議会での質問・答弁

2021年03月15日

2021年第1回 2月定例会・予算特別委員会 総務関係 中森辰一議員

1.財政について

2.DX計画について

財政について

(中森辰一議員)
 今日は財政のことと、それからデジタル化のことについて質問いたします。
 新年度の予算規模は、一般会計で過去最高を更新しました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、自然収入が落ち込む中、予算規模は多くなっております。自然収入が落ち込んだのに、それを埋め合わせる地方交付税もまた減少しております。
 結局、臨時財政対策債で埋め合わせをするということになっておりますが来年度の臨時財政対策債の発行額は、来年度で発行できる額の上限額なのかどうか。それから来年度で臨時財政対策債の残高、全体の市債残高のどれだけを占めているのかお答えください。

(財政課長)
 令和3年度当初予算では、臨時財政対策債の発行額を480億円と見込んでおります。これは、令和3年度の地方財政計画における全国ベースの臨時財政対策債の対前年度伸び率などを勘案して算出した発行見込額であり、実際には新年度に国から示される発行可能額の範囲内で発行することとなります。
 また、令和3年度末時点で臨時財政対策債の残高は約4371億円となる見込みであり、一般会計の市債残高約1兆1813億円の約37%を占める見込みとなっております。

(中森辰一議員)
 臨財債の規模が大きくなっておりますが、これは地方交付税の代わりですから、その償還財源は国が交付税で補填することになっております。なので、これは一般財源として扱います。
 しかし、これは国が将来措置する地方交付税の前倒しで、いわば将来の地方交付税の先食いです。広島市でも地方交付税の交付額のうち、臨財債の償還に充てる部分が年々大きくなっていて、その残高は今述べられた通り、およそ4400億円で、30年で償還するとすれば平均で年間150億円近い規模になってきます。
 しかし、国の税収総額自体がこの30年間まともに増えていないので、地方交付税の財源は限界状態になっております。ということで、臨時財政対策債にまた頼るという悪循環になっているんじゃないでしょうか。現実を見ますと、国の平成12年の地方交付税の総額は21.4兆円。平成13年は20.3兆円で、この年から臨財債が始まって、総額で1.4兆円。両方合わせて21.8兆円となっています。
 その後、税収のうちの地方交付税の法定率分を引き上げたりしていますが、令和2年では、地方交付税総額が16.6兆円。臨時財政対策債の総額が増えたり減ったりしているものの、令和2年では3.1兆円。この両方を足した額は19.7兆円ということになってます。ピークは平成22年で24.6兆円。それ以降、実際は年々減少傾向ではないかと受け止めています。
 地方が必要とする財源は年々大きくなっていると思いますが、地方交付税の必要性は高まっているはずなんですけれども、実態は逆になってるんじゃないでしょうか。
 つまり、国の都合で減少していくということが将来あり得るんではないかと思います。ここで考えられることは、広島市がそうであるように、地方交付税で措置することになっている臨時財政対策債の償還分の額が、年々増えてくるにしたがって、結果としてそれ以外の通常の施策を行うために必要な財源を確保するための部分が、地方交付税の交付額の中で小さくなってくるんじゃないかと心配しています。これについて、財政当局としてどのように受け止めておられるでしょうか。

(財政課長)
 地方交付税及び臨時財政対策債は、各団体の標準的な財政需要から標準的な収入を差し引いた財源不足額が交付の基準となります。このため、地方交付税及び臨時財政対策債は、地方税等の収入や財政需要の状況に応じまして各年度で増減することとなります。
 地方交付税と臨時財政対策債に、地方税等を含めた地方一般財源総額につきましては、国の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針で示されているように、これまでも高齢化の進展に伴う社会保障費の自然増などを反映させた実質同水準の一般財源総額が確保されておりまして、令和3年度の一般財源総額につきましても、地方税等の大幅な減収が見込まれる中にあって、前年度を上回る額が確保されておるところでございます。
 また、広島市の臨時財政対策債の償還が年々増加しておるというところでございますけども、これまでも基準財政需要額の中で臨時財政対策債の償還分だけでなく、その他の財政事情につきましても必要額が確保されておるというところでございます。

(中森辰一議員)
 実際には、地方財政計画と言いましても、一定操作するという余地が国にあるんじゃないか。臨財債部分、いわば地方交付税の先食い部分が大きくなっていけばいくほど、財政的には国の方も厳しくなっていく影響で、地方にも及ぶ可能性は非常に大きいんじゃないかと思っています。そういう点では、将来にわたって安心できる財源なのかどうか、よく考える必要があると思います。
 さしあたっては一般財源として使うわけですから、これはしっかり確保していく必要はあるとは思います。ただ、地方交付税に回す法定割合を引き続き増やし、一般財源に係る部分が減らないように、地方としてはしっかりと政府に要求していくことが引き続き必要だと思っています。
 ところで、令和2年度から4年間の財政運営方針が令和2年2月に作成されまして、令和2年度はそれに沿って当初予算が作られています。
 この財政運営方針の中で、大事なのは様々な諸経費を抑制するということなんですけれども、私はその中でも市債をどうコントロールするかということが大事だと思いますし、その点で長期的に市の財政の健全化を図っていくという方向性が非常に重要であると思っています。
 実際、令和3年度の予算計上にあたっての依命通達の中では、新たな借り入れは抑制せざるを得ないと述べてあります。
 建設関係の質疑で取り上げましたが、南口再整備事業で当初155億円だと言っていた事業費が、突然2.3倍の360億円ということになりました。このうち市の負担が170億円だということなんですけれども155億円の場合の本市の負担額はだいたい70億円程度になると想定されたと思います。つまり、南口再整備の事業費が2.3倍の360億円になったことで、市の負担は100億円増えることになりました。
 しかし、昨年2月に市の方針として発表された令和2年度から5年度までの4年間の財政運営方針では、この事業費の大幅増額は想定されていないという道路交通局から答弁がありました。
 財政運営方針では4年間で110億円も財源不足とされていたのに、想定されていない新たな南口再整備事業の市の負担分、これはおよそ5年間程度になると思いますが、100億円の負担が突然出てきました。
 財政運営上、この新たな100億円が、他の事業にしわ寄せされるということはないでしょうか。

(財政課長)
 広島駅南口広場等の整備に伴います国費を除いた本市負担額につきましては、財政運営方針では令和2年度から5年度の4年間で約49億円、一般財源ベースで約5億円を見込んでおりましたが、この度の全体事業費の増額等に伴いまして本市負担額は約28億円増の約77億円、一般財源ベースで約7億円増の約12億円となる見込みでございまして、財政運営方針の計画期間内におきましては、ご指摘がありましたような本市負担額は100億円超となるものではございません。
 今回の事業費の増額につきましては引き続き国庫補助金などの特定財源を確実に確保するよう努めるとともに、これまでと同様プロジェクト間での優先順位付けや、進度調整を図ることなどで複数のプロジェクトを同時並行的に進行させながら財政運営方針に掲げる市債残高の抑制や収支均衡という目標の達成に向けた財政運営に努めてまいります。

(中森辰一議員)
 100億円増えるわけじゃないとおっしゃいました。もう1回聞きますが、広島市の負担分は170億円ですよね。155億円の時は、広電が十数億円負担するんでしょうから、そうすると残りの140億円程度を国と市の折半でということになっても、少なくとも70億円の負担であったというふうに思うんですよ。そこを言ってるわけです。
 今回の360億円のうち、170億円は市が負担する、借金かどうかということではなく、170億円市が負担するのなら、100億円ふえるということになるじゃないですか。
 ちょっとそこの説明は納得できません。

(財政課長)
 先程私が申し上げましたのが、ご指摘がありました110億円の財源不足というのが、令和2年度から令和5年度の財政運営方針の期間においてということでございましたので、それとの比較ということで、財政運営方針の期間の中での金額ということで申し上げたということでございまして、当然令和6年度以降の期間を含めますと、おっしゃられたような約100億円の市の負担増となるということでございます。

(中森辰一議員)
 令和8年度で工事は完了することになっておりますよね。ということは、少なくとも今年は17億円程度の事業費です。でも令和8年度はほとんど事業費ないんじゃないかと思うんですけども、いずれにしてもこの短期間の間に、およそ100億円の負担が新たに出てきたということになるわけで、当然これからの財政運営のあり方に影響を及ぼしていくのではないでしょうか。
 今回突然想定してないお金を負担しなくてはいけないことになったというのは非常に大きな問題です。
 財政運営方針2年目の、令和3年度の当初予算では、新たな借り入れが南口再整備分を含めて大きく膨れ上がっていると思います。市債を大きく減らすということだったのに、逆に4割近くも増やす予算になっているわけですよね。
 計画は724億円でしたが、これに比べると281億円上回っておりますが、これはどうしてですか。

(財政課長)
 財政運営方針では、令和3年度の臨時財政対策債の発行額を287億円としておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの影響によりまして、地方交付税の原資となる国税及び地方の税収が減少する見込みとなり、全国ベースの臨時財政対策債の発行見込額は前年度と比べて大幅に増加したため、本市の発行見込額も計画と比べて193億円の増となったことが大きな要因となっております。

(中森辰一議員)
 それだけでは説明がつかないでしょう。それを差し引いても90億円ぐらい余分に多いのはどうしてですか。

(財政課長)
 令和3年度におきましては、臨時財政対策債を除く一般事業債でございますけども、財政運営方針で見込んでおりました437億円を89億円上回る526億円となっておりますけども、これは防災減災対策に係る地方債について、国において制度の延長が図られたため財政措置の有利な同地方債を活用することとしたことや、令和2年度に実施することができなかった事業を令和3年度に再計上したことなどが要因となっております。

(中森辰一議員)
 それはこの広島市の財政運営方針は影響しないんですか

(財政課長)
 各年度の市債の発行額につきましては、各事業の進捗等により計画比で増減することから、本市では各年度の市債発行額ではなく、臨時財政対策債等控除後の市債残高の抑制を目標といたしまして、計画期間の4年間で5%程度減少させることとしておりまして、令和3年度の予算編成にあたりましても、この経営目標残高を踏まえつつ予算編成を行っているとこでございます。
 新型コロナウイルス感染症の影響もありまして、令和2年度に市税等の減収に対応するため、減収補てん債や特別減少対策債を発行することなどにより令和3年度予算では財政運営方針に掲げる目標を上回っておりますが、引き続き市債残高の抑制に努め、財政運営方針に掲げる目標を達成できるよう取り組んでまいります。

(中森辰一議員)
 そうはおっしゃいますが、令和4年度、令和5年度と市債を抑制する方向での財政運営方針が掲げられていて、それに基づいて財政収支見通しも出されているわけです。
 そういう流れの中で、臨時財政対策債を除いても、90億円近い、計画からいえば大きな市債の発行額になってきているのです。市債発行額を一般事業者のところでも増やしていくということになりますと、令和3年度だけじゃなくて4年も5年も、その影響を受けていくことにならざるを得ないのではないのでしょうか。
 予定に入ってなくても、計画としては十分に回していけると考えているんですか。

(財政課長)
 引き続き国庫補助金などの特定財源を確実に確保するよう努めるとともに、これまでと同様、プロジェクト間での優先順位付けや、進度調整を図ることなどで財政運営方針に掲げる市債残高の抑制等を目標達成するよう、財政運営に努めてまいりたいと考えております。

(中森辰一議員)
 今回の予算の資料の中に、財政運営方針の達成状況という表があります。令和3年度は先ほどから言ってますように、数字としては大きく崩れているわけです。特に普通建設事業費、それから市債の発行、臨時財政対策債分を除いても、大きく崩れています。多分来年も令和4年度も令和5年度も、そういう比較の表を出すのかどうか知りませんが結果的にこの4年間の財政運営方針というものは、結局あってなきがごとしになっていると思うんですけど、それはどういうふうに考えたらいいんですか。

(財政課長)
 繰り返しになりますけども、こういった投資的経費の増につきましては、国庫補助金などの特定財源を確実に確保するよう努めるとともに、プロジェクト間での優先順位付け、それから進度調整を図ることによりまして、財政運営方針に掲げる市債残高の目標を達成するよう努めてまいります。

(中森辰一議員)
 この間広島市では、今回だけじゃなく、想定されてなかったもの、例えば高速道路の事業費が大幅に増える。これは、40年くらい経って広島市に帰ってくる財源だと説明をしているけれども、さしあたってこの40年間、高速道路の方に注ぎ込まれるわけです。こういった事業のところに大きな財源を注ぎ込んでくる。
今回も広島の玄関口を作るというところに、突然2.3倍になった大きな財源をつぎ込まなくてはならなくなっている。
 そういうことが広島市で繰り返される一方、市民の暮らしにはお金がないからといって我慢をお願いをしてきたのが実態です。公共事業の分野でも、市民生活関連でいうと、市営住宅、保育施設、教育施設いずれも抑制的じゃないですか。今回みたいにポンと大きなお金を投入したことがありません。財政が厳しいから、計画的にやるからと1年1年の事業費を低く抑えながら財政運営をしてきました。
 突然、元々計画をしてない事業費はどんと出す、簡単に容認するようなことでいいのでしょうか。
 財政局としてどういう風に考えておられるんでしょうか。

(財政課長)
 事業の進捗等あるいは事業費が増減することによりまして、計画費と比べて、当然市債の残高等についても増減することはございます。これにつきましても、特定財源といたしましての国庫補助金、これをしっかりと確保するように努めていくと共に、プロジェクト間での優先順位付けこういったところをしっかりとやることで、市債残高の抑制を達成することで、健全な財政運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

(中森辰一議員)
 すでにアストラムラインなども次の大きなプロジェクトとして準備されています。それはそれでまた何年か後に大きな事業費をつぎ込んで行くことになるでしょう。そういうことも見越しながら、今の財政運営方針・財政収支見通しを立てているはずですよね。国から補助金をできるだけたくさん取ってくる、それはそれでいいと思いますけども、でもそれでは回らない部分があるでしょう。
 実際に、先ほどから強調してますけども100億円という事業費、多分5年か6年ぐらいで使っていくんでしょうけれども、その事業費100億円をたとえば30年間で返そうと思ったら、毎年3.5億円ぐらいの償還財源が必要になります。これは一般財源ですから、そういうものが毎年積み重なっていくことで、膨大な借金を抱えることになります。今、1年間で700億円とか800億円という公債費というものになっているのです。今、例えば県費だった教職員の人件費が市に入ったので、550億円ぐらい教育費が大きく膨らんでおりますけども、それから比べても、非常に大きい財源、一般財源を公債費に使っていることになります。やはり市の財政の硬直化を招いているのではありませんか。
 私はこの間繰り返し議論していますが、子どもの学びを保障するための就学援助制度を適正化ということで削ろうとしているじゃないですか。
 1年間に1000人ぐらいの子どもが対象から外されて、年間8千万円の財源を浮かせようというわけです。これは2年後からの予定ですが、8000万円を100億円で割ると、125年分ですよ。
 もっと言いますと、小中学校のトイレの洋式化がやっと今年度で5割に到達するそうです。今の子どもたちはみんな小さい時から洋式トイレで育ってきているのですから、和式トイレなんか使えません。少ない洋式トイレに行列ができる。早く洋式トイレに変えてほしいということを繰り返し要求して、今年度でやっと5割に到達する。そこから先を聞いたら、今度は目標を60%にするそうですが、10%引き上げるのに何年かかるか聞いたら3年だそうです。その財源は3億5000万円。1年間に1億2千万円弱です。100%になるのに一体何年かかるんでしょうか。
 子どもたちにも我慢してもらいながら財政運営をしているんですよ。そんな中、立派な玄関口のために突然360億円もの大金を思い切ってつぎ込むような市政のあり方には、私は非常に疑問をもちます。
 財政が厳しい、財源不足だと言って市民に協力を求めているのですから、新たな大きな財政負担が生じるようなことはいったん立ち止まって考える、慎重な姿勢が必要だと思います。強調しておきたいと思います。

(市長)
 今のご懸念は、非常に的を得ているというか、お立場からすれば問題意識は多々あろうかと思いますが、市政運営というのは、現在の日々の生業と、将来の広島市における生業をバランスを取りながら現行財政の中で、収支を見ながら、どうしていくかということをやり、そのやり方について、財政運営方針の中で限られた財源、国県市の財源をうまく活用しながら進めております。
 ご指摘のように、運営方針に書いたこと、100点は取れておりません。実際、計画を立てた後のそれぞれの事情、自然災害あるいは国の財政事情、そういった中で当初目的を立て、バランスをとりながらやるということを追求しております。
 そういった中で今言われたご懸念をいくらかでも可能な限りやりながら、サステイナブルな持続可能な財政運営をするといった中で対応させて頂いております。それを逐次点検していただいているという思いでありますので、ご指摘の点も考慮しながら、これからもやり続けたいと思っております。

(中森辰一議員)
 私のこれまでの立場から言いますと、昔、小泉内閣の時に米百俵という故事が言われましたけれども、あのようにやはり教育を優先する考え方がいいんじゃないかなと思っております。

DX計画について

(中森辰一議員)
 次にDXの推進について伺います。新年度予算にDX、デジタルトランスフォーメーション推進という項目があって、5755万8千円の予算が計上されておりますが、財源は100%一般財源です。
 先行取り組み事業の実施検証結果を踏まえながら計画を策定し、DXを推進すると説明をされております。政府がデジタル庁を設置し、59本もの法律を一括して改定する法案を提出しています。デジタル庁に強力な権限を持たせた上で、民間行政にわたるデジタル化を5年間で実現しようとしています。こうした国の政策の流れが今現にあるわけですが、この度の関係ではどういう風になるんでしょうか。

(情報政策課長)
 国においてはデジタル庁の設置に象徴されているように、DXの推進に大きな大きく力を入れようとしています。自治体がデジタル社会構築に向けた各施策を効果的に実行していくためには、国が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体として足並みを揃えて揃えて推進していく必要があることから、昨年12月に自治体DX推進計画を策定し、自治体が重点的に取り組む事項、内容を具体化するとともに、関係省庁による支援策等をとりまとめたところです。
 本市においては、これまで国が平成25年に策定した、ICT施策推進の基本計画である世界最先端IT国家創造宣言のもと、各部局において積極的にデジタル化に取り組んできましたが、国におけるDXをめぐる動きや、Society5.0への取り組み、行政事務の効率化、さらに新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてのデジタルガバメントの推進といったデジタル化を巡る様々な変化に的確に対応していくため、デジタル化された情報を使いこなす匠の街を目指してDXを推進していくこととしているものです。

(中森辰一議員)
 進めていくのと一体的にやっていこうということですね。先行取り組み事業として民間事業者を活用した業務改善、OCR、RPA、ロボティックプロセスオートメーションを活用した定型業務の自動化というのがあります。
 デジタル技術を活用した業務改善を進める上で、業務の効率化は必要なことでしょう。特に窓口業務などでは、市民の利便性だけでなく、これまでの業務の中で蓄積してきた、職員による、市民の疑問に的確に応え、要望をしっかり汲み取って対応できる能力、こういうものも発揮できることが必要だと思います。
 その点で、すべて機械に頼るということではなく、市民との関係での、職員による多様な対応能力を確保していくということと、職員による、こうした機械をチェックできる体制、機械がトラブルを引き起こした時に直ちに対応できる体制というものも同時に必要だと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

(情報政策課長)
 デジタル技術を活用した業務改善に取り組むことにより、例えば職員は、市民からの簡単な問い合わせの対応や、システムへの入力作業等の定型的な作業から解放され、職員でなければならないような複雑な市民相談や、政策立案等の業務に注力できるようになります。
 こうした業務に携わることで、職員は多様な対応能力を習得でき、市民サービスの向上につなげていくことが可能になると考えております。
 また職員がシステムを利用する際は、システムが正常に稼働しているか日頃からチェックを行うとともに、仮にシステムにトラブルが生じた場合においても、市民サービスへの影響が最小限になるような体制を整えていく必要があると考えています。
 具体的には、システムの運用障害復旧マニュアルを常に最新の状態にしておくことや、トラブル発生を想定した定期的な訓練トラブルの技術的な原因がわかる職員の育成などに取り組んでいきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 新規事業で広島広域都市圏オープンデータポータルサイトの構築運用というのがありまして、広島広域都市圏にこのたび三次市が加わって25市町になりますが、これらの市町が保有するデータを民間が効果的に活用できるようにするということのようです。
 活用する民間とは、どういうところが想定されているのか。このオープンデータというのは、どういう範囲のデータのことか。また、どういう活用が考えられているのかお答えください。

(情報政策課長)
 オープンデータとは、機械判読に適した形式で、二次利用可能な営利・非営利を問わず無償で利用できるデータであり、自分が使いたい形に加工したり、アプリやデジタル地図などのデータとして利用できます。
 このため、利用者としては統計データを利用する研究者や、マーケティング事業者、アプリ開発事業者や施設情報などの紹介を行う事業者のほか、地域課題に取り組む市民団体や自治会などに広く利用されることが想定されます。
 次に、どういう範囲のデータかということでございますが、ポータルサイトに掲載するオープンデータには、広島広域都市圏全24市町、三次が入りますと25市町の地域、年齢別人口や公共施設一覧、避難場所一覧、観光施設一覧など、国が推奨している14種類のデータのほか、すでに各市町がオープンデータ化しているデータについても、合わせて取り組んでいきたいと考えています。
 次に、どういう活用が考えられるのかということでございますが、現在本市のオープンデータの活用事例としては、新型コロナウイルス感染症の陽性者数などをグラフで表示するサイトや、家族でのお出かけスポットを紹介したサイト、スマートフォンなどで登録した地区のゴミ収集日がわかるアプリ、また7月8月の平和イベントの検索ができるサイトなどがあります。
 今後広域都市圏という生活圏でのオープンデータを提供することにより、出店計画などのマーケティング、カレンダーアプリでの近隣市町を含むイベント情報など、事業活動や市民生活に役立つ幅広いサービス提供に生かされるものと考えています。

(中森辰一議員)
 同じく新規事業で、DX推進計画の策定というのがあります。
 これはいつまでに作成することになっていますか。

(情報政策課長)
 DX推進計画の策定につきましては、担任副市長を会長とするDX推進会議を設置し、デジタル化に関する全庁統一した基本的な考え方や取り組みの方向性をまとめることとしており、策定時期は令和4年1月を予定しております。

(中森辰一議員)
 今国会に、デジタル改革関連法案というものが出されています。その中で、国が自治体DX推進計画として、実際のデジタル化を強行的に進めようという方向になっています。
 まず国は、自治体の業務や情報システムの標準化・共通化ということを第一の課題として挙げています。
 内閣府で行われた検討内容を見ますと、原則として、カスタマイズを認めないという内容になっているように見えます。
 地方は地場産業の違いをはじめとして、それぞれ地域の特性がある。それが要因となって、地域住民の生活の有り様や、行動あるいは考え方の違いまであると思います。
 戸籍の事務とか、住民登録あるいは住民票の発行、選挙人名簿の管理といった定型的な業務もありますけれども、多くは住民の生活実態や地域経済の状況の違いから、行政の窓口での住民とのやり取りの在り様も違いが出てくると思いますし、個々の自治体によって独自に実施している政策の違いというものもあると思います。
 そういうわけで、自治体によるカスタマイズというのは当然必要なことです。画一的にやってしまうと、施策から取り残される人や、市民生活の実態を把握しきれないということに繋がっていくのではないでしょうか。
 このことについて、広島市行政のDXの推進にあたってはどのように考えて進めていこうとしておられるんでしょうか。

(情報システム課長)
 国は、自治体の業務のうち住民記録など17業務について、自治体の情報システムの標準化・共通化の対象として、令和4年夏までに標準仕様を作成し、その後システム構築事業者が標準仕様に沿った標準準拠システムを開発することになっています。
 標準化の対象となる17業務については、国の法令に基づき概ね全自治体共通の制度となっていますが、ご指摘の通り、自治体業務の中には、住民サービス向上のため自治体が独自に実施している施策があり、これは情報システムの標準化・共通化の対象外となっています。
 こうしたことから、国は標準準拠システムのカスタマイズを原則として認めていませんが、17業務以外の業務と一体的に処理する方が効率的な場合は、必要最小限のカスタマイズを例外的に認めることを検討しています。
 今後、標準仕様やカスタマイズに関するルールが明らかになった時点で、必要な対応策を検討したいと考えています。

(中森辰一議員)
 住民の要望というのは、その地域地域によって違う場合も多くあると思うんです。違いがあるから、地方自治体として独自の施策をやっているわけです。カスタマイズを認める場合もあるということですが、実際は、カスタマイズが認められない、既に地域によっては業務の統一化が進められているところもあるんです。 カスタマイズができないことを理由に、住民の要求を受け入れてくれないという実態もありますので、そういうことのないように取り組んでいただきたいと申し上げておきます。
 次に、マイナンバーカードの普及を促進するとのことです。2022年度までに、つまりあと2年で、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指すとなっています。
 マイナンバー制度が始まって5年になります。今でもマイナンバーカード保有者は、全国で1/4程度に止まっています。
 広島市の現状の保有率はどれだけでしょうか。それから政府が言う通り、2年でほとんどの市民が保有する状況を作るためにどういった方策が考えられているんでしょうか。

(総務課長)
 本市のマイナンバーカードの保有率、交付枚数の率で申し上げますと、2021年(令和3年)3月1日時点において27.5%となっています。
 また、今後どのような方策か考えられているのかという点についてでございますが、マイナンバーカードの普及につきましては、まず国においてホームページ、コールセンター、啓発用ポスター、テレビコマーシャル、新聞折込広告等による広報を行うとともに、マイナポイント事業や、健康保険証としての利用など、カードの利用場面の拡大を図っています。
 本市においては、これまで広報誌「広島市民と市政」やホームページへの掲載、区役所や出張所でのリーフレットの配布等による広報を行うとともに、町内会や民間企業等への市政出前講座を実施しています。また、令和2年9月からは、平日に来庁が困難な方であってもマイナンバーカードの受け取りができるよう、休日開庁を実施しています。
 それらに加えて、令和3年度については、商業施設等においてマイナンバーカードの申請サポートを実施するなど、引き続きマイナンバーカードの普及を促進して参りたいと考えています。

(中森辰一議員)
 利便性ということがしきりに言われておりますけれども、実態として、利便性を享受するような必要性を市民が感じていないということと、これがないと物事が進まないという状況をこれから強力に作っていくという方向なんじゃないでしょうか。
 これまで通りのやり方では当然あと2年では難しいでしょうから、政府がどのように強力な方策を持ってくるかというところだと思います。
 その点で、政府の機関であるマイナポータルと、自治体を接続するということが出てきていて、あと2年でやるということになっています。
 マイナンバーカードを使って手続きを行う回線というのは、インターネット回線とは別の、独自の回線を使うことになっているはずですが、それがマイナポータルともつながるとなりますと、全国の自治体と政府の機関がオンラインでつながるということになります。
 マイナンバーを読み取って、マイナポータルに接続する入り口というのは、常に一般のインターネット回線を通じてということになりますから、そこからマルウェアなどの侵入を100%防ぐことはできないのではないでしょうか。
 どのようなセキュリティ対策をとっていても、サイバー攻撃とセキュリティ対策はイタチごっこを繰り返しています。
 常に新たな手法によるサイバー攻撃が先行するとも言われておりますので、100%安全ということはあり得ないことです。
 あえてこういった形で接続箇所を増やしていくということは、対策の脆弱性を広げることにつながります。
 実際はインターネットの世界では、フェイスブックでさえも大量の利用者情報が流出したと言われておりますし、最も確実なセキュリティ対策が必要なクレジット会社でも、繰り返し情報流出が発生しております。
 マイナンバーカード利用者を増やせば増やすほど、さらにマイナポータルに接続することで一層個人情報流出の危険性が増すんではないかと思うんですが、どう考えでしょうか。

(総務課長)
 情報漏洩対策について国に確認したところ、利用者の確認を厳重に行った上で、本人の情報だけを確認できるようにすることや、第三者によるシステムへの侵入防止、ウイルス対策などに十分な対応を講じているとの回答を得ています。

(中森辰一議員)
 それではやはり情報流出の不安は消えないのではないでしょうか。既にスマホで税の確定申告ができるようになっておりますけども、個人の基本情報が載せられたマイナンバーカードと健康保険証が一体化されるということがもうすでに始まっております。
 今議会には医療保険の利用情報とか生活保護など、様々な福祉サービスの利用に関わる情報までもがマイナンバーで紐付けできるような条例も出てきています。
 今後、運転免許証だけでなく国家資格さらに個人の預金口座も紐付けされるようになると、個人の所得情報や資産情報まで国家が把握できるということになります。
 さらに、スマートフォンでマイナンバーカードと同じ機能を搭載できるようにしようともしています。
 スマホは日常の買い物の決済ができるようになっています。それを全国民に広げようというわけです。それは、国民の消費行動だけではなく、日常の行動まで国が把握できるようになることに繋がっていくのではないか。
 そもそも、国会に出されておりますデジタル改革関連法案には、個人情報をしっかり保護しようという姿勢がないように見受けられます。国が定めた三つの個人情報保護法を一本化するだけでなく、自治体の個人情報保護条例の一元化も進めようとしております。
 この秋に設置されるそうですが、デジタル庁の職員500人のうち100人以上を民間企業から登用するということになっていますし、その事務方トップも民間企業からの登用者を置くと言われております。企業に膨大な個人情報を提供して、IT企業の利益に転嫁できるようにするんじゃないかという指摘もされています。
 自治体の個人情報保護条例を含め、個人情報保護のレベルを下げて民間企業が活用しやすいようにしていくということと共に、個人情報を一括で国が管理できるようにしようとしていることは、中国のような監視社会に進んでいくんじゃないかという強い危機感を今多くの人々が持っていて、反対の声を上げておられるわけです。
 個人情報は、情報漏えいを防ぎ、個々人のプライベートな情報が一括で流出しないためにも多数に分割して保管していくということと合わせて、国が一元的に連結できないようにしていくことが必要ではないかと思います。この点についてのお考えを伺います。

(情報システム課長)
 現在本市においては、国が整備したマイナンバー制度の情報連携システムを利用して、国の機関や他の自治体と、マイナンバーを含む個人情報である特定個人情報の照会・提供などの情報連携を行っています。
 マイナンバー制度の情報連携システムでは、個人情報の漏洩対策として、特定個人情報は一元的に管理するのではなく、国の機関や各自治体が保有し、他の自治体などの情報が必要となった場合に、情報提供ネットワークシステムを使用して、情報の照会・提供を行う分散管理の方法を取ること。
 情報提供については、外部の通信回線とは遮断された専用の通信回線である情報提供ネットワークシステムを使用すること。
 情報提供は、マイナンバーを用いずに、符号により行う仕組みとした上で、通信の暗号化を行うとともにアクセス制御により情報にアクセスできる人の制限管理を行うこと。などの対策が講じられており、ご指摘のように、個人情報は多数に分割して保管し、それを一括して連結できないような仕組みとなっています。
 今後も、個人情報が漏洩することのないよう、引き続きシステムの適切な運用に努めてまいります。

(中森辰一議員)
 今一番心配されていることは、例えばマイナポータルのようなところ一元的な連結がされるのではないかということなんです。多くの方々から指摘されていることですので今日紹介しました。
 いずれにしても、デジタル技術を活用していくことは必要なことだと思います。デジタル化は業務の効率化に役立ちます。便利です。しかし、AIなどでも、入力された情報の質や量、範囲や傾向に制約されるわけです。決して人間の柔軟性に及ぶものではありません。効率化で得た余裕というのは、市民へのより丁寧な対応などに振り向けるという考え方でやっていくことが必要だと思っておりますので、あえて申し添えておきたいと思います。

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