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(近松さと子)
市議団日本共産党市議団を代表しまして、令和4年度包括外部監査結果報告書の中の、生活保護費返還金などについてお聞きします。
生活保護費を巡っては、安倍政権のときに2013年から3年間にわたり最大10%の生活保護費の削減が行われました。
その上、40年ぶりと言われる物価高騰が生活保護利用者の暮らしを直撃し、削るものがないとの悲鳴が上がっています。
2月10日、宮崎地裁でこの引き下げは違法だとして、自治体に引き下げの取り消しを求めた判決が出ました。2022年10月の横浜地裁に続いて、引き下げが違法だという判決は5例目です。
監査人は生活保護費の返還金などの収納率が低いことを問題にして包括外部監査を行ったものと思われますが、生存権を脅かす状態の生活保護基準の是正こそ早急に行政に求められていることをまず指摘しておきたいと思います。
今回、包括外部監査の対象になった63条の返還金と78条の徴収金は、払いすぎた生活保護費を返還するもので、生活保護法でそのルールを定めています。63条の返還金は無年金のために生活保護を開始したが、調べてみると年金の受給資格があり、さかのぼって年金が支給された場合に一時金を返還するものです。
また、土地や建物があるが、生活に困窮し、それを後に売却して得た利益を返還してもらうという前提で生活保護を開始する、こういう取り扱いもしています。
さらに加算の計算を誤っていたなど、福祉事務所のミスによる過誤支給なども、この第63条により処理をされています。
一方78条の徴収金は、収入申告をしなかったり、嘘の申告をするなどにより保護費を受給した生活保護費返還のルールを定めています。
2018年の生活保護法改正で債権回収が強化されて、77条二項が追加され、63条返還金についても、福祉事務所のミスなどでない場合、78条徴収金と同じように強制徴収公債権にできることになりました。
そもそも63条返還金は強制的取り立てがなじまない債権とされてきました。しかし、自治体が強制徴収公債権と見なせば預貯金などの差し押さえなど滞納処分が可能となります。
さらに加算や免責手続きをしても返済は免れず、破産法が認めた人生の再スタートのチャンスも阻むことになります。
こうしたことから、日本弁護士連合会をはじめ全国の弁護士会が反対の声を上げ、広島弁護士会は、これまで度重なる生活保護基準の引き下げにより、健康で文化的な最低限度の生活を営むことさえ困難となっている生活保護利用者をさらに追い込む、生活保護利用者の生存権を脅かすものであって、憲法25条に違反するものと言わざるを得ないと厳しく断罪する会長声明を出しています。
しかし、監査人はこうした重大な問題点を脇に置いて、63条返還金が強制徴収公債権にできることを手引きに明記すべきだとし、強制徴収公債権とするのか、これまで通りの非強制徴収公債権とするのか区分が明確でないことを問題にしています。
生活保護は憲法25条の製造権を保障する最後のセーフティネットですから、その判断は機械的に行われるべきではありません。市として強制徴収公債権という非強制徴収公債権との区分どのように判断されるつもりでしょうか。
二つの徴収金を強制徴収公債金として扱い、差し押さえなどを行うには、資力がないとやる意味をなしません。そもそも生活保護費は差し押さえ禁止財産であり、最低限度の生活を送る生活保護利用者に資力はないと考えるのが普通ではありませんか。
また、監査人は、分割納付の金額が著しく少ない例があったとして、不当に少ないと問題にしています。そもそもこれは最低限度の生活に影響が出ないように極力配慮した結果ではありませんか。
また、上限を定めた手引きの基準に合わせるべきと監査人は言っていますが、生活保護利用者の生活実態にこそ合わせるべきではありませんか。
監査人は生活保護を廃止した債務のある元利用者に対して、資力調査を強化して法的措置すなわち差し押さえを検討すべきと指摘しています。
そもそも、就労などで生活保護を廃止したといっても派遣などの不安定就労が多いと聞きますが、安定した収入を得る状況にあるんでしょうか。以上の点についてお答えください。
(健康福祉局長)
令和4年度包括外部監査結果報告についてのうち生活保護に関するご質問にお答えいたします。
まず、生活保護法第63条に基づく返還金について、強制徴収公債権とするかの判断は機械的に行うべきではないと思うが、市としてどのように区分するつもりかについてです。
生活保護法第63条の返還金に係る債権を強制徴収公債権として徴収するか否かにつきましては、国の通知により当該債権を強制徴収公債権とする必要性の有無や、生活保護受給者等の申し出により、生活保護費から差し引くかどうかなどを勘案した上で実施機関である地方自治体において判断すること、また強制徴収公債権とする場合は最低限度の生活を維持するにあたって必要な程度の財産の徴収は行わないことをされております。
これを受け本市では法第63条の返還金につきましては生活保護受給者等と行政双方の負担軽減を図りつつ、より確実に徴収を行う観点から、生活保護受給者等との協議により一括で返還金を回収することが可能となる見込みがある場合などを除き、強制徴収公債権として徴収決定し、原則として生活保護受給者等からの申し出により返還可能な額を生活保護費から差し引く対応を行っております。
次に、そもそも生活保護費は差し押さえ禁止財産であり最低限度の生活を送る生活保護受給者に資力がないと考えるのが普通であるがどう思うかというご質問についてです。
生活保護受給中であっても、生活保護法第77条の2に基づく生活保護法第63条の返還金につきましては、土地等の売却手続きの完了や年金の支給開始といった資力が換金された場合など、また法第78条に基づく徴収金につきましては、申告していない就労収入や家族等からの仕送りがあった場合などにつきましては、返済可能な資力があると判断できる場合があると考えております。
次に、監査人は、分割納付の金額が著しく少ないことを問題にしているが、これは福祉事務所が生活保護受給者が最低限度の生活に影響が出ないよう配慮した結果であり分割納付の金額は生活実態に合わせるべきと思うがどうかについてです。
生活保護費返還金等について分割納付を認める場合の1回あたりの納付額については、これまでも債務者の生活実態や返済能力等を踏まえた金額を設定しているところでありまして、引き続き、最低限度の生活の維持に支障が生じないよう対応してまいります。
最後に、監査人は元生活保護受給者の資力調査を強化し、法的措置を検討すべきと指摘している。就労等で生活保護廃止になったからといって不安定な就労が多いと聞くが、そのような方々が安定した収入を得る状況にあるのかについてです。
就労によって最低生活費を上回る収入が継続的に見込まれる場合において生活保護の廃止を決定しておりますが、保護廃止後の収入状況についての把握はしておりません。
(近松議員)
2点ほど確認したいと思うんですけれども。一つは分割納付のことです。やはり金額が多くて返せないという声はやはりあります。ケースワーカーから返還期限が半年だと言われて、半年では短いと、やはり金額が大きくなるわけなんですよね。
先ほどから金額のことは言ってはいるんですが、期間を設定されて、そうするとおのずと金額が多くなってしまうような例があるということをお聞きしました。
ですから先ほど答弁されたように、利用者の生活実態をよく見て、そして利用者の意見等も聞きながら、分割納付を進めていくとおっしゃいました。そのことについてもう一度確認をしたいと思います。
(健康福祉局長)
先ほどご答弁申し上げた通り、分割納付する際の金額あるいはいつまでに納付していただくかっていうのは、ケースワーカーと、受給者の方とがご相談させていただいた上で決めさせていただいておりますので、そういう意味では無理のない範囲で返済していただくような対応というところでありまして、引き続きそうした対応進めていきたいと思っております。
(近松議員)
もう一つ、生活保護を廃止した実際のある元利用者の方の資力調査についてはしていないし、今後も資力調査をするというつもりはないというお考えでしょうか。そこをちょっとお聞かせください。
(健康福祉局長)
63条78条の返還金いずれも強制徴収公債権として法改正によって徴収できるような形になりました。これは資力があるにもかかわらず返還に応じないといったケースで強制徴収できるということでございますので、そういった少なくとも選択肢として法的措置を検討するにあたって、必要な資力調査というのは当然生活状況を見極めた上でということになりますけども、必要であれば資力調査というのは行政として行った上で対応してまいりたいと思っております。
(近松議員)
生活保護を廃止した元利用者の債務についてなんですけれども、そもそも日本には破産法というのがありまして、免責とか破産の手続きをすれば債務というのは免除されると。そして人生の再出発を促す、そういう法の趣旨のもとに執行されているものです。
それなのに、利用者の自立を促す生活保護法が、福祉事務所が過酷な取り立てを行って、そして人生の再出発を目指す人の足を引っ張るようなことがあってはならないと思っております。
監査人も日弁連に所属されているんですから、こうした今回の強制的な取り立てを容認するような生活保護法の改正について、やはり憲法25条を踏みにじるものだということをよくよく理解をして、自治体としても機械的な対応をされないように生活保護利用者の生活実態に合わせて運用していただきたいということを指摘しまして、今回の報告書の質疑とさせていただきます。
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