トップ議会情報・議員の発言2008年第 5回12月定例会 議員の発言 > 議案質疑


2008年12月10日 本会議 中森辰一議員の議案質疑

障害者就労訓練設備等整備補助について
学校施設の耐震化について
広島市立大学法人化準備について
広島市中央卸売市場条例の一部改正案について



障害者就労訓練設備等整備補助について

(中森辰一議員)
 自立支援法ではすべての障害者施設が自立支援法が規定する新体系のサービスに平成23年度までに移行することになっている。今回の補正予算は、5つの施設が新体系に移行するために必要な設備にかかる費用を国が補助するもの。
 障害者自立支援法によって、特に通所施設の場合は、施設に支払われる報酬のあり方が日払い方式に変わって収入が減ったことで、職員の賃金にしわ寄せせざるを得なくなっている問題や、人間として生きていくためのサービスを私的な利益だという応益負担の考え方に根源的な批判が上がっている問題をこれまで指摘してきた。
 一方、今回の補正予算にある障害者施設が新体系に移行することについても、深刻な矛盾が明らかになっている。
 今回の補助の対象事業所は5つの事業所だが、広島市ではいまだ新体系に移行しない事業所の方が圧倒的に多いと言ってもいい状況だ。
 心身障害者の小規模作業所は27施設のうち14と移行した施設の方がわずかに上回っているが、38の心身障害者施設のうちわずか9施設しか移行しておらず、精神障害者の施設も共同作業所を含めた30施設のうち移行した施設は6施設だけだ。自立支援法が施行されて3年目だが、全国的にも今年4月時点で全施設のうち3割しか移行していない。
 これは、知的障害や精神障害では、障害認定区分が不当に低く出てしまうため、知的障害者の施設や精神障害者の施設では、新体系に移行すると施設に支払われる報酬額が現状より大幅に減り、深刻な経営困難に陥るからだ。これは、広島市の障害者福祉行政にとっても重大な問題だと思う。
 今回のような補正予算を出すだけでは、この問題は解決しないが、市の行政としてどのように捉えておられるのか伺う。

(健康福祉局長)
 障害程度区分については、現在、国が定めた106の調査項目に基づく一次判定の後に、医師意見書等を加味して二次判定を行い、区分の認定を行っています。
 議員ご指摘のとおり、現在の調査項目では、知的障害及び精神障害の場合、その障害特性が十分に反映されず、一次判定で低く判定される傾向があるため、本市では、他の政令市とともに、これまで国に対して、各障害特性が反映された調査項目等に見直すよう要望を行ってきました。
 現在、国では、社会保障審議会において障害者自立支援法の見直しについて審議が行われていますが、その中では障害程度区分の認定のあり方を見直す方向であると聞いています。今後、国の動向に注視して、適切な障害程度区分認定となるよう必要に応じて国に働きかけていきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 私たちは制度全体の抜本的な見直しが必要だと考えているが、現状のままでは知的障害者が多い施設や精神障害者の施設は、新体系に移行しないまま平成23年度末の期限を迎えることになる。それまでに移行しなければ平成24年4月以降は、公的な収入が得られなくなり施設を維持できなくなるが、しかし、移行しても大幅な人員削減や賃金カットなどを行わざるを得ず、施設の存続やまともなサービスの提供に困難をきたすことになる。
 平成24年度以降、広島市の障害者福祉は深刻な事態に陥ることになる。今回のような予算を上げるだけでなく、市として実効ある対策をとる必要があると考えるが、どういうことをお考えか伺う。

(健康福祉局長)
 障害者施設の障害者自立支援法に基づく新体系の障害福祉サービス等への移行にあったては、事業者の経営基盤を確保して、円滑に移行を進めるため、国において対策が講じられています。具体的には、移行前の報酬の90%を保障する激変緩和措置、通所サービスの報酬単価の引上げ、通所サービス利用者数の基準の緩和、小規模作業所が生活介護及び就労移行支援等の法定事業へ移行する場合の定員の緩和、この度の補正予算に計上した障害者就労訓練設備等整備補助などです。
 これらの対策に加えて、先ほど申し上げた国の社会保障審議会においても、新体系への移行のためには報酬改定等における配慮が必要という方向で進んでおり、また、厚生労働省においても、報酬の引上げを来年度予算で要求しています。
 今後も、国の動きを把握し、利用者が適切なサービスを受けられるよう必要な対応を行っていきます。

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学校施設の耐震化について

(中森辰一議員)
 今回、小中学校の校舎の耐震補強工事、屋内体育館の耐震補強工事の予算案が出されている。
 私は、阪神大震災が起きた年に議員になったが、その年からずっと、未来を担う子どもたちが日中の大半を過ごす校舎の耐震化を急ぐ必要があると強調し続けてきた。残念ながら他の施設が優先され、震災からまる14年経って、やっと校舎に手がつくところにきた。
 私は、校舎の耐震化を進めるなら、できるだけ急いで耐震化を完了する必要があると考えているが、最近の相次ぐ地震災害、さらに校舎が崩れて膨大な子どもの命が失われた中国、四川大地震を踏まえて、政府もやっと早急な学校施設の耐震化を進めようとしている。
 政府は、これまで大規模地震により倒壊などの危険性が高い施設、IS値が0.3未満の建物を今後5年をめどに耐震化を図ることにしていた。ところが、今年の6月13日付けで、各自治体に対して文部科学大臣名で文書を送り、さらに前倒しで3年程度を目標に取り組むよう要請している。
 その財政的裏付けとして、耐震補強工事の場合は、工事費の3分の2を補助する、残りの3分の1については起債充当率を90%まで認める、その元利償還金は3分の2の額について地方交付税を上乗せするとしている。
 計算すると、補強工事の場合、名目上の実質の市の負担は工事費の13.3%ということになる。条件付きながら改築も認めて、この場合は実質の市の負担は20%となる。
 今回の補正の財源は、これを踏まえたものだと考えるがそのとおりか、まず伺う。

(教育長)
 学校整備に係る12月補正予算の総額は、10億5,420万円で、いずれも国の補助内定に伴うものです。
 そのうち、地震防災対策特別措置法改正に伴う学校施設耐震化に係る補助率かさ上げの財政措置の対象となっているものは、小学校校舎耐震化のうち吉島小学校の8,750万円です。
 このほか、法改正に伴う財政措置の対象とはなっていませんが、耐震補強工事分として、石内小学校校舎の9,640万円及び小中学校7校の屋内運動場の2億1,560万円を計上しています。
 また、耐震化と直接に結びつきませんが、戸山小中学校の改築分として6億5,470万円を計上しています。


(中森辰一議員) 
 先日、教育委員会の担当から聴き取ったところによると、耐震化が必要な小中学校の校舎は301棟。その内、実際に耐震診断を行った結果IS値が0.3未満など、つまり大規模地震で倒壊する可能性が高いと診断された校舎が41棟ある。この41棟は平成24年度末までに耐震化を完了したいとしている。
 一方、耐震診断をしていない校舎を含めて、IS値が0.3未満である可能性が考えられるのが政府の推計の仕方を当てはめると301棟のうちの3割程度で、だいたい90棟出てくる可能性があると説明だった。
 この90棟をいつまでに完了するお考えかお答えいただきたい。また、実際にIS値0.3未満などの校舎がどの校舎か、早く診断を完了する必要があるが、どうされるお考えかお答えいただきたい。

(教育長)
 本市の小中学校の校舎は、全体で424棟あり、そのうち耐震化が必要な校舎は301棟あります。
 そのうち耐震診断済みの校舎は131棟、耐震診断の前段階の耐震化優先度調査のみ行ったものが166棟、その他改築計画のあるものが4棟となっています。
 耐震診断を既に行った131棟のうち、IS値が0.3未満等、いわゆる倒壊等の危険性が高いと判明している校舎は41棟あり、これらは、先の法改正の趣旨を踏まえ、平成24年度(2012年度)には耐震化を完了したいと考えています。
 また、耐震化優先度調査を行った校舎166棟のうち、倒壊等の危険性が高いと判定される可能性の高い校舎は、75棟です。
 これらについては、平成21年度(2009年度)末までに耐震診断を完了し、危険性が高いと判定された場合には、同様に平成24年度(2012年度)には耐震化を完了したいと考えています。


(中森辰一議員)
 一方、政府の特別の財政措置は、平成22年度までの3年間となっている。文部科学大臣が3年間での完了を目標にしてもらいたいとし、その範囲でやってくれれば極めて有利な財政支援を行うとしている。
 しかし、広島市の教育委員会では平成24年度末までに41棟をやるとしている。崩れる可能性が高いことが明らかになっている41棟も3年以内に終わらない。耐震診断をやればさらに50棟以上の危険性の高い建物が明らかになる可能性があるが、これらはその後になるんだろうから政府の優遇措置を利用できない。つまり現状のままでは、危険性の高い校舎だとわかっていても、厳しい市の財政事情がそのまま影響して早急な補強ができないことになりかねない。あらゆる努力を尽くして、3年以内で完了できる校舎をもっと増やすことが必要だ。
 同時に、これから危険性が明らかになるものを含めて、広島市ができるだけ早くこうした校舎すべてを耐震化するためには、平成22年度までの時限措置をさらに延長してもらう必要がある。市として、教育委員会として、実行ある行動を起こす必要があるが、何かお考えがあるか伺う。

(教育長)
 耐震補強工事を実施するためには、耐震診断に1年、耐震補強工事案・評価に1年、補強工事の実施設計に1年、都合3年を経て着手し、完了までには、延べ4年程度を要します。
 地震防災対策特別措置法に基づく財政措置は、平成22年度(2010年度)までとなっていますが、この期限は、これまで2度にわたって延長されて現在に至っている経緯があります。
 したがいまして、本市においても、大規模地震によって倒壊または崩壊の危険性が高い校舎の耐震化完了までには、一定の期間を要するため、他の政令指定都市等と協力しながら、機会をとらえ、その延長を国へ要請していきます。


(中森辰一議員)
 次に、これらを完了してもなお、IS値0.3未満ではないが補強が必要な建物が2百数十棟残る。これらの、耐震化計画も同時に立て、着実に実施する必要がある。この点についてのお考えも伺っておく。

(教育長)
 本市では、平成18年(2006年)1月に国が示した「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」に基づき、平成19年度(2007年度に「校舎耐震化整備計画」を策定しました。その中で、平成27年度(2015年度)には、耐震化率90%、平成30年度(2018年度)には耐震化完了を目指しています。


(中森辰一議員)
 この問題の最後に。この特別措置のための地震防災対策特別措置法改正では、耐震診断の結果の公表を義務付けている。広島市では未だ、公表が実施されていないと思うが、実施されるのかどうか、伺っておく。

(教育長)
 法改正において、学校施設の耐震診断の実施と、その結果の公表が義務付けられました。本市では、これを踏まえ、平成20年(2008年)4月現在における耐震診断実施状況や耐震補強工事実施状況など、公表内容について整理してきました。
 この度、そのデータ等がまとまりましたので、今議会の文教委員会において説明したうえで、本市ホームページ等で公開します。



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広島市立大学法人化準備について

(中森辰一議員)
 今回、市立大学を平成22年度から独立法人化する準備のための予算が提出されている。
国立大学がすでに国立大学法人となり、公立大学の多くが独立法人になっている。公立大学の独立法人化という流れになっているが、法律では国立大学はすべてが法人にならざるを得なかったが、公立大学は地方の判断に任されている点が重要だと考える。
 そもそも、地方独立行政法人制度は何のために導入されたのか。政府が設置した地方独立行政法人制度の導入に関する研究会が、平成14年に報告書を出しているが、その中で、この制度を実施する意義の第一に、「政策の企画・立案機能と実施機能の分離」をあげている。独立行政法人制度というのは、国と自治体の仕事を、企画・立案機能に限定する一方で、行政サービスの実施機能を、国と自治体本体から切り離す行政改革の手法として導入されたものだ。
そのままでこの制度が大学に導入されれば、大学も行政の進める政策の下請け実施機関になり下がることになる。だからこそ、地方独立行政法人法が成立した際に、衆議院と参議院双方で、「憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性・自律性を最大限発揮しうるための必要な措置を講ずること」と付帯決議が挙げられている。つまり、公立大学の独立法人化は、学問の自由や大学の自治を損なう可能性を秘めているという問題を抱えていることを、成立させた国会が懸念しているということだ。
 広島市立大学は広島市民全体の財産だと思うが、学問の自由と大学の自治は、市立大学にとって最も重要なことだと思う。それを侵す問題を抱えた法人化を、敢えて行うからには、よほどの理由が必要だと。法人化の方針を決めるに当たっては、その説明責任が市民に対してあると思うが、その理由と市民への説明責任が果たされたのかどうかについて、説明を求める。

(市立大学事務局長)
 現在、18歳人口の減少や厳しい大学間競争の中で、各大学はそれぞれの個性を活かしながら、「知識基盤社会」といわれる時代における高等教育機関としての役割を担うため、独自の改革を進めています。
 このような中で、市立大学は、広島市に設置された大学として、特色ある大学運営を行い、その存在価値をより高めていくためにはどのような取り組みを進めるべきか、ということについて学長を中心に学内で検討を行ってきました。あわせて、学外の有識者からなる広島市立大学運営協議会のご意見をいただきました。
 また、国立大学の法人化や多くの公立大学の法人化も進展しており、私立大学も含めて全国の大学の95%が法人格を有する状況になっており、国の大学関係の制度や企業と大学との共同研究などは法人を前提にしたものに変化してきています。
 今後とも、市立大学が、教育・研究の質を向上させ、広島市の重要な高等教育機関として期待される役割を果たすためには、時代や社会の要請に迅速かつ適切に対応して自主的な大学運営を行うことが必要であるため、市の一機関としての大学運営から、法人としての大学運営に移行すべきであると考えています。
 現在は、法人化の具体的な制度設計について学内の議論を深めるとともに、随時、設置者である市との協議を行っているところです。それらを取りまとめの上、法人化に際しての準備経費を来年度当初予算に計上するとともに、順次、定款案、評価委員会条例案など、重要な事項について市議会で審議いただきたいと考えています。
 また、これまでも、公立大学法人制度の概要や広島市立大学運営協議会の答申など、市議会の常任委員会においてご説明をさせていただいているところであり、今後とも、必要に応じて、議会をはじめ関係者の皆様への説明に努めていきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 次に、独立法人大学のあり方について、すでに基本的な方向が固まっていると思うので、いくつかあり方に関して伺う。
 まず、大学の自治を保障する上で重要なことが人事権だと思う。教授会の人事権はどうなるのかお答えいただきたい。

(市立大学事務局長)
 現在は、教育公務員特例法に基づき学則において「人事に関する事項」は教授会及び評議会で審議することが定められていますが、法人化後は、教育公務員特例法が適用されないため、法人の規定で定めることになります。一般的には、地方独立行政法人法に基づき学内に設置される「教育研究審議機関」において審議されるものと考えており、この教育研究審議機関は、学長、副学長、学部長等で構成されることが一般的であることから、教員の人事については、当然、大学構成員の意向を十分配慮して大学の自治の一環として決定されることに変わりはないと考えています。

(中森辰一議員)  
 地方独立行政法人法第57条では、「職員の給与は、その職員の勤務成績が考慮されるものでなければならない」「退職手当以外の給与と退職手当の支給の基準は、当該一般独立行政法人の業務の実績を考慮したものとなるよう定めなければならない」としている。つまり、教員の給与は、成果主義になるということではないか。この点についてのお考えを伺う。

(市立大学事務局長)
 教育・研究の活性化や質の向上を図るには、教員の意欲向上等の視点から、教育研究活動や地域貢献など多面的な視点からバランスの取れた適正な評価基準を確立した上で、その評価結果を反映させる制度の導入が大切であると考えています。今後も大学内での全学的な議論、合意を得て、具体的な制度設計について検討していきたいと考えています。 


(中森辰一議員)
 また、横浜市立大学や首都大学東京など、教員の任期制が導入されているが、教員の身分が不安定なものになるのではないか。任期制についてはどういうお考えか伺っておく。
任期制を導入するお考えなら、大学の自治がどうなるかということがあるが、任期制の導入によって、学問の自由と、長期的視野に立った研究の保障という点が損なわれるのではないかと危惧されるが、この点のお考えも合わせて伺う。

(市立大学事務局長)
 広島市立大学運営協議会からの答申にありますように、大学における教育研究の活性化や質の向上を図るためには、教員が安定的に教育研究を行えることを十分に配慮した制度でなければならないと考えています。このような考えを基本に、これまでの専任教員に加え、教育に特化した教員や研究に特化した教員など、多様な人材の受け入れを可能とする特任教員制度の導入を、大学内での全学的な議論も踏まえて検討していきたいと考えています。


(中森辰一議員)
 次に、独立行政法人になれば、職員は公務員でなくなるが、職員本人の意思にかかわりなく、公務員としての身分を奪うことは問題だ。どうされるのか伺う。

(市立大学事務局長)
 現在の大学職員は、大別して、教員と事務職員で構成されております。公立大学法人になった場合の職員の身分についてですが、まず、現行の事務職員については、法人化後においても、「公益的法人等への職員の派遣等に関する条例」により、広島市職員としての身分を有したまま、市からの派遣により対応するよう考えており、勤務条件等の変更はございません。
 一部の大学では学内の議論が不十分であったために、混乱を生じた事例もあると聞いていますが、多くの大学は、非公務員になったことで特段の問題は生じていないようです。これらの大学の例を参考に市立大学でも十分な学内論議を通じて、制度の理解に努めたいと考えています。
 

(中森辰一議員)
 次に財政的な問題だが、独立行政法人制度は、行政の効率化の手法であり、導入は広島市行政として財政的なメリットを求めることになると考える。国立大学では、人件費を除いた国からの運営費交付金が毎年1%削られる仕組みになっている。人件費の削減も進めている。
 同様の財政効率化を市立大学にも求めるとなると、大学は財政的に厳しくなり、教育・研究条件の悪化などが起きることになる。これは、大学の本来の役割が果たせなくなることを意味している。法人化後の大学の収入はどのように保障されるのか伺う。

(市立大学事務局長)
 法人化後の大学は、入学金、授業料や外部からの研究資金などの自己収入と、市から交付される運営費交付金で運営されます。運営費交付金の枠組みについては、大学運営に支障が生じないよう、今後、関係部署と十分協議して、ルールを決めたいと考えています。

(中森辰一議員)
 また、9月議会で、貧困と格差が広がる中での学費の問題を議論したが、財政効率化が求められる中で、十分な教育・研究を進めようとすれば、その財政的なしわ寄せが学費に及ぶことが考えられる。学費の引き上げが行われれば、現状でも言われている学生の市外流出に拍車をかけることになり、多くの青年が広島市立大学で学ぶ権利を奪われることになる。
 広島市として、学費の引き下げが行えるような財政支援が必要になると思うが、法人化が学費の引き上げにつながらないと保障できるのか、答弁を求める。

(市立大学事務局長)
 授業料につきましては、広島市立大学を含むほとんどの公立大学が国立大学と同額に設定しています。法人化後の授業料等の上限については、あらかじめ市議会の議決を経て、その範囲内で公立大学法人が授業料を定める仕組みになっており、法人が独自に授業料をあげることはありません。


(中森辰一議員)
 この項の最後に、独立法人化によって設置者である広島市との関係で、学問の自由と長期的視野にたった研究の保障という点はどうなるのか伺う。

(市立大学事務局長)
 公立大学の法人化は、今後の大学間競争の中で、高等教育機関にふさわしい教育・研究の質の維持向上や重要な都市機能としての役割を果たすため、大学自ら責任ある判断のもとで、自主的な運営を行うことができるような運営体制の改善を目的としたものと理解しています。したがって、憲法で保障される「学問の自由」が法人化によって侵されるものではないと考えています。
 また、長期的視野に立った研究の保障についてでございますが、先ほども答弁しましたとおり、教員の安定的な教育・研究に十分配慮することは重要だと考えており、法人化を通じて教育・研究環境の更なる充実を目指した大学運営を行っていきたいと考えています。



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広島市中央卸売市場条例の一部改正案について

(中森辰一議員)
 この条例改正案は、卸売業者が生産者から生産物を委託され、販売した際の委託手数料の率を自由化するものだ。つまり、率の大きい小さいで競争させようというものだ。
 昨年11月15日に行われた第47回広島市中央卸売市場開設協議会で、経済局長があいさつのなかで「生鮮食料品等の流通は」「全国的な傾向として市場経由率が低下しております」「卸売市場を取り巻く環境は厳しいものとなっております」と述べている。
 こうした市の認識のような状況の中で、委託手数料が自由化されるとどうなるのか。
 自由化によって、生産者から手数料率引き下げの要求が強まることは避けられず、手数料引き下げ競争で中小卸売業者の弱体化が起こる、その結果として中小卸売業者の再編や淘汰が進めば、卸売市場そのものの衰退・廃止につながり、中小小売店や零細の産地の衰退を進めることになると考える。こうした点は、昨年の第47回協議会で、各委員が深刻な問題として指摘している。そこで、この協議会での発言に関していくつか質問を行う。

 まず、法改正の必要性について政府の立場を担当課長が説明しているが、その中で、「わが国の経済社会の抜本的な構造改革を図るため」「卸売市場においても規制緩和を進めることが必要」としている。構造改革のために必要だというわけだ。
 今日、「構造改革」の掛け声で様々な規制緩和が行われてきた結果がどうなっているか。
 世界のトヨタを始め、わが国を代表する製造大手企業が、何百人、何千人という労働者を、何の保障もなしに、それこそ競い合うように首切りをして社会不安を広げている。その大本は、アメリカが推進し、わが国政府も追随したバクチ経済の破綻だ。マネーゲームで危機に陥った大銀行は自業自得だが、「貯蓄から投資へ」という政府の政策で、多くの高齢者などが、銀行が販売した投資信託で虎の子を失っている。
 また、介護保険制度での大手企業の不正、次々と発覚してもなお止まない食品偽装などに表れた企業倫理の喪失、政府が販売した事故米の事件と反社会的事件は枚挙に暇がない。
 これらはいずれも「構造改革」「規制緩和」の産物だ。これらの結果が、市民の暮らしと健康と地域経済を脅かしている。
 なぜ、構造改革のために卸売市場においても規制緩和を進めることが必要なのか、市にお考えがあれば教えていただきたい。

(経済局長)
 今回の条例改正は、国が、平成16年規制緩和の一環として卸売市場法を改正したことに基づくものです。この改正法において、手数料を全国一律に固定化しているのは卸売市場だけであり、今後は、卸売業者のサービスや機能に応じた弾力的な手数料にすることにより、卸売業者もビジネスチャンスが生まれ、市場外から市場への流通を取り込む余地も生まれるという考え方を示しています。

(中森辰一議員)
 次に、協議会の議論の中である委員は「委託手数料は利益の源であって」「委託手数料が変ると産地や買受人にも影響が出て」くる、「委託手数料の弾力化は、市場システムの根幹を揺るがすものであり、卸売業者や広島市が判断を誤ると崩壊しかねない」と指摘している。
 また、生産者の委員は、「市場の集荷力が落ちる反面、一極集中が起こるのではないかと懸念します」と述べている。また、委託手数料を源泉とする出荷奨励金は「産地づくりに効果があった」と指摘しているが、このことは委託手数料収入が減れば、産地にも悪影響を及ぼしかねないということではないか。
 さらに、学者の立場の委員は、「卸売業者が競争力を強化して卸売市場の活性化を図ることが目的だというが、そんなに簡単にいくわけがない」と批判し、東京や大阪といった大消費地を背景に持つところと広島とでは、役割が違うのではないかと指摘している。
 別の委員は、生産者から販売の委託を受ける委託集荷と生産者から生産物を買い付ける買い付け集荷は3対1の割合だが、買い付け集荷の利益率は下がる一方であり、委託手数料の弾力化で、委託手数料率が崩れて、買い付け集荷と委託集荷の割合が逆転すれば、全国で多くの卸売業者が倒産すると指摘している。
 まさに、生鮮食料品などの流通システムが危機に陥りかねないという認識が口々に語られている。
 こうした懸念や指摘について、広島市当局としてどのようにお考えか答弁を求める。

(経済局長)
 委託手数料の弾力化に伴い、流通システムに変化が現れることも考えられますが、本市の中央卸売市場は東京、大阪、福岡といった大市場の影響を強く受けている現状において、今後このような大市場の動向に機敏に対応できるシステムにすることが重要であり、新しいシステムの運用について、他市場の動向を把握しながら協議・指導するようにしています。
 また、近年、買付集荷が増加する傾向にありますが、このことは出荷者が安定した収入を確保することになり、再生産を可能にする一方、卸売業者が漫然と買付集荷を行えば適正な利益率の確保が困難になることが予想されます。
 卸売業者にとっては、委託集荷、買付集荷とも適正な利益率を確保することが重要であり、これまで以上に経営感覚が求められることになるため、開設者としても、より一層の適切な指導をしていきたいと考えています。
 今回の条例改正は、委託手数料の定め方の手続きを規定しようとするもので、届け出制への移行が直ちに競争の激化や卸売業者の経営悪化につながるものではないと考えており、本年11月5日に開催した、「第48回広島市中央卸売市場開設運営協議会」において、生産者、卸売業者、消費者など、いずれの委員からも全会一致で、このたびの条例改正案が適正であるとの答申を得ています。


(中森辰一議員)
 この協議会の最後に担当課長は、全国的に中央卸売市場の経由率が低下し取扱量が減少する中で、市場の関係者の努力によって、取扱量は10年前とほぼ同じ水準を保っているとしたあと、「広島市民にとって中央卸売市場は本当に必要なシステムだ」と述べている。
 また市場長は、卸売り価格の下落について、「生産者のことを考えますと再生産費も賄えず、農業や漁業に魅力を感じられなくなるのではないかと懸念しております。適正な値をつけ、消費者も理解して買っていただくことが、市場システムの継続に繋がる」と述べている。
 今日、改めて安全な食品を国内で確保することが、社会の強い要請となってきている。さらに、地産地消の拡大の要請もますます強まっている。その前提は、再生産を持続し拡大していくことだ。そのために生産者と消費者の間に立つ中央卸売市場がどういう役割を果たすか、手数料率が自由化されれば、この協議会で懸念されているような逆風が吹くことになる。そういう中で、広島市民の食生活にとって必要で重要な中央卸売市場のシステムをどう発展させていくのか、市としてのお考えがあればお聞かせいただきたい。
 以上、明確な答弁をお願いする。

(経済局長)
 天候等に左右される生鮮食料品等を安定的に供給し、市民の食の安全性を確保する中央卸売市場システムは重要であり、低温流通システムシステムの整備などのハード面での整備、品質管理やコンプライアンス等のソフト面での指導に努め、生産者と消費者の間に立って、双方から信頼される中央卸売市場となるようつとめてまいります。

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