トップ保育園民営化特集 > 保護者らの声に背く公立保育園民営化方針 日本共産党広島市議団の見解




 広島市は4月末、「2010年からの10年間で20園の民営化を実施し、2009年度には候補園を明らかにする」という公立保育園の民営化方針を明らかにしました。以下、党市議団の見解を掲載します。


「市民のための市政」の立場に反する
 指摘すべき最大の問題は、ここに至る経過全体が、秋葉忠利市長の公約の柱である「市民のための市政」という立場に真っ向から背くものだということです。
 公立保育園を「民間移管」するという市の考えは、2005年2月、地方自治法「改正」に伴う「指定管理者制度導入の基本方針」のなかで突如打ち出されたものでした。経費削減だけを目的にしたもので、「民間でできるものは民間で」「官から民へ」という小泉内閣の「構造改革」路線が背景にあります。

 これに対し、「広島市公立保育園保護者会連絡会」「豊かな保育をすすめる会」の保護者や市民は、保育労働者とともに「私たちの声を聞いて」と粘り強い運動に取り組み、昨年までに集められた「民間移管」反対署名は累計約42万人分に達しています。
 89の公立保育園の97%、86園の保護者会が反対の声をあげ、この問題で市に意見を寄せた410人のうち、「民間移管」賛成はわずか11人(2.7%)でした。

 しかし、市はこの間、保護者、市民に「民間移管」について何ら情報提供をせず、置き去りにしてきました。

理解得ない民営化は違法
 この点では横浜地裁が2006年5月、民営化に反対した保護者が起こした訴訟で、横浜市の民営化強行を「違法」と断罪。主たる理由は「保護者の同意を得ずに実施した」ことでした。
 前市長が民営化を強引に推進しようとした三次市では、「不要不急のハコもの事業ではなく、生活密着型の市政を」と訴えた新人が4月の選挙で当選し、「民間移管」が凍結されました。

人件費大幅削減が市のねらい
 市の方針は、2010年から10年間で毎年2園を民営化するというものですが、そのねらいは別表(A)に示す通り、公立保育園運営費のうち、国の基準をこえる「市の上乗せ予算」(「その他の費用」)を減らすことがねらいです。

        別表(A)
区分 公立 私立
運営費 国基準運営費
(相当額)
人件費 58億3225万円 55億9642万円
物件費 15億6388万円 13億8204万円
その他費用(市からの補助金) 45億7143万円 4億0446万円
合計 119億6757万円 73億8292万円

 実は、保育士の勤続年数は公立では20年2ヶ月、私立は4年10ヶ月と大きな開きがあります(2007年4月1日現在、市の調査)。国基準の保育所運営費では長く働き続けられないため、公立ではそれに上乗せし、定年まで働き続けられるようにしているからです。「その他の費用」はほとんどが人件費に充当されています。

公立も私立も保育内容充実こそ
 人件費が大幅に削減され、安定した勤務が保障されないとしたら、重要な発達段階にある子どもたちに与える影響ははかりしれません。民営化がすすんでいる東京都では、低賃金で1年雇用の派遣保育士の入れ替わりが激しく、担任の保育士がころころ変わるといいます。
 人間社会のあり方がそうであるように、保育園もベテラン保育士、中堅保育士、若手保育士によって構成され安定した体制が確保されてこそ、子供たちの体、心の健やかな育成に責任を負うことができます。保育技術、保育力の継承も可能となります。

 市長は5月23日の記者会見で、「勤続年数だけで、保育の質が低下すると主張するのは根拠がない。私立保育園に対して失礼」(「毎日」5月24日付)と述べていますが、「保育のレベルは低下させない」というのなら、公立も私立も分け隔てなく必要な予算を投じることこそが、地方自治体の取るべき態度ではないでしょうか。公立、私立の予算格差に着目して民営化を推進する市の姿勢そのものが厳しく問われなければなりません。

 児童福祉法第2条は国及び地方公共団体の責務を、「児童の保護者とともに、児童を心身ともに、健やかに育成する責任を負う」としています。

市に予算がないのではない
 口を開けば「財政難でお金がない」と市は言いますが、大型開発をいっそう見直すなら、予算は十分確保できます。
 今年度の主な大型開発事業の予算額は高速道路約107億円、港湾開発・市負担分約12億円、現在工事が本格化している東区若草町再開発など駅前再開発の市負担分約14億円と、合計134億円になります。

 秋葉市長は初当選以来、深刻な財政危機打開へ大型事業見直しを進め、私たち日本共産党も、それを評価して2、3期目の市長選では、
@大企業奉仕の「自民党政治の持ち込みを許さない」
A市政の問題を正し、良い点を発展させる
B独自候補を立てない
の態度で選挙にのぞみ、市政の民主的前進に力を尽くしてきました。

 その結果、政令市移行後では、2005年度当初予算から民生費が土木費を上回るようになりました。しかし別表(B)にある通り、全国の政令市の2006年度決算で比較すると、広島市の土木費の構成比は上から4番目と高く、暮らしのための予算・民生費は逆に、下から4番目の24.2%です。
 しかもこの間の予算編成では、党派を超えて住民の反対が高揚する高速5号線二葉山トンネル計画など、高速道路予算を「聖域」扱いにする態度が目立ちます。ここを思い切って見直せば、予算は生み出せます。

市自身の努力が台無し
 「広島市公立保育園保護者会連絡会」「豊かな保育をすすめる会」が5月16日に出した「保護者・市民の声に耳を傾け、未来ある子ども達のための施策を」の声明も指摘する通り、広島市は戦後まもなくから0歳児保育を実施するなど、全国に先駆けて充実した保育実現に努力してきました。
 近年でも保育料の多子軽減、子育て支援事業の全国実施、延長保育・障害児保育の拡充など、公立保育園が大きな役割を果たしてきました。
 今回の民営化方針は、こうした努力のなかでつちかわれた「公立保育園の経験と実績、そこに寄せられる市民の信頼という財産」(「声明」)を、市自らの手で破壊する以外の何物でもありません。

広島市の未来を考えるなら
 今回の方針の最大のキーワードは「財政的効率性」。公立保育園は「非効率」で私立保育園は「効率的=安上がり」という図式が、前提になっていますが、公立と私立の間に事実上分断を持ち込むことにもなるこうした発想は、教育や保育という人を育てる事業に、最もなじまないものです。

 いま「少子化」が日本社会全体の大問題ですが、こんな考えの「対策」は、欧米諸国にはありません。子どもを産み育てることが喜びとなる「子育て支援」こそが、世界の流れです。
 「保育は人が人を育てるものであり、お金がかかるのが当たり前です。そういうものを経費削減の対象にしないでください」と市に寄せられたこうした意見こそが世界の主流ですし、保護者、市民の多数意見です。
 欧米諸国の子どもに関する費用がGDP(国内総生産)比2〜3%であるのに対し、日本は0.8%にすぎません。

 市長が真に広島の未来を考えるのなら、政府・財界主導の路線をそのまま持ち込むのではなく、これまでの市の保育行政の到達点を生かし、「安心して子供を産み育てられる社会」実現へ力をつくすべきです。
 「市民のための市政」という政治姿勢に、忠実であるべきです。

 日本共産党は、
@国の保育所運営基準、国の負担率を大幅に引き上げる
A「保育所整備計画」をつくり、認可保育園の新・増設を進めるとともに、延長・夜間・休日・一  時保育、病後時保育などの要求に応える
B公立保育園を守り、保育所運営費を増やして、民間保育園への人件費補助を増やす
C保育予算を増やして、高い保育料を引き下げる
の政策を掲げ、引き続き保護者、市民、保育士のみなさんとともに、議会内外で頑張ります。


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