議会での質問・答弁

2019年02月21日

2019年第1回 2月定例会・予算特別委員会 総括質問 村上あつ子議員

市長の政治姿勢について
1、核兵器禁止条約の発効に向けて
2、被爆二世健康診断について
3、世界遺産バッファゾーンを守ることについて
4、高速5号線二葉山トンネルについて
5、災害復旧について
6、自助・共助・公助について
7、国民健康保険事業について


(村上あつ子議員)            
 一昨年の7月、国連で核兵器禁止条約が採択されて以降、条約の制定に向けて批准・賛同する国が増え続けています。1月30日現在、署名が70か国、批准が21か国となり、今年中にも条約の発効が見通せる状況と言われています。被爆者は最後の力を振り絞って、一日でも早い条約の発効を願い、声を上げ続けています。
 カナダに住む広島の被爆者、サーロー節子さんもその一人です。昨年末、条約への参加を訴える世論をつくることを目的に里帰りされ、滞在中ハードなスケジュールをこなされたあのエネルギーに勇気づけられたのは私だけではないと思います。
 市長とも面会されました。被爆地から具体的な行動を起こしてほしいと求められた市長は、驚いたことに、「もっとリーダーをやってとんがってくれと言われていることは分かっているが、とんがらなくていい。どんぐりの背比べでいい」と「どんぐりの背比べでみんなでやる」と言われました。この時の様子を放映したNHKの番組は、「政府に直接働きかけることに消極的な市長。その言葉はサーローさんの期待とはほど遠いものでした」と結んでいます。
 お聞きしますが、市長は、「とんがらなくていい、どんぐりの背比べでいい」とはどういう気持ちで言われたのですか。広辞苑で「どんぐりの背比べ」を引くと、「どれもこれも似たようなもので大したものではないこと」とあります。
 横のつながりを広め、みんなで一緒に声をあげていくことは大事なことですが、被爆都市、平和都市ヒロシマの市長は特別の役割があります。被爆者の代表として誰に対してもはっきりとものが言えなくてはいけません。いくら平和都市市長会議で核廃絶を訴え、加盟都市を増やしても自国の政府にきちんと物申せない市長は説得力を持ちません。被爆都市の市長にふさわしくない姿勢だということをはっきり申し上げておきます。

(市民局長)
 核兵器のない世界の実現に向けて、日本を含め各国の取組を前進させて行くためには、国内外に被爆の実相を伝え、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の願いに共感する方々を増やし、「ヒロシマの心」を市民社会における民意とすることによって、各国の政策転換につながるようにしていくことが重要であると考えています。
 そのためには、被爆都市が頭抜けて平和問題に取り組むというよりも、市民社会を代表する国内外の多くの首長が一緒になって取り組むほうが望ましいと考えており、市長の発言は、このような考えを比喩的に述べたものです。
 このため、本市では平和首長会議の加盟都市の拡大につてもて来ており、国内においては、現在では基礎自治体の99%以上が加盟するに至っています。こうした中で、昨年11月には、国内加盟都市会議の総意として、日本政府に対し、核兵器禁止条約の締結とNPT等の体制の下で核軍縮の進展に力を尽くすよう強く求める要請書を提出したところです。
 今後とも平和首長会議の加盟都市と密に連携し、核兵器廃絶に向けた取組を着実に推進してまいります。

(村上あつ子議員)
 被爆者の平均年齢は81.5歳。毎年5,000人以上の方の名前が死没者名簿に記帳されています。
 73年前のあの惨禍とその後の被爆者の苦悩・体験を後世に語り継ぐことは、私たち被爆二世・三世の使命であり、ヒロシマの使命です。市は、7年前から被爆体験伝承者の養成事業を始めました。一人一人の被爆者の体験を後世に伝えるというものです。現在何人の伝承者がおられるのですか。どういう活動をされ、それは一人平均どのくらいの活動になっていますか。お聞きします。

(市民局長)
 被爆から70年以上が経過し、被爆者の高齢化が進み、自らの体験を語ることのできる方が少なくなっている中、被爆者の体験や平和への思いを受け継ぎ、被爆者に代わってそれらを伝える被爆体験伝承者の養成事業を平成24年度から実施しています。
 現在、118名の方が被爆体験伝承者として活動しており、平和記念資料館において伝承講話を行うとともに、国の派遣事業により、全国の学校等に出向き、修学旅行の事前学習等として被爆体験を伝えています。
 平成30年度の活動実績については、本年1月末現在の10か月間で、平和記念資料館における伝承講話が954件、学校等に出向いて行う伝承講話が446件、合わせて1,400件となっており、一人当たりの活動件数は約12件となっています。
 本市としては、修学旅行のさらなる増加に向けて、派遣事業を一層活用したいと考えており、国においても来年度予算の拡充が予定されていることから、今後、被爆体験伝承者の活動件数は増加するものと考えています。

(村上あつ子議員)
 市は、2001年度から国の委託を受けて、被爆二世健康診断を実施しています。委託契約を行っている県内の医療機関の窓口で「被爆二世健診にきた」と言えば、被爆者健康診断とほぼ同じ内容の一般検査を受けることができ、医師が必要と認めた場合はさらに精密検査を受けることができます。まず、市として「被爆二世健康診断」をどう位置付けて、どういう取り組みをされているのかお聞きします。
 2017年度の実績で,被爆二世健診の受診者数は6,661人ですが、お聞きしたところ市は、被爆二世の数は掴んでおらず、したがって被爆二世全体から受診率をみることができません。希望者のみに次年度の健康診断の案内を送付することにとどまり、二世の受診率を上げていく方針も持っていないのが実態です。何年かのちには被爆者がいなくなるということが見えている今、被爆が及ぼす遺伝的影響を科学的、医学的見地から解明する上でも「被爆二世健康診断」は市が全国のリーダー的存在となって進めていくべき課題と考えます。
 そのためにはまず、二世・三世の実態調査に取り組む必要があります。また、健康診断の受診者証を交付するなどにより二世・三世の自覚を促すことが求められます。また、健康診断の受診対象を二世にとどめず、三世も加え、「二世・三世健康診断」とすべきと考えます。以上の3点についてご所見をお聞きします。

(健康福祉局長)
 国からの受託事業として行っている被爆二世健康診断は、被爆二世の方の健康不安の解消及び健康管理に資するため、実施しているものです。
 本市としては、この実施に当たり、広報や対象者への受診勧奨を積極的に行うことなどにより、健康不安を抱える被爆二世の方々の不安解消に役立つよう努めているところです。
 また、被爆二世や被爆三世への対策については、本来、被爆者と同様、国の責任においてなされるべきであり、その実態の把握についても、国が行うべきであると考えています。
 本市としては、被爆二世の健康診断についても同様の考え方に立って、広島・長崎両県・市による八者協において、その内容の充実を国に要望しており、本市独自に受診者証の交付や、受診対象の被爆三世への拡大などを行うことは考えておりません。
 引き続き、八者協を通じて、被爆二世健康診断の内容の充実について要望していきたいと考えています。

(村上あつ子議員)
 つぎに、世界遺産原爆ドームの価値を高め、保存することについてです。
 私たちは、世界遺産原爆ドームのバッファゾーン内に造られた「かき船」と「カフェポンテ」は撤去するよう求めてきました。鎮魂と核兵器廃絶を願う場にふさわしくないという理由からです。
 私は、元安橋東詰めに高層マンションの建設問題が浮上した時も、「かき船かなわ」の移転問題が起きた時も市の平和行政に大変不信感を抱き、将来を憂慮しています。
 バッファゾーンを保護することにおいては文化財保護法、都市公園法、広島市公園条例、河川法、景観法、広島市景観条例など複数の法律・条例が関係してきます。「かき船」はこれらの法令をうまく使って「建築物」を「船」だと言い張り、正当化しました。負の遺産・世界遺産原爆ドームを保護し、発信することを担うはずの平和推進部は蚊帳の外です。 当局は、「あの区域は来訪者のための憩いの場、賑わいの場として必要だ」と言いますが、バッファゾーンの外でいくらでも賑わいの場を作ればいいではありませんか。
 もう一つの負の遺産のアウシュヴィッツ収容所の敷地内には自動販売機ひとつなく、商業的施設は一切ありませんでした。それでいて「賑わい」がないのかということではなく、見学者がひしめいています。負の遺産、世界遺産への行政の姿勢の違いを目の当たりにしました。
 私は改めて、原爆ドームとバッファゾーンを保護する総合部署の設置を求めます。市長のご所見をお伺いします。

(市民局長)
 現在、原爆ドームのバッファゾーンは、「文化遺産及び自然遺産を人類のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存する」という世界遺産条約の目的を達成するため、同条約の指針に定める緩衝地帯として、平成8年の世界文化遺産への登録に当たって設定したものです。
 このバッファゾーンについては、国内関係法令等に基づき保護することとしており、これまでも世界文化遺産登録を所管する国際平和推進部と、文化財保護法、都市公園法及び広島市公園条例、河川法、景観法及び広島市景観条例などを所管する関係部局とが連携しながら、適切な管理を行っております。
 今後とも、各部局が密に連携することによって、市として、バッファゾーンの保護に取り組んでまいりたいと考えています。

(村上あつ子議員)
 次に不要・不急の開発の象徴である高速5号線シールドトンネル工事についてお聞きします。
 まず、2016年5月に約200億円で契約したシールドトンネル本体工一式の契約の増額問題です。そもそもこの契約額にはトンネル内壁の材料費が含まれていなかったとして公社に増額要求があった2017年2月の時点で、その事実を議会と市民に公表し、事業の費用対効果を再検証し、事業着手の再評価を行うべきでした。
 しかし、公社と事業者は21回も増額に関する協議をしながら市民と議会にその事実を隠し続けてきました。広島市も昨年の7月、事業者の増額要請について協議がされていることを知っていたにもかかわらず、知らぬ顔をして9月に掘削工事を始めたことは、県民、市民、議会を騙すやり方であり、許されません。
 なぜ、事業費の増額請求があった時点で公表しなかったのですか。なぜ、事業費が足りないことを知りながら、掘削工事を始められたのかその理由をお答えください。

(道路交通局長)
 公社からは、JVと工事費についての協議を開始するにあたって、大規模事業で注目を集めている工事であることから、これを公表することとしたとの説明を受けているところであり、公社として、最初にJVから増額要請があった時点では、「協議することを公表する必要がある事案」とは受け止めていなかったことによるものではないかと考えています。
 またJVは、請負契約に基づき、トンネル掘削工事を進めながら増額についての協議を行うことで、公社と合意していると聞いていますので、そうした当事者間の合意の中で、掘削工事は開始されたのではないかと考えています。

(村上あつ子議員)
 市長は、県・市・公社とのJVからの増額要請への対応についての協議の場において、いくら増えるかの金額が不明のまま増額を承認したのですか。市長は、今回の問題発生について市民に一言も説明されていません。事業主体の長として、きちんと市民に説明すべきです。お答えください。

(道路交通局長)
 本市としては、「金額が不明のまま増額を認めた。」というような事実はなく、また、JVが掘削工事を開始したことで、本市が増額を認めたということになるものでもありません。シールドトンネルの工事費に関しては、現在進められている公社とJVとの協議結果の報告を待って対処すべきものと考えているところです。
 なお、公社からは協議結果がまとまり次第、ただちに県・市に報告をしたいと考えていると聞いており、その際には公社において公表された内容を、議会にも説明することになると考えています。

(村上あつ子議員)
 これまで広島高速道路公社のトップは、県と市の再就職先になっています。2015年にシールドトンネル工事の公告を行い、以後事業者と技術提案の協議を続けてきた当時の高速道路公社の理事長・副理事長の名前と就任前の県・市での職名をそれぞれお聞きしておきます。

(道路交通局長)
 その当時の理事長は高井巌氏で、就任前の役職は本市の道路交通局長でした。
 また、副理事長は泉谷伸生氏で、就任前の役職は広島県道路企画課長でした。

(村上あつ子議員)
 昨年12月10日からトンネル工事はストップしたままです。掘削に一番重要なマシンの中央部に取り付けているツインカッター8個のうち7個が変形・損傷したというのです。しかも、ホルダーを取り付けている直径13.5メートルの台座が直径2.2メートルにわたって深さ最大27センチメートルもえぐられたということなので、少々の修理では済まない状況ではないでしょうか。
 原因究明中ということですが、現状はどうなっていますか。そもそも事業費を24億円増額して安全対策の一つとしてシールドマシンの前方に設置した探査機は機能していなかったのですか。今後の見通しはどうなりますか。

(道路交通局長)
 公社からは、JVが調査結果を取りまとめ次第、学識経験者で構成される高速5号線トンネル施工管理委員会を開催し、原因分析や補修方法等について審議する予定と聞いています。
 再開時期の目処等については、この審議の結果を待たなければならないと考えています。
 なお、議員ご質問の前方探査の装置は、掘削地点の前方に破砕帯のような脆弱な箇所がないか、また、多量の湧水の発生がないか等について把握するためのものであり、シールドマシン損傷に関係するような岩盤の強度を把握するためのものではないものと、公社から聞いています。

(村上あつ子議員)
 先月の閉会中の建設委員会の緊急質問に対する答弁で、当局は、シールドマシンのカッターの損傷や増額事業費などを含めた事業費総額が明らかになった時点で、費用対効果を再評価するとされています。現時点での費用対効果はどうなっていますか。今後どのくらい事業費が増えると事業効果の基準となる「1」を下回るのですか。事業効果が「1」を下回ることになれば、事業の必要性がないという判断になるわけですから、5号線建設は中止すべきです。

(道路交通局長)
 平成28年度に実施した高速5号線事業全体の事業再評価において、費用対効果を表す指標である費用便益比は、1.01となっています。
 今後、費用対効果を検証するに当たっては、費用と便益のそれぞれについて変動する要因を加味して算出する必要があることから、現時点で、ご質問のような数値の把握は行っていません。

(村上あつ子議員)
 これだけ大きな問題が起こっているというのに先日(2月18日)から中山側坑口からナトム工法でトンネル掘削が始まりました。トンネル工事の契約の増額要請を隠して掘削を始めたように、中山側でも知らぬ顔でトンネルを掘り、既成事実をつくるというのでしょうか。
 事業費の増額金額が判明した時点で、改めて事業の必要性を検証する必要があります。災害の検証、住環境への影響等も踏まえた検証を行い、そのうえで、市民に公開し、事業の再検討が必要です。市長の見解をお聞きします。

(道路交通局長)
 本市としては、今回公社とJVで行っている工事費についての協議は、トンネル建設に伴う地表面沈下や土砂災害等の周辺への影響に変化をもたらすのではなく、協議の結果、工事費が確定した場合は、事業採算性等を踏まえ、事業についての対応方針を県・市と公社で協議することになるものと考えています。
 こうした対応方針については、議会にも説明するとともに、これまで同様に事業主体である公社が中心となって、県・市もサポートしながら、地元にも必要な説明を行うことになるものと考えています。

(村上あつ子議員)
 次に、災害復旧についてです。
 昨年の西日本豪雨災害で市内でも規模の大小はあるものの、多数の崖くずれが発生しました。広島市南区では丹那地区において山林の所有者が組合(朝見原土地区画整理組合)を結成し、山を切り開いて団地を整備する区画整理事業が進められてきましたが、開発業者の倒産や、固くて大きな岩があるなどの理由から、開発が中断したまま、長年放置されてきたことが要因の一つとなり4か所で崖崩れが発生し、家屋が流出、全壊の被害が発生し、犠牲者も発生してしまいました。なぜ、きちんとした雨水処理対策がされていなかったのか、悔やまれます。
 現在、ビニールシートや土嚢などで応急処置はされているものの、抜本的な防災対策はされていません。周辺住民もいつ頃、どんな対策がされるのか、まったく説明がないと不安を抱き、今年の梅雨時期までには安全対策を講じてほしいと願っておられます。広島市には開発許可権者としての責任があります。民間の開発だからと対岸の火事のような態度ではすまされません。
 昨年の9月の建設委員会で、市がイニシアチブをとって丹那地区の防災対策を地域住民に説明することを求めましたが、その後どのように組合を指導され、現状はどうなっているのか、地域に説明をされたのかお聞きします。

(指導担当局長)
 朝見原土地区画整理事業区域の防災措置については、発災直後から区画整理組合に対し、適切な措置を講じるよう指導を行っており、すでに破損した仮設防護柵の撤去や仮排水路の整備などについては工事が完了しています。
 残る崩落法面の防災措置についても、梅雨時期前までに実施するよう指導を重ねた結果、先月、区画整理組合から、防災措置の内容について事前に市の了解を得たうえで、5月末までに工事を完了したい旨の報告を受けました。
 なお、このことについては、すでに本市からの地元の町内会長に説明しており、具体的な工事スケジュールが決まった後には、区画整理組合から、改めて地元の方々へ説明を行うよう指導しています。
 本市としては、地元の方々の不安を払拭できるよう地元説明会等を丁寧に行っていくとともに、梅雨時期前に着実に工事を完了させるよう、引き続き区画整理組合を指導してまいります。

(村上あつ子議員) 
 新年度予算案で、急傾斜地整備復旧資金融資事業を拡充する、予算額で1,818万2千円を計上しています。現行の融資要件を、自然崖、人工崖を問わず、がけの高さを2m以上、保全家屋数は1戸以上を対象にする緩和内容となったことは、小規模の急傾斜地所有者も対策工事がやりやすくなることは確かです。しかし、無利子とはいえ、借りたものは返さなくてはいけません。東区は安佐北区と並んで、急傾斜地崩壊危険箇所が市内で一番多い地域です。市は9月議会で市内のこういった危険箇所の対策に「10年程度」かかると答弁されています。防災対策を進めていくことは喫緊の課題です。今回の緩和は歓迎するものですが、もう一歩進んで、市独自の助成制度を創設することを強く要望しておきます。早急に検討してください。

(村上あつ子議員)
 市長は就任以来、たびたび、「自助・共助・公助」を強調してこられました。
 「まずは、自分のことは自分で解決しなさい、そのうえでできないことは地域で助け合いなさい、それでも足らないことがあれば公共が助けましょう」ということです。つまり、「公助」が一番最後に位置付けられています。このことが市民生活に冷淡な今の広島市行政のあり方につながっているのではないかと考えています。
 この問題は、1995年の政府の社会保障制度審議会勧告で、「社会保障は自助・自立が基本」と明確に打ち出して以来だと思います。その後、小泉内閣で社会保障構造改革を推進し、基本は「自助・自立」、それが難しければ「共助」で、それでも対応できない困窮者は「公助」でカバーするとしました。この流れの中で、社会保険制度の給付の削減や保険料引き上げなど市民への負担増やしが進められてきました。
この「自助・共助」の強調と、社会保障制度の給付削減、負担増政策の推進や、公的扶助について、「真に必要な場合に」といった言い方もよく行われてきていることから、今日、国では、常に「自助」、「共助」が先行し、「公助」は最後の手段、どうしても他に手段がない場合にやむを得ず「公助」が実施されるという考え方になってきていると言えます。これは、自分や家族、地域がどうしても解決できない場合に、最後の手段として、やむを得ず行政が助けてやる、「恩恵を与える」といった考え方です。
 憲法25条は、第1項で、『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』と謳っています。日本国憲法は、恩恵から契約や法律による権利へと発展してきた社会保障の歴史を踏まえて、社会保障を受けることを人間としての権利と定めました。
 したがって、社会保障を受けることは一人一人の国民の、人間としての権利、人権として保障されているのであって、やむを得ない時に「公」、行政が「助ける」というものではありません。必要な時は、人権保障の立場で、公共機関が積極的に社会保障制度の適用を行うということであり、さらに、社会の発展に応じてその内容も豊かにしていく必要があります。どうしてもやむを得ない時に、行政が助ける「公助」という考え方は、明治、大正時代の、援助を受ける人を、自立した人間として扱わず、生きていればいいというだけの最小限の恩恵を与える、つまり、救済は、家族および親族、ならびに近隣による扶養や相互扶助にて行うべきであるとし、どうしても放置できない身寄りのない貧困者だけはやむをえず国庫で救済してよいとされた時代に逆戻りしかねない考え方です。「公助」の考え方とよく似ています。
 2012年の社会保障制度改革推進法で、社会保障制度の基本を「自助・共助・公助」とした以降、松井市長も強調されてきましたが、松井市長が言われた「公助」は、社会保障ではありません。日本国憲法で謳う社会保障は、今でいえば、今日の一般的な社会生活の水準に応じた、医療水準が保障され、文化水準を享受できる、人間らしい生活が、誰でも平等に与えられるべき人権です。
 憲法25条が保障した社会保障について、改めて市長のお考えを伺います。

(市長)
 自助・共助・公助の関係については、日本国憲法第25条を持ち出すまでもなく、「広島型・福祉ビジョン」において示しているところです。
 すなわち、今後さらに少子高齢化が進展する我が国において、現在の「公助」としてのシステムである社会保障が将来にわたって機能するためには、勤労の権利を有し義務を負う国民が、自らの生活や健康は自ら維持するという「自助」、地方自治を支える住民が相互に支えあうと言う「共助」とともに、公的機関が社会的な義務を果たすために必要となる支援を行うという「公助」を適切に組み合わせることが重要であると考えています。
 こうした考えのもと、高齢者いきいき活動ポイント事業の実施により、高齢者の社会参加の促進や活動の場となる地域団体の活性化をはかるなど、自助・共助の精神を踏まえた環境づくりを積極的に進めるとともに、必要な公助はしっかりと行ってきていると考えているところです。
 本市としては、現行の国の社会保障制度を踏まえながら、こうした取組が有効に機能するように努めることにより、市民の誰もが住み慣れた地域で、それぞれに役割を持ち、お互いに支えあい、心豊かに暮らし続けることができる地域共生社会を形成し、「世界に誇れる「まち」広島」を実現していきたいと考えています。 
(村上あつ子議員)
 また、憲法25条では、第2項で、『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』とし、国は、社会保障の水準を、日本社会の発展状況に即して、「向上」、「増進」させることを義務づけています。
 国とは、日本国政府及び地方自治体です。日本国憲法制定から70年経ち、国民の一般的生活水準は大きく向上しています。日本は世界有数の経済大国の一つとなっています。その国民に保障された生活水準が、生きていればいいというだけの「最低限度」のものであっていいわけはなく、その水準を引き上げることを通じで、日本国民の生活水準の底上げを進めていかなければならないのです。先進諸外国に引けを取らない水準の健康で文化的な生活を保障する責任が、日本の行政、国と地方自治体にはあります。広島市行政は、どのようにお考えでしょうか。答弁を求めます。

(村上あつ子議員)
 残念なことに、常に世界から注目されてきた広島市でも、市民が受ける社会保障水準は後退の一途ではないでしょうか。政府が社会保障制度を切り下げれば、広島市政は政府の切り下げそのままに執行しています。
 例えば、生活保護基準が繰り返し切り下げられ、食費を削ったり、お風呂の回数を減らしたり、ぎりぎりの生活をさらに切り詰めている家庭がたくさんあります。介護保険のサービスが削られたのに保険料だけは着々と上がってきました。 65歳になった障害福祉サービスを利用していた方には、生活を成り立たせていたサービスの利用が制限された上に新たな負担が生じています。現状でも、生活を削って払っている、所得実態を無視した高額な国民健康保険料を、今まで以上に際限なく引き上げようとしていますし、もともと水準の低い高齢者公共交通機関利用助成制度も実態を無視して廃止しようとしています。
 さらに、いまの広島市政は、広島市だけ独自の福祉施策をやると、他の自治体と格差が生じて不公平だ、などと言って、例えば、障がい児の給食費(年間134万円)の助成をばっさり打ち切りました。昨年4月から国民健康保険の運営主体が広島県に移ったことで、政府の言いなりで県が一般会計からの決算補てん等目的の法定外繰り入れを廃止する方針を受けて、市もこれを了承し廃止するとしました。そうなると、保険料は毎年着実に引き上げられていくことになります。
 国保料は、所得で比較すると、組合健保や協会けんぽに比べて非常に高いことが明らかで、全国知事会は、せめて協会けんぽ並みに引き下げるために、年間1兆円の政府の支出を求めていました。日本共産党は、全国知事会の提案に賛同するものです。
 同時に、単に政府の支出を増やすだけにとどまらず、他の健康保険制度にない応益負担、すなわち広島市で言えば均等割りと平等割を廃止する必要があります。広島市としても、所得に比べて国保料が極めて高額だということはよく認識しておられるはずです。
 医療保険制度として、国保も協会けんぽも組合健保も所得に応じで保険料を出し合う点は同じです。しかし、国保だけは、応益割があるために、所得を無視した高額な保険料となっています。国保は社会保障制度に重要な柱と位置付けられているにもかかわらず、所得を無視した応益割は、社会保障制度の意義からも、公的医療保険制度の意義からはずれたあり方です。とくに、所得のない子どもにまで保険料を課す均等割りは、前近代的な人頭税と同じであり、早急に廃止するべきものです。
 国民健康保険料の応益割の問題と、高額な保険料の実態について、市長はどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。また、所得のない子どもにも保険料を課す現行の仕組みをどのようにお考えでしょうか。子どもは均等割りの対象からはずすべきですがお考えを伺います。

(健康福祉局長)
 国保は、高齢者や低所得者の加入割合が高くならざるを得ない制度であることから、所得に対する保険料負担が重くなっています。
 このため、国として、低所得者の保険料について、法律で軽減措置を講じており、この軽減措置を、平成26年度から6年連続で拡充してきていると承知しています。
 また、国保料の負担率引き下げについては、制度が抱える構造的な課題ととらえ、その解決のために、国に対して、「白本要望」を行っているところです。
 次に、国保料の応益割は、国保が、お互いを支えあう保険制度であることから、設けられているとものと承知しています。
 子どもを均等割の対象とすることについては、保険制度として維持しつつも、子どもが増えれば、一定の軽減を図ることとし、国において平成26年度から毎年度制度拡充されてきているものと承知しています。
 なお、子育て世帯の負担軽減については、国において所要の措置を講ずるべき者であることから、これまでも、指定都市市長会や全国市長会などを通じて、国に対して、支援制度の創設を要望しているところであり、今後も必要に応じて国に要望してまいります。

(村上あつ子議員)
 広島市独自の生活関連施策をどんどん削ってきています。それでは、何のために、市民が選んだ人が市長を務める地方自治体があるのでしょうか。市民生活の実態や市民の意見を踏まえて、市独自の実情に応じた独自の施策を実施するためではないでしょうか。国が決めたことをそのまま市民に流すだけなら、選挙で市長を選ぶ必要はありません。
 広島市は、何のために税金を集めているのでしょうか。市民から集めた血税は、市民生活を守り豊かにしていく、そのことによって広島市を発展させるためではないのでしょうか。
 そもそも、国と自治体は、主権者である国民、市民の人権を保障することを使命とする機関です。それに必要な費用を確保するために税金を徴収することが認められています。その税金は、第一義的に、国民生活、市民生活のあらゆる部面における、健康で文化的な生活を保障し、常に、向上させるために、使われなければなりません。
 経済界の求めに応じて大規模な公共事業を行うための財源を理由に、人権である社会保障権を損なったり、削ったりしてはならないのです。
 以上について、市長のお考えをお聞かせください。

(財政局長)
 大規模プロジェクトの推進は、新たな投資を呼び込み都市の活力を生み出し、ひいては、税源をかん養するために重要であると考えており、将来にわたって社会保障を機能させるための財源の確保に資するものと考えています。
 なお、社会保障に関しては、国の果たすべき役割と本市が果たすべき役割を整理したうえで、引き続き、選択と集中の徹底や民間委託などによる財源確保と国からの財源確保をバランス良く行うことにより、その充実に努めてまいります。

(村上あつ子議員)
 さて、私事ですが、私は今期をもって市会議員を引退します。
 22年間、保育の現場で子どもたちの豊かな発達を願って同僚とお母さんたちと一緒に保育運動に携わってきました。議会では、子どもと高齢者をテーマに「子育ても老後も安心のひろしま」をライフワークに取り組んできました。
国の医療費改悪に伴い、市独自の重度心身障害者医療費補助が打ち切られるという時、昼夜を問わず何度も交渉を重ね、市は、助成の継続を決断しました。この時の障害者のかたと家族の方の喜びの笑顔はその後の私の議会活動の糧になっています。
 初当選した1999年のはじめての6月議会の真っ最中に、佐伯区・安佐北区の一部で大雨による土砂災害が発生しました。その後、2014年の安佐南区・安佐北区で発生した土石流災害。そして、昨年7月の集中豪雨と、この20年間に3度も大きな災害を経験しました。その都度、被災者の生活再建最優先で取り組んできました。
 昨年の西日本豪雨で東区も甚大な被害が発生しました。河川の氾濫で住宅ごと濁流にのみこまれ亡くなられた方は、14年前から一緒に河川の改修を要望してきた方でした。市は「県の事業だ」と言って他人事のように対応。県は「予算がない」「順番まち」を繰り返すだけでした。
 その方は、災害発生の2,3日前から川の流れが違うことに気づかれ、消防署や区役所に「様子がおかしい」と何度も電話をされていたということをご家族の方からお聞きし、行政が早くに対応していたらここまでの被害はなかったのではと悔やまれてなりません。
 広島県は全国一土砂災害危険個所が多い自治体です。2000年に土砂災害防止法がつくられたのは前年の広島の災害がきっかけでした。何をおいても防災対策に傾注しなくてはいけないはずの県の砂防予算は、この20年間ずっと右肩下がりで減っています。昨年の県議会でこのままでは200年かかるとの答弁がありました。こんなことでは県民・市民の命と財産は守れません。災害で亡くなられた方と遺族の方の思いに報いるためにもこういった県政を質していく決意をもって4月の県議会選挙に立候補する決意をいたしまた。
 私の決意を申し上げて、総括質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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