協議会の議事録を読めば、地元の委員から自校方式の廃止に対して「保護者の理解は得られたのか」との声があがっていました。それに対して教育委員会は、給食センターへ集約化することに反対の声は届いていないと答えています。しかし、そもそも可部給食センターが拡張して建て替えに合わせて廃止される予定の自校調理の小学校の保護者への説明がされていないのでは異論も出ようがありません。
 1月20日の文教委員会で調理場を廃止する予定の小学校は約17校程度というだけで校名も明らかにされませんでした。新年度予算で159億円もの建て替え工事と運営業務委託の債務負担行為の設定が提案されていますが、保護者は何も聞かされていないということです。
 子どもたちの心と体をはぐくむ給食にかかわることです。学校内の調理場をなくし、何キロも離れた給食センターから運ばれるやり方に代わることについて、保護者にはいつどのように説明されるのですか。
 予算が通って、調理場が廃止される学校の保護者に説明するというのは、順番が逆です。センター集約化ありきで市民や保護者が置き去りにしているということではありませんか。
以上について答弁を求めて総括質問とします。
ご清聴ありがとうございました。

(教育長)
 現在の可部地区学校給食センターや五日市地区学校給食センターでは、保温力の高い食缶を使用することで、温かい状態で給食を提供することができており、新たな給食センターにおいても、同様に提供できるものと考えております。
 このため、定期方式の切り替え前に予定している保護者通知の中で、このことについてもお知らせをしたいと考えております。

【再質問】
(きせ康平)
 可部給食センターの拡張建て替えについて、今後、五つの給食センターへの集約化をしていくことを決めた際も、専門家や審議会保護者などへ意見を聞くことなく、教育委員会が決めたと認識しています。
 そしてこのたびの可部給食センター拡張建て替えについても、安佐市民病院跡地活用協議会への説明をしただけで、集約が該当する自校調理の17校や保護者、また専門家審議会を作るという話も行われたわけではありません。
 この問題も給食センターへの集約ありきで物事が進んでいると感じています。まさに今の中央図書館と同じです。
 改めてこの問題において専門家審議会、また保護者の代表を交えながら、オープンな議論を行うべきだと思いますが、改めて意見を伺います。

(教育長)
 可部地区給食センターというよりも学校給食の提供体制のあり方として、改めて検討会等を設けるべきではないかということがございました。
 これに関しても先ほど申し上げた通り学校給食の提供体制をどうするかということでは、児童生徒や保護者が学校給食に何を求めるかということで後半のアンケートを行いました。その結果にまず基づきてそれを受けて経費面、あるいは衛生管理面、そういったことを総合的な観点から設置者で最後体制を決めるという形を取らせていただいております。
 これは令和3年9月それを取りまとめて、給食センター方式を基本とする提供体制ということを御説明をさせていただいたところです。
 現在はそれに基づいて整備に取り組んでいるところですので、先ほど申し上げた通り改めて検討会等を設置するということは考えておりません。

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