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1.広島の平和行政について
(1)平和記念公園とパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定について
(2)核兵器禁止条約について
2.「黒い雨」被爆者の救済について
3.マイナ保険証について
4.ジェンダー平等の広島市の実現に向けて
(1)性と生殖の健康と権利
・包括的性教育について
・生理の貧困解決に向けて
(2)女性への暴力をなくす取り組みについて
5.学生支援について
6.広島高速道路事業について
(中村たかえ)
最初に、広島市の平和行政についてお聞きします。
広島市は6月22日に突然、在大阪アメリカ総領事の要請に応え、未来志向で平和と和解の架け橋の役割を果たすとして、平和記念公園とアメリカのパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定を締結すると表明し、6月29日に協定を締結されました。
この突然の協定に対し、平和公園で修学旅行生などに原爆被害や平和の願いを伝える広島県原爆被害者団体協議会のガイドさんたちからも疑問の声が上がっています。
人道上許されない残虐な核兵器を使用したアメリカから国としての謝罪もないのに、相互理解と未来志向という言葉のもとに核保有や核抑止をふりかざすアメリカの国家が運営する公園と姉妹になれるのか、原爆投下が戦争を終わらせたという誤った歴史認識を容認することになると危惧する意見です。
岸田政権がアメリカの「核の傘」に依存しながら、憲法違反の大軍拡と「敵基地攻撃能力」保有、沖縄をはじめとする南西諸島の軍事化など、日本をアメリカの対中戦略の最前線基地にしようとするなか、これらの戦争する国づくりの現実を見えなくさせるための姉妹公園協定ではないのか、アメリカ政府の真の意図がわからないというものです。
市民への説明を尽くさず唐突に締結された姉妹公園協定に不安が出されるのは当然です。
インターネットでパールハーバー国立記念公園を検索しましたが、検索に出てこず、地図にもありません。
検索で出てきたのは、ハワイ州パールハーバーの一部としてアリゾナ記念碑、ビジターセンター、戦艦ミズーリ博物館です。アリゾナ記念碑は、「日本軍による真珠湾攻撃で祖国のために命を失ったアメリカ軍兵士の名誉を追悼する碑」であり、アリゾナ記念碑やビジターセンターを紹介する日本語訳パンフレットには「第二次世界大戦 太平洋における武勇を称える国立記念碑」と紹介されています。周辺はヒッカム統合空軍基地でパールハーバー国立記念館のエリアは軍の施設とされています。
被爆地は米軍と協定を結んだのでしょうか。パールハーバー国立記念公園は一体どんなところなのですか。どこにあるのかお聞きします。
(市民局長)
この度の協定の相手方であるパールハーバー国立記念公園は、英文では「Pearl Harbor National Memorial」と表記されており、昭和34年に姉妹都市協定を締結した米国ハワイ州ホノルル市内の真珠湾の東西の湾岸に所在しているものです。
また、姉妹公園協定の対象となる同公園の区域は、真珠湾攻撃に関連する史跡や資料の保存・展示施設等、具体的には、アリゾナ記念館、ユタ記念碑、オクラホマ記念碑、旧下士官宿舎のほか、佐々木禎子さんの折り鶴が展示されているビジターセンターとその周辺を対象としており、米軍に所属する軍事施設は含まれていません。
(中村たかえ)
広島平和記念公園は「恒久の平和の実現を目指す広島平和記念都市建設法により建設された平和記念施設」です。市長の私物ではありません。
公園協定が被爆地ヒロシマの原点にふさわしいのかどうか、市民の声や議会の意見を聞き、市民の合意を得るのが当然です。
なぜ、十分な熟慮をせず市長の独断で拙速に姉妹公園協定を締結されたのかお聞きします。
(市民局長)
このたびの姉妹公園協定に至るまでの経緯を簡単に説明しますと、まず2012年に市長がパールハーバーのアリゾナ記念館を訪問してホノルル市民の前で「和解による平和」の実現を訴え、その5年後の2017年にホノルル広島県人会のウェイン・ミヤオ会長から両公園の協定締結の提案がございましたが、その際には、本市としては、「時間をかけて検討したい」としてお断りをしました。そしてこの度改めて米国総領事からG7広島サミットの開催を機に姉妹公園協定の申し出があったものです。
本市としましては、これまで「二度とこんな思いを他の誰にもさせてはならない」と被爆者が和解と寛容の精神で訴える中で、60年以上にわたり市民同士が交流を深めてきたこと、さらには、「迎える平和」の取組を10年以上にわたり続けてきていることなど踏まえつつ、現在の世界情勢を考慮するならば、今こそ「和解の精神」を重視した対応を逃してはならないと判断し、姉妹公園協定を締結したものです。
この度の姉妹公園協定に対して、「早急すぎる」とか、両公園の位置づけが違うといった理由などから、ご指摘のような意見もあることは承知しておりますけども、今後、本協定に基づいて未来志向の取組を両公園で検討し、次世代を担う若者を中心とする交流を深め、和解の精神を具現化した好事例として世界に発信することで、市民や議会の多くの賛意や歓迎する声にしっかりと答えていきたいと考えています。
(中村たかえ)
アメリカ駐日大使のエマニュエル氏は「かつて対立の場であった両公園は、今では和解の場となった」と強調しています。
結局、この姉妹公園協定は人道に反する原爆投下を行ったアメリカ国家の責任を不問免罪し、G7広島サミットで発表された「広島ビジョン」の中で岸田首相が肯定した「核抑止論」を受け入れるということになるのではないでしょうか。市長の認識をお尋ねします。
(市民局長)
「和解の精神」とは、あくまで現時点では責任に係る議論は双方で棚上げにし、二度と戦争の惨禍を繰り返すべきではないという考え方を確認し、未来志向に立って対処していこうというものです。
従いまして、この姉妹公園協定は、原爆投下にかかわる米国の責任に係る議論は現時点では棚上げにし、まずは、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会における気運の醸成を図っていくために締結したものです。
なお、「広島ビジョン」の中で「安全保障政策」に言及し、核の抑止力を肯定する記述がありますが、それは「核抑止論」が既に破綻していることを明示するものであり、「和解の精神」に何ら関係するものではないと考えております。
(中村たかえ)
市民の意見を聞くこともなく、議会の議論を経ることもないまま調印した姉妹公園協定は白紙に戻すべきと考えますがいかがですか。
(市民局長)
この度の姉妹公園協定の締結については、先ほど申し上げた通りであり、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」と世界に訴えてきた被爆者の寛容・和解の精神に沿った対応であると考えています。
今後、具体的な取組を両公園間で検討し、この協定に沿って次世代を担う若い世代の交流などを深めるなど、市民一人一人が日常生活の中で平和について考え行動する「平和文化」を市民社会に根付かせるための重要な一歩としたいと考えています。
(中村たかえ)
さて、平和宣言では「核抑止論は破綻している」と世界へ発信されました。新聞各紙は8月7日付紙面で「核抑止論の破綻」を大きく取り上げました。核兵器は侵略を防ぐことも、人々の安全を守ることもできないものだということ、人類を破滅のふちに追いやる元凶である核兵器は二度と使ってはならないということ、これらの「ヒロシマの心」を示すものとなりました。
原水爆禁止2023年世界大会には全国各地から「唯一の戦争被爆国 日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」が250万筆寄せられました。自治体の4割に当たる659の自治体議会が核兵器禁止条約への批准を求める意見書を採択しています。国民の多くが、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准することが、核兵器廃絶を実現し、紛争の平和的解決に貢献する日本の役割と考えているからにほかなりません。
毎年の平和宣言で市長は、「核保有国と非核保有国との間で生じている分断を解消する橋渡し役」を日本政府求め続けてきましたが、核兵器禁止条約に批准・署名することなしに「橋渡し」は出来ないと考えますが、市の見解をお尋ねします。
(市民局長)
一般的に「橋渡し」とは、意見の異なる当事者間を取り持つために、仲介を行うといった意味で使われるものであることから、核兵器禁止条約に賛成するものと反対する者の仲介をするために、当該条約に賛成しなければならないということではないと考えられます。
しかしながら、本市としましては「ヒロシマの心」を共有する被爆国日本として「橋渡し」の役割を果たすためには、批准・署名をすべきであり、まずは11月に開催される締約国会議にオブザーバー参加して議論に貢献するよう、引き続き求めていきたいと考えています。
(中村たかえ)
昨年6月に開催された核兵器禁止条約の第1回締約国会議で採択された「ウィーン行動計画」の具体化と実践・運用が始まっています。また、最大7万発あった核兵器のうち6万4200発が解体され、年間3000発の核兵器の解体を行う実績と知識が十分にあることが明らかになっています。核兵器廃絶は、廃絶の意思を持つという「やる気」の問題であることは、大きな希望です。
11月27日にはニューヨークで第二回締約国会議が開催されます。確実に核兵器禁止条約の機能を果たしていくため、この締約国会議にヒロシマはどう臨むのか、何を訴えどんな行動・キャンペーンを起こすのか伺います。
(市民局長)
先ほど石橋議員にご答弁したとおり、核兵器禁止条約第2回締約国会議では、国連や各国政府関係者に対して、スピーチや個別の面会を通じて、非人道的な結末をもたらす核兵器に対する強い懸念を訴えるとともに、締約国に対してさらに批准国を増やし、同条約の実効性を高めるための議論を進展させるよう要請し、具体的な核軍縮の進展を求めていきたいと考えています。
また、平和首長会議原爆展や他のNGO等と連携したサイドイベントを開催し、会議参加者に、核兵器廃絶以外に根本的な解決策を見いだせないというヒロシマの心を理解していただけるような機会を模索していきたいと考えています。
(中村たかえ)
続いて、「黒い雨」被爆者の救済についてお聞きします。
2021年7月、広島高裁での確定判決により、「黒い雨」雨域の認定基準が見直され、4,400人を超える方々が新たに被爆者として認定されました。しかし、新しい基準でも申請却下が相次ぎ、被爆者としての救済を求める裁判が始まっています。
原告の方々の認定却下の主な理由の一つは、「黒い雨」にあったことが確認できない場合、二つ目は11種類の疾病の罹患が確認できない場合です。
「黒い雨」にあったことが確認できないとして却下された申請者は、「宇田雨域」、「増田雨域」及び「大瀧雨域」以外の地域で「黒い雨」にあったと申請された方々です。認定処理の新基準で、3つの雨域の外側では「黒い雨」にあったことを認めないとされている訳ではありません。しかし、実際には、3つの雨域の外で「黒い雨」にあったと申請した場合に、認定審査の中で当該場所に「黒い雨」が降ったと認められないと却下しています。
広島高裁判決では、「黒い雨」降雨域は3つの雨域に限定されるものではないと明言しています。にもかかわらず3つの雨域を行政実務上の「新たな線引き」として事実上運用することは不当であり、改めるべきだと考えますが、市のお考えをお聞きします。
(保健医療担当局長)
昨年4月から、広島高裁判決を踏まえた黒い雨体験者への被爆者健康手帳の認定制度が開始され、法定受託事務として、国の処理基準に沿って適切に審査をしているところです。
具体的には、黒い雨体験者への手帳交付要件の一つとして、黒い雨に遭ったことの確認が必要であるとされており、宇田雨域、増田雨域、大瀧雨域の3つの雨域の外で黒い雨に遭ったとされる方については、丁寧に過去の資料等を調査することが必要となってはいますが、雨域の内側であれ、雨域の外側であれ、客観的な資料で確認ができれば、黒い雨に遭ったことが認められるとされております。
(中村たかえ)
2つ目の11種類の疾病の罹患が確認できないとして申請を却下された場合は、厚生労働省の処理基準の当否が問題となります。広島高裁判決は、「黒い雨」にあったことが認められれば、被爆者援護法第一条三号に該当するものとしました。直爆、入市、救護・看護被爆者は、その場にいたことが証明されれば認定されるのに、「黒い雨」の場合だけ11種類の疾病の罹患を要件とする処理基準は不当です。高裁の確定判決ならびに被爆者援護法の趣旨と理念に基づき、疾病要件は取り下げるべきだと考えますが、市のお考えをお聞きします。
「黒い雨」被爆者の問題で広島市が今後取り組まなければならないのは、寝たきりや遠くに住んで、自らは制度を知らず、手続きも自分ではできない人の申請をいかに援助して広げるかです。また、行政には、黒い雨被害の実態を掘り起こす作業が求められます。
「黒い雨」にあった高齢な被爆者を放置することなく、最後の1人まで被爆者認定する努力が求められると思いますが、市のお考えをお聞きします。これからの取り組みの方針と決意をお聞かせください。
(市長)
「黒い雨」体験者の救済については、令和3年7月の「黒い雨」訴訟の第二審判決後に、国において、被爆者の立場に立った政治判断が行われ、昨年4月から新たな基準により黒い雨体験者を個々に認定していく制度が始まっており、新制度の初年度となる昨年度においては、疾病要件で申請が却下となるケースが一定数生じたこともあって、今年度に入り、国と協議したところ、高齢者の多くが白内障や白内障手術歴の所見を有していることを踏まえるならば、眼科以外の疾病で却下となった方については、改めて眼科受診及び再申請を勧奨することで、一人でも多くの方に手帳を交付することができないかとの見解で一致したところであります。
今後は、この救済措置の実効性を確保する上で欠かすことのできない県眼科医会のご理解とご協力のもと、必要となる眼科受診等を経て、再申請および認定の結果につながるようにしていきたいと考えております。
本市としては黒い雨体験者への被爆者健康手帳交付の運用開始から1年半が経過する中、対象者が高齢者であることを踏まえ、申請者の気持ちに寄り添いながら、一人でも多くの黒い雨体験者に手帳交付できるよう、引き続き、幅広く周知を図るとともに、疾病はあくまで現行管理手当の支給要件であり、手帳交付の要件から切り離し、黒い雨に遭ったことをもって手帳を交付できるようにすべきとの立場に立ち、国に対して粘り強く訴えていくこととしているところであります。
(中村たかえ)
6月議会に続けて、マイナンバーカードをめぐる問題について質問します。
政府が8月8日に公表したマイナンバーの誤ったひも付けに関する「総点検本部」の中間報告によれば、健康保険証を一体化したマイナンバーカードに他人の保険証の情報が登録されていた事例が新たに1069件確認され、すでに判明していたものと合わせて8441件に上っています。
紐づけられた別人の医療情報にもとづいて医療行為や薬剤投与が行われることは絶対にあってはならないことです。日本共産党はただちに運用を停止して総点検すべきと訴えていますが、政府は運用を止めようとせず、2024年の秋までに現行の保険証を廃止し、マイナ保険証に一体化するとしています。
トラブルが相次ぐ中で「総点検」をせざるをえなくなり、自治体の負担は大きいと思います。広島市では「総点検」をどのように進めていますか。
また、現在までにマイナンバーに別人の情報が紐づけられていたというトラブルは広島市で何件起こっていますか。
(企画総務局長)
マイナンバーの紐づけに関する総点検につきましては、本年5月から国民健康保険など健康保険証に関する点検が先行して行われるとともに、7月からはマイナポータルで閲覧可能な全ての情報について、紐付け方法に関する実態調査が行われ、その結果を踏まえて、今月、国から個別データの点検が必要な自治体等の公表がございました。
本市におきましては、本人からの申請をもとに、住民基本台帳システムを活用してマイナンバーを取得するようにしているため、個別データの点検の対象には該当しませんでした。
ただし、障害者手帳情報(身体、精神、療育)につきましては、全国的に紐付け誤りの割合が高いため、全ての自治体で個別データの点検を行うよう国から示されており、現在、本市においても取り組んでいるところです。
また、現時点で本市において、紐付け誤りは確認されておりません。
(中村たかえ)
マイナカードをめぐるトラブルは医療機関に深刻な負担をかけています。
広島県保険医協会のアンケートでは、オンライン資格確認導入後の4月以降、トラブルが「あった」と答えた医療機関は64.3%あったそうです。 顔認証ができない、カードリーダーが動かないなどのエラーから、被保険者資格が確認できず、健康保険証で確認した事例など数多く回答が寄せられています。医療機関が相当な負担を強いられています。
広島市ではこのようなトラブルを把握されていますか。把握されているトラブルを具体的に教えてください。また、トラブルによって10割負担を患者に請求する事例が広島市で生まれていますか。件数と併せて、とられた対応について教えてください。
(保健医療担当局長)
本市の国民健康保険被保険者による、マイナンバーカードの健康保険証利用に関し、オンライン資格確認で有効な資格が表示されなかったという各区保険年金課への問い合わせは、本年5月1日から8月31日まで21件把握しております。
このうち、医療機関から10割負担を求められた事例については、区保険年金課から本人または医療機関に説明して、適切に払い戻しされたというものが2件あったと聞いております。
(中村たかえ)
また、現在のマイナンバーカードの保有率、返納件数とその理由、マイナ保険証としての登録率も併せてお願いします。
(企画総務局長)
本市におけるマイナンバーカードの保有率は、本年8月末時点で75.4%となっております。
また、本市に返納されたマイナンバーカードは、返納されたマイナンバーカードの集計を開始した本年5月1日から、直近の8月31日までの間で261件あり、このうち、「紛失したカードが発見されたこと」などを理由としたものは122件、「セキュリティに不安を感じる」などを理由としたものは106件、「カードは不要である」を理由としたものは33件となっております。
(保健医療担当局長)
マイナンバーカードの健康保険証利用の登録率について、本市として把握可能な国民健康保険被保険者に関していえば、本年7月末時点で57.4%の方が登録されております。
(中村たかえ)
多くの国民が保険証廃止に反対や懸念を示し、医療機関や高齢者施設で混乱が指摘されているのに、政府がなぜここまで導入にこだわるのか。それは、「負担に見あった給付」の名で社会保障の給付を抑制し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことに、マイナンバー制度を導入した政府・財界の最大のねらいあるからです。
安倍政権以来、政府は個人情報保護法を改悪し、保護規定を弱め、逆に個人情報の利活用を拡大してきました。そして、財界の要求で、個人情報ビジネスを推進するために膨大な量の個人情報を次々とひも付けているのが、今回の健康保険証廃止とマイナンバーカードとの一本化です。
個人情報ビジネスでの特定企業の利益拡大を「デジタル化による成長戦略」に位置づける政治が、強引にマイナンバーカードの導入を強行する大混乱の根本にあります。
デジタル化やIT利用は個人情報保護など市民・国民が安心して利用できることが大前提です。今の事態は、マイナンバー制度の根本からの再検討を求めています。廃止を含めた白紙からの見直しを、国民的な議論で行うべきだと考えます。
ところが6月議会で保健医療担当局長は「本市としては、制度の安全・安心な運用を進めるべきものと考えて」いると答弁されました。しかし、先ほども紹介した広島県保険医協会の調査によると、「他人の情報が紐づけられていた」例が4件あり、「妻のマイナ保険証で夫の顔認証ができた」という事例もあったとのことです。また、トラブルにより、10割負担を請求した医療機関が1割ありました。他人の情報のもとで医療が行われれば、命にかかわる深刻な事故となります。被保険者にも関わらず、窓口で10割負担することは、医療を受ける権利を妨げるものです。すでに安全・安心からかけ離れた実態があるもとで、市民のいのちを守る、という点で無責任な発言と言わなければなりません。住民の福祉・いのちを守ることこそ地方自治の役割です。
そこで改めてお伺いします。市民の命と健康を守る責任をもつ自治体として、国に対してシステムの運用を一旦止めて、保険証廃止の撤回を強く求めるべきと考えますが、市の見解を教えてください。
(保健医療担当局長)
現在生じている様々な事象に対処し、制度の信頼を確保するために、国において総点検等の取り組みが進められているものと承知しております。
こうした取り組みにより、安全・安心を確保するとともに、市民にマイナンバー制度の安全性や利便性を理解していただくことで、マイナンバーカードの健康保険証利用は、よりよい医療の提供などを行っていくための情報化の基盤になるものと考えております。
(中村たかえ)
続いて、ジェンダー平等の実現に向けて、性と生殖に関する健康と権利と女性への暴力をなくす取り組みについてお聞きします。
性と生殖に関する健康と権利とは、子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的人権です。性と生殖に関する健康や、それについての情報を得ることは、大事な権利ですが、日本では、こうした人権を学ぶ場がありません。人権をベースにした性教育が、国際水準からみて遅れていることが要因の一つとなっています。
そのもとで、児童・生徒が、SNSを使った性犯罪に巻き込まれたり、同意のない性暴力を受けたりする事件が相次いでいます。追手門学院大の桜井鼓准教授が2021年度に実施した調査によると、20~25歳の男女約1万8000人のうち、18歳までに性的な写真を他人に送ったことがある人は全体の2・4%、実際に会い性被害を受けた人が2・5%に上ります。これは、40人学級に一人が被害にあっているということです。
性教育の遅れによる問題は、生理の認識の遅れにもつながり、若者の心身に影響を及ぼしています。
日本若者協議会と#みんなの生理という団体が行った学校の生徒の「生理休暇」についてのアンケートでは、83%が学校や授業を休みたいと思ったことがある、88%が部活や体育など運動を含む活動を休みたいと思ったことがあると答えています。しかし、68.3%は休むのを我慢しているという答えでした。休めなかった理由は、「成績や内申点に悪影響が出ると思った」がもっとも多く、休めなかったことで、9割以上が「体調が悪化した」と答え、「強い痛みを我慢していたら学校で倒れた」「プール授業を欠席した分、生理中に校庭を走ることを強制された」など深刻な実態が明らかになっています。生理中の運動には注意が必要に関わらず、配慮のない対応です。こうした現状を解決するためにも、ユネスコが提唱する「包括的性教育」が重要な役割を果たします。
「包括的性教育」では、自分や他者の心と体を大切にできるように子どもの発達段階に合わせ、人権や多様性の尊重をベースに、体の発達や人間関係、安全、セクシュアリティなどを学びます。それは、自らの身体と性を大切にすることや性暴力の被害者にも加害者にもならないことにつながります。また、こどもの権利条約では、子どもには健康に育つ権利があり、国や大人は、子どもをあらゆる暴力から守ること、性的搾取から守ることを約束しています。そこでお聞きします。
広島市は、包括的性教育をどのように認識していますか。
(教育長)
議員ご指摘のユネスコが提唱する包括的性教育は、身体や生殖の仕組みだけでなく、人間関係や価値観、ジェンダーの理解など幅広い内容を包括的に扱い、児童生徒の健康の実現をもとより、生涯を通じて全ての人の権利が守られることを目指すものとされており、重要な視点が多く含まれていると認識しております。
(中村たかえ)
また、小中学校では、性犯罪に被害者としても加害者としても巻き込まれないために、どのような教育が行われていますか。
(教育長)
各学校においては、保健の学習指導等の中で、性に関する初歩的な知識、相手を思いやる大切さ、異性との関わり方や性に関する情報への適切な対処の仕方などについて指導を行うとともに、犯罪を未然に防ぐために、警察と連携した非行防止教室なども実施しております。
これに加えて、令和3年4月には、国が新たに作成した性犯罪・性暴力に関する学習教材を各学校に周知し、性暴力の根底にある誤った認識や行動などを正しく理解した上で、命を大切にする考えなどを身につけることができるよう指導しています。
さらに、SNS等を介して児童生徒が犯罪に巻き込まれないよう、教育委員会職員および専門業者によるネットパトロールを行い、内容に応じて学校に情報提供することで、児童生徒への指導につなげるとともに、犯罪に巻き込まれたと思ったときに相談できる窓口を児童生徒に周知しております。
(中村たかえ)
広島市では、生理でプール授業を休む生徒への対応はどのようになっていますか。
また、生理中の体育の対応についてどのような認識を持っていますか。
学校を生理で休む場合の欠席の取り扱いはどのようになっていますか。お答えください。
(教育長)
各学校においては、プール授業の実施に当たって、児童生徒から生理中で実技への参加が困難であると申し出があった場合、体調を確認した上で、原則、プールサイドの日陰で見学をしながら、水泳に関するプリント学習を行うなど、可能な限り学習を保障するよう対応しています。
また、学校では、プール授業に限らず、体育の授業の際に、生理中で体調不良の申し出があった場合には、無理をさせず、保健室で休ませたり、早退させたりするなど、児童生徒の状況に応じた対応をしています。
なお、生理による体調不良等で児童生徒が学校を欠席する場合については、風邪等により欠席する場合と同じく、病気欠席として扱っております。
(中村たかえ)
続いて、生理の貧困問題についてです。
生理用品の入手が困難な場合、一日中つけっぱなしにせざるを得ず、かぶれやかゆみなど健康トラブルが起こります。精神的にも追い詰められ、抑うつ状態になるデータもあります。
生理用品へのアクセスのサポートは、女性の生涯を通じた健康の保持増進を図るための重要な施策です。
そのため、生理の貧困解消の視点だけでなく、性と生殖に関する健康と権利の視点からも、生理用品の無償提供が全国でも進んでいます。
東京都北区では、専用アプリを使い、生理用品を受け取れる機器「OiTr」を庁舎内の4カ所のトイレに設置しています。
千葉県では、すべての県立高校で生理用品の提供をし、任意で利用状況を把握しています。同じく千葉県松戸市では、災害備蓄品の生理用品を児童館で配布しています。
奈良県大和郡山市の中学校では、生理用品を2枚1セットに袋づめをするなど工夫し、トイレに設置しています。
そこで、お伺いします。生理がある人をサポートするために、商業施設や公共施設に設置できる生理用ナプキンを常備し無料で提供するサービス「OiTr」を、まずは市役所や区役所の女性用トイレ・多目的トイレに設置してはどうでしょうか。
備蓄用の生理用品の交換時期がきたものを活用し、無償配布してはどうでしょうか。
その際、相談とセットという形だけではなく、相談先の案内をつけるなど工夫し、小中学校や公共施設の女性用トイレ・多目的トイレに配置してはどうでしょうか。
(市民局長)
経済的理由で生理用品を購入できないことが「生理の貧困」問題として全国的に注目を集める中、本市においても、令和3年度に生理用品の提供を初めとする支援事業を実施しました。
しかしその結果、この問題は、単に生理用品を提供するだけで解決するものではなく、その背景にある様々な問題を探り、それに対応することが必要であると再確認し、令和4年度以降は、広島市男女共同参画推進センター「ゆいぽーと」におきまして、生理用品の提供とあわせて、様々な困難を抱える女性からの相談を受け、適切な支援に迅速に結びつける取り組みを継続しています。
このため、公共施設のトイレに生理用品を設置する予定はありませんが、交換時期が到来した備蓄用の生理用品をゆいぽーととの相談事業で使用することは可能であると考えます。
なお、ゆいぽーとの相談事業で生理用品を提供していることは、ホームページへの掲載等により周知していますが、今後も困っている女性に生理用品を提供しつつ適切な支援につなぐため、例えば、女性トイレに置いているDV相談窓口を紹介するカードとあわせてゆいぽーとの「なんでも相談」のPRカードを設置するなど、効果的な周知方法を工夫してまいります。
(教育長)
現在、小中学校においては、児童生徒が生理用品を必要とする場合、保健室で受け取るよう周知しており、養護教諭等が生理用品を渡す際には、児童生徒の家庭状況等の把握に努め、経済的な貧困状況があれば、生活支援や福祉制度に繋げるなどの対応を行っております。
こういった場面は、教職員が児童生徒の状況を把握する有効な機会となりうることから、今後とも、児童生徒のプライバシーに十分配慮しつつ、こうした対応を継続していきたいと考えており、現時点では、生理用品を小中学校のトイレに置くことは考えていませんが、学校の希望に応じて、交換時期が到来した備蓄用の生理用品を保健室に置くことは可能であると考えております。
【再質問】
(中村たかえ)
生理の貧困対策について教育委員会と市民局にもう一度お聞きします。保健室に来てもらって児童生徒の変化をつかみたい。それもわかります。ただ学校では、SOSカードというものを配布しているとお聞きしました。SNSからも相談できることを周知するために大変いいものだと思います。先ほど直接児童生徒の変化をつかみたいということだったんですけど、こういったSOSカードのような直接学校が関わらない方法も既に取られている。こうした同じような内容を記載した用紙配られてる立派なものじゃなくても、本当にあのコピー用紙でもいいと思うんですけど。そうしたものをセットして、トイレに設置するっていうことはできるんじゃないでしょうか。
そもそも教員の多忙化がある中で、子どもたちが本当に相談していいんだろうか、そういう状況があることを想定することも必要じゃないでしょうか。
何らかの相談機関につながる工夫をすることが必要だと考えます。相談先を記載した用紙を生理用品につけてトイレに設置する。思い切って、子どもたちのためにする必要があるんじゃないでしょうか。再度お聞きします。
(教育長)
先ほど議員の方からご指摘がありました、全ての児童生徒に配布しております相談文字窓口を紹介するカードにつきましては、これは既に毎年度、担任の方から、全ての児童生徒により配布しているものでございまして、そういったことで言いますと、これを改めて学校のトイレに行くといったことは考えていないわけでございますが、気軽に相談とか経営ができる機関でありますとか窓口の周知のあり方をどうするかというご提案だというふうに私受けとめましたんで、今でもいろいろなことをやっているというつもりではございますけど、今後どういったことができるかというのは少し検証してみたいと思います。
(中村たかえ)
2021年に県が20年前の生理用品を災害備蓄用品として保管していて、私は大変驚きました。それは廃棄されましたが、その後広島市は備蓄用の生理用品を交換時期を3年と決めています。
そのもとで、危機管理室によると、災害備蓄用の生理用品は直近では、令和3年2021年度に購入したので、今年度、令和5年まで来年、令和6年には交換時期になるんだということです。
先ほども、要請があれば、それを活用しようとは思うと言われていました。交換時期の来た生理用品を廃棄せずに、各部署で活用を進めていただきたいと思うんですが、この市民局の方にお聞きしたいと思います。
本当に必要な人に届くかどうかわからない、相談や支援に繋げたい。それも当然だと思いますが、本当に必要な人、それはどうやってわかるんでしょうか。
さらに、ゆいぽーとも大事な施設ですが、ただそこに行かなければ受け取れない。安佐北区や安佐南区に住む人が、生理用品を買うことすら自分で用意できなくて、後ろめたさを感じている人が、ゆいぽーとに行くのにどれだけ負担があると思われるでしょうか。
さらに交換時期が来たものを使わなければならない。そんな状況を感じている人に届けるためにどうするか、その視点が必要なんじゃないでしょうか。
せめて市役所や区役所、出張所に配布場所をつくることも必要なんじゃないでしょうか、どうお考えでしょうか。
教育委員会の方にお聞きしたら、全体的に市の公共施設に市民局が生理用ナプキンを設置しますと、決めることがあるんであれば、学校施設でも、置くことも検討すると言われています。
男女共同参画基本計画では、生涯を通じた男女の健康の保持増進対策を進めると広島市は決めています。
私の状況を待つんじゃなくて妊娠出産の可能性のある生理のある人を支える立場で生理用品の配布をそれぞれのトイレで、市役所や区役所のトイレなどで配布を行うことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
(市民局長)
先ほど再質問公共施設のトイレに生理用品を無償でことができないかという改めてご質問があったと思います。
先ほどもご答弁しました通り、私ども本市では令和3年度にまずパイロット事業として生理用品の提供を初めとする支援事業を実施しまして、その結果その後国の補助事業も使いまして、支援事業を行いました。
その結果、我々が把握した理解では、生理の貧困の背景に様々な要因があるということです。
例えば経済的な貧困だけではなく、父子家庭の生理用品の必要性に気づかないなど、家庭環境に起因するものや、児童虐待さらには配偶者やパートナーなどからの経済的DVなど深刻な問題が現在、潜在化しているものと考えております。
無償で配布することによって、こうした深刻な問題把握する機会を逃す側面もあるんではないかと考えております。
こうした背景があることから、生理の貧困の問題を解決するためには、生理用品を入手できない状況を根本にある様々な問題に対応し着実な支援に繋げる必要があるとの考えのもと、相談事業の中で生理用品を提供しているものです。
【再質問】
(中村たかえ)
ありがとうございます。
もう少し視点を、困っていることを人に言えないという人もいるっていうことの認識も持っていただきたいと思います。
(中村たかえ)
さて、今年8月、大阪の音楽フェスで女性出演者が痴漢という性暴力にあう事件がありました。被害を訴えた女性に対し、性加害を矮小化させる二次加害がはびこっています。
内閣府の2022年の調査では、16歳から24歳の女性の10人に1人が痴漢被害にあったと発表されています。また、6割は誰にも相談していません。痴漢被害を話してみても「そのくらいはよくあること」と軽く扱われてしまいます。
2020年の日本共産党東京都委員会調査の痴漢被害の内容では、お尻や胸を触られた、性器などを見せられた、「1万円でどう?」など不快な声かけをされた、わざとぶつかられた、匂いをかがれたなど、被害の種類は多岐にわたり、日常生活のあらゆる場面で被害が出ていることが明らかになりました。
同意なく身体に触れることは、個人の尊厳を侵害する行為です。女性の尊厳を傷つける行為を放置していては、ジェンダー平等の達成はできません。
広島市では、女性への暴力根絶へ、実態把握と関係機関との連携を基本施策としています。広島市での、痴漢被害、性暴力を広げないために、お伺いします。痴漢などの性被害について、どのように認識し、どのような取り組みをしていますか。
(市民局長)
痴漢等の性被害は、人権を踏みにじる重大な犯罪被害であり、決して許されるものではないと認識しており、このため本市では、「第4広島市安全なまちづくりの推進に関する基本計画」の重点取組の一つとして、子ども・女性への犯罪防止を掲げ、現在、市民や事業者、警察など関係機関と連携し各種取組を進めているところです。
例えば、警察から提供された痴漢や盗撮などの不審者情報を本市防災メールや公式LINEで発信し注意喚起を行ったり、中学校での犯罪被害等防止教室や市政出前講座において、被害防止に向けた意識啓発を図る取組を行っています。
また、町内会等に対し防犯カメラの費用の一部を補助するなど、地域で犯罪自体を起こさせない環境づくりにも努めています。
これに加えまして、今年度、犯罪防止の有識者で構成する広島市安全なまちづくり推進協議会において、公共交通機関における痴漢防止についての意見を聴取し、更なる具体策について検討しているところです。
(中村たかえ)
次に、学生支援についてです。
広島市には大学が18校、専門学校が35校あり、若者が、社会で自らの力を発揮したいと、日々広島で学んでいます。
しかし、その中で、どれぐらいの学生が高すぎる学費により、学ぶ時間と健康を脅かされているでしょうか。
国立大学の授業料は、1969年は年間1万2000円でしたが、今は年間約53万円。初年度は入学金も含め約81万円です。物価上昇は2~5倍ですが、国立大学の授業料は44~45倍になっています。
その下で、広島市内の大学に通う学生たちは、「食費を削るのに、毎日インスタントラーメン。安いときに鶏の胸肉を買う」「奨学金だけでは学費と生活費が賄えないため、深夜のアルバイトをしているが授業に支障が出る」などの実態があります。
私自身、奨学金を借りて市内の私立大学で学びました。今年38歳ですが、この秋にやっと返済が終わります。30代は、自らの奨学金返済と子どもの教育費の負担が重なる年代と言えます。
内閣府が2020年度に行った「少子化社会に関する国際意識調査」によれば、育児支援の最重要政策はなにかとの質問に対し、日本で一番多かった回答は、「教育費の支援、軽減」の69.7%でした。希望する人数まで子どもを「増やさない・増やせない理由は」との問いへの答えで一番多いのも「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が51.6%でした。そこでお聞きします。
高い大学学費によって、学生が悩み苦しんでいるという認識はありますか。
(企画総務局長)
独立行政法人日本学生支援機構が全国の学生を対象に実施している「学生生活調査」によれば、大学生の不安や悩みとして、経済的に勉強を続けることが難しいことを挙げた学生は、平成26年度が17.3%であり、減少傾向にあるものの、直近の令和2年度では13.3%となっております。
また、同調査では、大学昼間部の学生の平均学費は、平成30年度の120万8800円から、令和2年度は114万8700円と6万100円減少したのに対し、家庭からの給付や奨学金も含めた学生の平均収入は、平成30年度の200万1300円から、令和2年度は192万7600円と7万3700円減少しており、学費の減少より収入の減少の方が多くなっております。
こうした調査結果から、一定数の学生が経済的な面で不安や悩みを抱えていることがうかがえます。
(中村たかえ)
また、学費など教育費の負担が少子化に影響しているという認識はありますか。
(企画総務局長)
文部科学省が、令和3年度に、就業や子育て等を行っている現役世代の方を対象として実施した「高等教育の教育費負担等に関する世論調査」によれば、一般論として大学などの教育費の経済的な負担が結果として少子化の一因となっていると思う人の割合は、75.1%となっております。
また、本年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、高等教育費の負担軽減に関して「教育費の負担が理想の子ども数を持てない大きな理由の一つになっているとの声がある」ことが挙げられております。
こうした調査結果等は、教育費の負担が少子化に影響しているということを示しているものと思われます。
(中村たかえ)
今、全国では、学生を支えるための制度を実施しています。
長野県は「長野県大学生等奨学金」という独自の給付型奨学金制度を設けています。
富山県高岡市では、市外から進学する学生を対象に、卒業後高岡市に居住することで返済免除をする奨学金制度を創設しています。
札幌市や姫路市では、圏域内に本社がある企業に就職した若者に対して、奨学金返済支援制度を設けています。
広島市は、学生が高い学費によって深刻な実態であるにもかかわらず、独自の奨学金制度を設けないとしていますが、全国では、自分たちの街で学ぶ学生を応援し、若者の定住対策や雇用対策に向けて独自の奨学金制度を設けています。
そこでお聞きします。20歳から24歳の若者の転入出はどのようになっていますか。
(企画総務局長)
総務省が公表しております令和4年の住民基本台帳人口移動報告では、20歳から24歳における本市への転入数は7588人、本市からの転出数は8012人となっており、差し引き424人の転出超過となっております。
(中村たかえ)
広島市は若年層の流出が全国トップクラスですが、人口流出対策として、先ほど紹介した他都市の取り組みを広島市でも取り入れる必要があると考えますが、広島市の見解をお聞かせください。また、広島市として大学卒業後5年以上市内に居住した場合に対する奨学金返済支援制度を創設してはどうでしょうか。
(企画総務局長)
本市では、地元の大学や企業の協力を得て、若者の地元への就職・定着に向けた有給長期インターンシップ事業や、広島広域都市圏域内の市町や経済団体等と連携したUIJターンを促進する取組、中学生を対象とした職場体験学習や職業講話などに取り組んでおります。
この取組は、若者が本市にある大学や企業の魅力に直接触れる機会を十分に提供することによって、若者の定住を促進し、転出超過を抑制するために行っているものです。
したがいまして、大学の教育費の負担軽減に係る支援については、教育行政を担う国の責任において、自治体間の競争を助長することなく、全国一律の扱いとするよう調整すべきものと考えているところです。
【再質問】
(中村たかえ)
答弁ありがとうございます。いくつかもう少しお聞きしたいことがあります。学生支援についてです。
私は、6年前に広島市立大学に通っていた、本を読むのが好きな学生と話す機会がありました。そのときに、その学生が言ってたのは、本が好きな学生ですよ。本を新刊で買えないからシャレオの地下や横川駅の商業施設前でやっている古本市で本を買うのが楽しみだ。映画なんて贅沢だ。そんなこと語っていました。さらに、奨学金という借金に苦しめられたくない。そう話していたことを私はまだ忘れられません。
高い学費と重い奨学金の負担は、このコロナパンデミックや今の物価高騰以前からの問題です。先ほど数字も言われましたが、実際にこのコロナ禍や物価高騰を経て、今学ぶことがさらにぜいたく品になっている。そんな現実があります。
この9月から始めた日本共産党広島県委員会の学費奨学金アンケートでは、広島市立大学に通う学生が、「兄弟が多く、国公立大学しか受験させてもらえなかった」、3人の子どもを育てる保護者は、「国立大学じゃないと子どもを進学させられない」。市内の私立の大学の4年生は、「将来の返済が不安で奨学金を借りずに、仕送りもなしでアルバイトをして学生生活を送っている。趣味の洋服にお金はかけられない」。さらにアンケートの中では、高校生が「将来の学費が心配で今からバイトで貯金している」。子育て中の50代の方は、「世帯間の収入の格差が、進学に影響するのは、親も子もつらい」。こういう声を寄せてくださっています。
ある学生は、「奨学金生活費に充てているが、将来を食いつぶしているようだ」と。こうした学生を今支えることが必要なんじゃないでしょうか。
そこで改めて伺います。広島市は、にぎわいを作る魅力を作ると言っていますが、この圏域内のにぎわいを作るのは、そこに暮らす人です。
そして、50年先100年先を見据えるまち作りを担うのは若者です。そのために、この広島市で生活ができる、生活したいと思える学生を増やす施策が必要ではないですか。見解をお聞きします。
(企画総務局長)
学生の支援について奨学金の返済にかかり将来の広島支える若者を支えていくことが、必要ではないかというご質問のように受け止めております。
これにつきましては先ほどご答弁しましたように、まず教育費の負担軽減に係る支援につきましては、教育行政を担う機能責任において、自治体間の競争を助長することなく全国一律扱いとなるように調整すべきものというふうに考えております。
なお、国においては「こども未来戦略方針」におきまして高等教育における教育費の負担軽減に向けて、奨学金制度の充実や、授業料後払い制度の導入などに着実に取り組むこととされており、また、広島県では平成30年度に中小企業倒産支援する補助制度として、従業員の奨学金返済に対する支援制度が設けられており、所要の施策が講じられていると考えております。
【再質問】
(中村たかえ)
それと、先ほど企画総務局長が、学費の問題は国のことだということで、もう国がやるべきものだし、こういう競争はやらないんだ、子どもの医療費の問題でも言われていますけど、こういう若者を支援する競争はやるべきだということをお伝えしたいと思います。以上で終わります。
(中村たかえ)
最後に、広島高速道路事業について伺います。
高速5号線二葉山トンネルの掘削工事は、昨年12月に地表面の異常隆起が確認され、およそ半年間も中断しましたが、地元住民の納得を得ないまま6月末に再開しました。ところが、8月7日には、早くも掘削機のカッターが破損したとして工事の予定外の中断を余儀なくされ、現在も工事の中断を繰り返しています。そのため、計画では工事完了は昨年7月としていましたが、未だに工事は7割に届かない進捗にとどまっています。
その影響は、単に工事の遅れによる工事費の増大に留まらず、トンネル工事直上で暮らす住民に耐えがたい振動による生活妨害の被害を長引かせ、さらに道路施設の供用も大幅に遅れることで、高速道路計画の採算性にも重大な影響を及ぼしています。
まず、二葉山トンネル掘削工事の完成時期の見通し、遅れる期間、その遅れによる損害額はどの程度の規模になるのか、お答えください。
(道路交通局長)
高速5号線のシールドトンネル工事の完成時期については、公社からは、「牛田地区の掘削の見通しが立った段階で示すことにしている」と聞いており、遅れる期間についても、その段階で判明するものと思われます。 また、議員が言われる「損害額」が、掘削に時間を要していることなどに伴う追加費用の負担額を指されているのであれば、これは、5号線を整備するために必要な費用であり、「損害額」というものにはあたりません。
なお、この負担額につきましては、公社からは「現在、受注者側から建設工事紛争審査会に調停申請されているところであり確定していない」と聞いております。
(中村たかえ)
その責任がどこにあるかですが、工事が大幅に遅れた原因は、異常に頻回な掘削機のトラブルで中断が数多く繰り返されたことだと考えますが、市と高速道路公社の認識をお示しください。
(道路交通局長)
公社からは、「シールドトンネル工事の掘削に時間を要していることについては、平成30年に発生したような掘削機の損傷につながらないようにするため、地表面沈下を起こさないことを前提に、わずかな変化も見逃すことがないようカッターの磨耗や破損を早期に発見するための装置を新増設し、その後、これらに反応が出る度、掘削を止めて状況を確認するとともに、必要な対策を講じながら慎重に掘削を進めているためである」と聞いており、掘削機本体の損傷などのトラブルで、異常に頻回に中断が繰り返されたというわけではありません。
本市としては、引き続き、地域住民の安全・安心の確保を第一優先とし、着実に工事を進むよう県と連携して公社をサポートするサポートしていきたいと考えております。
(中村たかえ)
また、トラブルで工事が止まった回数と、もともとカッターの交換で工事を止める予定にしていた回数をお答えください。
(道路交通局長)
公社では、掘削に着手して以降、先ほどもご答弁したように、主に掘削機の損傷に繋がらないようにするため、臨時のカッター交換など必要な対策を講じるなどの対応を行う臨時点検を現時点までに50回実施しています。
なお当初計画していたカッター交換の回数は11回です。
(中村たかえ)
現在、工事費用の増額幅や負担割合について、中央建設工事紛争審査会で争われています。
2022年12月にJVが中央紛争審査会に申し立てて10か月にもなりますが、いまだに何の報告もありません。
この審査会は、非公開とされ、どんな議論がどのように進められているか、いつ結論が出るか不明のままです。
市民に説明できない状態のまま、どこまで事業費が一体どれだけかかるかわからないのに、工事だけは進めるというのは、税金を使う公共事業として異常であり、前例がありません。
そこでお聞きします。紛争審査会は、一体いつ決着する見込みですか。これまでに紛争審査会は何回開かれたのですか。
(道路交通局長)
公社からは「建設工事紛争審査会の手続きについては、建設業法で非公開とされていることから、審理状況や今後の見通しについてはお示しすることはできない」と聞いております。
(中村たかえ)
高速道路が完成したころに後出しで結論が出るというのは、許されません。
また、高速2号線と5号線の連結道路工事の増額費用も含め、現在の費用対効果はどれぐらいになりますか。1.10から変わりはあるのでしょうか。仮に1を下回った場合、事業はどうなりますか。
(道路交通局長)
公社からは「費用便益比は、整備計画の変更に必須とされているものではありませんが、『高速2号線と5号線連結路』の事業費の増額等を反映させた5号線全体の費用便益については、1.02と試算している」と聞いています。
なお、事業の継続や中止については、「国の技術指針」によると、「費用便益分析や事業の進捗状況などを踏まえ、総合的に判断する」とされていることから、費用便益比のみを捉えて事業の中止を判断するものではありません。