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・広島市平和推進基本条例案
・宮崎誠克議員の提案趣旨説明
・馬庭恭子議員の反対討論
条例案 広島市平和推進基本条例の制定について(PDF)
令和3年6月23日
広島市議会議長 山田春男様
提出者 広島市議会議員
宮崎誠克 碓氷芳雄 碓井法明 椋木太一 三宅正明 竹田康律 大野耕平 若林新三
広島市平和推進基本条例の制定について
地方自治法第112条及び広島市議会会議規則第13条第1項の規定に基づき、上記の議案を別紙のとおり提出する。
議員提出第5号議案 広島市平和推進基本条例の制定について広島市平和推進基本条例を次のように定める。
広島市平和推進基本条例
昭和20年8月6日、人類史上最初の原子爆弾が広島に投下され、広島の街は一瞬にして焦土と化し、壊滅、焼失した。当時、広島には35万人の人々がいたと考えられているが、同年末までに約14万人が死亡したと推計され、生き残った人々も、急性障害だけでなく、様々な形の後障害に苦しめられている。
さらに、被爆者に対する結婚・就職等での差別により、後に、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の適用を受けることが困難になるなどの被害もある。また、放射性物質を含んだ黒い雨による被害の議論は、いまだに続いている。
廃嘘の街となった広島は、 「75年間は草木も生えぬ」と言われたが、堪え難い悲しみと苦しみを乗り越えて復興に立ち上がり、広島平和記念都市建設法の制定を実現させ、市民の英知とたゆまぬ努力、国内外からの温かい援助などにより、めざましい復興・発展を遂げていった。
本市は、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」との思いから、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を願うヒロシマの心の共有を訴えてきた。さらに、国内外の多くの人々に、原子爆弾による被爆の実相に触れてもらうため、広島平和記念資料館や原爆ドームへの来訪を推進するとともに、放射線被ばく医療に対しても国際貢献をしてきた。
また、被爆者の壮絶な体験と平和への思いを後世に伝えるため、被爆体験の継承及び伝承を行ってきた。
しかしながら、被爆から75年が過ぎ、被爆者の高齢化が一段と進み、被爆体験を直接聞き知る機会が失われつつある。また、市民による平和の推進に関する活動の担い手が高齢化し、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を訴えることが難しくなってきている。今では、昭和20年8月6日に何が起こったか、知らない子どもたちもいる。
今日、核兵器の廃絶に向けては、核兵器禁止条約の発効など、世界的にその機運は高まっているものの、実現までにはいまだ多くの課題がある。私たち広島市民は、こうした現実を踏まえ、昭和20年8月6日の惨状と復興への道のりを伝え残し、世界に対して、行政を始め各界各層の多くの人々と共に「絶対悪」である核兵器を廃絶するために積極的に声を上げ、行動し、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に努めることを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、平和の推進に関し、本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに、本市の施策の基本となる事項を定めることにより、平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進し、もってヒロシマの心である核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「平和」とは、世界中の核兵器が廃絶され、かつ、戦争その他の武力紛争がない状態をいう。
(本市の責務)
第3条 本市は、平和の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(市議会の役割)
第4条 市議会は、本市の平和の推進に関する施策に関し、その機能を最大限に発揮するとともに、長崎市議会等と連携し、平和の推進に関する活動を行うものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、平和の推進に関する活動を行うよう努めるものとする。
(平和記念日)
第6条 本市は、人類史上最初の原子爆弾が投下された昭和20年8月6日を世界平和樹立への礎として永久に忘れてはならない日とし、原子爆弾による死没者を追悼するとともに世界恒久平和の実現を祈念するため、毎年8月6日を平和、記念日とする。
2 本市は、平和記念日に、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を、市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うものとする。
(平和の推進に関する施策)
第7条 本市は、平和の推進に関し、次に掲げる施策を策定し、及び実施するものとする。
(1)核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し、国内外の都市等との連携を図るための施策
(2)市民等が、原子爆弾による被爆の実相への理解を深めるとともに、平和について考え、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう、平和意識の醸成を図るための施策
(3)原子爆弾被爆者の体験及び平和への思い(以下この号において「被爆体験」という。)を世界に広め、かつ、これらを次世代に確実に伝え続けるよう、被爆体験の継承及び伝承を図るための施策
(4)前3号に掲げるもののほか、平和の推進を図るために必要な施策
(年次報告)
第8条 市長は、毎年、平和の推進に関する施策の実施状況を市議会に報告するとともに、これを公表するものとする。
(財政上の措置)
第9条 本市は、平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(委任規定)
第10条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 広島市役所事務休停日条例(昭和22年7月31日広島市条例第14号)は、廃止する。
提案理由
平和の推進に関する施策を総合的かっ継続的に推進し、もってヒロシマの心である核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に寄与するため、平和の推進に関し、本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに、本市の施策の基本となる事項を定める必要がある。
自由民主党・市民クラブの宮崎誠克でございます。
提出者を代表いたしまして、議員提出第5号議案 「広島市平和推進基本条例」の制定について、提案の趣旨をご説明させていただきます。
まず、この「広島市平和推進基本条例」は、令和元年7月から本年6月にかけて、本市議会で設置しました政策立案検討会議がまとめた素案を基に、市民の皆さんからいただいた 多くのご意見を踏まえ、提出会派等で再検討し、議案として提出したものでございます。
それでは、少し長くなりますが、説明させていただきます。
まず、条例の内容でございますが、前文から順にご説明いたします。
まず最初に、昭和20年8月6日の原子爆弾の投下による様々な被害等と今日までの復興の歩みを述べ、次に、本市が取り組んできた施策と、現状の問題や課題、最後に、平和の推進に関する取組を取り巻く現状や様々な課題を踏まえ、行政を始め各界各層の多くの人々と共に、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に向けて積極的に行動していくという 私たち市民の決意を述べております。
次に、第1条では、この条例の目的を規定しております。
平和の推進に関し、本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに、本市の施策の基本となる事項を定めることにより、平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進し、もってヒロシマの心である 核兵器の廃絶と世界恒欠平和の実現に寄与することが目的であることを定めるものであります。
第2条では、この条例の中で用いられる用語の定義について規定しております。
「この条例において『平和』とは、世界中の核兵器が廃絶され、かつ、戦争その他の武力紛争がない状態をいう。」としております。
第3条では、本市の責務として、「平和の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」としております。
第4条では、市議会の役割として、「市議会は、本市の平和の推進に関する施策に関し、その機能を最大限に発揮するとともに、長崎市議会等と連携し、平和の推進に関する活動を行うものとする。」としております。
第5条では、市民の役割として、「平和の推進に関する活動を行うよう努めるものとする。」としております。
第6条では、「平和記念日」に関して規定しています。この「平和記念日」に関する規定については、昭和22年に制定された「広島市役所事務休停日条例」において、「毎年8月6日は、本市の平和記念日として市役所事務を休停する。」と定めており、本市では、昭和22年から毎年8月6日を「平和記念日」としているところですが、この度、本市の平和の推進に関する施策の基本となる事項を総合的に定める本条例の制定に当たって、この「平和記念日」について、この条例の中に取り込むこととし、「平和記念日」の趣旨を明示した上で、この規定を設けるものであります。
内容としては、「本市は、人類史上最初の原子爆弾が投下された昭和20年8月6日を世界平和樹立への礎として永久に忘れてはならない日とし、原子爆弾による死没者を追悼するとともに世界恒久平和の実現を祈念するため、毎年8月6日を平和記念日とする。」としております。
第2項では、市に対し、平和記念日に行っている「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」について、「本市は、平和記念日に、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を、市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うものとする。」としております。
第7条では、市に対し、平和の推進に関する施策の策定及び実施の義務を課しております。施策としては、第1号で、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し、国内外の都市等との連携を図るための施策、第2号で、市民等が、原子爆弾による被爆の実相への理解を深めるとともに、平和について考え、平和の推進に関する活動を主体的に行うよう、平和意識の醸成を図るための施策、第3号で、原子爆弾被爆者の体験及び平和への思いを世界に広め、かつ、これらを次世代に確実に伝え続けるよう、被爆体験の継承及び伝承を図るための施策、第4号で、前3号に掲げるもののほか、平和の推進を図るために必要な施策と規定しております。
第8条では、執行機関を統括し、調整する役割を担う市長に対し、毎年、平和の推進に関する施策の実施状況を市議会に報告するとともに公表する義務を課しております。
第9条では、市に対し、平和の推進に関する施策を総合的かっ継続的に推進するため、必要な財政上の措置を講ずることの義務を課しております。
第10条では、この条例で定める事項を実施するための細目的な事項に関して定める必要がある場合に、それを市長に委ねることを定めております。
附則では、この条例の施行日を「公布の日」としております。
また、第6条のところで ご説明しましたように、「広島市役所事務休停日条例」については、この条例の制定により、その意義を失いますので、廃止することとしております。
条例の内容については、以上のとおりです。
次に、提案理由についてです。
条例の前文にもありますように、被爆から75年が過ぎ、被爆者の高齢化が一段と進み、被爆体験を直接聞き知る機会が失われつつあるという現状があり、これから年月が更に経過するにつれて、市民の中の被爆体験の風化と平和意識の低下・希薄化が危惧されております。
本市では、これまで、被爆都市として核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し、平和の推進に関する様々な施策を進めていくために、他都市に例のない規模の予算を毎年計上してきましたが、これらの施策の実施に係る法的な根拠として明文化されたものはありません。
こうした状況から、今後、平和の推進に関する施策やそのための予算が大幅に縮小、あるいは廃止される可能性もあると考えます。
今後いかなる状況になろうとも、被爆都市である本市は、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し、平和の推進に関する様々な施策を引き続き進めていくことが重要であると考えております。
こうしたことから、この条例では、提案理由にありますように、平和の推進に関する施策を総合的かっ継続的に推進し、もってヒロシマの心である核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に寄与するため、平和の推進に関し、本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに、本市の施策の基本となる事項を定めるものであります。
なお、この条例案に対しては、市民の皆さんから、第2条の平和の定義と第6条第2項の平和記念式典の実施について、多くのご意見をいただいておりますので、この点について 説明させていただきます。
まず、第2条の「平和」の定義が狭すぎるのではないかというご意見がありますが、「平和」については、人それぞれに様々な考え方がある中で、本市が、世界最初の被爆都市として、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指すに当たって、今後いかなる状況になろうとも必ず実施していく必要がある施策等の対象という観点から 絞り込み、その定義を明確にするものであり、その上で、この条例における「平和」の定義を、「世界中の核兵器が廃絶され、かつ、戦争その他の武力紛争がない状態をいう。」としております。
次に、第6条第2項の平和記念式典の実施に当たり、市に対して「市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うこと」を義務付けていることに対し、市民の表現の自由が制約されるおそれがあるのではないかというご意見についてです。
この条文は、平和記念日に行う重要な行事である平和記念式典の本来の在り方を示した上で、その実施を本市自らに義務付けるものです。
平和記念式典の在り方については、令和元年6月定例会において、「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式が厳粛の中で挙行されるよう協力を求める決議」を全会一致で可決しておりますが、この決議で示したとおり、平和記念式典は原子爆弾による死亡者を追悼するとともに、世界恒久平和の実現を祈念するための式典であり、そこに参列されている被爆者や死亡者の遺族をはじめ多くの市民の心情に配慮し、厳粛の中で行うことがその本来の在り方であると考えるため、条文の中は条文に厳粛の中で行うという表現を盛り込むこととしたものです。
一方で、平和祈念日に、平和式典の会場周辺において、国の平和に関する政策等に対して意見を表明することに意義があると考え平和活動をされている方々もおられます。本市が平和記念式典を厳粛の中で行うにあたっては、その方々の表現の自由も尊重する必要がありますので、規制といった強制的な手段によるものでなく、話し合いによる調整により、その方々に協調の必要性をご理解頂き、自らの意思で自主的にご協力を頂いた上で、厳粛の中で行う状況を作り上げていくことが重要であると考えます。
こうしたことから、条文に市民との理解と協力のもとにという表現を盛り込むこととしたものです。
そしてこの条文に基づいて平和記念式典を実施する市長においてはこの条文の趣旨を踏まえ適切な運用をして頂けるものと考えております。説明は以上のとおりです。この条例の制定等に対しまして、皆様のご賛同をよろしくお願い申し上げ、説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。
議員提出第5号議案広島市平和推進基本条例に対しての反対討論を行います。政策立案検討委員会作成の素案が議長に答申され、文言が一部修正されここに上程されました。
平和の推進・安心社会づくり対策特別委員会からの提案で、政策立案検討委員会が立ち上がって、ワーキンググループとして素案策定に携わった委員の方はそれぞれ職責を果たされたと思います。
さて、前文に、素案に入れられなかった核兵器禁止条約の発効の文言が入れられたとはいえ、私は未だ納得がいかないことが多々ありますので意見を述べます。
まずはじめに委員会の委員構成です。会派から1名ということでした。会派別の総人数に沿った按分で委員を選出すべきだったと思います。また、メンバーは女性議員は一人のみではなく、会派から女性を積極的に選出するべきでした。
二つ目に政策立案検討委員会の全会派一致で意見をまとめるという手続きが納得がいきません。多数決という民主主義の論理から外れています。
三つ目は、他都市の平和推進条例と比較したとき、憲法という言葉がなく基軸が見えません。
四つ目として、多くの市民が指摘していることですが、平和の定義が狭いこと。広島市基本構想の第6次計画「未来につなぐ国際平和文化都市広島の使命として、世界中の核兵器が廃絶され、戦争がない状態のもと、都市に住む人々が良好な環境で尊厳が保たれながら人間らしい生活を送っている状態」と平和を定義しています。私はこの平和の定義を再定義し、拡大すべきだと思います。
五つ目としては、被爆体験の継承及び伝承の必要性は謳っていますが、市民が求めていた被爆者援護や平和学習の日は触れられておらず、長年取り組んできた証しが書き込まれていません。
六つ目として、最も市民が関心を持ち、パブリックコメントにおいても意見が二分した「式典を市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うものとする」。これは行政法の有識者、弁護士会をはじめ被爆者団体も指摘していますが、表現の自由の規制根拠として機能しうることになるということに私は大変危惧をしています。平和を希求する条例が、人々の表現の自由を脅かしてはなりません。削除すべきです。
最後になりますが、たくさんの市民意見が寄せられたなか、もっと時間をかけて議論すべきと考えます。この6月議会にどうしても成立させなければならないという理由は見当たりません。以上です。
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