トップ議会情報・議員の発言2010年第3回6月定例会 議員発言 >一般質問・中森辰一議員


2010年6月16日 本会議 一般質問 中森辰一議員

 核兵器廃絶の課題と米軍基地問題
 子どもたちへの責任を果たすために
   ・虐待対策について
   ・公立保育園の民間移管について
   ・教育無償化への取り組みについて
   ・障がい児施策について
   ・子どもの医療費補助制度の対象年齢拡大について
   ・子どものシェルター早期設置に向けて
 市民生活の実態について
   ・頼りになる医療・福祉制度の確立
   ・払える国保料にするために
 福祉としての市営住宅について
   ・高齢者が住み続けられる施策
   ・障がい者の暮らしを守るために
 <再質問>
   ・被虐待児ケア
   ・障害児の補装具自己負担
   ・障害者ケアホーム、グループホーム
   ・児童憲章から子どもの権利条約へ



核兵器廃絶の課題と米軍基地問題

(中森辰一議員)
 最初に平和の課題について質問します。5月3日から28日までの間、ニューヨークの国連本部でNPT(核不拡散条約)再検討会議が行われました。5年に1度の今回の会議は、「核兵器のない世界」への機運が世界的規模で広がるもとで、歴史的チャンスの会議でした。
 私ども日本共産党は、4月30日から5月7日まで、志位和夫委員長を団長とする訪米団を派遣しました。ニューヨークの国連本部では、NPT再検討会議のカバクチュラン議長をはじめとする会議運営の幹部や、核保有国イギリスを含む9カ国の代表などと会談し、すべての核保有国が自分の持つ核兵器を完全に廃絶するという2000年のNPT再検討会議の合意を再確認すること、核兵器廃絶のための国際交渉を開始すること、の2点を提起した要請文を手渡して、核兵器廃絶に向けた取り組みを要請しました。
 今回の会議では、5年前の失敗は繰り返さないとの各国の粘り強い努力により、2000年のNPT会議での合意を踏まえた行動計画が決定されました。行動計画の第1には「すべての締約国は核兵器のない世界を達成するという目標に完全に合致する政策を追求する」ことが明記され、核兵器保有国に対しては「核兵器廃絶を達成するとの明確な約束の実行」を改めて迫るものとなり、核兵器廃絶に向けた大きな1歩を踏みだすものとなりました。
 また、日本共産党の訪米団は、ワシントンDCのアメリカ国務省内でケビン・メア日本部長などと会談しました。そこでは、沖縄の米軍普天間基地の問題について、「別の場所に『移設』するという方針は完全に破たんした」と指摘、「沖縄県内はもとより、日本国内のどこにも、『地元合意』が得られる場所はない。普天間問題解決の唯一の道は、移設条件なしの撤去しかない。」と正面から国民、沖縄県民の意思を伝えました。
 これらの課題でわが国政府はどんな取り組みをしたでしょうか。ニューヨークでは現地のメディアや会談した相手から「被爆国の政府はなぜここにいないのか」と言われたそうです。NPT会議には岡田外務大臣さえ出席せず、政府代表を務めた副大臣の発言は核兵器廃絶には一言も触れませんでした。中国新聞でも被爆国の存在感がなかったと批判されました。
 普天間基地の問題では、菅新首相も、沖縄県民の意思をアメリカ政府に伝えるのではなく、アメリカ政府の意思を沖縄県民に押し付けようとしています。しかし、党首の顔が変わっても、総選挙中に民主党の党首が普天間基地は「国外、県外」と約束した事実は、変わることはなく、世論調査では沖縄県民の84%、圧倒的多数が辺野古への移設に反対、この問題のおおもとである日米安保条約については、「友好条約に変えるべき」と「破棄すべき」が合わせて68%に上ります。
 市長は、NPT会議の議場で発言をされ、NGOとして積極的な活動をされました。また、広島は岩国の海兵隊基地の被害を受けている立場でもあり、市長ご自身も岩国へのアメリカの空母艦載機部隊移転にも沖縄の訓練移転にも反対の立場だと思います。
 私は、核兵器廃絶の課題でも米軍基地の問題でも、わが国政府がアメリカ政府の顔色を窺いながらアメリカ政府の意向に沿った外交をするのを止めて、アメリカ政府に対して、正面から国民の意向を伝えることが必要だと考えます。市長はどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。

(市民局長)
 我が国と米国の安全保障上の問題は、基本的には、国家間の問題として国民世論を踏まえて国政の場で議論されるべきものであると考えていますが、本市は、これまで、日本国政府に対し、国要望や平和祈念式典などの機会に「非核武装の法制化や核兵器を『作らせず、持たせず、使わせない』という新たな非核三原則の提唱」を求めるとともに、「国民的な議論により『核の傘』に頼らない安全保障体制を作り上げる」よう要望しています。
 また、米軍基地、特に本市への影響も大きい岩国基地の機能増強問題については、離発着訓練や低空飛行訓練の増加による騒音問題や事件・事故の発生など、住民生活への影響が懸念されることから、これまでも本市単独で、あるいは県内の関係自治体と共同で、一貫して日本国政府等に対し反対の意志を表明しています。
 このたびの普天間飛行場の基地機能や訓練の分散移転の問題に関しても、先月末、廿日市市長との連名で日本国政府に対して、岩国基地の機能増強に反対し、更なる負担を強いることのないよう要請をしています。
 今後とも、被爆都市として、また、市民生活の安全・安心の確保の観点から、基礎自治体として、国に対し積極的な取り組みを求めていきたいと考えています。


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子どもたちへの責任を果たすために

(中森辰一議員)
 次に、子ども施策について質問します。子どもの発達は脳の発達とともにあります。人間の脳は使うことによって、つまり、外からの刺激を繰り返し受けることによって発達します。まだ未熟な状態で生まれてきた赤ちゃんの脳は、生まれてから急速に発達し、3歳までにほぼ90%にまで到達します。
 母親たちが抱いたり、あやしたり、声をかけたりするスキンシップ、“お腹がすいた”と泣いたらミルクを与えられる、“おむつが濡れて気持ちが悪い”と泣けばおむつを替えてもらえるなどの、赤ちゃんの自然の要求にきちんと応えるという大人たちからの働きかけを繰り返し受ける経験が、人間としての脳を実際にかたちづくることになり、発達にとってはきわめて重要な時期です。その後も安全な環境の中で、周りの大人たちから年齢に応じた働きかけを受けることが繰り返されて、人間としての発達の基礎がつくられます。
 この時期にネグレクトを受けると、脳の発達に深刻な影響を受け、人間としての感情を理解できず他の人との人間関係を結ぶことができなかったり、身体の成長に影響があったりします。4歳以降も、周りの大人や子どもの集団との適切な関わりの中で経験をたくさん重ねて、青年になるまで脳を発達させ、社会の中で生きる人間として発達していきます。
 この成長・発達の過程でも、学校での勉強だけでなく、「遊び」を含めた大人社会、子ども社会との適切な関わりが必要です。子どもは私たちの社会の中で何度も挑戦し失敗をする経験が必要です。大人は、子どもが知らないことを丁寧に教えながら、子どもが経験から学び、自分でできるようになるのを待ってやる必要があります。そのために、子どもが何を求めているのかをよく聞き、慎重にその様子を見守ることが必要です。
 私たちは、人間として生まれてきたすべての子どもに、安心できる生活環境と、その年齢に応じた人間として育っていくために必要な環境を分け隔てなく与えなければなりません。これは子どもたちに対する私たちの社会の義務です。しかし、その当たり前のことをすべての子どもになしえているでしょうか。
 今年の予算特別委員会でわが党の皆川議員が指摘しましたが、大人の論理で子どもを選別する競争教育の中で、うつ病などと診断された中学生が4人に1人との調査がある、自分が嫌いだという中学生が6割、15歳で孤独を感じている子どもが3割もいるなど、異常な状態があります。さらに、子どもの貧困、教育格差、医療格差、そして虐待の蔓延。挙句に展望のない派遣労働しか行き場がない。私たちの社会はこんなにも子どもを大事にしていません。そんな中で子どもの非行や深刻な犯罪、さらに自殺まで多発しています。
 つまり、私たちの社会は子どもたちに対する義務を果たすことができていません。子どもの権利を保障するとは、この大人の義務をすべての子どもに対して果たそうということです。そのための合意を形にしようというのが子ども条例だと思います。
 しかし、この課題についての市の取り組みをみるにつけ、教育委員会のお考えがよく見えません。子どもの育ちが阻害された結果、子どもたちの問題行動が起きます。それが一番現れてくるのが学校現場です。現場では苦労しておられると思いますが、教育委員会は、子ども条例についてどのように受け止めておられるのか、どのような取り組みをしてこられたのかお聞かせください。

(教育長)
 教育委員会では、教育行政施策の重点として、「人権尊重の意識を高め、一人一人を大切にした教育の推進」を掲げ、子どもの権利だけでなく、女性や障害のある人などの様々な人権について、幅広く総合的に学び、正しく理解するよう、人権尊重の教育の推進に努めています。
 また、各学校においては、自分の人権のみならず他人の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚し、人権を相互に尊重し合うことを目標として、教育活動全体を通じて、組織的・計画的に取り組みを進めています。
 現在、制定に向けて準備が進められている子ども条例は、こうした学校における教育活動を支える基盤を一層強化するとともに、すべての大人が広島の未来を担う子どもたち一人一人の権利を尊重し、健全に育てていこうとする機運をさらに醸成するものと考えています。
 また、本条例が制定されれば、例えば、
(1) 学校等における子どもからの相談や子どもへの援助の仕組みづくり
(2) 子どもが地域で安心して過ごすことができる居場所づくり
(3) 学校における教育環境や教育条件の整備
(4) 不登校の子どもの学校への復帰や将来の自立のための支援
(5) 障害のある子どもの教育環境の整備
などの諸施策を一層強力に推進する環境が整うものであると考えています。
 子ども条例制定についての取り組みとしては、全ての園長・校長に対して、条例素案などを情報提供し、その内容等について協議を重ねるとともに、各学校の教職員から意見募集を行ってきました。また、各学校における子どもの権利を尊重した教育の一層の充実を目的として、管理職を対象に人権教育研修会を開催しました。
 さらに、こども未来局と連携し、子どもの権利についての市民等への啓発を目的とした講演会やシンポジウムを共同で開催したり、子どもの意見を条例づくりに反映するための子ども会議の運営や意見の取りまとめを行うなど、その取り組みに主体的に関わってきました。
 今後とも、教育委員会として、子ども条例素案について、学校や保護者の方々の理解促進を図るため、学校協力者会議をはじめ様々な機会を通じて、条例制定の趣旨等について説明するなど、制定に向けた取り組みを進めてまいります。


(中森辰一議員)
 一方、条例をつくる努力を行いながらも、子どもの権利を保障するための具体的な取り組みは、条例ができる前でも着実に進めていく必要があります。以下、そのいくつかについて提案し、市の取り組みを求めます。

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・虐待対策について

(中森辰一議員)
 まず、子ども条例にかかわって、虐待の問題がよく取り上げられます。児童虐待防止法が改正されましたが、虐待を受けた児童を、保護した後のケアの体制は、未だ不十分なままというのが実態ではないかと思います。
 発達の途中で、身体的・精神的な暴力を加えられたり、性的虐待があったりすると、それらはトラウマとなって脳の発達に影響を与え、発達上のゆがみを生じるといいます。暴力は、直接の被害を受けなくても、その現場を目撃し体験することでもトラウマを生じさせます。また、特に乳幼児に対するネグレクトは、感覚や感情など、人間として生きていくための最も基本的な部分で脳の発達を止めてしまいます。
 あいち小児保健医療総合センターの杉山登志郎博士は、虐待による広範な障がいを第4の発達障がいと呼んでおられます。杉山博士によれば、発達途中の虐待によって、愛着の未形成、発育不良、多動性の行動障がい、解離性障がいなど大変深刻な発達上の障がいを引き起こし、きちんとした治療が必要だということです。
 虐待を受けている子どもを保護するだけではなく、発達上の障害の状況をきちんと見極めて、それに応じた治療的ケアを行うことが必要です。その際には、安心して生活できる場が必要です。そこは心の傷を抱え、様々な問題行動を噴出させる子どもであることを踏まえ、個々に手厚いケアができる体制を持っていなければなりません。
 そこで、虐待を受けた子どもには、専門の医師がかかわる必要があり、子どもの状況に応じた継続した治療的ケアが必要だと思いますが、今はどのようになっているのか伺います。

(こども未来局長)
 虐待を受けた子どもは、虐待を受けたことにより心の問題や行動上の問題を問題を抱えていることが多く、継続した治療的ケアが必要です。
 子ども一人ひとりの状態に応じ、心理担当職員による心理療法や、児童養護施設で職員と信頼関係を築いていく治療的養育などの治療的ケアを、適切に、かつ継続して行っています。中でも深刻な虐待を受けた子どもは、暴力的行為や自傷行為などを示すことがあります。これらの症状等を持つ子どもに対しては、児童精神科医師が診断し、薬物療法やカウンセリング治療を行っています。

(中森辰一議員)
 一方、虐待を受けた子どもを一番多く受け入れている児童養護施設は、若干の改善はされたものの基本的に60年以上前の基準のままです。幼児から高校生までの大勢の子どもが生活していますが、そこで生活する子どもの半数以上が虐待を受けた子どもたちです。施設の職員の献身的な努力で現場は支えられていますが、そもそもこの施設は虐待を受けた子どもをケアする目的でつくられたものではありません。
 広島修道院に設置された乳児院と児童養護施設では、0歳から5歳までは入所児童を2〜3人ごとに特定の職員が継続して担当し養護しています。しかし、小学生から高校生は、子どもたち全体を子ども6人に1人の割合の職員体制で夜勤を含めた交代勤務をこなしています。深刻な心の傷と行動障害などを抱えている可能性の高い子供たちを個々にケアする体制ではありません。
 杉山博士は、虐待を受けて育った子どもは、虐待的人間関係に陥りやすく、施設の中でもより強い子どもがより弱い子どもを虐待することが起こりやすいと指摘し、今のような施設の在り方の改革を求めておられます。
 虐待を受けた子どもは、マイナスからの発達のやり直しが必要だということを踏まえた体制が必要です。さし当たって、職員数を抜本的に増やして、夜勤も含めた体制強化が必要です。乳児院のほうも昼間と違って夜間は1人です。ここの職員体制も改善が必要です。広島市として独自に、施設の職員体制の強化に取り組むべきではないかと思います。どのようにされるか伺います。

(こども未来局長)
 平成21年度(2009年度)に、児童養護施設及び乳児院に入所した児童のうち、虐待を受けて入所した児童の割合は約半数を占めています。虐待は、自らを傷つけたり、些細なことでパニックを起こして暴れるような問題行動が日常的に見られるため、児童養護施設等の職員の負担は非常に大きくなっています。
 このため、昨年度から、児童養護施設等を対象に、国の職員配置基準に加え、入所定員30名ごとに2名の職員を配置するための入所児童支援強化事業を実施するとともに、職員の能力の向上を図るための研修会を実施しています。

 しかしながら、虐待を受けて児童養護施設等に入所する児童数は年々増加しており、これに対応するためには、現在の児童養護施設等の職員体制では不十分であると認識しています。
 このため、児童養護施設等の職員配置基準の見直しについて引き続き国に要望していくとともに、本市独自の支援策について検討していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 発達上もっとも重要な乳幼児期のネグレクトは、取り返しがつかないほど深刻な被害を及ぼしますが、なかなか見えにくい問題があります。あらゆる社会資源を使って、すべての乳幼児について育児の状況の把握が必要です。必要な家庭には専門的な研修を積んだ人が定期的に訪問するなどの取り組みが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

(こども未来局長)
 本市では生後4か月までの乳児家庭を民生委員等が訪問する「こんにちは赤ちゃん事業」や、助産師等による「新生児訪問指導事業」を実施するとともに、「4か月児健康相談」、「広島市要保護児童対策地域協議会」等を通じ、全ての乳児について、親の子育ての状況、家庭環境などの養育環境などの養育環境の把握に努めています。
 また、その後も、「1歳6か月児健康診査」、「3歳児健康診査」等を通じ、継続して幼児期における養育環境の把握に努めています。
 さらに、これらの事業を通じて把握した支援が必要な家庭に対しては、児童虐待についての専門的な研修を受けた保健師や家庭相談員が、定期的な訪問支援を行っています。


(中森辰一議員)
 深刻な虐待を防ぐために、児童福祉司が問題を抱えた家庭に十分かかわっていける体制が必要です。現状で、一人の児童福祉司は何件の事例を受け持っているのでしょうか。今の体制についてどのようにお考えでしょうか。伺っておきます。

(市長)
 児童虐待は、子どもに対する重大な人権侵害であり、最悪の場合は、子どもの生命を奪うことにもなります。
 また、子どもは、虐待がエスカレートし、被害が深刻化し易い傾向があります。児童虐待の根絶なくしては、子どもの幸せな社会の実現はできません。
 現実には、日々児童虐待が起こっています。本市においては、児童虐待の早期発見と虐待を受けた子どもの保護のため、児童相談所を中心に取り組んでいます。平成17年度(2005年度)には、虐待の初期対応を専門に行うグループを設置し、平成21年度(2009年度)には、24時間体制で虐待通告の対応を行う電話相談員を設置するなど児童相談所の体制強化を図っています。
 また、平成20年度(2008年度)には、地域におけるネットワークとしての要保護児童対策地域協議会を設置し、虐待の予防や虐待を受けた子ども等への支援、社会養護体制の充実などの取り組みを進めてきました。
 しかしながら、重大な児童虐待事件は後を絶たず、児童虐待の問題は依然として深刻な状況にあると言わざるを得ません。
 児童虐待の背景には、大人と子どもの力関係の中で、子どもを、人権を有する一人の人間としてではなく、力の強い大人が支配する者、すなわち「被支配者」として捉える「子ども観」があります。こうした「子ども観」を改めさせるには、社会の共通認識として、子どもを一人の人間として尊重することを定着させなければなりません。本市は、そのための多様な施策を地道に継続的に展開していく必要があります。そして、こういう施策の基礎として、子どもの権利を明記した条例を制定することは、極めて有効です。
 そもそも、自治体が制定する条例は、国の法律や仕組みを補いながら、地域の実情に応じて、必要な施策を効果的に行っていくための最も有効な手段です。子どもを一人の人間として尊重するという意識を全市民が共有するためにも、「子ども条例」を早期に制定することが必要です。「子ども条例」の制定を、児童虐待のない社会の形成の大きな原動力としたいと考えています。

(こども未来局長)
 1人の児童福祉司は、本年4月1日現在で、55人の子どもを受け持っています。
 児童相談所においては虐待通告・相談件数の増加とともに、保護者の同意が得られず、職権で一時保護せざるを得ないような困難な事例も増えており、調査や指導、措置に伴う事務量が増加しています。このような傾向は今後も続くと考えられ、虐待を受けた子どもや虐待を行った保護者双方への支援など、問題を抱えた家庭に丁寧に対応し、子どもたちの健全な育成と社会的自立を支援するためには、職員体制の強化が課題であると認識しています。


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・公立保育園の民間移管について

(中森辰一議員)
 次は保育園についてです。家族の単位が小さくなり、初めての育児を家族や地域が支えることが困難な状況があります。経済的な困難があったり養育方法を知らなかったりして親が精神的に不安定になったり、虐待に発展することもあります。
 保育園は、子どもを預かって保育をする、保護者からの子育ての相談に応えるということ以外に、問題を抱えている親と子を受け止め援助していく場でもあります。虐待されて育ってきた子どもの様々な問題行動の背景に早く気づき、行動の特徴をよく理解した上での対応が望まれます。
 しかし、子ども集団の中で虐待を受けた子どもを受け止め保育するのも、問題を抱えた家庭を援助するのも大変なエネルギーと高い専門性が要求されます。それができるだけの体制と専門性を培う時間の保障が必要です。たいへん手厚い体制だと言われていた埼玉県上尾市の公立保育園でさえも5年前に園児の死亡事故が起きています。
 国が決めた保育所運営費が大変少ない中にあっても、公立保育園ではより手厚い体制と十分に力を持った保育士を養成することが可能です。しかし、民間保育園では現状の運営費では経営がたいへんで、平均勤続年数が5年程度しか確保できない現状があって、手厚い体制や十分に訓練された保育士を養成することには困難があります。
 市が努力していないとは言いませんが、現実に公立と私立との格差があるのに、公立保育園を私立保育園に変えてしまうのは、今の公的保育に求められている役割を果たさないということになります。市が言う拠点園だけでなく、民間保育園を含むすべての保育園で手厚い体制が必要です。子どもの権利を保障するという観点からは、待機状態にある子どもを保育園に迎え入れる努力だけではなく、すべての保育園を、求められる専門的な力量と体制とを持った保育園にする努力が必要です。
 以上のことから、公立保育園の民間移管は子どもの権利保障に逆行するものであり、広島市が進めるべきことは公私間格差の解消であり、思い切って保育予算を増やすことです。改めて見解を求めます。

(こども未来局長)
 公立保育園の民間移管は、それにより生じた財源と民間活力の活用により、保育園入園待機児童解消のための児童受け入れ枠の拡充、延長保育など多様なサービスの提供、保育の質の向上など保育サービスのより一層の充実を図ることを目的として行うものです。
 また、保育園の果たすべき目的・役割は公立と私立とで違いはなく、重要なことは、公私に関わらず、市内のすべての保育園で質の高い保育を子どもたちに提供する体制を整備することであり、そのために必要な予算は責任を持って確保していきたいと考えています。特に、私立保育園のさらなる質の向上のためには、質の高い人材の安定的確保が重要であると考えています。
 このため、本市では、これまでも、私立保育園職員の給与水準を向上させ処遇の改善を図るための給与改善費、平均勤続年数が10年以上の保育園への定着促進費、研修に参加しやすい環境づくりのための研修代替職員費など、独自で助成を行っています。
 今後とも、本年3月に策定した「広島市子ども施策総合計画」で施策展開の一つとして掲げた「私立保育園への支援の充実」に向けて取り組んでまいります。


(中森辰一議員)
 また、政府が推進している地域主権改革は、保育事業を含めて国が責任を持つべき社会保障を専ら地方自治体の責任にし、財政的にも地方に責任を押し付けようとするものです。保育園にしても最低基準を地方任せにするといったことも進めていて、これは政府が批准した子どもの権利条約の立場に反すると考えますが、広島市はどのように受け止めておられるでしょうか。ご見解を伺います。

(こども未来局長)
 昨年12月15日に閣議決定された「地方分権改革推進計画」では、地域主権改革を推進する観点から、(1)「義務付け・枠づけの見直しと条例制定権の拡大」、(2)「国と地方の協議の場の法制化」、(3)「今後の地域主権改革の推進体制」が示されました。
 この計画で定める取り組みのうち、法律の改正により措置すべき事項について、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」が3月29日に国会に提出され、現在、審議が行われています。この法律案では、条例制定権の拡大の一つとして、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(いわゆる「最低基準」)も、各自治体の条例に委任するとされています。
 保育園に関する保育士の配置、居室の面積などの基準は、いずれも保育の質を支える重要な要素であると認識しており、今後の国の条例委任の実施に必要な関係法令の改正や他都市の動向を見極めながら、すべての子どもの健やかな育ちの支援を行うため、本市の保育水準の維持向上につながるよう適切に対応したいと考えています。


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・教育無償化への取り組みについて
 
(中森辰一議員)
 次は教育費の問題です。子どもを育てている家庭の経済状態は年々悪化しています。そうした中で、親の経済状態が教育を受ける機会を左右しています。教育の機会均等という課題でも私たち大人の義務は果たされていません。
 親が失業して高校を中退せざるをえなかったり、学費や生活費のためにアルバイトに明け暮れて授業についていけないといった問題が起きています。ヨーロッパでは大学まで無償が当たり前だというのに、わが国では小中学校でもかなりのお金がいります。私たちの社会は子育てをあまりにも親の責任にしすぎています。学力世界一のフィンランドでは、鉛筆やノートに至るまで公的負担です。
 そこまで行かないまでも、制服・基準服、体操服、辞書、給食費、副読本、さらに修学旅行費など、公教育に欠かせないものは段階的にでも無償にしていくべきです。子どもの権利保障の観点から、そうした努力を求めます。いかがでしょうか。

(教育長)
 小・中学校については、就学援助制度を設け、経済的理由により就学困難な市立小・中学校の児童生徒の保護者に対して、学用品費、学校給食費、修学旅行費等を援助しています。議員ご指摘のとおり、認定者数は年々増加しており、平成21年度(2009年度)末で認定率27.7%となっています。
 さらに、最近の経済情勢を踏まえ、新たに平成22年度(2010年度)からは、国立、県立、私立の児童生徒も就学援助制度の対象としました。
 また、保護者が購入する学用品費等の負担を軽減する観点から、学校に備える辞書や楽器などの学習用具を充実させたり、資料集や問題集などの補助教材の選定に当たっても、負担が大きくならないよう配慮を求めるなど、学校を指導しています。


(中森辰一議員)
 また、国と県で高校の授業料無償化に向けた努力が行われましたが、私立高校では所得制限が厳しすぎます。市として所得制限を350万円に引き上げる取り組みと、生徒によっては通学費も大きな負担で、これへの独自の支援制度が必要です。いかがでしょうか。

(教育長)
 私立学校については、私立学校振興助成法第9条において、私立学校の経常的経費に対する国・県の助成措置が規定されており、本市としては、従来から国・県の助成措置を補完する立場で、教職員研修費、教材教具整備費等について独自に助成を行ってきました。
 本市の生徒数の約4割は私立高等学校に通学していることから、今後とも引き続き広島県市長会議などの機会を通じて、私学助成の充実について、県に要望してまいります。

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・障がい児施策について

(中森辰一議員)
 次に、まだまだ課題の多い障がい児施策のうち、今回は補装具について質問します。
 障がいがあって補装具の必要な子どもたちがいます。その補装具は成長していくためにどうしても欠かせませんが、体が大きくなるのに合わせてたびたび取り換えなければなりません。
 子どもですから精密機械の補聴器を水に濡らして壊してしまうこともあります。その購入や取り換えや修理のときに一部とはいえ保護者には負担があります。所得によっては全額負担です。補装具をより使いやすくするためのオプションは所得にかかわらず全額負担です。これは障がいがなければ必要がない負担です。
 この負担はバリアフリーの原則にもノーマライゼイション(障害のある人も,一般社会で等しく普通に生活できるようにすること)の原則にも反します。場合によってはこの負担が子どもの成長を阻害することもあり得ます。この問題は私が繰り返し提起してきましたが、残念ながら前向きな回答は得られないままです。
 また、障がい手帳がない軽い難聴の子も訓練のために補聴器が必要ですが、障がい手帳がないので全額負担です。今の制度は、子どもに何が必要かを考えない貧困な制度です。
 こうした制度の貧困のしわよせがすべて障がいのある子どもの保護者に、そして子どもに押し付けられています。本気で子どもの権利を保障しようというお考えなら、直ちに改善の取り組みを行うべきです。以上について、改めて前向きな回答を求めます。

(健康福祉局長)
 障害児自立支援法に基づく補装具費支給制度は、主たる納税者の市民税所得割額が46万円(収入額で1,200万円程度)未満の世帯について利用者負担の上限月額を設定し、負担の軽減を図るものです。
 しかし、補装具は、耐用年数や障害状況の変化などに応じ更新する必要があり、その利用者負担については、特に低所得者への影響が大きいと考えられます。そのため、本市では障害者自立支援法施行時から独自の補装具利用者負担助成を行っており、国が定めた上限月額を4分の1の額まで引き下げています。
 なお、補装具にかかるオプションについては、身体障害者更生相談所の判定又は医師の意見に基づき、必要なものは補装具費を支給しています。
 また、本市では、これまで、他の指定都市と共同し、補装具の利用者負担の軽減措置について、国に要望してきました。その結果、国は平成22年(2010年)4月1日から、市民税非課税世帯の利用者負担の軽減措置の拡大や障害者自立支援法に代わる新たな障害福祉制度について検討を進めています。
 本市としては、国の動向を見極めながら、補装具の利用者負担の軽減措置について、国への要望など必要な対応を行っていきたいと考えています。

 障害者自立支援法に基づく補装具費の支給対象者は、身体障害者手帳の交付を受けた者とされています。そのため、補装具の一つである補聴器についても、聴覚障害により身体障害者手帳の交付を受けた者で、補聴器は必要と判断された場合に、支給の対象としています。
 しかしながら、身体障害者手帳が交付されていない難聴児についても早期訓練は必要であることから、そのために必要となる補聴器にかかる保護者負担の軽減策については、今後検討してまいりたいと考えています。


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・子どもの医療費補助制度の対象年齢拡大について

(中森辰一議員)
 次に、私どものところには、子どもの医療費の補助制度の適用年齢をもっと引き上げてほしいという要望がたくさん寄せられています。広島市では保険証がない子どもはいないことになっていますが、医療を受ければ窓口で3割の自己負担が必要で、それが負担できないとなれば医療を受けることはできません。
 子どもに保護者の経済状態の責任は問えません。すべての子どもの健やかな育ちを保障するためには、必要な時にいつでも医療を受けられるようにしておくことは欠かせません。そのためには医療費の負担を免除することが必要です。今の補助制度の対象年齢を計画的に拡大していかれるよう要望します。お考えを伺います。

(健康福祉局長)
 少子化が急速に進む中で、子どもが健やかに生まれ育つ環境づくりを推進していくことは、本市における重要な課題であると考えています。
 子どもが医療機関を受診した場合に、保険診療における自己負担部分を本市が補助する乳幼児等医療費補助制度については、これまでも段階的に対象年齢の拡大等に取り組んできており、昨年10月からは、小学校1・2年の発達障害のある子どもを補助対象に加えました。
 今後とも、国・県の動向や、本市の財政状況等を考慮しながら、制度の充実に取り組んでいきたいと考えています。

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・子どものシェルター早期設置に向けて

(中森辰一議員)
 昨年、家庭にもいられない、児童養護施設にも行けない青年期の子どもが自立するための準備をする場所として、自立援助ホームの設置を提案しました。今年度はその自立援助ホームの設置に向けた取り組みが始まっています。
 私は、安定した運営のためには、本来は公設であるべきですから、民営であっても安定した運営費を保障する必要があると要請してきました。この点について、どのようにされるお考えか伺っておきます。

(こども未来局長)
 児童養護施設を退所した子ども等に生活の場を提供し、日常生活上の援助や生活指導、就労支援を行うため、現在、自立支援ホームの設立に取り組んでいます。
 自立支援ホームの運営には、職員の人件費や建物の家賃などの固定経費がかかりますが、運営のための措置費は、国の基準により月初めの入居者数に応じて支払われることから、収入が一定せず、このことは、安定した運営を行う上での課題であると認識しています。
 このため、国に対し、自立援助ホームの運営のための措置費は、入居者数ではなく定員に応じて支払う制度とするよう引き続き要望するとともに、自立援助ホームの安定的な運営のため、本市独自の支援策について検討していきたいと考えています。


(中森辰一議員)
 一方、そうした方向性を決めることができていない段階の子どもや、虐待で家から逃げ出してきた青年期の子どもが、安全で落ち着いた環境の中で先々のことを考えることができる一時的な受け入れ施設がありません。小さい子どもに手をとられる一時保護所や児童養護施設では、青年期の子どもがプライバシーにも配慮された、落ち着いた環境を確保することは難しいのが現実です。時には親からかくまう必要がありますし、一時保護した施設が親権を盾に親から訴えられることがないように弁護士が守れることも必要です。
 こうした機能は自立援助ホームでは困難で、自立援助ホームと同時に必要な施設として、子どものシェルターと呼ばれるものがあります。昨年岡山にできたものを含め、全国では未だ4つの地域にしかありません。それは、運営資金に大変な困難があるからです。しかし、社会制度のすきまにおかれて行き場のない子どもを守るために必要な施設です。
 広島でも弁護士会のグループが中心になって、施設を立ち上げようと熱心な取り組みを始めています。しかし、懸念したように立ち上げ資金は何とかなっても運転資金の見通しはたいへん厳しいのが現状です。募金で運営するにしても、民間任せでは立ち行かなくなるかもしれません。しかし必要な施設だと使命感で取り組んでおられます。大きな資金が必要なわけではありません。
 本来は行政の責任であることをお考えいただいて、安定した一定額を広島市行政が提供され、先鞭をつけていただきたい。お考えを伺います。

(こども未来局長)
 虐待などで家を離れなければならなくなった子どもには、緊急避難先として安全で落ち着いた環境が確保される必要があり、子どものシェルターの設置はそのための有効な方策の一つであると認識しています。
 本年4月には、広島弁護士会が子どものシェルターに関するシンポジウムを開催するなど、シェルター設置に向けた機運が高まってきています。
 本市としては、子どものシェルターに関する情報収集や他都市の状況の調査を行い、今後、子どものシェルターの設置にあたって、どのような支援ができるか検討していきたいと考えています。

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市民生活の実態について
 
(中森辰一議員)
 次に、今年3月、日本共産党市議会議員団として、市民生活に関するアンケート調査を行いました。約2千5百人の方から回答をいただきましたが、62%の方が暮らしが悪くなったと答えておられます。
 具体的に書いていただく欄には、健康保険料などの支出が増える一方で、雇用情勢の悪化などで収入が減少していることや、まともな就職先がなく将来に展望が持てない若い人の不安が書き込まれ、政治への怒りがあふれていました。
 警察庁の発表では、自殺者が12年連続で3万人を超え、その原因のうち前年に比べて「失業」が65%、「生活苦」が34%も増えています。市民生活の困難が命までも奪う事態が広がり、社会の土台が大きく揺らいでいます。
 人間らしく働くことができるしくみと具体的な雇用の場の確保、いざという時に頼りにできるよう医療・福祉の諸制度を確立することがたいへん重要です。広島市としてどのように現状を捉え、どのように取り組もうとしておられるのかお聞かせください。

(健康福祉局長)
 一昨年秋以降の急激な景気後退の影響により、依然として厳しい経済・雇用情勢が続いており、市民の生活も厳しい状況にあると認識しています。
 例えば、四半期ごとに発表される広島県の完全失業率については、昨年度の第3四半期の平均が4.6%と、過去最悪であった平成15年度(2003年度)第1四半期の4.9%に迫る水準で、厳しい状況が続いています。また、昨年度の本市の生活保護受給世帯数は、15,294世帯であり、一昨年度に比べ、1,759世帯増加しています。
 こうした中、本市は、生活困窮者など日常生活を送る上で援助を必要としている人に対する支援として、生活保護の適切な実施のほか、昨年10月に創設した住宅手当緊急特別措置事業や生活福祉資金貸付制度等の活用促進を図っています。また、介護保険や障害福祉サービスの利用に係る負担の軽減、ひとり親家庭や重度心身障害者等に対する医療費の助成などを実施しています。
 今後とも、日常生活を送る上で援助を必要としている人の経済的な自立と生活意欲の向上を図ることができるよう、国の動向を的確に把握しつつ、必要に応じて本市独自の負担軽減策を実施するなど支援の充実に努めてまいります。


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・頼りになる医療・福祉制度の確立

(中森辰一議員)
 また、充実してほしい施策は何かとの問いで、回答率が高かったのは医療・福祉の施策ですが、中でも一番多かったのが国民健康保険料の引き下げです。
 アンケートには「会社が倒産してアルバイトでしのいでいるが国保料が高すぎて払えない」「所得が300万円しかないのに4人家族で40万円の国保料は重すぎる」という意見がありました。
 小・中学生の子ども2人の4人家族で夫の給与所得が300万円の場合、国保料は35万円程にもなります。所得に比べて保険料が重すぎることが払えない人が増える最大の原因です。広島市の現状認識をうかがいます。

(健康福祉局長)
国民健康保険事業の運営に必要な経費は、国・県等の支出金、一般会計からの繰入金、そして被保険者の保険料負担で賄う仕組みになっています。
 そのため、被保険者の皆さんには、それぞれの所得に応じた保険料をご負担いただき、それを滞りなく納めていただく必要があります。
 本市の保険料を被保険者一人当たりの平均保険料で他都市と比較しますと、平成20年度(2008年度)決算では、本市は8万6,732円であり、これは、18政令市の中で低い方から6番目の水準となっています。


 収入が低くても払える保険料にするために、低所得者に対する保険料減免制度はたいへん重要です。3種類の法定軽減制度がありますが、生活保護基準の収入のそれぞれ8割程度、5割程度、4割程度以下でないと適用されず、これは健康で文化的な生活を保障した憲法25条と明らかに矛盾するものです。
 市独自の申請減免制度は、収入が前の年に比べて3割以上減らないと適用されず、生活保護基準前後の低所得層が利用できないたいへん不十分な制度です。生活保護基準前後の収入の方に減免制度を適用できるようになれば、4人家族で300万円程度の所得なら、もっと払える保険料に引き下げることができるようになり、今の滞納状況の改善につながります。ぜひ取り組まれるよう強く要請します。どうされるか伺います。

(健康福祉局長)
 低所得世帯の保険料軽減対策としては、保険料負担を緩和することを目的に、一定所得以下の世帯を対象として、保険料のうち均等割及び平等割の7割、5割又は2割を軽減する制度を設けています。
 また、失業等による所得減少者のように、前年の所得に基づく保険料額では納付が困難な世帯を救済することを目的に、減免制度を設けています。
 具体的には、一定所得以下の世帯で、失業や事業の休廃止などにより、当該年度所得見込み額が前年の所得額に比べて3割以上減少している世帯や、病気や借金などに係る一時的な支出見込み額が、前年の所得額の3割以上ある世帯を減免対象としています。
 引き続き、軽減制度と減免制度の適切な運用により対応していきたいと考えていきます。

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・払える国保料にするために

(中森辰一議員)
 1984年に、国が国庫負担率を医療費の45%から38.5%に引き下げ、その後も国の責任を後退させたため、市町村の国保会計に占める国庫支出金の割合は、49.8%から34.5%に下がりました。そのしわ寄せが高すぎる国保料です。
 厳しい国保会計の中で保険料を引き下げるには国の責任を果たさせるのが一番です。何より、国には国民の医療を守る責任があります。市として他の自治体と共同して国庫支出金の割合を元の5割近くに戻すよう強く要請していただきたい。お考えを伺います。

(健康福祉局長)
 国民健康福祉事業では、国から国庫負担金や市町村間の財政力の不均衡を調整する普通調整交付金などが国庫支出金として交付されています。
 この国庫支出金について、国に対しては、全国市長会や大都市民生主管局長会議を通じて、国庫負担率の引き上げなどを要望しており、今後とも、他都市と連携し、要望を行ってまいります。


(中森辰一議員)
 今年の4月から、倒産や解雇で職を失った人の国保料を2年間だけ軽減する制度が始まっています。この制度は徹底的な周知が重要です。どのようにされたか伺います。
 また、この制度は自己都合で退職した人は対象外です。しかし、実際は解雇であっても「自己都合」とされている例が多く、そのことに配慮した改善が必要です。市として柔軟な対応ができるような方策が必要だと思います。お考えを伺います。

(健康福祉局長)
 本年4月から、倒産や解雇、雇い止めなどにより離職された方が、在職中の保険料負担と比較して加重な負担とならないよう、国民健康保険料の軽減措置を実施しています。
 具体的には、保険料は前年の所得を基に計算しますので、倒産等により離職された方については、この所得を100分の30として保険料計算を行うものです。
 この制度の周知については、本年4月15日号の「市民と市政」により、広く市民の皆さんにお知らせするとともに、国民健康保険制度についてまとめた小冊子「国保のしおり」の中にも制度の詳細を掲載し、国民健康保険に加入しておられる全ての世帯にお送りしています。
 また、これに加えて、ハローワークでは、リーフレットの配布と詳細については、市に問い合わせるよう案内していただいています。
 議員ご指摘のとおり、この制度は、事業主の都合等により職を失った方が対象であり、自己都合により退職された方は対象にはなりません。
 しかし、退職されたことにより、前年に比べ所得が大幅に減少した一定所得以下の方については、本市が独自に行っている減免制度の対象になりますので、お住まいの区の保険年金課にご相談いただきたいと思います。


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福祉としての市営住宅について

・高齢者が住み続けられる施策

(中森辰一議員)
 次に、市営住宅では多くの入居者が高齢となり、階段があることが日常生活を妨げ、部屋の中に引きこもらざるを得ない状況が広がっています。このため、第一の課題として中層住宅へのエレベーターの設置を要請してきましたが、今その設置が進められています。
 しかし、設置可能な住宅でもあと45棟残っていますが、今の計画ではあと10数年かかります。一方、敷地などの制約からエレベーターを設置できない住宅は、中層住宅のうち圧倒的多数の341棟に上ります。
 高齢化は着実に進行しています。エレベーターの設置可能なところは、10年以上かけるのではなくもっと短期間に整備していただきたい。どうされるか伺います。

(都市整備局長)
 既存中層住宅へのエレベーター設置につきましては、平成14年度(2002年度)から、まず廊下型中層住宅への設置に着手し、平成20年度(2008年度)までに25棟の整備を完了しました。
 階段室型中層住宅への設置につきましては、本市の厳しい財政状況を踏まえ、これまで実施してきた廊下型中層住宅への設置と同程度の事業費内で順次進めることにし、平成21
年(2009年)3月に策定した市営住宅ストック有効活用計画の中に、設置が可能な45棟について、年間3〜4棟ずつ進めていく旨を方針として盛り込み、昨年度に事業着手したばかりです。
 したがいまして当面は、この方針に沿って整備を進めたいと考えています。

(中森辰一議員)
 また、エレベーターを設置できない341棟の市営住宅のほとんどは、今のままでは高齢者が住めなくなります。私は、住み替えをもっと積極的に進めるべきだと提案してきました。市は今年度から、一人暮らしの高齢者限定で、民間の高齢者住宅に住み替えれば市営住宅の家賃との差額を4万円を限度に補助する制度を始めます。しかしこれは高齢の単身者にしか適用されません。対象を、高齢者のおられる世帯すべてに拡げるべきです。

(都市整備局長)
 市営住宅への入居は公募が原則であり、現在、市営住宅に入居されている方が、他の市営住宅に移り住む場合も、こうした公募に応募していただく必要があります。
 しかしながら、加齢、病気等により階段の昇降が困難となった入居者については、例外的に、公募によらず、現在、入居している市営住宅と同一の住棟内又は同一団地内への住み替えを認めています。
 議員ご指摘の、同一団地以外への住み替えにつきましては、身体障害者手帳1級から4級の交付を受けている入居者等について、通院先等を勘案して認めています。
 この要件を緩和することについては、公募による入居希望者との公平性の観点から慎重に対応する必要があります。
 このため、今後、どのような要件の緩和が可能であるか、他都市の状況を把握するなど調査・研究してまいります。

(中森辰一議員)
 この民間住宅への住み替え補助制度の実施状況と来年からどうされるのか、また、単身者以外に拡げることについてどうされるか、お答えください。
 また、別な市営住宅への住み替えは、今住んでいる団地内に限られていると思いますが、これをもっと広げるべきだと思います。お考えを伺います。

(都市整備局長)
 加齢、病気等により階段の昇降が困難となった高齢の単身者については、住み替えの必要性が高いため、今年度から、バリアフリー化対応がなされた民間の高齢者円滑入居賃貸住宅を斡旋するとともに、現在入居している市営住宅の家賃と同程度の負担となるよう家賃の一部を補助することにより、住み替えを支援する制度を開始します。
 現在、住み替え先となる民間賃貸住宅を確保するため、この住宅の本市への登録について、募集の準備を進めています。
 この登録が整った後、8月頃から対象者の意向を確認し、本年10月から住み替えを開始する予定です。
 来年度以降につきましても、今年度と同様、高齢単身者を対象に実施したいと考えています。
 また、議員ご指摘の、対象を高齢単身者以外にも拡げることにつきましては、財政事情が大変厳しいことを考慮して、今後の課題とさせていただきます。

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・障がい者の暮らしを守るために

(中森辰一議員)
 次に、重い障がいのある人たちの、いわゆる「親亡き後」の暮らしをどうしていくのかが深刻な課題になってきています。この課題についての障がい者と家族の強い願いに応えて、民間が資金を集めてケアホームやグループホームを作る取り組みをしてきました。
 しかし、現実には建設費などの負担重く、施設建設は一部に止まっています。西区にあるケアホームの建設費をつくるために、親たちも関係団体なども大変な努力をして建設にこぎつけました。それでも、ケアホームをという強い願いがたくさんあります。
 そうした中で、既存の市営住宅を活用してグループホーム、ケアホームを作っていくということと、老朽化した市営住宅団地の建て替え計画の中で、これらを併設するという考え方があります。
 広島市では既に1か所、吉島東の特賃住宅の空部屋を利用したケアホームがあります。また、吉島の市営住宅団地の建て替え計画が進められつつあり、ここに福祉的な機能を導入することが検討されています。こうしたことは、国の政策もあって市営住宅ストック活用計画の中でも「福祉施策との連携」ということがあり、方向性として位置づけることができます。広島市としては積極的に市営住宅を活用したグループホーム、ケアホーム設置を推進するべきだと考えます。市のお考えを伺います。

(都市整備局長)
 市営住宅をグループホーム・ケアホームとして活用することは、公営住宅法においては、目的外使用に当たるため、「市営住宅の適正かつ合理的な管理に支障のない範囲内」で行うこととされており、
(1) 市営住宅の本来の入居対象者への供給に支障が生じないこと
(2) 事業が円滑かつ確実に実施されると見込まれること
が要件となります。
 議員ご指摘のとおり、これまでに吉島東住宅においてケアホームとして活用している事例があり、今後も、具体的な要望があれば、これらの要件を踏まえ、健康福祉局と連携を図りながら検討してまいります。
 また、老朽化した市営住宅団地の建て替えのモデル事業として取り組んでいる吉島住宅の更新においては、「市営住宅の建て替え」及び「余剰地の創出と有効活用」を一体の事業として進めることにしています。
 その余剰地内での社会福祉法人等によるグループホーム・ケアホーム建設の可能性については、健康福祉局と協議・連携しながら、検討していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 どのような形で作るにしても、現状の制度の枠組みだけでは、建設時には作ろうとする側に巨額の負担が求められますし、特に重度の方のケアホームでは国の報酬単価が増額されたとは言え運営費も赤字になりがちです。これも本来は行政の責任ですが、現状は民間の必死の努力で赤字を抱えながら運営されています。そんな状況を放置したままでは、必要なときにケアホームを作ることは困難です。
 市としては、親を含めた民間で、ケアホームを作ろうとするとき、せめて、建設時も運営にあたっても、施設運営者や親たちに特別な負担を強いることがないように、十分な財政的支援をするのが当然です。どのようにされるお考えか、お聞かせください。

(健康福祉局長)
 障害者のケアホーム、グループホームの整備に当たっては、社会福祉法人の初期負担を軽減するため、市が保有する未利用の土地や建物を貸与するなどの支援を行っています。
 また、平成20年度(2008年度)にケアホーム、グループホームの整備に対する国庫補助制度が創設され、同時に独立行政法人福祉医療機構の融資制度が拡大されたことから、これらの制度に基づいて、整備費や借入金の元利償還に対する本市としての財政的支援を行います。
 次に、ケアホーム、グループホームの運営費については、これまで指定都市市長会要望などあらゆる機会を通じて事業者報酬の引き上げ等を国に要望してきました。その結果、平成21年(2009年)4月からケアホーム、グループホームの運営にかかる事業者報酬について、世話人の配置割合に応じ、最大50%の大幅な引き上げが行われました。
 今後とも、報酬改定の効果も見極めながら、必要な対応を行ってまいります。


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<再質問>

・被虐待児ケア

(中森辰一議員)
 いくつか要望と再質問をしたいと思います。虐待に関しては、保護した後どうしていくのかということを質問で取り上げたわけですが、虐待を受けた子どもに対する治療の体制が現状で足りてるのかどうかということは、今の答弁ではよくわかりませんでした。紹介した愛知の子ども病院では、子ども虐待の専門外来を持っていて、医師と臨床心理士がチームを作って、入院治療も含めたプログラムをもってやっています。同時に、虐待をした側、母親、父親なども必要に応じてカルテを作って一緒に治療をしているという、そういう取り組みもやっています。
 そこまでは、なかなか困難があろうかと思いますが、広島市では小児科の医師も小児精神科の医師も足りない状況ではないかと思います。そういう点では、この問題に対処していくための体制はもっと強める方向で取り組んでいくべきではないかと思っていますので、前向きに取り組んでいただきたいと思います。

・障害児補装具の自己負担やめよ

(中森辰一議員)
 障害児の施策について、私はこの間障害児だけではなく、今回は補装具だけ取り上げましたけれども、障害のある人たちの施策として、全体の問題として、今の考え方というのは、バリアフリーもノーマライゼーションも関係がない。なぜ障害のある人たちに特別に負担を押しつけるのかと、そういう議論をしてきたわけです。
 広島市は一生懸命取り組んでこられて、この自立支援法の負担の中で、4分の1にまで負担を縮めてこられた。なぜ最後の4分の1を広島市としてゼロにしようというふうにならないのかということを、私は申し上げてきたわけです。
 これから、もしかしたら自立支援法そのものが廃止されて、新しい制度ができてくるかもしれません。しかし、仮に、前のような考え方の施策に戻るということで考えますと、以前の制度は市民税を課税されている、そういう家庭の子どもであれば、これはちゃんと負担があったわけですよ。どうしてそういう家庭は負担しなければいけないのでしょうか、ということなんですね。子どもを育てていくためにどの親も同じように頑張ってやっておられます。
 しかし、現状では障害のある方だけ、あるいは障害のある子どもを持っている家庭だけ特別な負担があります。これは理不尽じゃないかということを申し上げてきたわけです。これは国の施策が大本でありますけれども、広島市としてとりあえず子どもというところで考えれば、子どもの権利保障とおしゃるわけですから、それはぜひ負担ゼロの方向で取り組んでいただきたいと思います。この点はもう一度考え方を、方向性として考え方をご答弁お願いしたいと思います。

(健康福祉局長)
 まず、補装具についてでございますが、特にご指摘のように子どもの補装具につきましては、親御さんの負担については大変なものがあろうかと、かように思います。その辺り現状について、いろいろ研究しながら、ただ国の動向もございますので、その辺りを研究しながら検討を進めてまいりたいと、かように思っております。

・障害者ケアホーム、グループホーム

(中森辰一議員)
 それから、市営住宅とケアホームなどのことについてでありますけれども、住宅の担当部局としては、目的外使用という形で提供はできるというふうだと思います。私は、現状のなかで一番手っ取り早くできる方法は、今の2割空いている特賃住宅を活用するということだと思います。
 今この2割空いている特賃住宅、家賃が入らないわけですから、これを活用して家賃も入ってくるという形にすれば、一石二鳥だということになります。ただ、3LDKですから、4人分の部屋を確保した上に、世話をする方のスペースを作るという点では改造が要ります。そういうことを含めて、この住宅当局として、この分野に積極的に提供していくんだという、そういう姿勢がいるのではないか。
 それから団地の建て替えのときにケアホームなどを作る可能性ということがいわれました。私、これは可能性を検討するのではなく、可能性をぜひ作っていただきたいという、そういう積極性を住宅当局もぜひ持っていただきたいということです。これについてもう一度ご答弁お願いしたい。
 これについては、障害福祉の方ですけれども、積極的な財政支援をということをこの間ずっと求めてきました。障害年金で暮らす方々にとって、入居に必要な固定的な負担というのは、食費とか被服費とか社会的な活動をするために必要な費用、これとのバランスが必要です。現状では負担が重いということがあるのではないでしょうか。
 それから新しく施設を作るときも、その建設コストを入居者あるいはその家族が負担しなくちゃいけません。こういうところを減らしていくということを、ぜひ考えていただきたいというふうに思います。
 それから事業者が運営するときの現状はもう、ほとんど赤字になるような、状況があるわけですけれども、そういう状況を放置していたのでは、すぐにやろうというふうにならないのではと提起をいたしました。広島市としては、運営をするにしても赤字にならないような、そういう手立てを、市として責任をもってやりますよと、そういう約束をぜひしていただきたいということなんです。市が積極的にケアホームを作ろうというふうにお考えであるのなら、当事者誰もが明るい展望を持ってこれに取り組んでいける、そういう方向を、方向性を目指して頑張っていただきたいと思います。この点についても再答弁をお願いをいたします。

(健康福祉局長)
 ケアホーム、グループホームについてでございますが、ご質問のなかにございましたように、親亡き後の障害者の方の生活については、いろいろ困難なものがあろうかと思います。この辺りも現状を研究しながら取り組んでまいりたいと、かように思っております。

(都市整備局長)
 市営住宅かグループホームに関係しましてのご質問にお答えします。
 特賃住宅は中堅所得者向けに建設した住宅でございまして、さきほどありましたように広いという一方で近傍の家賃とほぼ同じということもありまして、空き家があるというのは事実でございます。この特賃住宅を活用することにつきましては、現在も空き室状況というのを健康福祉局に情報を提供いたしております。今後も具体的な要請がありましたら、
先ほど申し上げました目的外使用の要件であるとか、団地ごとの入居状況等を踏まえまして、健康福祉局と連携を図りながら検討したいというふうに思います。
 それから吉島住宅につきましても、先ほどご答弁申し上げましたように具体的な要請がございましたら、やはり健康福祉局と連携を図りながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。以上です。


・児童憲章から子ども条例へ

(中森辰一議員)
 今日は、子どもについていろいろ質問をしました。子ども条例に関わって市長からの答弁もありました。私たちの社会は、およそ60年前に、子どもにたいへん大事な約束をしました。
 児童は、人として尊ばれる。
 児童は、社会の一員として重んぜられる。
 児童は、よい環境のなかで育てられる。
1.すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。
2.すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもって育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる・・・などなど、12項目までありますが、1951年に宣言された児童憲章です。この内容をよく見ると、子ども条例の原則と変わりません。
 安全な成育環境、医療、教育、子どもが大人になるまでの基本的な課題が具体的に述べられています。
 子どもの権利条約よりも、ずいぶん前に、私たちの日本社会はこういう原則を子どもたちに対して宣言をしています。しかし、今日質問したように、この約束はいまだ十分に果たされていません。私たちの社会の怠慢だと思います。
 児童憲章は法律ではありませんが、自治体が法律の形にしようというのが子ども条例だと受け止めています。ぜひ、実現してほしいと思っています。ただ、市長の方では、子ども条例を待つのではなく、ぜひ積極的に子どもたちの権利を保障するための施策を着実に進めていただきたい。このことをお願いしておきます。

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