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広島市立学校での平和学習の副教材から「はだしのゲン」を使った資料が削除されることについて
2023年2月21日
日本共産党広島市会議員団
広島市立学校の平和学習の副教材「平和ノート」に、漫画「はだしのゲン」の一部が教材として活用されていたのを見直して別の資料に入れ替えるとの報道がなされ、全国的な問題となっています。私たちは、教育現場で行われる教育の内容に政治が介入すべきではないと考えており、この問題も慎重に扱う必要があると判断しています。その上で、党市議団としての考えを申し上げます。
小学校低学年を対象とした「ひろしまへいわノート~いのち・しぜん・きずな~」という副教材はそれぞれの単元ごとに異なる教科で使われています。「はだしのゲン」の一部を選んで教材としているのは小学3年生の道徳の教科の時間で行われる「家族のきずな」と「引きさかれる家族」という題材のところです。
「はだしのゲン」を外した理由は、「浪曲の場面は、児童の実態に合わない。鯉を盗む描写は、誤解を与える恐れがあり、補足説明が必要となるため、教材として扱うことが難しい。」「ゲンの気持ちを考えることに留まり、教材を通して、自分が平和について考えたことを伝える学習となっていない。」「漫画の一部を教材としているため、被爆の実相に迫りにくい。」となっています。
「被爆の実相」とは、熱線や爆風、そして放射線被害によっていかに都市が破壊され、人々が殺され傷ついたか、その被害のあり様がいかに非人間的な残酷なものであったか、どのような後障害があったか、それが被爆者やその家族のその後にどのような困難をもたらしたか、そのような中で、子どもを含めて、被爆者たちがいかに生きたかなどが「被爆の実相」だと考えます。しかし、それは単に子どもたちに資料を提供しただけでは理解できません。
被爆当時の時代状況や、社会的な様々な制約、当時の人々の一般的な考え方や、都市が壊滅状態になったなかで苦闘しつつも子どもなりの知恵を働かせて生きようとしていることなどは、今の子どもたちだけでなく教員でさえも、そのままでは実感が得られなかったり、理解しにくかったりするのが当然です。教員自身がそうしたことについて実感が得られるように学習し理解したうえで教材として活用することが、子どもたちが理解し考えるためには当然必要なことです。これは、被爆者から直接話を聞く場合も同様ですが、被爆から年数が経てば経つほど、時間も手間もかけて子どもたちが想像でき理解できるように手助けをする教員側の努力が求められます。
「はだしのゲン」は、原爆の被害がいかに人間生活や社会を破壊し人類の生存と両立できないかを後世に知ってもらうために、被爆を体験された作者が心血を注いで書き上げられたものだと思います。「はだしのゲン」は、子どもたちに核兵器が使われたらどんなことになるかを考えてもらうことができる極めて有効で重要な資料として認められ支持されている作品だからこそ、世界中で翻訳され広がっているのだと考えます。
広島に修学旅行で平和学習に来る子どもたちは多くが「はだしのゲン」を読んで来るそうです。ところが広島の子どもたちは「はだしのゲン」に触れたことがないということでいいのか、と率直な疑問が出てきます。
この問題は、幅広い関係者や市民に、見直しをしていること、どういう見直しをしようとしているかを知らせ、様々な意見を集めた上で慎重に取り組むべきことだったのではないでしょうか。最近の広島市は、オープンではないところで「専門家」といわれる方々を集めて、そこで出された結論だけが市民に示される、結論はこれだとして変更はしない、というやり方が目立ちます。このような姿勢が不信感や反発を招いているのではないでしょうか。
広島市では、以前は学齢に応じてすべての学校の子どもたちが教員と一緒に平和記念資料館を見学していましたが、費用がかかることを理由に今はやっていません。広島市の子どもたちが資料館に行ったことがないということになりかねない状況があります。
平和記念資料館に行ったりして、学齢に応じて被爆の実相を理解する手助けとなる「はだしのゲン」をはじめ、全国の子どもたちだけでなく、外国の子どもたちにも知られている作品に触れる機会がきちんとある、そういうことが求められているのではないでしょうか。
平和教育の分野にもっと予算を出し、教員の数も増やして余裕をもって平和教育ができるような条件を整備することが、広島市の教育行政に求められています。日本共産党広島市会議員団は、そうした立場でこうした問題にも引き続き取り組んでまいります。
【資料】
小学校低学年「ひろしまへいわノート~いのち・しぜん・きずな~」
小学校高学年「ひろしま平和ノート~郷土ひろしま 被爆と復興~」
高等学校「ひろしま平和ノート~ヒロシマ発 持続可能な社会の実現~」
2013年 平和教育プログラムの策定、学年別教材一覧
2017年 広島市立学校平和教育プログラムとは(京都教育大学の平和教育学事典より)
※策定の背景と経緯、概要など
2023年2月8日 平和教育プログラムの改訂について