大型開発の見直しについて、秋葉市長の政治姿勢を問う
12月11日、皆川恵史議員が一般質問にたち、大型開発の見直しについて秋葉市長の政治姿勢を問いました。質問の趣旨と市長の答弁は次の通りです。(政治姿勢のみ掲載)
秋葉市長の答弁
「大型開発見直し」への秋葉市長の答弁について市議団の見解
「開発優先」政治=いわゆる「負の遺産」が、秋葉市政で克服されたか
(皆川議員の質問)
日本共産党はこの3年余、これまでの市政が残した「開発優先」の政治――いわゆる「負の遺産」が、秋葉市政になってどのように克服されたか、地方自治法にあるように「住民の福祉の増進を基本にする」という自治体本来の姿にどのように立ち返ってきたか――という点で見守り続けてきました。
90年代、全国の政令市がいずれも自民党政治の下請け機関と化してゼネコンが喜ぶ巨大開発に熱中し、福祉を削ってきましたが、なかでも広島市の土木費突出、民生費の落ち込みは、群を抜いており、平岡市政の8年間は大変なツケを私たち市民に残しました。
土木費が予算の30%以上を占め、もっともひどい時期には、40%を越え、異常な予算となりました。他の政令市と比べて、土木費は一人当たり2万円、土木費全体で200億円も多く、逆に民生費は、一人当たり二万円少ないという状態がずっと続き、これが福祉を本流にすることを妨げてきました。
◆土木費の半分近くは不用・不急の大型公共事業につぎこまれ
土木費の半分近くは不用・不急・採算性なしの大型公共事業に注ぎ込まれてきました。「ポートルネッサンス21」と銘うった出島沖の開発も「メッセコンベンションシティ」という大型見本市展示場計画も、高速道路網計画もドーム球場構想も全部この時期に計画され、着手されました。
その財源づくりのために、市は借金を八年間に二倍の8千億円に増やし、福祉を犠牲にため込んできた基金428億円をすべて取り崩し、市民福祉の予算をさらに削って、しゃにむに大型開発につぎ込んできました。
膨れ上がった借金の返済額は、今や、年625億円、一日1億7千万円という途方もない額になっています。これらの開発事業は今も継続中で市の予算の重しになっていることは、みなさん、よくご承知の通りです。
◆議会は、税金の使い方をチェックする機能を果たしてきたか
同時に、このような市政に対して、我々議会の側はどうであったか。無茶苦茶な税金の使い方をチェックするのが議会の役割ですが、毎年の予算に無条件に賛成するだけでなく逆に「もっとやれ」「もっとやれ」とあおってきたことはなかったか。例えばヤード跡地の購入問題―97年(今から5年前)、この用地購入について市議会に報告があった時、バブルも崩壊し、果たして大丈夫かと一部慎重論も出されましたが、結局、我が党以外は異議を唱える会派がなく、「議会が了承した」ということでこの土地が購入されました。この時、我が党は「はじめにドーム球場ありきという見え見えの用地購入は、将来に禍根を残す」と反対しましたが、今、まさにそうなっているのではないでしょうか。
◆「脱ダム」大型開発優先からの脱却は全国の流れ
現市政を批判する前に、各会派が胸に手をあてて反省すべきは、きちんと反省することが求められていると思います。こうしたなかで、秋葉市長は、四年前の市長選挙で、「教育・福祉重点に不況対策をすすめる」「20人学級実現プランを平成15年までにつくる」など50項目の公約をかかげ、それが広範な市民の共感を得て当選されました。
この間、保育料の据え置き、小児夜間救急体制の充実、小学校1、2年生の35人以下学級の推進、保育園、特養ホームの前倒し増設、市長交際費・公文書・審議会の全面公開、黒い雨地域への一万人アンケート実施など、市民の声を反映した一定の施策を実施してこられ、その努力は大いに評価したいと思います。
しかし、保育園の待機児447人、特養ホームの待機者3272人、児童館の未設置30館、全国トップクラスの不登校の児童、生徒比率、低所得者の住宅難など、多くの課題は積み残されています。とりわけ、今多くの市民が、是非実現をと望んでいる五項目の要求― (T)
乳幼児医療費補助を就学前まで拡充すること (2) こども専門病院の建設 (3)
30人学級の早期実現 (4)介護保険料・利用料の減免制度の拡充 (5)高い国保料の引き下げは、その多くが他都市ですでに実施されており、市民の切実な願いです。
秋葉市長がこれらの市民要求に応えようとすれば、今、引きずっている過去の「負の遺産」に思い切ってメスを入れ、民生・教育分野に予算を回す以外にありません。
長野県では、「脱ダム」を掲げる田中知事を圧倒的な県民が再選し、その後県議会も様変わりして、土木予算はかつての2分の1に減りました。ダムにつぎ込んでいた予算が、特養ホームやケアハウスなど福祉型に切り換わり、念願だった30人学級も始まりました。県民の意向を汲んだ知事の強い意志が形となって現れつつあります。最近では、熊本市、尼崎市でも、無党派市民がたちあがり、それまでの古いカラの政治を打ち破り、新しい市長を誕生させました。
熊本市では、〃住民がなんと言おうが川辺川ダムはやるという自民党にはいられない〃こういって自民党をみかぎった前県議の新人候補が、自民・公明・保守の推す現職を破り初当選しました。尼崎市でも更なる福祉の切り捨てと、行革を掲げ、共産党以外の全政党が推した現職市長を破って全国最年少の女性市長が誕生しました。 どちらも選挙前の予想を裏切る見事な勝利でした。日本共産党は、これらの選挙で「新しい政治の流れをつくろう」と広範な無党派市民と力を合わせてたたかい、勝利に貢献しました。
◆「福祉第一」「住民第一」の政治へ 日本共産党の4つの提案
今、住民は、全国どこでも、「開発優先」の従来型の政治から「福祉第一」「住民第一」の政治への切り替えを望んでいます。広島市も決して例外ではありません。
この点で秋葉市政の四年間を見ますと、確かに、先に触れたように、市民の声にこたえた一定の施策に取り組んではこられましたが、一方でムダな公共事業に対して、きっぱりとしたケジメをつけてきたかというと、そうでもないというのが私共の率直な実感です。
過去の「負の遺産」の後始末をどのようにつけて、新しく財源を生みだし、財政もたてなおしながら、自治体本来の仕事である住民福祉の予算を確保するか―これはなかなか困難な課題ですが、それをやるにはリーダーとしての強い意志と勇気がなければ、何事もすすみません。これは、一期目に掲げられた秋葉市長の公約を実現するためにも避けて通れない道です。
以上の点に立って、市長にあらためてお伺いします。 これまでの不用・不急・採算性なしの大型開発という「過去の負の遺産」に対して、市長として今後どのように対処しようと考えておられるのか。
私どもは、その点で四つの事業について次のことを提案致します。
@ヤード跡地の活用策について 「市民広場」「スポーツ広場」として活用を
「ムダな土地」とはいえ一旦買った以上は、市が最小限のリスクで活用策を考える以外にありません。せっかく「チームエンティアム」という民間企業が385億円の自己投資で手を挙げたんだから、これを大事にすべきだ、という声も当局のなかにはありますが、しかし、それでも120億円の用地購入費と、50億円の補助金合わせて170億円のリスクを市が背負うにはあまりにも大きすぎます。周辺整備や区画整理事業を考えるとおそらく数百億円の新たなリスクを背負うことになります。そのうえに、年商500億円という巨大商業施設の進出による市内商店街、とりわけ駅前、紙屋町、八丁堀等の既存商店街へ与える影響等を考えると、決して手放しで喜べるものではありません。
ヤード跡地の活用策については、市が公共施設として市債を活用して買い戻し、当面「スポーツ広場」「市民広場」として市民に開放するのが一番いい活用策だと思います。現在、市民球場の一般使用には、毎日5〜6倍の申し込みが殺到していると聞きます。その多くが草野球チームだといいます。もし、ヤード跡地に野球も出来るスポーツ広場をつくれば、スポーツ愛好家からも喜ばれるのではないでしょうか。
また、青少年の居場所づくりが問題になっていますが、ここに青少年向けの広場や子どもたちが水遊びしたり、大人でも寝転べる憩いの場をつくれば子どもも若者も市民にも喜ばれると思います。毎年の金利負担は、広域公園や区民文化センター等の他の公共施設の年間維持費を考えると、当然の支出だと考えます。
一方で,将来の活用策については、時期が来た時に考えればよいと思います。例えば、現在の商工会議所を等価交換方式でヤード跡地に移転してもらい、更に余った土地には、青少年センターを移し、広くなった現在地で市民球場を建て替えることも選択肢として考えられます。いずれにしても、今すぐに地上に箱モノを創らなくてはならないという発想を切りかえ、当面、スポーツ広場、市民広場として活用することを提案します。もともとこの土地の購入にあたって、表向きは公園も含めて幅広い選択肢が最初はあったわけですから、何の問題もありません。
Aメッセコンベンション用地について 思い切って、民間に売却を
ここは、民間に用地を売却することを提案します。現在検討されている3000u×3区画の展示場では、用地費・建設費合わせて新たに235億円投入しても採算が取れる保障は全くありません。今後の経済動向を考えると、展示場は既存の3ヶ所4区画で十分まかなえるのではありませんか。今、無理に作って将来、市がリスクを背負うよりも、思いきって民間に売却する方が賢明だと考えます
B高速道路網の計画について 全面的に見直しを
あらためて必要性・緊急性・採算性について全面的に見直すべきです。大体バブルの時の経済や人口予測をもとにした計画を見直しもせず、今だに、そのまま続けていること自体が間違っています。また、交通政策としても、 「利便性」だけが強調され、市内に車をどんどん呼び込み、これ以上の公害や環境悪化をもたらすような道路政策は見直すべきです。それより、自治体として、もっと力を入れる必要があるのは、電車、バスなど公共交通網の整備に力を入れ、中心部へのショッピングモールの導入など車からの転換を促進することこそ、環境にやさしい交通政策として、時代の要請にこたえることではありませんか。
また、広島市で一番古い江波の町を壊し、何百軒という家屋の立ち退きを伴う現在の南道路計画は、地元の強固な反対を考えると工期の面でも、事業費の面でも市のリスクがあまりにも大きすぎます。かつては市も主張されていた南側ルートへの変更を再検討すべきです。
C出島沖の埋め立て計画について 県に工事の中止を申し入れるべき
現在県が進めている第三・四・五工区についてはこれ以上の埋立て工事は、中止すべきです。第二埠頭用地や第二メッセ用地など、当初の事業計画が、全部ダメになったにもかかわらず、埋立てだけが進められているのは全く税金の無駄遣いです。事業計画もはっきりしない埋め立ては法律違反ではありませんか。即刻、工事中止を県に申し入れ、もし続行するのなら市としての負担金は出さない位の強い姿勢で臨むべきです。このまま県と心中するのか、それとも市の財政に責任を持つのかがここでも問われています。
◆市民は、市長の決断を待っている
以上、私どもの提案をさせていただきましたが、すべてをきれいに解決するのは難しいかもしれませんが、これらは、このままズルズル続ければ、これから先も毎年数十億から数百億円という多額の予算を伴う事業ばかりです。この中の一つでも市長が決断すれば、先程述べた市民の福祉、教育の充実にまわす財源は確保できます。今多くの市民は、小泉政治の下で不況によるリストラや売上不振、医療年金改悪などで先の見えない苦しい思いをしています。あれもこれもできないが、せめて「少々の開発事業は犠牲にしてでも、小児医療は就学前まで無料にします」「30人学級は必ず実現します」「広島の子どもには責任を持つ市政をすすめます」という―市長のその一言が、多くの市民にどんなに希望を与えてくれるか。
以上、古いカラの政治を打ち破る市長の決意の程をお聞かせください。
日本共産党皆川恵史議員の質問に対する
<秋葉市長の答弁> (政治姿勢に関する答弁)
本市が取り組んでいる大規模なプロジェクトは、その多くが基本計画に位置付けられていることからもわかるように、個性豊かで活力ある広島を実現するうえでいずれも重要なものです。
厳しい財政事情のもと、大規模なプロジェクトの実施にあたっては、長期的視点に立って、そのプロジェクトが将来の広島にとってどうしても必要なものなのか、他と比べて優先すべきものなのか、どう進めていくことが最善なのか、さらには、将来世代へ過度の負担を強いることにならないかなどを慎重に見極めつつ、議会や市民の声にも充分耳を傾けながら、事業の選択や事業着手の決定などを行っていくべきであると考えており、これまで、絶えずそういう意識のもと、工夫しながら事業を推進してきたつもりです。
ただいま、ヤード跡地やメッセコンベンション用地の活用などに関し、その見直しについて種々ご提案をいただきましたが、こうした大規模なプロジェクトの具体化にあたっては、計画策定から実際の着手までに相当な期間を要することから、その時々の時代の変化に対応できるよう、あらかじめ計画自体に必要な見直しを想定し組み込む必要があります。事実、市長就任1年目に策定した「新たな公共交通体系づくりの基本計画」には、途中に3回の見直しを組み込んでいます。
また、計画策定時に、経済状況、財政状況、人口の動向、市民意識の変化、環境や都市景観への配慮などが織り込まれていないものは見直す必要があるというのが、時代の要請だと思います。
さらに、円滑に事業を遂行しようとするうえでは、広く市民の方々はもとより関係する住民の方々に事前に十分な説明を行い、プロジェクトの意図や内容を理解していただいておくことが大切だと考えており、たとえ事業着手までに時間がかかることがあるとしても、最終的に良い結果が得られると思います。
今後とも、こうしたことを念頭に、重要なプロジェクトの実現に向け、積極的に取り組んでまいります。
一方、保健福祉施策の充実について申し上げます。 近年の少子・高齢化の急速な進展の中で、すべての市民が健康で生き生きと幸せに暮らせる社会を築いていくため、厳しい財政状況の下ではありますが、@介護保険制度の円滑な実施、A待機児童の解消に向けた保育所の整備、B安芸市民病院の開設や小児医療充実へ向けた取り組み、C障害者基本計画に基づいた着実な障害者施策の推進など、保健福祉施策の充実に努めてまいりました。
しかしながら、本市の保健福祉行政の水準を他の政令市と比較すると、高齢者施策は、政令市の中でもかなり充実しており、子育て支援施策や低所得者向け施策については、全体としてみれば、ほぼ中位にある一方で、障害者施策や健康づくり施策については、今後、充実が必要であると考えております。
こうしたことから、障害者施策や健康づくり施策を中心に、本市の保健福祉水準が全体として充実するように努めてまいりたいと考えています。
「大型開発見直し」への秋葉市長の答弁について市議団の見解
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