トップ議会情報・議員の発言2008年度決算特別委員会 >分科会総務関係 中森辰一議員


2009年11月5日 分科会・総務関係 中森辰一議員

 入札・契約のあり方について
 開発事業基金の扱いについて
 事業の超過負担について


入札・契約のあり方について

(中森辰一議員)
 3つのテーマで質問する。最初は入札・契約の在り方についてということだが、まず平成20年度の入札・契約の状況について個別に聞いておきたい。
 工事契約の状況について、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の種別ごとに、件数と、設計金額、予定価格に比べて、落札額がどのようになっているか、平均落札率を報告してもらいたい。

(工事契約課長)
 (答弁内容は一覧表参照)


(1)平成20年(2008年)度の工事契約状況
  件数 落札率(%)
一般競争入札 1186 77.48
指名競争入札 19 91.11
随意契約 270 86.63

(2)一般競争入札の規模ごとの状況
  全 体 低 入 札 
件 数 落札率(%) 件 数 落札率(%) 発生率(%)
1000万円未満 623 80.28 168 71.30 26.97
1000万円以上5億円未満 555 74.35 333 68.42 60.00
5億円以上 8 76.37 6 72.18 75.00
1186 77.48 507 69.42 42.75

(3)指名競争入札の規模ごとの状況
全  体 低 入 札
件 数 落札率(%) 件 数 落札率(%) 発生率(%)
1000万円未満 4 89.38 該当なし    
1000万円以上5億円未満 15 91.57      
5億円以上 0      
19 91.11      

(中森辰一議員)
 一般競争入札で、工事規模ごとにはどんな状況か。1000万円未満、5億円未満、5億円以上の3つの分類でお答えいただきたい。
 また、低入札はどの程度あるか。規模ごとにお答えいただきたい。

(工事契約課長)
 (答弁内容は一覧表参照)


(中森辰一議員)
 同じく指名競争入札の場合はどうか。低入札はどうか。

(工事契約課長)
 (答弁内容は一覧表参照)

(中森辰一議員)
 物品購入などの一般競争入札ではどのような状況か。

(物品契約課長)
 物品購入や印刷物などの製造請け負いにおける平成20年度の平均落札率は87%となっている。低入札価格調査制度は、物品の購入については適用対象外である。印刷物などについては、予定価格が過去の実績を調査したものや最新の原材料価格を調査した物価資料をもとに、市場の動向を反映した価格としており、これまでの入札結果をみての、入札価格と予定価格に大きなかい離がないということから、低入札価格調査制度を適用したことはない。


(中森辰一議員)
 清掃やビル管理などの業務委託だが、本庁についての最近の3年間の状況はどうか。  

(物品契約課長)
 清掃、警備、各設備の運転管理など主な業務の平均落札率について、3年間で申し上げると、H18年度が97%、H19年度が91%、H20年度が84%となっている。低入札価格調査制度を適用した例はない。

(中森辰一議員)
 今日は主に工事の分野でやりたいと思うが、9月議会で審議した段原中学校の建設工事の場合、落札率が68%だったと思うが、いかにも低い、まともに工事できるのかという印象だった。
 いま聞いたところでは、小規模の工事でも4分の1、1000万円を超える工事では調査基準価格を下回る低入札の方が半数を超えているが、こういう状況が定着するのかどうか、発注者の市としてはどのようにお考えか。

(工事契約課長)
 はっきりしたことは分りかねるが、現在の社会情勢では続くのではないかと思っている。


(中森辰一議員)
 公共工事を民間事業者に委託して実施することや、物品などを民間業者から購入する、あるいは民間業者に業務委託をする、いずれも税金を使って行うわけだが、こういったことで民間業者に入札し契約してやってもらうことの意義は、どういったことか、市のお考えはいかがか。

(契約部長)
 市が直接工事をするという体制を持つことは大変難しいことであるので、市の業務を補完するような形で、業者に工事を発注する、あるいは業務を委託する、あるいは物品を購入する、そういったことだと思う。


(中森辰一議員)
 それが出発点であるが、民間に発注してやってもらうということを考えてみると、市民生活に必要な施設をつくって、市民に使ってもらって、あるいはそこで事業を行って、市民生活の安全、安心を確保し、暮らしを守り豊かにする場とするなど市民福祉を前進させる、ということがまずあると思う。 さらに、民間にやってもらうということで、地域の仕事をつくって、地域経済の発展と地元企業の成長を支える、さらに市民の雇用の確保に役立つなど地域経済対策としての役割を果たす。こういったこともあると思う。
 もちろん、入札を行う前提は、最小の費用で最大の効果をあげるということにあることは言うまでもない。 しかし、安ければいいということにはならないと思うが、いかがお考えか。

(工事契約課長)
 本市では、予定価格250万円を超える建設工事の一般競争入札及び、指名競争入札に、低入札価格調査制度を導入し、業者が入札した価格が調査基準価格を下回った場合は、工事費や労務費等の内容が適正かどうか調査する。さらに、入札価格が調査基準価格の85%を下回っている場合は、より慎重に判断する必要があると考え、労務費内訳書や工事工程表等の提出を受けて、さらに詳細な調査を実施している。
 これらの調査の結果、原価割れとなる場合や、契約内容に適合した事項がなされない恐れがある場合は、入札価格が低くても落札者とはしていない。

(中森辰一議員)
 要するに、安ければいいわけではないという考えでやってきていると受け止めたい。我々はかつて、高止まりの落札率や談合の疑惑が後を絶たないことを問題にした。
 以前は、予定価格が公表されていない中で、予定価格以内を確保し、なおかつ95%以上、限りなく100%に近い落札結果が次々と出現した。どの企業も落札したいはずなのに、わずかずつしか違わないほとんど横並びのような入札額。平静11年だったと思うが袋町小学校の改築のときは、99.8%だったか99.9%だったか、そういう落札結果もあった。
 契約案件があるたびに、入札調書をとってみたが、95%以上が多かったと記憶している。これは、工事規模が大きいほど、この傾向が顕著だったと思う。だから、談合があるのではないか、そういう強い疑いを持った。
 そこで、談合のできないしくみへの改革を求めた。これは必要なことだと当局も考えて、様々な改革をしてきた。そういう成果があって談合はほとんどできなくなり、かつてのような落札率の高止まりという状況はだいたいなくなった。
 しかし、最近は仕事が少なくなって競争が激しくなった反映だと思うが、きわめて低い落札が目立つようになった。過当競争だと思う。これはこれで、公共が行う入札の状況として問題だと思うが、いかがお考えか。

(工事契約課長)
 本市では、低入札調査を行った案件については、工事完成後に、業者から報告書の提出を受けて、その中で赤字(になった)などの報告はH20年度ではなかった。それと技術管理課の所管となるものであるが、工事の品質に問題があるようには聞いていない。

(中森辰一議員)
 端的に、こうであると答えていただければいいが、要するに、過当競争になってはいけないと思うが、その点を一言でお願いする。

(契約部長)
 過当競争がいいとはとても言えないが、現在の発注件数や発注状況に対する、登録業者の状況、こういうものを踏まえると、確かに厳しい状況にあるとは思う。


(中森辰一議員)
 そういう中で考える必要がある点について言いたいのだが、先ほど、公共の仕事を民間に発注する意義ということを言ったが、地元企業の成長を支える、雇用確保に役立つというとき、公共の仕事を引き受けてよかった、そういう仕事ができてよかったと思ってもらえることは、大変大事な点だと思う。
 これは、できるだけ安くということはあるが、公共の仕事を請け負うことで、広島という地域社会や市民の役に立ったということと同時に、会社の経営改善につながった、そこで働く労働者の雇用、生活の安定につながったということが大事だと思うが、この点はいかがか。

(工事契約課長)
 おっしゃる通りだと思う。それで先ほどから言っているように、低入札の場合の調査の中で、労務費の調査であるとか、下請け業者の契約状態などの調査も行っている。

(中森辰一議員)
 わかるならお答えいただきたいが、昨年1年間で一番低かった落札率は何%か。

(工事契約課長)
 60%を少し割った程度だったと思う。


(中森辰一議員)
 60%を割る、5割台ということだが、やはり低すぎるのではないかと思う。先ほど言った民間に仕事をしてもらって(市民の)役に立ってもらう、そのことによって地域の経済にも資していく、そういう点から考えると、あまりに低すぎる価格でやるというのは、そうした意義、役割を損なうことになるのではないか。
 どのようなものにも、適正価格というものがあると思う。設計価格・予定価格があって、それに対して、各入札企業が競争して、価格での努力をした結果として落札額が決まる。その際に、会社が努力をいろいろして、その結果、会社が健全に継続できるだけの利益が必要だろうし、現場で働く労働者が自分と家族の生活を十分に維持できるだけの賃金が必要で、それらが組み込まれたものである必要がある。
 そこに、適正価格というものがあると思うが、この点は、賛成か反対か。

(工事契約課長)
 賛成である。


(中森辰一議員)
 赤字でやっていいということにはならないし、生活もできないようなワーキングプアに、広島市の仕事をやりながらなるということではいけないと思う。
 そこで、調査基準価格というものがあるが、これはどのようにしてやるのか、以前の最低制限価格と調査基準価格の違いはどこにあるか、最低制限価格をやめて、調査基準価格を導入したのはなぜか。この3点を聞く。

(工事契約課長)
 調査基準価格は、国が示した算定方式により、工事ごとに算定している。当該工事の設計金額のうち、直接工事費の額、共通仮設費の額、及び現場管理費の20%の額の合計の額に、相当額を加算した額である。さらに予定価格の85%を上限として、予定価格の3分の2を下限額としている。
 次に最低制限価格であるが、本市では平成7年度まで最低制限価格を採用していたが、これは予定価格の10分の9から10分の7.5の範囲で設定していた。
 調査基準価格の採用であるが、最低制限価格はその額を1円でも下回ったら即対象外となるが、一方で低入札調査制度は、その価格を下回った場合、その価格で適正な履行ができるかどうか、入札者の見積もり内容を、企業努力などを含めてあらかじめ調査し、その見積もり内容が妥当かどうかを検討して落札者を決定するものである。ということで採用している。


(中森辰一議員)
 最低制限価格は、それ以下の価格での落札はありえないというものだ。
しかし、調査基準価格は、材料費や人件費などを調べてみて、行政側として予定された内容のものができる、労働関係の法律にも違反しないでできる、と判断されると、いくら低くてもOKということになる。
 そうしたら、予定価格や設計価格というのは一体何か、予定価格や調査基準価格を公表する意義はどこにあるのか、ということになるのではないか。

(工事契約課長)
 予定価格を非公表にすると、業者はその価格を知ろうとして不正行為が行われ、職員も巻き込まれる恐れがある。一方、非公表にしていると、その価格を知った業者は有利となるし、談合になる可能性もある。本市では、予定価格を公表後検証してきたところ、それによって入札額が上がるといった弊害もないので、採用している。


(中森辰一議員)
 予定価格から相当かけ離れている(実態がある)。それを考えると、そもそも設計価格、予定価格という意味がどこにあるのかと思うが、この点はいかがか。

(工事契約課長)
 設計金額を大きく分けると、直接工事費、材料費とか人件費の部分と現場にかかる諸経費や一般管理費、会社経費などになる。諸経費については国が全国的な調査で平均的な値で設計をしている。それに対して業者の方は実際に工事がどれくらいでできるかをはじいて応札するので、そのあたりの差が出てくるのではないか。

(中森辰一議員)
 実際には、予定価格に対する基準のようなものがあいまいになってきているのではないかと思う。それは結局、現状の仕事が少なくて取り合いをしている状況の中で、果てしない低価格競争に陥っていかざるを得ないのではないかという懸念がある。
 いろいろ調査をしているということだが、仕事を取ろうと思えばいろいろなことができるのではないかと思うが、労働者の生活を無視して賃金をぎりぎりまで落とせる業者、下請け会社に無理を要求できる、そういうところが仕事を取れるということになるのではないか。
 低入札の問題を考えるにつけ、公共の仕事が、弱い立場の下請け会社やそこで働くしかない現場労働者にしわよせをする、厳しい状況を押し付けていく、そういうものであってはならないと思う。低入札が増えている中で、そういうことがないと言えるのか、強い疑念がある。
 いろいろ取り組んでいるということが報告されたわけだが、その際に、現場の労働者の賃金がどの程度必要である、あるいは会社の利益がどの程度確保される必要があるといった基準を持って判断ができないといけないのではないか。
 会社の利益の問題は、赤字でないかどうかが最低限の問題だと思うが、一般的な利益率といったものが必要ではないかと思うし、労働単価は、単に最低賃金をクリアすればいい、そういうことではないと思うが、この点はいかがか。

(工事契約課長)
 低入札調査の中で、事前の入札調査もやるが工事完了後に実際にどの程度かかったかという報告書を業者からあげてもらっている。その中で赤字であるといったものがあれば、順次制度を見直していきたいと思う。
 本年6月からは、元請け業者のみならず下請け業者から直接そうした状況の報告を義務付けることにもしている。

(中森辰一議員)
 事前に、低価格調査マニュアルというのを見せてもらったが、賃金という点では「最低賃金を下回らなければいい」ということも出ているが、市にぜひ考えていただきたいことだが、会社の問題は、赤字にならない一般的な利益率といったものが必要ではないかということと、労働単価の場合は、最低賃金というと現状は時給700円もない。これは、完全に生活保護基準を下回る。
 二人世帯の場合でも生活保護基準程度にしようとすれば時給1000円は必要になる。これも額面上のことで、この程度でも税金や社会保険料がきちんとかかってくる。そのことを考えると実質はその1.3倍ぐらいの収入があるようなことを念頭に置いていただいて、労働単価を考える必要があるということを申し上げておくので、ぜひご検討いただきたい。
 公が契約して行う業務では、公平・公正で透明性の高い入札・契約が必要。これは原則として一般競争入札にした、電子入札を導入したなどで実現しつつある。
 同時に、きちんとした品質と適正な形で契約が履行されるということが必要。ここでは、適正価格ということが大事になる。その中で、重層下請関係での公正な契約関係、公正な労働条件が確保されているということも市民に対する責任としてあると思う。
 さらに、地域経済の活性化や市民生活の向上に貢献するということも重要な面となってきている。分離分割発注で地元の中小企業が受注しやすくするということや、社会的貢献度の高い企業を育成するという課題もあって、これらは現在取り組んでいるというところだと思う。
 この中で、いま強調しているのは、下請け会社まで含めた適正価格での公正な契約関係ということと、その中での公正な労働条件ということである。調査をしている(低入札価格調査)ということだが、それはどういう根拠によるものか。それは、強制性があるのか。

(工事契約課長)
 原価割れの受注は認められないということである。根拠となるものは、入札前の条件としてマニュアルを提示して、それに当てはまらないと契約しないということである。

(中森辰一議員)
 マニュアルを示して、それを認めて入札したのだから、それに外れるものは認めないということだ。いま下請けの関係まで含めて徹底的に調査をする、労働の契約関係まで調べていくというところまでいってないのではないかと思うが、その点で、法的な枠組みをつくる必要があるのではないかと思っているが、この点は何かお考えがあるか。

(契約部長)
 契約の世界でいえば、公正で公平な手続きをとった入札が行われるということがまず一義的なことである、そこから先はどこまで調査できるかという課題はいろいろとあると思うが、現状はそこまでいっていないということである。


(中森辰一議員)
 末端まできちんと調べていくということについては、現状では不十分な面が出てくると思う。公共の仕事をやるときはこういう基準を守らないといけないといった、条例的な制約というか、しっかりした根拠を確保してやるということも考えていく必要があると思う。ぜひ、そういったものを検討していただきたい。今日はこの程度にとどめる。

上にもどる


開発事業基金の扱いについて

【解説】
 厳しい財政状況が続き、市民生活からの切実な要望になかなか答えることができない状況がある。そうした中で、財政調整基金とは別に、様々な目的をもった基金が設置されているが、その中で開発事業基金が特に多く積み上がっている。これを、特定目的のためということで、温存しておくのではなく、厳しい財政状況にあって市民生活の要望にできるだけ応えられるように活用するべきであり、そのあり方について考える。

(中森辰一議員)
 開発事業基金について、財政局で答えられる範囲ということで、窮屈なやり取りになるが、一般的な考え方を答えてもらうということでやりたい。
 開発事業基金が127億円とずいぶん多くなっている。このような巨額の資金を積み立てておく必要があるのか、と思う。 これは、具体的に、これを使って行うことにしている事業があって、積み立てられているものではないと思うが、そのとおりか。

(財政課長)
 開発事業基金は、広島市開発事業基金条例の規定に基づいて、開発事業の実施に必要な財源に充てる場合に限りこれを処分することができるということであって、本基金の処分対象は開発事業特別会計で定めている事業ということである。


(中森辰一議員)
 要するに開発事業という一般的な言い方でしか書いてないということで、こういう仕事をするためにお金がいるから積み立てをするという、はっきりとした事業目的をもってやっているわけではないということだと思う。
 先日の総括質疑では、これを使うべき開発事業ができたら、その事業の財源として使える趣旨の答弁があったと思うが、それ以外には一般財源としては、使いようがないということか。

(財政課長)
 基金については、地方自治法第241条第3項において、地方公共団体が条例の定めるところにより特定の目的のために財産を取得しまたは資金を積み立てるための基金を設けた場合においては、当該目的のためでなければこれを処分することはできない、と規定されている。
 開発事業基金については、開発事業会計において定める臨海部開発事業、内陸部開発事業、都市再開発事業、及び住宅分譲事業、この4つの事業について処分することができるということである。


(中森辰一議員)
 事前に聞くと、一般的な開発事業にも使えるように追加をしたと聞いたが、そういった変更もしているということだ。
 これは一般的なことで考えていただきたいが、ここに集められた基金の元は開発事業の利益金ということだが、これが生み出された開発事業は、市民から負託を受けた市長が行ったもので、市とは別の組織が行ったものではない。
 そういう事業で得られた公金なら、使途を限定せずに、何にでも活用できるようにしておくべきではないのか。原爆ドームの保存基金は、原資自体が特定の事業を目的に集められたものだが、このような明確な特定の事業目的を定めているわけではない。なぜ、こういった他には使えない基金が設けられるのか。

(財政課長)
 もともとこの基金は、西部開発事業の土地分譲によって生じた剰余金を原資に設置したもので、この原資で開発事業を実施していこうという目的で基金が設置されたということである。

(中森辰一議員)
 開発事業の利益金だから開発事業に使うんだということだが、そういうことでいいのかと思うので議論している。
 市として、この10年程度の間にも様々な開発事業をやってきたが、まともに採算がとれないものがある。いつかは市に返されるといいながら、いつになるか分からない貸し付けもある。紙屋町地下街の開発などは、民間企業に対して巨額の損失保証までしている。
 つまり、そういうものも含めて、市が様々な事業を行っている中で、開発事業で得た資金だから将来の開発事業のためにとっておく、囲い込むというのはおかしいと思うがいかがか。

(財政課長)
 繰り返しになるが、基金については地方自治法241条第3項、この中で地方公共団体かが条例で定めるところにより、特定の目的のために財産を取得しまたは資金を積み立てるための基金を設けた場合においては、当該目的のためでなければ処分することができない、と規定されており、この法律に基づいて基金を設置されるものであるので、基本的に条例で定めた特定の目的以外に処分はできないというのが法で定められている内容である。

(中森辰一議員)
 法律の枠組みで制約があるんだということだが、それがおかしいと思っている。
だいたい、市民から集めた税金にしても、国から降りてきた交付税にしても、市が様々な事業を行って得た収入にしても、市に入ってくる収入は、すべて市民の福祉のための基本事業に使われるべきだと考える。そういう事業をやってなお余裕があったら、新たな開発事業などをやればいいと思う。
 財政が厳しいときほど、このことが重要だ。
いずれにしても、使うあてがはっきり決まっているわけではない巨額の資金が温存されている。
 先日、来年度予算では原則22%カットだというかなり厳しい通達が出されたが、厳しい経費削減策が行われてきたし、これからももっと厳しい経費削減策が行われると思うが、そういう中でこういう巨額の資金が別立てで置いてある。これは市全体の財政ということで考えると奇異な感じがする。
 これは法律なんだ、条例でつくったのでやむを得ないと言うのだろうか。

(財政局次長)
 委員がお話の件は一つの考え方だと思う。最終的には条例を変えればお話のようなことも法律的には可能であるが、現状で、市としては開発事業、土地の売却で得た利益については、それは次の開発事業のために生かすという考え方のもとで条例を規定しているところである。
 この基金については、今後の財政運営方針のもとで平成23年度までの計画期間中に、土地開発基金を35億円、地域福祉基金を22億円、それぞれ取り崩すことにしていて、平成21年の当初予算では土地開発基金を20億円、地域福祉基金を19億円取り崩す予算としている。
 総括質疑において平木委員に対しても答弁しているが、厳しい財政状況を踏まえて、現状の市民サービスの低下を招かないような財源対策として基金を活用するということも考えられるが、一方で、今後とも続く厳しい財政状況に対応するというために、将来活用可能な基金を残すということも必要だと考えている。
 こういった総合的な観点から、今後の財政状況に応じて対応していきたいと考えている。

(中森辰一議員)
 私は条例を変えたらいいと考えている。少し違う角度から聞く。
 どんな事業を始める時にも、財政面からも厳しい検討が行われる。新たな開発事業を行う際にも、当然、新たに財源をひねり出すというくらいの立場で、その必要性や緊急性、さらに採算性など、公共事業を実施する際に行われるあらゆる角度からの検討がなされる必要がある。これはいかがか。

(財政局次長)
 お話の通り厳しい財政状況であるので、事業の実施に当たっては、その必要性、緊急性、将来的な財政負担、また財政状況等、総合的に勘案して検討すべきものだと考えている。

(中森辰一議員)
 ただ、127億円という巨額の開発事業に使える資金というものが別立てでとってあるということになると、厳しい検討というのがきちんとなされるのかどうかという懸念がある。あいまいな根拠で、あったほうがいい程度のことで公共事業をやることになりかねないのではないか。
 例えば、いま127億円の基金がある。100億円とか50億円とかいった程度の開発事業が提案されるときに、十分な資金があるじゃないか、あれを使えばいいのではないかと、緊急性などについて厳しい検討が十分なされないまま動き出していくことになりかねないのではないか。そういう心配は必要ないか。

(財政局次長)
 厳しい財政状況のもとであるので、また基金も際限なくあるわけではないので、限られた基金を大事に使うということで、事業の必要性であるとか、緊急性等を総合的に勘案して検討していきたいと考えている。


(中森辰一議員)
 ずっと厳しい状況が続いている広島市のことであるから、経済的にも厳しい情勢の中で、この基金をあてにして、新たな巨大事業を安易に提案することは、よもやあるまいと思う。
 しかし、この開発事業基金は、不要不急の開発事業の温床になりかねないと思う。条例を変えれば、別に使える可能性もあるということだ。
 今後、相当税収が落ち込むことが予想されている。そういう中で、財源不足という事態もありうる。来年度予算では原則22%カットという通達も、そういう厳しい状況を反映したものだと思う。
 そんな中で、こんな巨額の資金を特別な目的のため、さしあたって使うあてがあるわけではない、それを温存しておく、それはほかには使えない、こういう状況でいつまでもいいのだろうかと思っている。市全体の財政運営上の課題として、ぜひ検討していただきたい。

上にもどる


事業の超過負担について

【解説】 「事業の超過負担」とは
 全国的な問題として、国の事業補助金の負担基準が低いために、自治体がまともに事業をやろうとすると超過負担をせざるを得ない。これは、国が本来の責任を果たしていないためであり、必要な額を国が負担するように基準を変えるなどの措置が必要である。

(中森辰一議員)
 事業の超過負担について聞く。自明のことだと言うかもしれないが、資料を読んで目に付いたので聞いておく。 決算資料のうち、「超過負担額調」の資料をみると、その他を別にして22の事業で、市が持ち出しをする超過負担が生じている。 厚生関係費が多いが、なぜこういう状況が起きているのか。これは最近のことではないと思うが、なぜこういう状態が続けられているのか。

(財政課長)
 超過負担とは国庫補助基本額の算定基準が実情に合わないため、国庫補助金の対象となる事業を地方公共団体が実施した結果、国庫補助基本額以上に支出しなければならない地方公共団体の自己財源の持ち出し分のことをさす。
 超過負担が生じる要因は様々なものがあるが、代表的なものとしては国庫補助の算定に用いられる単価が現実の単価より低いために生じる単価差などがある。
 本市では、私立保育園運営費をはじめ約14億円の超過負担が生じている。この件に関しては、指定都市要望など様々な形で国に要望してきているところであるが、なかなか改善が図られないという状況である。


(中森辰一議員)
 この中で、外国人登録事務や国民年金事務といった国の仕事そのものでも超過負担があるのはなぜか。

(財政課長)
 外国人登録に関する事務については、人件費の基準額との差があるということ、また物件費の対象基準とも差があるということである。

(中森辰一議員)
 国の方は、実態に合わない基準になっていることをきちんと認識しているのか。

(財政課長)
 毎年、地方公共団体の方から指定都市要望を含めて、そういう要望が出ていて、毎年総務省の方から概算要求の前に、各省に対して申し入れを行うが、その中には超過負担の解消を図るということが言われていて、各省も認識してると考える。


(中森辰一議員)
 総額で21億2千万円余りの内、広島市が独自に上乗せをしているものを除いた、約14億4千万円が国の責任分ということだ。これは全く地方に責任がない負担で、全額を国が措置するべきで、毎年要望しているということである。
 国が負担すべき財源を地方が肩代わりさせられてきた。地方財政法の規定では、国が必要でかつ十分な金額を出す必要がある旨がうたわれている。こういう超過負担があるというのは、法律違反ではないか。法律違反が長く放置されてきたということではないか。そういう認識でいいか。

(財政課長)
 超過負担の問題は、地方財政法第18条において、国の地方公共団体に対する支出金の額は、地方公共団体が、当該国の支出金にかかる事務を行うのに必要でかつ十分な金額を基礎として算定しなければならない、と定められているものであり、看過できないものであると考えている。

(中森辰一議員)
 看過できないものと言われたが、法律に反する事態だということではないかと思う。国が法の趣旨に反していることを承知で、長年地方に負担を押し付けてきた。
 広島市でも14億円の財源をひねり出すのにずいぶんと苦労をしている。そういう中で、国が横着をしているのを、しかたがないと国を甘やかせていることではどうしようもない。
 毎年要望しているということだが、新しい政権も地方分権とか地方重視といったことを標榜している。であるなら、なおさら法律に反する事態は直ちに解消するべきで、国に対して、これまで以上に強く要請されるよう求める。

上にもどる


トップ議会情報・議員の発言2008年度決算特別委員会 >分科会総務関係 中森辰一議員
日本共産党広島市議会議員団
〒730-8586 広島市中区国泰寺町1−6−34 広島市役所議会棟内
電話 082-244-0844 FAX 082-244-1567 E-Mail k-shigi@jcp-hiro-shigi.jp