議会での質問・答弁

2020年10月27日

2020年第7回 10月臨時会 討論 近松さと子議員

 日本共産党市議団を代表して、令和元年度決算と議案に対する討論をおこないます。
 反対する議案は、
決算第1号 令和元年度広島市一般会計歳入歳出決算
決算第9号 令和元年度広島市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算
決算第10号 令和元年度広島市介護保険事業特別会計歳入歳出決算
決算第11号 令和元年度広島市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算
決算第12号 令和元年度広島市競輪事業特別会計歳入歳出決算
決算第16号 令和元年度広島市開発事業特別会計歳入歳出決算
 それ以外の決算と議案は賛成します。

 それでは、一括して反対する理由を述べます。
 安倍前首相が政権復帰以来最長の拡大が続いていると自慢していた景気も、2018年10月で終わり、実は後退局面に入っていたことを政府も認めました。後退局面のさなかの2019年10月に2度目の消費税10%への増税を強行した責任は、厳しく問われなければなりません。働く人の実質所得も家計消費も落ち込んでいることがわかっていた下での増税は、消費不況を一層深刻にし、市民の間に貧困と格差をますます広げることになりました。こうしたときこそ、市民のくらしと福祉を守る「公助」の出番です。ところが、広島市は、大型開発事業を優先し、市民のくらしは自助・共助を押し付けて「公助」は後回しにしました。
 その象徴が、疑惑にまみれた高速5号線二葉山トンネル工事費の増額です。広島高速道路公社と大林組などゼネコンは、一旦200億円でトンネル工事の契約をしたのに、ゼネコンが契約に内部工事が含まれていなかったと言い出したことが始まりでした。結局、市は第三者委員会に常識では考えられないゼネコンの主張を認めさせ、87億円の工事費を増額しました。それにとどまらず、さらに便乗して、連結道路分も復活して高速道路事業全体を347億円も大幅に増額してしまいました。議会としても広島高速道路公社の関係者から直に聴取することもせず、疑惑も晴れないままゼネコンいいなりの増額を許したことは大きな汚点であり、反省すべきです。
 一方、国から子ども・子育て支援臨時交付金が措置されて、国基準の保育料を軽減するため本市が単独で補助していた財源が、年額で約32億円浮くことがわかりました。令和元年度はその半分少なくとも約16億円以上と推定されますが、余ることになりました。このような自治体の独自財源について、国からも子ども施策のための活用が促されていたにも関わらず、とうとう何に使われたのかわかりません。急がれていた子どもの医療費補助制度の年齢拡大にも活用されませんでした。
 広島市が、2017(平成29)年に、小学5年生と中学2年生を対象にして、県と一緒に実施した生活実態調査によれば、四人に一人の世帯が、「生活困難」にあることがわかりました。経済的な理由で病院への受診がためらわれるという回答が現にありました。また、こうした世帯では、勉強への意欲や自己肯定感が低いという傾向が指摘されており、こうした状況を絶対に放置してはなりません。子どもの貧困をなくすことが迫られている今こそ、市長が言われる「公助」を行うことが市政の責任です。
 ところが、2月に公表された令和2年度からの財政運営方針では、歳出削減のとりくみとして、所得の低い家庭に給食費や学習教材費を補助してきた就学援助制度の「適正化」が盛り込まれました。子どもの貧困の解消が何よりも優先する政治課題になっているときにそれに逆行するような見直し案を提案することなど言語同断です。一体、「公助」はどこに行ったのでしょうか。
 この問いの答えが、決算特別委員会の総括質疑での当局の答弁にありました。驚いたことに、当局は、広島駅南口広場の再整備のような不要不急の大型開発事業が公助であると答えられたのです。広島駅南口広場の再整備といえば、広島市が広電の軌道を高架にするために橋げたの建設費用40億円全額を税金からだしてつくることが決まりました。これは、財政的な援助を行って広電を助けたといえますが、本当なら広電がやればいいことを広島市が肩代わりしたにすぎません。そもそも、自治体のやるべき仕事は住民福祉の向上です。そのために必要な道路や橋、安全施設などの基盤の整備は、行政の責任であり「公助」といえるでしょう。一方で、民間交通事業者の軌道を高架にすることは、本来、行政の責任でも義務でもありませんから、これを「公助」というのはおかしな話ではありませんか。
 このように「公助」の意味をまげて、もっぱらは、大型開発の推進に利用するようでは、子どもの貧困も解消できませんし、市民のくらしも守れません。新型コロナを乗り越えるためには、自己責任を押し付けあう社会ではなく、人々が連帯し、政治の役割である「公助」が発揮される社会が必要だといわれています。今一度、「公助」についての考え方を改められることを強くもとめます。

 次に、後期高齢者医療特別会計は、先週、75歳以上の後期高齢者医療制度の窓口負担の1割から2割への引き上げなど高齢者に痛みを強いる中身がまたしても検討されていると報じられました。令和元年度10月から、低所得者の保険料軽減措置を廃止する計画が着々と進められています。2~3倍の負担になる人も出ます。さらに75歳以上の窓口2割負担に道を開けば、高齢者の健康と命を脅かすことになりかねません。「後期医療」制度を廃止し元の老人保健制度に戻し、際限ない保険料アップの仕組みなどをなくすように国に求めるべきです。
 介護保険特別会計は、この20年間で保険料が2倍に跳ね上がる一方で介護サービスは切り下げられて、毎年、黒字がでています。保険者である広島市は、介護給付準備基金を設けて事業計画期間の間に見込まれる黒字を積み立てています。給付費が不足を生じた場合には取り崩しを行うなど安定した保険給付を提供するためですが、必要以上の基金残高を残すことは、介護サービスを利用するために預かった保険料の使途目的として適切ではありません。令和元年度は7億円の黒字を繰り入れ基金残高は52億円にのぼります。これを活用すれば保険料の大幅引き下げが可能となります。来年から始まる次の事業計画期間の保険料負担の軽減を図るためにこの基金を活用することをもとめます。

 国民健康保険特別会計は、保険料軽減のため行ってきた一般会計からの法定外繰り入れを1億5千万円削減する予算を組み、1.58%の引き上げを行いました。一方で、決算では、国からの予算が増えたことなどから一般会計の繰入金を法定外も含めて7億円も余らせました。本市の平均保険料は、政令市の中でも7番目に高く、高すぎて払えないと悲鳴が上がっています。県単位化前に行っていたように収納率の見込みを引き上げて、一般会計からの法定外繰り入れを充てて保険料を抑える努力をするべきです。

 競輪事業特別会計については、公営ギャンブルはもはや必要ないとの立場ですから、賛成できません。開発特別事業会計についても利益が出れば、市民のくらしや福祉を守るために使うことをもとめます。

 最後に、令和元年、広島市を訪れる観光入込客数は1427万人を記録し、そのうち外国人観光客は184万人と8年連続、いずれも過去最高を更新しました。口コミサイトによれば、外国人が日本で一番行ってみたいところは、これまでの1位だった京都の伏見稲荷大社を抑え、原爆資料館が1位に選ばれたと言います。多くの外国人観光客が、ヒロシマを訪れて被爆の実相を学びたいと資料館を選んでいることは、核兵器廃絶と世界恒久平和を発信してきた広島市にとって願ってもないことです。
 その期待に応えるためにも、迎える側は、被爆の痕跡を残す原爆ドーム・平和公園そして平和大通りを慰霊の場また戦後復興のシンボルとして守っていくことが必要です。ところが、平和大通りには、にぎわい施設を設ける商業化が計画されています。要望の多いトイレや照明などは市がつくればいいことですし、想定されているような飲食施設なら周辺にいくらでもあります。にぎわいづくりで、被爆の実相を伝える財産である平和大通りの価値が損なわれることがあってはなりません。

 以上のことを申し述べて討論を終わります。