トップ議会情報・議員の発言2014年第3回9月定例会 議員発言 >議案討論・中原ひろみ議員


2014年9月30日 本会議 議案討論 中原ひろみ議員

  第89号議案 平成26年度広島市一般会計補正予算
  第90号議案 平成26年度広島市競輪事業特別会計補正予算
  第94号議案 広島市まちづくり市民交流プラザ条例等の
           一部改正について
  第95号議案 広島市特定教育・保育施設等運営基準条例の
           制定について
  第96号議案 広島市幼保連携型認定こども園設備等基準条例の
           制定について
  第97号議案 広島市児童福祉施設設備基準等条例の一部改正
           について

日本共産党市議会議員の中原ひろみです。
市議員団を代表して平成26年度9月議会に上程された議案について討論を行います。反対の議案は第89号、第90号、第94号、第95号、96号、97号議案の6つの議案です。残りの13議案には賛成です。

まず、第89号議案、平成26年度広島市一般会計補正予算(第3号)について反対の理由を述べます。
広島市は、8月20日に発生した土砂災害により、74名もの犠牲者を出し、長期の避難生活を余儀なくされている多くの市民を抱えています。被災者は、いつ、元の暮らしに戻れるのか、見通しが持てないもどかしさの中で、大きな不安を抱きながら、避難生活をされています。
子ども達も205名の小中学生が被災し、その小さな心が傷ついています。
今、広島市に課せられているのは、一日も早く被災者に希望を与える生活再建への支援であり、甚大な被害を繰り返さないための防災対策です。

土石流が発生した緑井や八木地区においては、単に元どおりに復旧するのでなく、将来的に安心して暮らせるまちへと整備し直してほしいとの強い願いがあります。
砂防ダムの整備だけでなく、危険区域は宅地にせず公園にする、車が離合できなかった狭い生活道路の拡幅や、迂回道路の整備など、各地域が願っておられる地域ごとの「安心なまちづくり」を実現することが求められます。

9月16日に広島県が公表した土砂災害防止法に基づいた基礎調査を見ると、自力で避難できない乳児や子ども達が過ごす保育園や学校、留守家庭子ども会が土石流危険地域や特別警戒区域内に立地しており、公共施設の安全対策も急務です。

安全対策が必要なのは被災地域だけではありません。市内の土砂災害危険箇所は、6,040箇所もありますが、指定されているのは約3割にあたる1,877箇所です。危険な地域にもかかわらず、指定されていない箇所が4,000箇所を超えています。危険渓流も2,402箇所ありますが、砂防ダムは242基しか整備されていません。これでは、また災害により大きな被害を繰り返すことになりかねません。
広島市内全域の急傾斜地の危険度調査や、その対策も必要ですし、高潮対策、津波対策も不可欠です。
まさに、命と財産を守るという自治体の本旨に立ち戻る財政運営が求められます。秒単位、分単位の時間を短縮するために、巨額の事業費を費やす税金の使い方を改める時です。今こそ、不要・不急の巨大開発は凍結し、安心・安全な広島市への投資を最優先にすべきと考えます。
よって、今後155億円もの巨額の事業費を必要とする南口再整備事業の設計費を含む補正予算に反対します。

また、補正予算には、子どもの居場所の確保として、民間事業者に補助金を出し、新たに6つの留守家庭子ども会を民間に運営させるとしています。が、10月から開設する4つの留守家庭子ども会は全国的にも事例が少ない「企業」が運営します。
マンモス化解消を理由に、子どもたちを民間事業者に追い出すやり方は、留守家庭子ども会の「公設・公営・無料」を願い、毎年、毎年、提出されてきた20万筆の市民の願いから遠ざかるばかりです。子どもたちの放課後に市が責任をもつべきであり、民間任せにする流れを認めることはできません。

さらに、新しいタイプの高校整備として、基本・実施設計の予算が提案されました。市は、生徒の多様なニーズに応えるための学校整備だとしていますが、結局、県立4校と市立2校の定時制・通信制高校の統廃合であり、定時制・通信制教育に対する、県の直接的な責任をなくす事に他なりません。県教育の大きな後退です。
新しい学校が中区大手町に集約されれば、遠くから通う生徒は通学するだけで一苦労です。繁華街が近いことを心配する保護者もおられます。単位が取れればよいというだけでなく、困難な子どもが多数学ぶ学校だからこそ、より身近な地域で、少人数で学べる教育環境の整備が必要です。以上の理由からも第89号議案に反対します。


次は、第90号議案、広島市競輪事業特別会計補正予算についてです。
広島市競輪運営委員会の答申に沿い、競輪開催業務を一括して民間事業者に委託するとし、平成27年から平成30年までの4年間に15億円もの債務負担行為を設定する議案です。が、民間であれ、公であれ、ギャンブルに巨額の公金を使うことに賛成できません。一日も早く競輪事業は止めるべきです。

次は、第94号議案 広島市まちづくり市民交流プラザ条例等の一部改正についてです。今議会には21の公共施設の命名権を得る条例改正が提案されました。
税収確保策の一つとして理解はできるものの、なんでもかんでも企業名を付けて税収を増やせばよいというものではありません。提案された21施設の中には、被爆建物である江波山気象館が入っています。広島を象徴する被爆建物や指定重要文化財に指定された公共施設は現在の呼称を守るべきです。よって、賛成できません。


次は第95号議案 広島市特定教育・保育施設等運営基準条例の制定について、第96号議案 広島市幼保連携型認定ごとも園設備等基準条例の制定について、第97号議案 広島市児童福祉施設設備基準等条例の一部改正について、一括して反対の理由を述べます。
いずれの議案も、来年4月施行の「子ども・子育て新制度」に伴い、条例化するものです。これらの条例は、保育、幼稚園、学童保育など子育てに係るこれまでの制度を根本から転換する戦後初めての大きな「改革」であり、設備・運営の最低基準を決める重要な条例ですが、国の示した基準をもとにした条例しか示されていないことは問題です。
そもそも、子ども子育て新制度の審議のなかで、一度消えた市町村の保育実施責任が児童福祉法24条1項として復活しました。条例化にあたっては、市町村の保育実施責任をすべての施設・事業で果たせる内容にすべきであり、保育・放課後健全育成事業など、子育て支援の必要量に応える提供体制は、市の責任所在が明確な認可保育園で、留守家庭子ども会は、安易に民間事業者へと子どもを追い出すのでなく、市の責任で子どもたちの放課後を豊かにする施設整備を基本にすべきです。

子育てしやすい保育制度になるのか、若い世代の感心は大きいのですが、家庭的保育事業と現行認可保育園では、保育資格者の割合、給食の扱いなどの認可基準が違うため、預け先で保育に格差が発生します。
子どもの命と安全は確保できるのか。子どもの発達を保障する環境が整うのかと考えた場合、例えば、食事の外部搬入は、アレルギーやアトピーの子どもが増えるなかで、重大事故が懸念されます。災害時の避難を考えた場合、保育室を4階以上に設置する際に、屋外避難階段の必置義務をなくしたことは、いざという時、子どもの命が守れるのか不安です。待機児解消のために、子どもの安全が「二の次」になっていることは由々しきことです。
さらに、定員規模が小さい施設や事業では、保育者の資格要件が緩和され、保育に格差を生む内容となっています。国基準に従うのではなく自治体の裁量権を発揮し、全ての事業・施設で保育者は全員、保育士資格者とすべきです。

子ども・子育て新制度は、保育制度を大きく変え、とても複雑な制度となっています。とくに、当事者である保護者にも新しい負担が発生します。保護者は保育の必要性と必要量の認定を受けるため、市に申請し、認定証の交付を受けなければなりません。さらに、認定された保育時間の管理を保護者がする事態も予測され、新しい負担が発生します。
それだけではありません。保育所は現在と変わらず、市の責任で保育が実施され、保育料も市が徴収しますが、認定こども園・小規模保育は利用者と事業者の直接契約となり、保育料は事業者が徴収します。

しかし、当事者である保護者には理解されていません。
さらに重要な問題で不明や不備な点がある制度だということも明らかになりました。例えば、短時間保育の利用者が延長保育を利用した場合の保育料が、長時間保育の保育料より高くなる逆転現象を起こす問題は解決していませんし、保護者から利用申し込みを受けた場合の事業者の応諾義務についても明快なものはありません。
保護者に十分な説明もできない状況で、条例を拙速に提出すべきではありません。

放課後児童健全育成事業についても、公設・公営で市が実施してきた留守家庭子ども会と、市が民間事業者に補助金を出して運営する放課後健全育成事業とで、指導員の質に「格差」が生じることが明らかとなりました。
条例は、厚生労働省の省令をそのまま横すべりさせ、一クラス2人以上の指導員のうち、有資格者は一人、残りは補助員でよいとしています。しかも、利用者が少人数で、子どもたちに支障がないと判断した場合は、他の業務と兼務できるとしています。このような環境で、親が安心して子どもを託せるでしょうか?
一方、市は、公設・公営で行う空き教室やプレハブ教室、児童館内での留守家庭子ども会は、市の内部規定により指導員は全員、専任の有資格者とするとしています。
内部規定では、議会にも図らず、市の都合でいつでも勝手に基準を変えることができます。内部規定に拘束力はありません。
公設・公営の留守家庭も、民間事業者の放課後児童健全育成事業も、どちらを利用しても、子ども達の放課後が同じになる基準にすべきです。企業は、儲けのために放課後健全育成事業に参入したのであり、「内部規定」と比べ、低い基準の条例しか適用されない民間放課後健全育成事業では、保護者の不安は解消されません。

50年にもわたり「公設・公営・無料」で運営されてき留守家庭子ども会事業の条例化にあたり、学童保育の充実・発展につながる「条例」にしてほしいと、親や関係者は強く願っています。
国の省令よりも充実した職員配置になる市の内部規定を条例として明記することこそ必要です。市と民間の放課後健全育成事業において、格差を生むことになる条例には賛成できません。

この9月議会には留守家庭子ども会の「公設・公営・無料」の継続と、条例化にあたり設備・基準の拡充を求める16万筆の署名が提出されました。保護者や関係者が条例の内容にとても感心をもっているにもかかわらず、条例を読んでも省令や府令の「条項番号の引用」ばかりで、全くその内容はわかりません。
このような不親切な条例では、未来を担う広島の子どもたちを大切する市の熱意は伝わってきません。 

だいいち、引用方式では、政省令の内容が変わっても条項番号が変わらなければ市の条例は改正する必要はなく、議会にも、はかられません。決めたはずの施策や基準が政省令の変更に引きずられ、良くも悪くも自動的に変わってしまうこともあり得るのです。これでは、責任をもった条例とは言えません。

以上の理由から反対します。

保育も学童保育も、未来を担う子ども達の、一度しかない子ども期が生き生きとした時間と場所となるように願い討論とします。

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