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2009年3月10日 予算特別委員会・建設関係 皆川けいし議員の質問(大要) |
原爆ドームと平和記念公園周辺の高さ制限について 吉島の市営住宅の建て替え 文書質問(PDF 780KB) |
原爆ドームと平和記念公園周辺の高さ制限について (皆川けいし議員) この問題については3年前の平成18年3月予算特別委員会でも私は取り上げました。このときは私は世界遺産原爆ドームの価値を守るうえで市は2つの過ちを犯していることを指摘しました。 1つはレストハウスをこわそうとしたこと、もう一つは原爆ドームの目の前にい高層マンションの建設を許したことです。そしてその過ちの根底には原爆ドーム本体とバッファゾーンは一体のものであるという認識が広島市にも、また国、文化庁にも長年欠如していたことを指摘し、これ以上の景観破壊を許さないためにも一刻も早く市民的コンセンサスを得て、高さ規制を行うことを求めました。 今回私がまたこの問題を取り上げるのは、このままでは広島市が3つ目の過ちを犯すのではないかと危惧するからです。 平成8年(1996年)12月に原爆ドームが世界遺産に登録されて、今年で13年目を迎えます。 世界遺産になったということは、原爆ドームと平和公園、及びその周辺地域が人類共通の「遺産」となったということであり、日本国と広島市及び広島市民は、今後人類共通の「平和の遺産」として原爆ドームの普遍的価値をさらに高めるための努力と義務を負ったということでもありました。 世界遺産は、2006年7月現在で文化遺産644件、自然遺産162件、複合遺産24件、合計830件ありますが、このうち紛争、自然災害、開発などで世界遺産としての顕著な「普遍的価値」が危機に直面しているとして、世界遺産委員会から「危機遺産リスト」に登録されているものが31件となっています。 近年では遺産そのものの保存状態が問われるのではなく、遺産とその周辺の「空間的統合性」が問題となり、2004年に「危機遺産リスト」に登録されたドイツの「ケルン大聖堂」が非常に注目を集めています。その原因となったのは、ライン河対岸地域における高層ビル群の建設です。もし、このまま、ドイツ政府が必要な対策をとらない場合は、世界遺産リストから「抹消する」と警告されました。 その後、ドイツ政府の努力で高層ビル建設計画の縮小により2年後に危機遺産リストから削除をされました。「ケルン大聖堂」の危機遺産リストの登録が世界の注目を集めたのは、都市部に歴史的文化遺産を保有する日本を含めた先進国にとって他人事でない問題を孕んでいるからです。 実は、原爆ドームはについては危機遺産への登録についてかつて論議されたことがあります。 それは平成18年(2006年)1月26日東京で開かれた「平和記念施設のあり方懇談会」の合同会議の場です。そのときの詳しい議事録を見ていないので詳細はわかりませんが、原爆ドーム本体の劣化とともに周辺の空間的統合性が問題視されたものと思われます。 ところで、日本には文化遺産が現在11ありますが、そのうち平成12年(2000年)までに登録された遺産が9つあります。法隆寺、姫路城、古都京都の寺社仏閣や宇治の平等院、日光の社寺等々です。原爆ドームも宮島もその中の一つです。このうちいまだに周辺の景観を守るために「高さ制限」を設けていないのは原爆ドームだけです。なぜ原爆ドーム周辺だけがいまだに取り残されてきたのでしょうか。なぜ13年も経つのに周辺住民の理解が得られていないのでしょうか。 この点で私は、3年前の質問のときにも引用しましたが、当時、広島市内で開催されたユニタール主催の『世界遺産ワークショップ』でユネスコのアジア・太平洋地域アドバイザーの方が発言された言葉を今でも忘れることはできません。 それは「世界遺産を守るのは常に開発との対話とのたたかいだ。」という言葉です。 私は、これまで広島で一番欠けているのは、この市民的な「対話」、つまり市民的なコンセンサスを得るための努力だったのではないかと思うのです。その努力がなければ世界遺産を将来に向けて守り、その価値を高めることはできません。 原爆ドームと平和公園の周辺の景観は、どうなってもいいと思っている市民は、おそらく一人もいないでしょう。誰もがこれからも良好な景観を保たれることを望んでいると思います。しかしそのためにはどうすべきか、高さはどれくらいが適切か、どの範囲に適用すべきなのか等々、これまで市民的なコンセンサスを得る努力がどれくらいこれまでこの広島で行われてきたのでしょうか。 この点で私は、京都府宇治市の取り組みを紹介して是非これを学ぶべきだと思います。宇治市にある平等院が世界遺産に登録されたのは、平成6年(1994年)度。原爆ドームの2年前です。当時、平等院周辺は、府の条例で特別風致地区に指定され、高さ10mを超える建築物は建てられない地域になっていました。ところが遺産登録の2年後に平等院から約500m西の宇治駅一帯、実はこの地域は高さ制限がない「商業地域」ですが、その一角に高さ45m.15階建てのマンションが2棟建ち平等院の景観をこわしてしまいました。更に、平成16年(2004年)には同じ地域に高さ30m.9階建てのマンション計画がもち上がりました。「これ以上黙っておられない」と平等院が市に窮状を訴え、市議会でも議論となり、検討が重ねられ、2年後の平成18年(2006年)に市は都市計画法の高度地区を変更して「商業地域は20m」「近隣商業地域と第1種住居地域は15m」とする高さ都市計画決定をしました。 (宇治市の街灯地域の地図を示し説明) 問題は、それに至る経過です。このマンション計画が問題となってから2年間の宇治市の取り組みです。「市民の意向をどう汲み取り、高さを決めてゆくか。そこで、宇治市がまず取り組んだのは住民の意向調査です。平等院の周辺22自治会、町内会全戸871戸に対して意向調査を行い、674戸(77%)の回答がありました。そして高さ制限を設けることに賛成又は条件付き賛成が82%。そのうち、高さ15m以下が71%、20m以下が22%でした。つまり最高の高さは、20m程度までなら住民の大多数が賛成であるということがわかりました。(ちなみに平等院は、高さ13.6m・長さ:南北31.8m・東西41.5m) 宇治市では、この住民意向調査をもとに、都市計画審議会、及び景観審議会でそれぞれ議論を重ねて、先程述べましたように、平成18年に都市計画決定、平成20年、昨年ですが景観計画を決定しています。勿論議会でもこの間の住民の意向調査をもとに議論が深められております。私が強調したいのは、こういう取り組みを通じて宇治市民の多くが文化遺産としての平等院の価値に改めて関心をもった。世界資産とは何か、なぜ守らなければならないか、守るためにはどうあるべきか、改めて理解を深めていったということであります。 これに対して広島市では市民の理解を深めるためにどういう努力がされてきたのでしょうか。 率直に言わせていただきましたら、原爆ドームが世界遺産に登録されてから13年になりますが、被爆者団体のみなさんの取り組み以外に、市の方から積極的に市民のコンセンサスを得る努力が果たしてどれくらい行われてきたのか。この間、周辺に高層マンションが次々建ってもなんら警鐘が発せられず、4年前に三井のマンション建設が問題となった時も結局、市としては、なんの有効な対策が打てませんでした。 その後、「美観形成要綱」を改正して高さ規制を導入されましたけれども、そのときも周辺住民、とりわけ地権者を始め、直接影響を受ける方々の意向調査すら行っていません。こうした経過の中で一昨年12月に「景観審議会」が設置されたわけですが、そこでこれから質問させていただきます。 こうした経過の中で一昨年12月「景観審議会」が設置されましたが、昨年7月素案を取りまとめるまで何回開催されましたか。 (都市デザイン担当課長) 「景観審議会」での議論は平成19年12月に、原爆ドーム及び平和記念公園周辺地域の景観計画策定について諮問を行っております。翌年20年3月に第2回、5月に3回目、7月に「素案」の取りまとめということで開催しております。 (皆川けいし議員) 約7ヶ月の間に、諮問を入れて4回ということですが、その審議を通じて私が一番大事じゃないかと指摘させていただきました高さ制限を加えるの当たって、市民や周辺住民の皆さん方の意向調査について景観審議会のなかで議論されたことがあるのでしょうか? (都市デザイン担当課長) これまで4回の審議会の議論の中身についてですが、市民の意見がどうであったかということについてはあげておりません。素案を取りまとめをいたしまして、その後説明会を開催させていただきまして、そういったご意見については今後、公聴会を開催して審議会に市民の意見をあげていく予定です。 (皆川けいし議員) 素案をまとめるにあたって市民の意向調査は議論されなかった、しなかった。素案を作ってから聞けばいいというスタンスでやってこられたのではないかと思うのですが、私はこれは逆ではないかと思うのですが、これは置いておきます。昨日の答弁では、市は来年度中に「景観計画」を策定したいとご答弁がありましたけれども、これはあくまでの周辺住民の同意を得られたらというこういう前提での市の意向だと受け止めていいのですか。 (デザイン担当課長) 地元の方を含め市民のご理解を戴いた上で作成するということです。 (皆川けいし議員) そうしますと、新年度予算に景観の計画の策定費が170万円。これはあくまでも来年度中に、もし周辺住民皆さんのご理解を戴けないということになったら、当然それを踏まえて次の年に継続するというような含みもあるんだと受け止めていいですか。 (都市デザイン担当課長) 景観計画が策定できてはじめて実施される。 (皆川けいし議員) 景観計画の策定予算は。 (都市デザイン担当課長) 来年度予算に計上しております150万円は、原爆ドーム周辺の景観形成支援事業ということで 屋外広告事業を対象としたものです。これ以外に景観計画の策定ということで予算を計上していますが、これは原爆ドーム周辺の景観計画ではございません。駅付近での景観計画です。 (皆川けいし議員) 景観審議会の開催予算はどこに含まれているのですか。 (都市デザイン担当課長) 景観形成計画の策定費用ということで、170万9,000円を計上しています。 (皆川けいし議員) わかりました。来年度に急いで景観計画を策定する。あくまでも住民の皆さんの同意を得た上で、そうであるならば策定したいということで間違いないですね。 (都市デザイン担当課長) ご理解を得られた上で策定したい。 (皆川けいし議員) 昨日も取り上げられていましたが、議会にも白紙撤回を求める請願が出されています。白紙撤回に戻すというのは、私自身はどうかと思っておりますが、いずれにしても一番影響を受ける方々からこういう声が出されて、しかも陳情でなくて請願ですからね。ここまでくるにはよくよくのことがあったのではと思うわけです。何故こういう事態になるまで、市は努力できなかったのか、非常に残念に思うわけですが、素案が今だされておりますが、あくまで素案ですね。たたき台だと思うのです。ですから本当の市民的な議論はこれからだと思うのです。景観条例の手続きに従って今から色々やられると説明がありましたけれども、景観条例に決まっている従来の決定、意見を聴取してということでなくて、それはそれでやりながらそうではなくて、先程いいましたように宇治市のように、もっとあの周辺に住んでおられる1000戸に対して意向調査をやったらどうですか。 市の方の考えもちゃんと説明しないといけないと思うのです。一方的に「どうですか」と聞くだけでなくて、「世界遺産というものはどういうものか」こういうことに触れながら市の考えも述べながら、意向も聞くという思い切って飛び込んでいかなかったらこの問題は本当に解決できないのではないかと思うです。 今後そういう住民の意向調査や不利益を受ける方々への保障のあり方などについても、もっとオープンにして幅広い討論を行うべきだ思うんです。そういうお考えはないのでしょうか。 (都市整備局長) これまで原爆ドーム・平和公園周辺地区の景観計画につきましては、平成18年の時のマンション問題を含めて色んな各方面からの意見書も出ました。イコモスからの懸念表明も受理しておりますし、世界遺産原爆ドームの景観を守る会からも懸念が出されております。それを踏まえて現在の「美観形成要綱」に高さ制限を設定し、その際にも地元の方々にも説明はしております。その後、早急に法的に位置づけて、景観形成内容を充実したいということで景観法に基づく景観計画の策定。 委員ご質問の今後の進め方につきましては、この景観計画の素案や建て替え等の支援策についきましてより丁寧に地元の方々にご説明すると共に、地元の皆さんをはじめとして地域周辺の方、市民の方々のご意見をしっかりお聞きして、その上でまたその意見について対応できるものは対応していき、ご理解していただけるよう勤めてまいります。当地区の景観形成は、非常に重要なことだと思ってります。こういった認識でご理解いただいた上で景観計画の策定に積極的に取り組んでいきたいと思っています。 (皆川けいし議員) この周辺地区の問題について市民が受け止めている声を客観的に示すようなデーターはないと思うんです。ありますか。 (都市整備局長) 確かにこれまでの2回の説明会では、景観計画はいいけれども「高さはどうか」とか「これだけの高さを規制をするならば保障をしてくれ」等、色んな意見はあります。それぞれの地区、それぞれお住まいのマンションの形態、どういった業をなしているかの地権者の事情もございます。各地区においてそれぞれのご意向をしっかりお聞かせ願いながら、これまで2回、一部のマンションでは管理組合で説明会を開きご意見を伺っております。引き続き、高さ規制をする地域につきまして個別により丁寧に説明し、又ご意見を聞かせていただきたいと思っております。 (皆川けいし議員) 個人の資産に対して制限の網をかけるわけですから、これは簡単に進めるべきではないと思います。宇治市でもこれだけ全域、全戸871戸に、アンケートをやったわけで、広島の場合114万市民全部やれと私は言いません。しかし、広島は広島のやり方がある。こういうことをやるべきだ、そういう地道な努力を積み重ねないと、仮に今回の良かれとおもって少々の反対があっても、市の意向で打ち切るというやり方をやれば、将来に禍根を残しかねないと私は思うのです。市に対する信頼も失墜するということになるのではないか、非常に危惧をしております。そういうことでは、原爆ドームと周辺の景観を守るというために、市民のコンセンサスを抜きにしては、これは守ることはできません。とりわけ目の前の住民から、昨日は裁判の話もでましたが、あのような強硬な方々が、かなりおられるということになれば、これは無視できないのではないかというふうに思います。決して拙速に進めてはいけないと老婆心ながら私は最後に強調させていただきたいと思います。それではそれまでの間、公的に拘束するものはないではないかとなりますので、そのためにも美観形成要綱が折角あるわけですから、これに基づいてもし高層マンションの計画でも出たら、それこそ市を上げて市民世論にも訴えてストップをかけるということを今度こそやっていただきたい。そういうことを通じて本物の世界遺産を守ろうという市民の中に意識がもっともっと高まっていくのではないかと思います。 上にもどる 吉島の市営住宅の建て替え (皆川けいし議員) 昨年と一昨年の募集戸数、応募数、倍率を教えてください。 (住宅政策課長) 平成19年度(2007年度)は400戸余りに対し9,305世帯が応募。 (皆川けいし議員) 吉島の市営住宅の建て替えでは、事前に戸数を増やす考えはないと聞きましたけれども、先程の数字で400戸に対して9000人からの申込みがあったということで、とても市営住宅が足りている状況ではない。 まず大前提として、不足している市営住宅を増やすという事業になるよう要望しておきます。残りの質問は文書発言とします。 文書質問(PDF 780KB) 上にもどる |
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