議会での質問・答弁

2023年03月14日

2023年第1回 2月定例会・予算特別委員会 2023年度関係議案討論 中森辰一議員

日本共産党広島市会議員団を代表して、上程された諸議案について、討論を行う。

 上程された諸議案のうち、反対する議案は、
令和5年度
第1号議案 令和5年度一般会計予算
第8号議案 令和5年度広島市後期高齢者医療事業特別会計予算
第9号議案 令和5年度広島市会護保険事業特別会計予算
第10号議案 令和5年度広島市国民健康保険事業特別会計予算
第11号議案 令和5年度広島市競輪事業特別会計予算
第15号議案 令和5年度広島市開発事業特別会計予算
第27号議案 広島市附属機関設置条例の一部を改正する条例
第28号議案 広島市個人情報の保護に関する法律施行条例
第29号議案 広島市情報公開条例の一部を改正する条例
第30号議案 広島市個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例
第36号議案 広島市湯の山温泉館条例の一部を改正する条例
第45号議案 広島市学校給食センター条例の一部を改正する条例
第46号議案から第49号議案 広島市と連携市町との連携中枢都市圏形成に係る連携協約の変更の協議について
第52号議案 広島高速道路公社定款の変更に係る同意について

及び令和4年度
第144号議案 変更契約の締結について(広島競輪場東スタンド等解体その他工事)
の18議案である。

 また、令和4年度の第122号議案、令和4年一般会計補正予算(第9号)については、意見を付して賛成とする。
 また、第1号議案、令和5年広島市一般会計予算に対する修正案、及び第122号議案、令和4年一般会計補正予算第9号に対する修正案には賛成とする。

 まず、反対する議案のうち、予算案である第11号議案を除く、第1号議案から第15号議案について、一括して理由を述べる。
 今回の予算の規模は、骨格予算と言いながら前年度当初予算より規模が大きくなっている。市債の一括償還額が大きくなったからなどということだが、それだけではない。
 今回の予算でも財源に窮迫し、予算規模に比べて小さい財政調整基金を取り崩さざるを得なかった。こういう状況を見ると、骨格予算ではない次の年度の予算では、市民生活上の様々な要望に応えるための新たな政策を実行するための余裕がほとんどなく、極めて硬直化した広島市の行財政の実態がわかる。
 なぜそうなったのか。借金払いである公債費が、この10年程度を見ても、700億円から800億円という状況が続いている。これが財政硬直化の重大な原因となっている。これは、大規模な公共事業を推進すれば当然大きくなっていく。
 今回の歳出の項目を、財政再建を進めるための財政運営方針と比較すると、総額で314億円も上回っている。物価高騰の影響と考えられる物件費や補助費が財政運営方針を上回っているが、これは今の経済状況を考えるとやむを得ないものだ。この影響を除くと、財政運営方針と比べて投資的経費が116億円も上回っている。財政運営方針に掲げられた数字は、財政健全化を進めるための上限だが、歳入のうち、市債が、市の責任ではない臨時財政対策債の影響を除くと、110億円財政運営方針より上回っていることから、財政に余裕がない中で、2.3倍に膨張した広島駅南口再整備や、急速に事業費を膨張させた高速道路建設などが、財政を硬直化させている原因だということになる。
 大型開発事業を推進する理由のひとつに税源の涵養、税収を増やすことになるからということがあるが、実態をみると、個人市民税は着実に増えているが、肝心の法人市民税はほとんど増えてはいない。決算の数字を見ると、平成19年度が326億円あったのに対して、コロナの影響のない令和元年度は262億円と基本的に右肩下がりで推移してきている。
 本来の地方自治体の役割は、市民と企業から税金を集めて主権者である市民の暮らしを支え向上させるとともに安全を確保するために最大限の努力を行うところにこそあり、それがまさに市長が後回しにしてきた「公助」だ。子育て支援を所得制限なしで実施している明石市の市長が述べた通り、市民はすでに負担能力に応じて税金を負担しているのであり、これは市民全体で「共助」を実践しているということだ。もちろん、介護や介助等の支援なしで暮らしている市民は日常からすでに「自助」で暮らしている。市長が「自助」「共助」「公助」だと強調しなくても、市民はすでに「自助」と「共助」は実践しているのであり、残った「公助」がまさに行政の役割である。このことをしっかり自覚して、まずは子育て支援をはじめとする市民生活を支える施策に最大限取り組むことが、これからますます重要である。
 その点で、本会議の総括質問でもあったように、子育て支援の施策で都市間競争するべきではないと言いながら、他方では大型開発事業でまさに都市間競争をやろうとしているのは、自治体行政の役割を取り違えていると言わなければならない。
 大型開発事業は、優先的に推進する一方で、就学援助制度を利用できる所得基準を切り下げたり、放課後児童クラブの利用料を有料化したり、子ども医療費補助の年齢拡大と同時に一部の利用世帯の負担を大きく増やしたりなど、子ども施策にさえメスを入れてきたこと、全国の子育て支援の流れに完全に逆行するものである。
 こうした市政のあり方の中で、国民健康保険の保険料を引きあげたり、介護保険や後期高齢者医療保険料が継続して引き上げられるのをそのまま容認しているわけで、このような市政の問題が表れている予算には反対する以外にない。

 第11号議案は、競輪事業特別会計予算であるが、公営ギャンブルをやる時代ではなく、ギャンブル依存症への有効な対策を市の行政がやっているとは到底見えない中で、公営ギャンブル事業は、早急に廃止に向けて取り組むべきことを指摘しておく。
 次に、第27号議案は、可部に、新たに設置しようとする大規模給食センターの事業者を選定するために、広島市附属機関設置条例の一部を改正しようとするものである。広島市では、すでに佐伯区の学校給食について、各地の学校給食センターを廃止して、1万数千食を賄う大規模給食工場に一括して給食をつくらせ配送させることが行われていて、今回提出された第45号議案にある湯来町内の学校給食室を廃止しようとしている。
 学校給食は単なる昼食の提供ではなく、教育の一環である。平成元年に市教委が教員に対して行った給食アンケートでは、センター給食よりも自校調理給食の評価が高いという結果が出ている。自校調理では、日常的に調理室から栄養教諭や調理員と子どもたちとの交流があるため、食育を進めるうえで効果があるからである。
 センター方式への集約化で、自校調理方式が廃止されると、栄養教諭の配置が7人から3人に減る。これは、教育の一環としての学校給食の後退である。教育委員会の、教育の質よりもコスト優先の姿勢は大きな問題だ。今回の問題では、自校調理の廃止について保護者の意見を聞いていない。しかし、今回の決定をする前に、教育委員会は保護者に説明して理解を得るという手続きをとるべきであった。市民との対話をせずに物事を決めてしまう松井市政を問題にしているが、教育委員会もそうなのかと、極めて残念なことである。

 次に、第28号、第29号、第30号議案は、いずれも国による、急速な行政のデジタル化の推進に関わって、出されてきたものだ。政府が2021年5月に成立させたデジタル関連法で国や自治体が持つ膨大な個人情報の「データ利活用」を成長戦略に位置づけ、外部提供した企業にAIで分析させ、それを企業の営利活動に利用さぜることを「デジタル改革」の名で進めようとしている。その中でマイナンバー制度の急速な普及になりふり構わず、20000ポイントをつけるキャンペーンや、健康保険証との一体化を強行に推進し、マイナンバー法が取得の義務化はしないと明記しているのに、実態として義務付けを進めている。
 全国の自治体が独自の条例によって、長年にわたって築き上げてきた、個人情報保護の到達点をすべてご破算にして、自治体の個人情報保護条例を廃止させ、先ほど述べた企業利益に供するという目的のために自治体の条例より緩い水準の個人情報保護法に一括したが、これは地方自治の原則に反することである。
 第28号議案は、国の個人情報保護法を自治体で施行するための条例である。
 第29号議案は、自治体が保有する個人情報を個人が特定できないように加工したものを企業が利用できるようにするための条例である。本条例にある「匿名加工情報」は加工したことで非個人情報となる扱いとなる。これを企業が営利活動用に提供するわけであるが、これは自治体が市民が行政を利用する際に保有するもので、市民にとっては否応なしに自治体に保有される情報だ。
 行政としては情報漏洩の不安に答え厳重に管理する責任があるにもかかわらず、加工したとは言え、こうした情報を企業の営利活動に提供するのは目的外利用であり、これは本来の行政の仕事とは言えない。こんなことが容認できるはずもなく、この二つの条例には断固として反対する。
 第30号議案は、個人番号、マイナンバーの利用に関する条例に定められた利用範囲に含まれていなかった外国人に関する事務を加えようとするものであるが、現実に健康保険の紐づけが行われつつあり、また、今は金融口座の紐づけが議論されているところであり、際限なく市民の個人情報が一括で国家に把握されるようになる方向にある。すべては個人情報を企業の利益のために活用できるようにしようという、財界・大企業の要求に忠実に従って進められているものであるとともに、膨大な個人情報を国家が管理することは、情報漏洩の問題とともに、我が国の根底にある民主主義と個人の尊厳の大原則と対立するものである。国民全体の利益のために、個人番号制度自体、廃止するべきであり、この条例には反対である。

 次に、第36号議案は、湯の山温泉館を利用する際の利用料を1人1回につき一律50円値上げしようとするものだが、物価高騰の下、経費が増えていることは理解できるが、市民生活も同時に逼迫してきている中で、行政がコントロールできるところでは、料金等の引き上げは抑制するべきだと考える。

 次に、第45号議案は、民設民営の大規模学校給食センターと並行して運用していた湯来地区と五日市南地区の学校給食センターを廃止し、学校給食の提供業務を大規模センターに統台しようとするもので、このような大規模化の政策には反対である。

 次に、第46号議案から第49号議案は、広島市が連携中枢都市として連携協定を結んでいる各自治体との連携協約の内容を変更しようとするものである。
 私たちは、高齢化、過疎化の問題をまめて、小規模な自治体が、引き続き自治体としての機能を維持していくためには、必要な人員配置と予算が必要だと考えている。広島市が連携協定を結んでいる小さな自治体に支援を行うことは反対ではないが、それだけでその自治体が今後も自立してやっていける保証にはならない。必要な体制を確保するための支援の役割は国や県であることを自覚するべきだ。それよりも、200万人都市圏の中枢都市としての役割を口実に、財政の制約を押してでも大型開発に邁進し、市民生活の施策が後回しになっていることが問題である。また、予算も人員体制も限られている小規模自治体が自治体として自立していけるように支援するのは県の役割であり、広島市のような大都市に請け負わせようという連携中枢都市構想そのものに反対である。

 次に、第52号議案は、広島高速道路公社の定款を、高速道路の建設工事費が増えていくのに合わせて、基本財産の額と広島県、広島市の出資額を増額しようとするものだが、とりわけ広島空港への所要時間をわずか5分短縮するために、いくらでも財源をつぎこもうという今の高速5号線の建設は市民の理解を得られるものではない。それを追認することになる定款の変更には賛成できない。

 次に、令和4年度第144号議案、変更契約の締結については、広島競輪場東スタンド等解体その他工事について、工期を延長しようとするものであるが、予算のところで述べたことと同じ理由で、必要のない工事であり反対とする。

 次に、意見を付して賛成とする、令和4年度第122号議案、令和4年広島市一般会計補正予算(第9号)についてだが、広島市の財政に悪影響を及ぼしてきた大型開発事業推進の典型的な事業が高速5号線をはじめとする高速道路建設事業であり、広島駅南口再整備事業である。
 これらの事業は中止するべきだと当えており、そのための予算が盛り込まれていることには反対だが、他のコロナ対策等、市民生活関連の予算が大きな比重を占めており、今回の補正予算には、いま指摘した二つの大型事業は見直すべきとの意見を付して賛成とする。

 最後に、第1号議案、令和5年広島市一般会計予算に対する修正案、及び第122号議案、令和4年広島市一般会計補正予算第9号に対する修正案について、賛成の理由を述べる。
 広島市中央図書館等を、建設後四半世紀も経ったエールエールA館に移転整備すると、市が一昨年11月に唐突に発表して以来、一気に市民の批判の世論が盛り上がった。しかし、それをよそに、翌年2月に発表された令和4年度当初予算には、移転整備に向けた予算が盛り込まれ、市の移転整備を強行する姿勢が明らかになった。
 そのような市の姿勢に対する反発の世論はいっそう高まり、その中で予算は通ったものの、それを執行する条件として、「利用者、有識者、議会の理解を得ること」という付帯決議が全会一致で議決された。市民世論は、「理解を得る」プロセスに期待されたが、市の資料も作成しての説明は、結局商業ビルへの移転に導くものでしかなく、そもそも最初から商業ビルへの移転の方針を変更するつもりはなかったと、報道でも指摘されていた。
 「理解を得る」という付帯決議の条件の文言の解釈も市民世論とはかけ離れており、有識者の審議会だと市が位置づけた図書館協議会と社会教育委員会議の委員の中からも厳しい疑問の意見が出されていた。
 議会からの疑問に対しても未だ答え切れてはおらず、市が説明することの意味が分かったという意味でも、未だ理解を得たとはいえないことも指摘しなければならない。
 日本共産党市議団としては、中央図書館等は現地での建替えあるいは中央公園内の他の敷地への移転建て替えとするべきだと考えているが、現状の到達は、付帯決議を履行できたという状況ではなく、商業ビル、エールエールA館への移転整備に向けた予算を執行するべきではなく、新たな予算の必要もない。
 以上の理由で、第1号議案、令和5年広島市一般会計予算に対する修正案、及び第122号議案、令和4年広島市一般会計補正予算(第9号)に対する修正案に賛成する。

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