議会での質問・答弁

2022年03月10日

2022年第2回 2月定例会・予算特別委員会 総括質疑 中森辰一

中央図書館等の移転について
気候危機対策について

中央図書館等の移転について

(中森辰一委員)
 質問は三つです。7日の総務関係の質疑の続きということなんですけれども、3月5日付の中国新聞のオピニオン欄に広島市の中央図書館の移転問題に関わって文学の研究者の意見が掲載されておりました。ここでは、広島の原爆の被害を伝え広げるために、峠三吉の未公開原稿や原民喜の原稿や書簡が中央図書館に寄贈・寄託されたと、これらに触れることを通じて彼らの作品が読み継がれ、その言葉が広島からの文化をつくるのに生かされ得る、そのように考えてそうした文学資料を中央図書館に寄託を進めたはずなのに、貴重な資料が十分に整理されないままになっているというふうに告発をしておられます。関心のある人がいつでもそうした資料に触れられるように、デジタルアーカイブすることを含めて資料の意義を様々な角度から伝えられる場を設けることは、そのための人的組織を整えるところから構想されなければならないけれども、このことは中央図書館の将来像を議論する際の出発点に置かれるべきことだと指摘しておられます。あまり知られていないが、映像文化ライブラリーの全国的にも重要な日本映画のコレクションを含めて、広島の文化の創造にどう生かすことができるか、そのために施設がどうあるべきかを検討することが場所をめぐる議論より先にあるべきだと指摘をしておられます。峠三吉や原民喜が残した資料を寄贈・寄託するのに尽力したのは好村冨士彦という方だというふうにしておられますが、その好村さんが大田洋子や栗原貞子の作品にも触れて、被爆の記憶を引き受けることで表現の可能性を広げた文学が世界的な意義を帯びるようになったと論じているが、このような作品の力を市民の間で生かすことによって、現在続いている戦争などの暴力に抗し得る生存の文化を、被爆をはじめ、近代史の出来事が刻印されている広島の地からどのように創造するかと問題提起もしておられます。これはこれらの作品を生み出した被爆地広島が取り組まなければならないことだと指摘をしておられるんだと思います。こうした広島の文化を見据えた施設の在り方について、どれほど議論したのかと疑問を呈しておられるわけです。
 この方が指摘しておられるように、文化とは無縁の活性化、市が言うところのにぎわいに焦点を当てて移転か現地建て替えかが議論されているのは、確かに目先のことだけしか考えられていないように思われます。この記事は広島市当局のほうも見ていらっしゃると思いますけれども、どのように受け止められたでしょうか。

(生涯学習課長)
 委員が御紹介された新聞記事につきましては、事実と異なる点がありますので、まず、その点について正しい事実を説明させていただきます。
 新聞記事には、保全の会によれば、こうして中央図書館に送り届けられた貴重な資料は、十分整理されないまま収蔵されているというと記載されていますが、中央図書館に寄贈された原稿・草稿類、書簡類、写真等を含む貴重な文学資料は、図書館職員が著者、内容、作成された年代等を確認し、目録を作成した上で中性紙を使って包装し、湿度管理のできるキャビネット等で管理しております。また、新聞記事には、これらの資料は研究者はじめ関心がある人がいつでも閲覧できるようデジタルアーカイブ化を含めた整理を進め、資料の意義を様々な角度から伝えられる場を設けることは、そのための人的組織を整えるところから構想されなければならないと記載されていますが、中央図書館では、峠三吉、原民喜などの寄贈資料については既にデジタルアーカイブ化し、著作権上問題ないものについては広島市立図書館ホームページ上で幅広く公開をしております。さらに、図書館内には広島に関わりのある著名な文学者を対象に、貴重な文学関係資料を収集・保存・活用し、郷土文化の発展に寄与することを目的として、広島文学資料室を設置し、そこで峠三吉や原民喜などの資料を公開するなど関心のある人がいつでも閲覧できるようにしております。加えて、新聞記事には、好村氏たちは文学資料の中央図書館への寄託を進めてきたはずだと記載されていますが、寄託ではなく寄贈されておられます。このように、中央図書館に寄贈いただいた資料は丁寧に管理し、幅広く公開しており、新聞の記載には事実でない記載が多く含まれております。
 次に、委員が御質問の、文化とは無縁の活性化に焦点を当てて移転か現地建て替えかが議論されているのは、目先のことだけしか考えられていないように思われるという点についてお答えします。
 このたびの中央図書館等の再整備に対して、中央図書館が新たに担う役割として、広島らしさの情報発信という基本方針を示しております。これは平和文化の情報拠点として広島を知るエリアを設置することにより、広島の歴史、文化、産業等の広島らしさを学び、発信する機能を持たせようとするものであり、中央図書館の文化面にスポットを当てた機能だと思っております。そもそも文化と活性化とは無縁のものではなく、共存するものであり、お互いがお互いを高めるものだと理解しております。こうしたことから、記事の指摘は当たらないものと考えております。

(中森辰一委員)
 広島に、こうした広島の文学者たちが残したものを活用して、ぜひ文学館を造ってほしいという、そういう取組を随分長いことやっていらっしゃるということも聞いておりますけれども、そういう取組をずっと引き続いてやってこられた方たちが、やはり今回投稿された方以外に、今回、我々市議会のところにも意見を寄せていらっしゃるわけですよ。そういう方たちからこういう話を聞いたよということで今回投稿された方が書いていらっしゃるんだというふうに思うんですけれども、要するにそういう広島の文学のこととかこれをどう生かしていくかということを考えてこられた方々は、あなたが今説明をされたそういうことについて、まだよく知っていらっしゃらないという方、そういう方々ときちんと交流できていないのではないかなというふうにも、今、答弁を聞いて思ったところですけれども、こういう方々も含めてやはりしっかりと意見交換をしていくということが、この図書館問題を議論していく上で非常に大事なことではないかなというふうに思っています。
 二つ目の質問です。今回の商業ビルへの移転について、今も言いましたけれども、一体どれぐらい時間をかけて議論してきたのだろうか、検討してきたのだろうかというふうに思うわけですね。このこと自体、昨年の9月に広島駅南口開発から誘致の要請があって、その2か月後にはもう市議会でこういうふうにしましたというふうに報告をしているわけです。市の内部でとてもじっくり検討したようには見えないというふうに多くの意見もあったと思うんですけれども、市民が知ってからの期間もあまりにも短いというのが問題なのではなかろうかというふうにも思うわけです。この意見を投稿された方を含めて、やはりこの問題で真剣な議論をしてほしいと願っておられる方々にとって、こんなに早く決めてしまわずに、もう少し時間をかけてほしいということが大事な点ではないかなというふうに思います。民主主義というのはやはり時間がかかるわけです。その時間を惜しまないことがよりよいものに仕上げていくのに必要なことではないかなというふうにも思います。
 私は、広島駅を利用される市外の方々に、広島の歴史や原爆に関わる様々なことに触れていただけるようにするということ自体は非常に大事なことだというふうに思います。広島駅前に平和文化の発信場所を構えるということも異論があるわけではありません。広島駅前の商業ビルに図書館の機能があってはいけないと思いませんし、むしろ必要なことだろうなと、あっていいなというふうにも思います。交通の利便性が高い場所であるということは間違いないわけですからね。しかし、なぜそれが中央図書館、こども図書館でなければいけないのかというところにやはり論点があるわけです。総務関係の質疑でも提起をいたしましたけれども、中央図書館には広島市の中央図書館にふさわしい図書館の本来的な役割に関わって、市民の求めに応えて、もっと様々な役割を担ってもらう課題が社会の変遷に伴ってこれからも出てくるんではないかというふうに思います。それに応えられるような柔軟性を持った新しい図書館を考えていくということが、この120万人の市民を抱える国際平和文化都市の広島市には必要なのではないだろうかというふうに思います。
 総務関係の質疑でも提起をいたしましたが、中央図書館と八つの区図書館だけではないもっと身近な図書館網を構築する。今の小学校の各区の状況というのもありましたけれども、そういうふうなものをつくっていくということもやはり果たすべき、それをつくってそれを具体的に進めていくという点で、果たすべきセンター図書館としての役割というのももっと大きくなっていく必要があるんだというふうに思います。市民1人当たり年間僅か84円というお粗末な図書資料購入費という実態も、やはり大きく見直す必要があるんではないでしょうか。
 いずれにしても、私はにぎわいという言葉だけが非常に目につくんですけれども、政令市広島市の中央図書館を商業ビルに移転させようという今回の計画はやはり一旦立ち止まって、幅広く市民や専門家の意見もじっくりと聞いた上でどうあるべきかと、これから1年間だけでも議論を尽くしてみるべきではないかというふうに思います。そこからスタートしてもいいんではないかなというふうには思うんですが、どうでしょうか。

(生涯学習課長)
 中央図書館等の再整備に関しましては、平成23年度の広島市民球場跡地委員会の設置以来、時間をかけて丁寧に検討した結果、より効率的で効果的な手法として中央図書館、こども図書館及び映像文化ライブラリーを集約してエールエールA館に再整備することが最適であると考えたものです。今回の提案は、にぎわいのために中央図書館を広島駅周辺に移転することとしたものではなく、図書館本来の機能の向上や利用者の利便性を第一に考えたものでございます。こうした検討結果は、都市活性化対策特別委員会のほか、12月、2月の総務委員会でも説明し、市民意見募集も行いました。いろいろな意見があることは承知しておりますけれども、市としては、この中央図書館等の移転集約を、言わば集約化のトップランナーとして、中央公園内の公共施設の再配置の好事例としていきたいと考えております。

(中森辰一委員)
 今回、市が出された1億7000万円余りの予算というのは、たちまちは60億円という金額が妥当かどうかということを精査しようということと、それから基本的な設計をしていこうというそういう予算だというふうに思います。実際に具体的な工事に取りかかるというものではありません。そういう点でいうと、少なくとも1年間という時間の余裕はあるのではないかなというふうに思いますので、ぜひ、今回の予算が実際に通るかどうかというのはこれからですけれども、通ったにしてもそこら辺の様々な意見というのはこれから酌み取っていく、考え直すべきものは考え直していくというそういう姿勢がやはり必要なのではないかなというふうに思っています。
 もう一つ、これまで説明をいただいてよく分かりませんし、納得できていないことがありますので、ここで聞いておきたいと思います。この間、総務委員会でこの問題が議論された際に、エールエールA館のフロアを当面の数字ですけれども、60億円で買い取るということについて、賃貸では年間5億4000万円かかり、40年間では216億円かかることになるので買い取ることにしたというふうに答弁していました。この216億円の根拠は説明してもらっていないわけですけれども、これは福屋など明け渡してもらうテナントから今後40年間で得ることになっていたはずの賃料収入だと考えるのが普通だというふうに思います。一時的に60億円という資金が広島駅南口開発株式会社に入ることにはなります。しかし、市が買い取るとしますと、そこのフロアは福屋を含めたこれまでのテナントが明け渡さないといけないことになります。当然、テナントとの賃貸契約を解消したり見直したりすることになるわけですけれども、普通に考えると、また機械的に考えれば、その影響額は40年間で216億円であり、これから40年間に得る予定だったそれだけの収入を広島駅南口開発株式会社は失うことになるということではないかなというふうに思ったわけです。
 銀行などから借りていた借金額のうち60億円は即金で返すことができますので、その分の返済と40年間分の借入利息額は必要がなくなるわけですけれども、先日、担当課に確認しましたけれども、金融団に支払う金利は新しいスキームで引き下げられて0.8%だということでした。40年かけて返すことにしていたわけですから、単純に0.8%の金利を掛けますと60億円を40年間借り続けたとしても40年間の利息額は19億2000万円です。60億円と合わせますと79億2000万円ということになります。60億円とその利息分といっても216億円にはるかに及ばないわけですよ。広島駅南口開発株式会社について新たな経営資金計画の枠組みでは、市の貸付金の利息を10の1に引き下げて返済開始を40年先まで延期しました。金融団への返済完了期限も40年先まで延長した上に借入利息も大幅に引き下げました。金融団がそれを受け入れる条件として広島市が損失補償契約を結んで金融団がそれ以上損をしないような仕組みもつくりました。そういうぎりぎりの資金計画で経営を行っていく計画でしたけれども、その計画に大きな影響が及ぶことになるのではないかというふうに考えるのは自然なことだというふうに思います。先日の答弁は問題ないというふうなものだったと思いますけれども、具体的にどういうふうに問題ないのか御説明をいただきたい。

(広島駅周辺地区活性化担当課長)
 広島駅南口開発は中央図書館等が移転することになれば、当該フロアの売却額が一時的に収入となる一方で、賃貸面積は減少し、これまでよりも賃料収入は減少することから、収入及び賃料減額を想定して独自にシミュレーションを行っています。まず、中央図書館が移転する場合の年間賃料である5億4000万円、この金額全てが、委員がおっしゃる減少する金額ということだと思いますが、これにつきましては、広島駅南口開発が新たなテナントとして中央図書館等に1万3000平方メートルの床を賃貸する場合の賃料として算出し提示したものです。今回、広島駅南口開発が行ったシミュレーションでは、実態に合わせマイナス要素である賃料収入の減少額を年間5億4000万円を下回る額で試算しております。この下回る理由といたしましては、まず、広島駅南口開発は、福屋がエールエールA館の大半、地下1階から9階と11階を賃借することで、スケールメリットが生じており、一定額を減額しています。もう一つの理由として、広島駅南口開発以外の権利者との持分割合によって賃料は配分されており、賃料全額が広島駅南口開発の収入とはならないことによるものです。このため、委員から示された年間で5億4000万円、40年間で216億円の賃料収入を失うことにはならないと広島駅南口開発から聞いております。
 次に、シミュレーションを行う上でのプラスの要素として、売却額を既存借入金の繰上返済に充てることとしております。なお、この繰上返済後の具体的な返済額につきましては、今後の関係金融団との協議事項になりますが、現時点では返済期間を変更せずに昨年春の時点の資金スキームに基づく返済計画と比べ年間の返済額を圧縮する、そういった形で試算しております。
 こうした借入金額の返済額やこれに伴う利息分の圧縮に、所有フロアが減少することに伴う維持管理費や固定資産税などの管理コストや修繕積立てなどの投資コストの削減を合わせると、先ほどのマイナス要素を十分カバーできるとのシミュレーション結果となっていることから、広島駅南口開発の長期的・安定的な経営に差し障りが生じるものではないと同社から聞いております。

(中森辰一委員)
 1年前のことだったわけですけれども、あれだけいろいろ議論もして、議会としては市の提案を認めたわけですけれども、その枠組みがまた大きく変わるのではないかというのが今回のことだったというふうに思います。そういう点でいいますと、ただ単に大丈夫ですということではなくて、今おっしゃったことも含めて、やはり大丈夫な根拠というのはきちんと示さないと議会に対する責任を果たしたということには私はならないのではないかなと。これは図書館の論争とはまた別な話です。やはりきちんとやるべきだと思いますし、これから説明の資料ができるのであれば、ぜひお示しをいただきたいというふうに思いますので、その点はよろしくお願いします。

気候危機対策について

(中森辰一委員)
 次に行きます。もう一つの項目です。気候変動対策ということなんですが、これについては既に本会議でも一遍質問をしております。そういうことも踏まえて、少し質疑をしておきたいと思います。
 このことについては、広島市として既に実行計画をつくって取り組んでこられたわけですけれども、取組の結果、どういうところまで、今、到達しているんでしょうか。

(温暖化対策課長)
 市域における温室効果ガスの総排出量は、現時点における最新のデータである令和元年度の速報値では728万2000トンです。この値は広島市地球温暖化対策実行計画で基準としている平成25年度の排出量と比較すると、151万4000トンの削減で削減率は17.2%となっており、令和2年度に5%削減としている本市の短期目標に達しています。

(中森辰一委員)
 この前の本会議でも聞いたことですけれども、市内の企業に温暖化ガス削減の計画を立ててもらって、その報告も定期的に届いていると本会議では答弁をしておられました。この市内の企業の取組によってどれだけの成果が上がったのか、具体的に数字で教えていただきたい。

(温暖化対策課長)
 広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例では、一定規模以上の事業者に対し、事業活動環境計画書及び報告書等の提出を求めており、本条例の運用を通じて、事業者の温暖化対策を促しています。こうした取組の結果、本市域の事業活動における温室効果ガス排出量については、現時点における最新のデータである令和元年度の速報値で、製造業などの産業部門が平成25年度比で17.6%の削減、卸小売・サービス業などの民生業務部門が同年度比で24.7%の削減となっています。

(中森辰一委員)
 一定の期間をかけてやってきたわけですけれども、成果は上げているということだというふうに思います。
 来年度新たに実行計画を策定されるということなんですけれども、今週月曜日の国会の審議では、岸田首相が官民挙げて取り組む必要があるといったような答弁をしておられたと思います。行政と企業と市民個々にも協力を求めていく。全市を挙げて取り組むということが必要だというふうに思います。その上で、いろいろ取り組まなければいけない課題があると思いますけれども、実際上、カーボンゼロを進める上で、再生可能エネルギーへの切替えと断熱対策というのは効果の大きさからいってもやはり双璧をなすものではないかなというふうに思っています。
 そのうちのまず再生可能エネルギーについて伺います。日本では、経済生活のかなりの部分を輸入に頼っておりますので、為替相場の状況によって経済に大きな影響が及ぶというのが実態であります。今のようにひどい円安になりますとたちまち電気代が上がり、食料品の価格が高騰します。建築や工業製品も含めて原材料が上がって、製品価格が高騰するといった事態も発生いたします。今回のように資源を輸出している国が戦争を始めますと、国際的な取組もありましてその影響は極めて大きくなるということでもあります。その点で工業製品の原材料というのはなかなか難しいんですけれども、食料とかエネルギーというようなものは自前で確保できる可能性の大きい、こういうものは最大限自前で確保できるようにしていくということが必要なんだというふうに思います。
 今は全国ネットで電力の融通ができるようになっているようですけれども、地域でつくった電力を、ネットワークを構築して地域相互に活用し合うシステムというのも可能になっているというふうに思います。再生可能エネルギーで地域が地産地消の在り方に最大限取り組んでいくということを通じて、エネルギーのほとんどを輸入に頼っているという状況から自前のエネルギーで賄えるようになるという点で、よく最近言われますけれども、経済安全保障という観点からも大変重要なことではないかなというふうに思います。
 来年度策定する実行計画では、あらゆる確立した技術を投入して再生可能エネルギーへの転換を図る具体策を盛り込んでいく必要があるというふうに思いますが、市の考えをお伺いいたします。

(温暖化対策課長)
 これまでも本市では、市有施設への太陽光発電設備や木質バイオマスボイラーの導入に取り組むとともに、今年度からは太陽光発電システムなどによって発電された電気を充電し、自家消費に利用できる家庭用蓄電池への補助を実施するなど、再生可能エネルギーの普及促進に努めてきたところです。こうした中、昨年5月に地球温暖化対策の推進に関する法律が改正され、地方公共団体実行計画において、政令指定都市等は、地域の自然的社会的条件に応じた再生可能エネルギーの利用促進等の施策に関する事項に加え、新たに施策の実施に関する目標を定めることが必要になったところです。この法改正への対応を踏まえ、実行計画の改定に当たっては、再生可能エネルギーの最大限の導入に向けて検討を進めていきたいと考えています。

(中森辰一委員)
 最大限の取組をしていくということなんだと思いますが、都市部では先ほどもありました屋根や屋上を使った太陽光発電、こういう設備を広く普及していくことが重要だというふうに思いますが、現状で可能性に対してどの程度までこれは到達しているんでしょうか。

(温暖化対策課長)
 国が公表している再生可能エネルギーの固定価格買取制度、いわゆるFIT制度の本市域における太陽光発電設備の導入の実績等によると、令和2年度末時点において住宅用は累計2万2000件、約60メガワット、事業用は累計約3,000件、約111メガワットで、これらを合計すると約171メガワットとなり、一般家庭の年間の電力消費量に換算すると4万世帯を賄える発電容量となります。

(中森辰一委員)
 可能性、ポテンシャルというのはまだよく分からないというふうに理解していいんですか。

(温暖化対策課長)
 先ほどの御質問ですが、本市域におけるさらなる太陽光発電設備の導入可能性については、令和4年度に調査を行うこととしています。

(中森辰一委員)
 はい、分かりました。
 新しい計画もぜひ期待したいというふうに思っておりますけれども、今回の予算で蓄電システムの設置に補助金を出すことが盛り込まれておりますが、これを含めて太陽光発電システムの普及について、新規の建築物は当然なんですけれども、そうではない建築物も含めてその可能性を最大限追求していくということが必要だと思いますが、これはどのような取組を考えられているんでしょうか。

(温暖化対策課長)
 委員御指摘のとおり、本市では、再生可能エネルギーの導入を促進するため、令和3年度から、先ほど答弁しました家庭用蓄電池の設置への補助を開始したところです。本補助事業では、新築の住宅のみならず、既存の住宅に対しても補助の対象としています。また、令和4年度には広島県が太陽光発電設備や蓄電池の購入希望者を募り、まとめて発注することにより、スケールメリットを生かした割安な価格で購入することができる太陽光発電設備等共同購入事業を実施する予定であり、本市は広島県と連携してその事業の周知を行うことにより、普及を図っていきたいと考えています。

(中森辰一委員)
 様々なアイデアがこれからもまた出てくるんだろうというふうに思います。それから、広島市は本当に、先ほど地図が出ておりましたけれども、非常に市域が広いということで、当然森林区域も広いし中小の河川もたくさんあるわけですが、これは私のイメージで考えていることなんですけれども、現状で中国電力が水力発電プラントを設置して電力を生産しておりますけれども、地域で小河川、中規模もあると思いますが、そういうものを活用して小規模、中規模の水力発電施設をたくさん設置していくということも自前の電力開発の可能性としては大いに考えられることだというふうに思うんですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

(温暖化対策課長)
 水力発電は、発電時に二酸化炭素を排出しないことから、地球温暖化対策に有効な取組である一方で、水を利用するために水利権を取得する必要やそれに係る地域の合意形成、さらに日常的な維持管理作業が必要となるなどの課題があると考えています。今後、実行計画の改定に当たり実施することとしている再生可能エネルギーの導入に向けた調査の中で、小規模な水力発電設備の普及に向け、どのような施策が実施できるかについても慎重に検討をしていきたいと考えています。

(中森辰一委員)
 地域の実情ということが当然出てくるだろうというふうに思いますから、それも踏まえた取組ということを考えていかなくてはいけないというふうに思います。そのことも含めて、広島市にある様々な自然を生かしたその可能性を追求していくということが大事なことだろうというふうに思います。広島市の広い森林域をどう生かしていくかということも大事なことだと思うんです。森林をきちんと管理できていけば、間伐材などがたくさん出てくるようになるんだというふうに思います。岡山県内ではそうしたことを活用して幾つかのプラントも動いているようですけれども、広島市でもこれは可能性が大きいのではないかというふうに思います。先ほどバイオマスにも取り組んできたというふうにおっしゃいましたが、これからどのようにこういう方向について、この問題について取り組んでいくお考えでしょうか。

(森づくり担当課長)
 本市及び周辺地域における木質バイオマス発電のプラントにつきましては、安佐南区伴西において、太平電業株式会社が運営する西風新都バイオマス発電所や、安芸郡海田町において広島ガス株式会社と中国電力株式会社の共同出資会社である海田バイオマスパワー株式会社が運営する海田発電所など6か所で稼働しております。こうした状況の中、令和3年4月から本市域を管轄する3森林組合が中心となって、バイオマス発電の燃料として供給するため、年間約1万トンの間伐材を原料とする木質チップの生産が開始されているところです。森林組合によると、現状では発電所の需要には追いついていないとのことです。
 本市としましては、木質チップの需要はあると認識しておりますが、急激な増産は森林の荒廃にもつながりかねないことから、森林組合には、伐採後の植林など、適正な管理による森林保全とのバランスを考慮しながら対応するよう指導していきたいと考えております。

(中森辰一委員) これは健全な森林をずっと維持していくと、そういうことが当然前提になる話だというふうに思います。その点で無理やり作っていくということではないというふうに思うんですけれども、やはり現状でこれからどういうふうに森林での事業ということが本当にペイするものとして発展させていけるか、そことの関連の中で考えられていくかなというふうに思います。その可能性は大いに追求していただきたいというふうに思います。
 次に、もう一方の断熱対策なんですけれども、日本が一番遅れている分野だというふうに本会議で言ったんですが、それはやはり広島市でもまだまだこれからという状況だと思いますけれども、この点の認識はどうでしょうか。

(温暖化対策課長) 国土交通省の推計によると、既存住宅のうち、平成11年の省エネ基準を満たしているのは13%にとどまり、一方で断熱対策が全くないなど、初めて省エネ基準が設定された昭和55年基準を満たしていないものが29%存在するとされています。こうしたことから、本市としても、温室効果ガス排出量の削減に向けて、こうした住宅を含む建築物への断熱対策を進めていくことは重要であると認識しています。

(中森辰一委員) 重要であるというふうにおっしゃったんですが、これから考えていく温暖化対策の計画の上で、これをどの程度どういうふうに位置づけていくのかというのは非常に大事だと思いますが、その点についてはどうでしょうか。

(温暖化対策課長) 本市では、平成22年4月に施行した広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例における建築物環境配慮制度において、講ずべき措置の一つに断熱対策を掲げ、本制度を運用することにより建築物の断熱性能の向上を促しています。また、平成29年3月に策定した現行の広島市地球温暖化対策実行計画においても、革新的技術の大規模な導入の促進として、低炭素建築物の導入促進を位置づけ、様々な施策に取り組んできたところです。建築物の低炭素化・脱炭素化は重要な課題であることから、今後、関係部局とも連携し、改定後の実行計画においても、建築物における断熱対策等、環境性能の向上に資する施策について検討していきたいと考えています。

(中森辰一委員) 私が住んでいるところもそうなんですけれども、窓とかベランダとかのサッシはほとんどがアルミサッシになっているわけですし、防音対策で二重サッシになっているところもありますけれども、そういうところでもサッシだけはアルミというところが多いと思います。熱交換率の高いアルミサッシですから、あまり断熱効果が上がらないというのが実態だと思います。新築住宅でも高層建築でも壁には断熱材が入っているんですけれども、サッシのほうの断熱対策のほうはこれからというのが実態だろうと思います。断熱対策が十分に行われることで当面の再生可能エネルギーへの一定の切替えと同じくらいの大きな効果が上がるというふうに言われております。まず、戸建て住宅などですけれども、市内の建物の中でも一定の比率を占めているわけですから、新築住宅の場合でも、リフォームの場合でも最大限断熱対策をこれから講じていただくということが必要だというふうに思います。当然建築費は上がっていきます。そこは建て主の理解が必要になるわけですけれども、同時にそれを促進する施策も必要になってきます。この問題はやはり国が大きな力を発揮するということが必要になっているというふうに思います。その点で、今、政府も施策は打っているというふうに思いますけれども、実際、広島市内でどの程度実績があるんでしょうか。

(温暖化対策課長) 国が実施している既存住宅の断熱リフォーム支援補助金の利用実績について聞き取りを行ったところ、本市における利用実績は、令和2年度が11件、令和3年度、これは2月末時点ですが、3件となっています。

(中森辰一委員) 非常に少ないなというふうに思うわけですね。国にももっと予算を立てていただきたいというふうに思いますし、市としても、国と連携をしながら、これがどんどん進むような取組というのをぜひやっていただきたいなというふうに思います。2050年にはカーボンゼロを達成するというふうに市長は宣言していらっしゃいますけれども、まだ年数があるよということではなくて、着実にこの分野を前倒しぎみに進めていく必要があるのではないかなと思います。一定の年次目標を持って断熱住宅に転換していくということが必要なんではないかなというふうに思いますけれども、これから市としてどのような努力をしていくお考えでしょうか。

(温暖化対策課長) 本市では、現行の広島市地球温暖化対策実行計画において、住宅に関し、令和12年度に新築の戸建住宅のほぼ全てを断熱性能の優れたZEHにすること等を目標としています。令和4年度に改定する実行計画においても、引き続き、こうした省エネ性能の高い建築物についての目標を掲げ、その達成に向けた取組を進めていきたいと考えています。

(中森辰一委員) その点で、今回の予算で集合住宅についてはZEH-Mへの補助制度というものができたわけですけれども、その説明を見ますと、補助総額600万円と思いのほか少ないなというふうに思ったんですけれども、これはどういうことでしょうか。

(温暖化対策課長) ZEH-M(ゼッチ・マンション)建築補助において、令和5年度から7年度の債務負担行為の限度額として設定している600万円は、本制度の創設に当たり、集合住宅の建築事業者に対して実施した聞き取りの結果等を踏まえて設定したものです。

(中森辰一委員) 要するにまだまだ意識がそこまで追いついていないということだろうなというふうに思います。せっかく制度ができてもやはりこういうことではなかなかしんどい話だなというふうに思います。ここをどう変えていくかということが大事なことではないかなというふうに思うんです。これからどういうふうにしていったらいいというふうに、今、市としてはお考えなんでしょうか。

(温暖化対策課長) 先ほどお答えした国の既存住宅の断熱リフォーム支援補助金については、住宅の断熱改修を一層推進するため、現在、国において要件の緩和を検討していると聞いています。また、本市が令和4年度に創設するZEH-M(ゼッチ・マンション)建築補助については、募集に当たり広く周知を行い、制度の活用を促していきたいと考えています。脱炭素社会の構築に向けては、建築物の断熱対策は重要であると認識しており、今後も引き続き、省エネルギー性能の高い建築物の普及を促進していきたいと考えています。

(中森辰一委員) やはりこの問題は国が目標を掲げているわけですから、まずは国に責任があるというふうに思います。その上でやはり地域に住んでいる広島市民に対して意識をどう変えていくかということも大事なことで、この点は本当に広島市が頑張っていかなくてはいけない面かなというふうに思います。両方が連携しながらやっていかなくてはいけないというふうに思うんですけれども、世界では、当面、産業革命前よりも気温上昇を1.5度に抑えなければならないということで様々な目標が掲げられて、2050年にはカーボンゼロを目指すということになっております。我が国でも、この2050年のカーボンゼロというものを掲げているわけですけれども、残念ながらいまだ実現の見通しが立っていない技術を前提にしていたり、何よりも石炭火力を増やす計画さえ維持しているという、こういう状況では、なかなか大変だなというふうに思っています。この政府と同じ目標を掲げていることについて、さきの本会議では、目標が低いのではないかというふうな批判もいたしましたけれども、とにかくこの目標を早く達成をする、あるいは超過達成をするというふうに取組を推進していくことが必要であるというふうに思います。
 最近の研究では、プラス1.5度に抑制するということは、その時点までの温暖化の抑制であって元の状態に戻すということではないんだということなんですね。それまでに発生する様々な事態、海面の上昇であるとか、極めて強力な台風がますます出てくるとか、大規模な集中豪雨、こういうものはその後も続くということになります。それだけに、どの国でも掲げた目標を2050年を待たずに達成をしていくということがやはり将来の世代に対する責任ではないかというふうに思っています。ということで、これからも私どももまた勉強もしながらいろんな提案もできればやっていきたいなというふうに思っていますので、皆さんにはぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。今日はここまでにしておきたいと思います。

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