2002年第2回定例会(6月議会)
文教委員会(7月2日) 石川武彦議員

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愛知県犬山市に学べ/勉強のつまずき対策について
先生の健康は悪化の一途/30人学級は緊急課題
日の丸・君が代の強制による処分について


愛知県犬山市に学べ/勉強のつまずき対策について

 今年、NHKや多くのマスコミが、勉強につまずいている子どもの対策に取り組んでいる愛知県犬山市について報道したことをふまえ、石川武彦議員と中原ひろみ議員は同市を視察しました。石川議員は、小中高で勉強についていけない子どもが増えており、これが不登校や中途退学増加の一つの原因になっていることを、文部省や愛知県犬山市の調査の実例をあげて示し、広島市の実態を把握しているかと質問しました。

【市答弁】負数が出てくるところで一番わからなくなっている。これに対しては、先生に指導書を配っている。

【石川議員】この指導書で、つまずいた子どもが減ったという目に見える成果は出ていない。広島市では先生に指導書を配っているが、結局は個々の先生の能力まかせになっている。35人以下授業も小学1、2年生と中学1年生だけで、その他の学年は40人学級のままだ。
犬山市教育委員会は「犬山の子は犬山市が責任を持つ」を合言葉に、現場の先生がどこでつまずいているかを共同調査し、つまずきを無くす副読本をつくり、教育予算も増やして嘱託の先生を増やしている。ここが違う。犬山市の経験を調べて学ぶべきだ。

【市答弁】つまずきを無くすことは必要。改善したい。

「授業がよくわかる」と答えたこども(98年文部省調査)
  小3: 22.1%   小5: 17.7%   中2: 4.7%   高2: 3.5%
2000年度愛知県犬山市の調査からの抜粋
《小5算数》
 32−24÷8=29  正解率 67%

《小5算数》
 銀行で一万円札を100円玉に両替すると100円玉は何個になるでしょうか。
 答え100個  正解率 55.7%

《中1数学》
 0.18÷1.4の商を100分の1まで求め、あまりも求めましょう。
 答え 商0.12 あまり0.012  正解率 商45.1% あまり12.3%

《中1数学》
 3÷4を分数と小数で表しなさい。
 答え 分数3/4 小数0.75  正解率 分数82.6% 小数62.5%

【参考】広島市の中学一年生を対象とした「基礎計算力調査」結果

 1.7−0.6÷1.5=1.3  1981年正解率 71%  1987年正解率 64%

広島市では、すでに1987年の時点で、犬山市の正解率(67%)よりも低くなっていることになります。

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先生の健康状態は悪化の一途/30人学級は緊急課題

 5年前の97年(平成9年)に、NHKが教師を対象に「あなたは今、本当にやりたい教育ができていますか」というアンケートを実施しました。その回答は、いいえ79%、はい11%、その他10%。この回答のうち、約8割を占める「いいえ」の理由の上位は、「ゆとりがなく多忙」「カリキュラムが多い」「クラスの人数が多い」というものでした。


【石川議員】5年前がこの状態だ。週完全5日制になった現在、月曜から金曜の勤務は更にゆとりがなくなっている。30人学級実現の請願審査で、完全五日制になる前でも、現行40人学級での先生の超過密勤務と病気の先生が増えつづけている実態がある。今年4月からの五日制施行後は更に残業が増え続けており、その面からも35人、30人学級実現は急務だ。

石川議員が示した教師の超過密労働の実態 (県教委調べ)
●教員残業時間
週平均20時間(1日平均3〜4時間) H11年以降、残業は増加の一途

●「勤務軽減」「休ませた方がよい」と診断された教員の人数
(学校医の総合判定C2以上)

H11年 全体の7.3%
H13年 全体の9.0%(620人 教員全体の1割近く)

●長期休職者の人数
H 9年 44人(うち精神疾患11人)
H13年 67人(うち精神疾患31人)
4年間に「長期休職者」は1・5倍 精神疾患は3倍にも達している

【石川議員】学校五日制がゆとりの中で教え学ぶのが目的なら、40人学級を35人学級へ、さらに30人学級へと改善するのが急務ではないか。現在のはばたきプランは数、理、国、英語のみ35人以下授業にするというものだが、これも、小1、2年生と中1年生が対象で、つまずく子が最も増える小3以上、中2以上は40人学級のままで、今後の改善策は何も示されていない。市長公約の20人学級を目指すなら、すぐにでも35人学級を実施すべきだが、こういう計画は誰が責任をもつ立案するのか。

 石川議員は、責任の所在をはっきりするよう市当局に迫りましたが、市当局は、実施中の「はばたきプラン」の内容を説明するだけで、質問には答えませんでした。

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日の丸・君が代の強制による処分について

 今回、安佐南区の小学校の卒業式で、君が代斉唱をしなかった教師が処分されました。広島市では初めての事件でした。石川議員は「教職員から内心の自由を奪うもの」として追及しました。

【石川議員】処分の理由はなにか。

【教育委員会】
地方公務員法32、33条の職務命令違反。

【石川議員】その職務命令は何が根拠か。

【教育委員会】学校指導要領で、国家・国旗について教育することが明記されており、教員は身をもって示す必要があるからだ。

【石川議員】憲法には、国民の基本的人権の保障が明記されているが、学校指導要領には、超憲法の拘束力があるのか。あるかないかだけ答えてほしい。

【教育委員会】超憲法的拘束力はないと考える。

【石川議員】「国旗・国家」法制定にあたり、99年6月29日の衆議院本会議で小渕首相は、「今回の法制化にあたり、国旗の掲揚に関し、義務付けを行うことは考えておらず、従って、国民の生活に何らの影響や変化を生じることはないと考えている」と答弁している。この国民のなかには、生徒、父母はもちろん、教職員も含まれていると思うがどうか。

【教育委員会】
国民のなかには、教職員も含まれていると考える。

【石川議員】それならば憲法19条の、「思想信条の自由」にともなう内心の自由は、教育の場合も、完全に保障されるべきではないか。「内心の自由」とは、学者によって表し方は違うが、次のことを指している。

内心の自由
@国家が、特別の思想、信条、倫理的価値観を個人に強制しないこと。
A国家が、個人の内心にある思想、信条の告白を強要したり、その内心を推知させる何らかの行為を強制することをしてはならない。

【石川議員】
今、学校の卒業式で、先生や保護者、生徒に「起立して歌え」というのは、この内心の自由を侵害する「踏絵」ではないか。

【教育委員会】学校指導要領にもとづき、国歌斉唱にあたっては起立して歌い、模範を示すことは必要だ。その場合も内心の自由を保障するのは当然だ。

【石川議員】
踏絵を踏ませ、処分までしておいて、内心の自由はあるなどというのは全くおかしい。こんなことが拡がるなら、おそろしい世の中になっていく。
もう一つ。昭和22年3月31日に成立した教育基本法の第10条には、「教育は不当な支配に服することなく、国民に対し、直接責任を負う」「教育は真理、真実のみに忠実たれ」とも書いている。この「不当な支配」というのは何を指しているのか。

【教育委員会】「不当な支配」というのは、「戦前、軍国主義的なものに動かされていたこと」を指している。

【石川議員】国家権力が教育に介入することを禁じた規定だ。それなら、県教委の指導で、市教委がこういう処分をするのはおかしい。市教委は県教委の下部機関か。

【教育委員会】下部機関ではない。自主的な機関だと考えている。

【石川議員】では今回の処分は市教委の責任で行なったのか。

【教育委員会】市教委ではなく、あくまで校長の責任で行なったもの。

【石川議員】それなら聞くが、校長は、職員の「思想・信条・内心の自由」を侵すおそれがある職務命令を出す権限があるのか。

【教育委員会】指導要領にもとづく職務命令だから・・・

【石川議員】おかしい。校長の責任とすると、命令を「出す人」「出さない人」がいる。全国には命令を出さない校長はたくさんいるのではないか。

【教育委員会】いると思う。

【石川議員】
思想、信条の自由を侵すおそれがある職務命令は出すべきでない。

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