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≫議員の発言のページ
【質問項目】
1.幼児教育・保育の無償化について
2.子育て支援施策の拡充を
・副食材料費の無償化
・子ども医療費補助の拡充
・学校給食の無償化
3.教職員の定数内臨採について
4.性的マイノリティの問題について
5.被爆地ヒロシマの役割について
【発言動画】
YouTube 広島市議会動画チャンネル 令和元年第3回広島市議会定例会
1.幼児教育・保育の無償化について
(きせ康平議員)
日本共産党のきせ康平です。会派を代表して一般質問を行います。議員となり初めての一般質問となります。よろしくお願いいたします。それでは質問に入ります。
10月から始まる幼児教育・保育の無償化についてお聞きいたします。
幼児教育・保育の無償化は保護者の方々が長年願ってきたことです。しかし、この度の制度は消費税増税を財源として行われます。消費税は逆進性が強く低所得者ほど負担が重くなる税であり、わが党はこの消費税増税分を財源にすることは反対です。代わりに、この間のアベノミクスにより優遇され大儲けしている大企業・富裕層の方々に応分の負担をしていただくなど、消費税増税ではない別の財源を充てるべきだと考えます。
また、この度の無償化は負担額の大きい0歳児から2歳児は含まれないなど様々な問題があります。
とりわけ、国の「指導監督基準」を満たさない認可外保育施設を対象にしたという問題です。こうした施設では、保育現場での死亡事故が認可保育園より26倍も高いことが国会で明らかにされています。「指導監督基準」では、保育士の配置は認可施設の3分の1でいいことになっていますが、それさえ満たさない施設があります。これらの施設は国が「排除すべき」だとしている施設です。このような施設まで対象になっていることは、国が給付金という税金を支出する形で、保育事故を起こしかねない施設にお墨付きを与えるものです。
さらに広島市は「無償の対象となるには市に届け出が必要であり、その際に立ち入り調査を行い指導していく」としています。しかし、今のままでは5年間は、市の指導に従わなくても、給付金の対象でありつづけることができます。少子化対策の名目で、広島市の子どもが、そのような存在してはならない施設に預けられることを 市が容認するようなことがあってはいけないと思います。
東京都江戸川区・杉並区では「指導監督基準」を満たさない施設を排除するためすでに条例を制定しています。待機児童数が市区町村の中で3番目に多い世田谷区では、2021年から条例にて基準未満の施設を対象外にします。その他にも和光市・朝霞市・千葉市など条例制定に取り掛かっている市区町村があります。
市が指導を強化しても、指導に従わない施設もありうる状況では、子どもたちの安全・保育の質が確保されているとは到底言えません。広島市でも指導監督基準を満たさない施設を対象から外す条例を制定すべきです。どうされるか市の考えをお聞きします。
(子ども未来局長)
本年6月議会において中森議員にご答弁しましたが、改めて答弁させていただきます。
指導監督基準を満たさない認可外保育施設であっても、当面は無償化の対象にするという国の方針については、本市としては、待機児童ゼロを目指す中で、認可外保育施設を利用せざるを得ない保護者の立場を重視しつつ、認可外保育施設の保育環境の改善を図っていくための絶好の機会にしていきたいと考えています。
こうしたことから、現時点で議員ご提案の条例の制定は考えていませんが、国において、改正法の施行から2年後をめどに、経過措置の見直しの検討が行われる予定であることや、本市の実施状況等を踏まえ、必要に応じて無償化の対象施設の基準の見直し等も検討したいと考えています。
2.子育て支援施策の拡充を
副食材料費の無償化
(きせ康平議員)
次に、子育て支援施策の拡充についてお聞きいたします。
6月議会では、国からの幼児教育・保育の無償化の財源により、広島市が独自に保育料を軽減していた財源が32億円浮くことが明らかになりました。国会では少子化対策担当大臣が「市町村が持ち出していた財源を用いて、子育て支援のさらなる充実に活用することが重要」と答弁しています。広島市でもこの32億円を活用し、子育て世帯の経済的負担を軽減させる対策を拡充させるべきです。
そこで3つの子育て支援対策を提案します。
まず、新たに保育園の副食材料費を市の全額負担にすることを求めます。
保育園での給食は「保育所保育指針」により食育として、保育の一環とされています。そのため保育に通常要する費用として副食材料費が公定価格に含まれてきました。この度の無償化でもこの「保育所保育指針」は何も変わっていません。しかし、国は副食材料費の目安は4,500円と説明し、副食材料費を3歳以上児の公定価格に含めないとしました。これは明らかに幼稚園に合わせたために制度を後退させるものです。
保育園、認定こども園の副食材料費を市が負担するとした場合、国基準の4500円で計算すると国の負担を除いて実際に市として必要な財源は、約6億6,000万円です。ですから新たに浮く32億円で十分対応できる金額です。新たな財源確保はなしで、保育所負担を増やすことなく、保護者の負担軽減が出来ます。
県の調べで県内は庄原市、府中市、三次市、安芸高田市、江田島市、神石高原町、大崎上島町、安芸太田町が無償化を行います。また、秋田県全体や東京都17市区町村等、全国でも100を超える自治体で副食材料費補助が広がっています。
そこでお聞きします。給食費は引き続き「保育の通常要する費用」であると考えられ、財源もあることから、副食材料費は保護者負担を無くし、市の全額負担とするべきです。市の考えを伺います。
(子ども未来局長)
本市としては、保育園等の副食材料費は、在宅で子育てを行う場合でも生じる費用であることから、低所得世帯や多子世帯の経済的負担の軽減については配慮しつつも、基本的には、幼児教育の無償化後においても、引き続き保護者に負担していただくべきものと考えています。
したがって、現在のところ、市独自でさらなる負担軽減を行うことは考えておりませんが、国による対応方針が大きく変わるような場合には、必要な対応を行ってまいります。
子ども医療費補助の拡充
(きせ康平議員)
つづいて、子ども医療費補助の拡大に充てることをもとめます。
子どもの医療費補助は2017年1月より現行制度が開始されました。通院は小学校3年生まで、入院は中学校3年生まで拡大されましたが、通院の方は新たな所得制限で1万7千人の世帯の負担が増えました。現在、所得によって初診料算定時500円の人と、未就学児は1回1000円、小学生は1回1500円が1医療機関月2回まで支払わなければならない人が生じています。
ここで、負担が増えた未就学児の子どもを持つご家庭の例をご紹介します。
アレルギー、皮膚炎、顔の裂傷、急な風邪により合計4機関7回の受診をされました。現行制度では風邪の再診しか無償とならず、1000円×6回の6000円の負担です。これが旧制度であれば3回分の自己負担で済み1500円です。こうした負担増もあり、子育て世帯の方々からは多少の風邪では通院はしないという声をお聞きします。この他にも「支払いの際に、ママ友が待合室にいて自分の所得が知られてしまい、その後の関係が気まずくなった」「県外から引っ越してきて、自己負担が高いのに驚いた」などと言った声も寄せられます。
そもそも、他の市区町村では行われていない新たな所得基準が設けられた理由は、財源を1億8千万円抑えたからです。ところが、2017年度2018年度予算は、ともに執行残を生じさせ、今年度の予算は24億円と前年から3億円も減額されております。昨年度から予算を3億円も削減するのであれば、新たに設けた一部負担金を区別する所得基準を廃止すべきだと考えますが、どのようにお考えですか。
(保健医療担当局長)
将来の広島を担う子供たちを支える「公助」を充実・強化していくために必要となる財源については、社会全体で広く薄く負担することが基本になると考えています。
このため、子ども医療費補助の一部負担金額を区分する所得基準は、経済的な理由によって必要な医療が受けられないことがないよう配慮した上で、受益層の中でも一定の所得を有する層に対し、所得に応じた最低限の負担を求め、全体として公平感が感じられるようにしつつ、世代等を超え、社会全体で負担を分かち合うようにするために設定したものです。
したがって、一部負担金を区分する所得基準を廃止することは考えていません。
(きせ康平議員)
先月、厚労省が「子ども医療費補助」についての調査結果を発表しました。2018年4月1日現在で高校卒業まで助成している市区町村は通院・入院どちらも3割を超え、中学校卒業まで助成しているところを合わせると、どちらもおよそ9割です。更に、所得制限がない市区町村が8割。通院時の自己負担が無い市区町村は6割です。しかし、広島市はどれにも含まれず、他の市区町村に比べて大きく遅れていることがわかります。また、県内で比べても1回の自己負担が500円を超える市町はなく、500円を4回徴収する市町も多いですが、平均受診回数が2回以内だということを考えれば、広島市の2回分の負担が大きいことがわかります。
政令市である広島市が県内外の市区町村より後退している現状は、市議会が決議した「他の自治体と比較してそん色のない制度」とは到底言えないのではありませんか。子ども医療費補助制度を拡充すべきですが、市はどのようにお考えでしょうかお答えください。
(保健医療担当局長)
本市は、子どもへの医療費助成制度は、幼児教育・保育の無償化と同様に、本来、国の責任において統一的に実施されるべきものであると考えており、指定都市市長会などを通じ、国に対して「子ども医療費助成に対する統一的な国の医療費助成制度を創設すること」を提案しています。
こうした中、本市の子ども医療費補助制度については、今後は、通院の補助対象年齢のさらなる引き上げが残された課題となりますが、国における全世代型の社会保障に向けた議論と本市の財源確保のあり方を念頭におきつつ、また、本市議会の付帯決議を踏まえつつ、本市の子育て施策全体のあり方を検討する中で、検討していく必要があると考えています。
(きせ康平議員)
また、現行制度で通院の補助範囲を中学3年生まで拡大するにはいくら必要でしょうか。
同様に、通院の補助範囲を中学3年生まで拡大した上で、一部負担金を区別する所得基準を撤廃し、自己負担を初診料算定時500円に戻した場合はいくら必要か、更に、同様に通院の補助範囲を中学3年生まで拡大した上で、所得制限と自己負担をなくした場合はいくら必要かお答えください。
(保健医療担当局長)
通院の補助対象年齢のさらなる引き上げを実施するために必要な経費については、既に対象年齢を拡大している他の政令指定都市に年齢ごとの医療費の実績額を問い合わせるとともに、本市の平成30年度の決算額を精査するなど試算の準備を進めているところであり、現時点ではお答えすることができません。
学校給食の無償化
(きせ康平議員)
学校給食の無償化をすすめるべきです。
憲法に義務教育は無償とすると明記されているにもかかわらず、日本の小中学校では、制服代や教材費、給食費、修学旅行費、PTA会費など様々な費用がかかります。「義務教育なのに保護者の教育費の負担が大きすぎる。子育てにお金がかかりすぎる」というのが多くの市民の実感ではないでしょうか。
義務教育の無償化については、1951年3月の国会で、当時、日本共産党岩間正男参院議員が「義務教育の無償というものをどの程度まで考えているのか」と追求したのに対し、当時の政府は「今はやむを得ず、授業料と教科書の一部だけは無料にするが、国力が付いたら教科書と学用品、学校給食費、さらには交通費等も無償にしたい」と答弁しています。しかし、それからおよそ70年、国力は充分ついていると思いますが、未だ実現がされていません。
中でも、子ども一人あたり年間4、5万円と保護者の負担の約6割を占める学校給食費の負担の軽減について早急に取り組むべきです。そもそも学校給食は教育の一環として行われているものを、学校給食法によって食材費は保護者負担としたために今も徴収され続けています。しかし、2018年時点で全国1,740自治体のうち76の自治体が独自の判断で、完全無償化や負担軽減に取り組み、年々、その自治体も増え続けています。
お聞きしますが、学校給食法のこの規定はどうしても徴収しなければならないという義務なのでしょうか。
(教育長)
学校給食の費用については、学校給食法において、原則となる負担区分が定められており、施設及び設備の整備費や人件費は学校設置者の負担、食材費は保護者の負担とされています。これは一般的に義務規定とは解されていません。
(きせ康平議員)
また、第3子の無償化から始めたとしてその予算は、あらたにいくら必要なのでしょうか。お答えください。
無償化を開始した自治体は、子育て支援、少子化対策、定住・転入の促進を目的としていますが、さらに、自治体・地域への感謝の気持ちを育てる、栄養バランスの良い食事の摂取や残食を減らす意識が向上し、給食費が未納、滞納であることに対する心理的負担が解消できるとされています。また、学校・教職員にとっても給食費の未納・滞納者への対応の負担解消など、児童生徒や保護者だけでなく、学校・教職員、自治体にとっても大きな成果があると政府も認めているところです。
こうした学校給食費の無償化を、是非国とともに本市でも実現させていくことを求めておきます。
(教育長)
給食費の年間総額は約42億円であり、第3子以降に係る給食費は、人口動態統計による本市の出生数に占める第3子以降の子どもの割合が過去15年間の平均で約15%であることから、この数字を単純に当てはめると、約6億円となります。
【再質問】
(きせ康平議員)
学校給食の無償化について、これに関しては行っていただくかどうかお聞きしていないので、財源が約6億円ということで、32億円使ってもできるようなところではございます。
ぜひとも第3子から、さらには第2子からでも行っていただきたいところではございますが、まずはこの約6億円という予算の中で、今後この無償化について行っていくかお聞きします。
(教育長)
先ほどご答弁申し上げたとおり、学校給食費総額は42億円ございます。第3子というのは正確に計算しておりませんけれども、先ほど単純に計算しますと約6億円ということであります。
申し上げたとおり、学校給食法で基本的な負担原則ということが定められております。禁止規定ではありませんけれども、和菓子においてはこの負担原則に乗っ取ってやっておりますし、さらに、保護者の経済的負担という意味で言うと、就学援助制度という形で、一定の所得より低い方に関しては給食費は全額支援しており、こういった形で子育て家庭の経済的負担の軽減をやっているところでございます。現在はそういった形で引き続きやりたいというふうに考えております。
(きせ康平議員)
子ども施策の拡充について、広島市で言えば32億円の財源があります。国はこうした財源を使って、幼保無償化と合わせて子どもの支援を充実するようにということも答弁しています。そうした中で今回三つ提案させていただきましたが、どれも国の言うとおりに行っていくとか、国が行うべきだというような言葉を使って、市では行わないと言われました。
国の制度を最優先にするのであれば、この32億円を国の言うように子どもたちのためにしっかりと全額使っていただきたいと思います。
(子ども未来局長)
32億円の取扱いということですので、私の方からまとめてご答弁申し上げます。もちろん、安心して子どもを産み育てることができる環境づくりというのは、重要な政策課題の一つであるとは認識しております。そのために公助を充実すると言った場合、その財源のあり方については経済的な理由によって必要なサービスが受けられないことがないように配慮するということは、必要であるにしても、その一方で受益を受けられる方には負担能力のある範囲で一定のご負担を頂いて、全体として公平感が感じられるような形の制度で、社会全体で負担を分かち合っていくということが基本であると考えています。
そうした前提のもとに、これも6月議会でもご答弁を申し上げましたが、今回の32億円の負担軽減分の取扱いにつきましては、市として裁量的に行うべき施策への充当分であるということを踏まえまして、健全な財政運営を目指す中で予算編成等の中で検討していくことになると考えております。
3.教職員の定数内臨採について
(きせ康平議員)
つづいて教職員の定数内臨採についてお聞きします。
本市の教員の定数内臨採は、今年の5月1日現在437名(9.5%)に上っています。臨時教員登録者を年度当初から、通常の担任を持つような教員として任用するため、急な病気休暇等で代員を探しても臨時教員が見つからない事態が生じてきました。そこでお聞きしますが、今年度4月からこれまで1か月以上代員が配置されなかった数と最長日数を教えてください。
(教育長)
今年度4月からこれまでの間で、病休等による代替教員を1か月以上配置できなかったのは小学校が6件、中学校が0件となっています。
また、配置されなかった期間の最長は、小学校が55日間、中学校が29日間となっています。
なお、代員が措置できていない期間については、主幹教諭等を学級担任として従事させることなどにより、授業に支障は出ていません。
(きせ康平議員)
現場では、専科や主幹の先生が入って、授業ができない事態を避ける努力が行われています。しかし、教員の負担が増え、限界に達しています。一刻も早く正規の先生を増やして、定数内臨採を基本的に解消していくことがもとめられています。
広島県は今年4月に策定された「公立学校教員採用候補者選考による中長期採用計画」で、「定数はできるだけ本務者の配置が望ましい」との基本方針のもとに5年間で小中学校及び特別支援学校の定数内臨採の率を2%下げ、その後も順次、臨時採用の教師を減らし本務者の教員を増やす計画を発表しました。
教職員の採用の権限が広島県から本市に委譲されて3年目になり、繰り返し定数内臨採を減らすと言われてきましたから、待ったなしです。本務者を増やすため、採用計画を作成するなど対応すべきと考えますが、市の考えをお聞かせください。
(教育長)
近年、大量退職等により臨時的任用教諭が増加しており、こうした単年度雇用を基本とする教員の増加は、学校における計画的な人員配置や人材育成などの取組を進めるうえで望ましい状況とは言えないことから、臨時的任用教諭を削減していく必要があると考えています。
しかしながら、今後の少子化や定年延長等を考慮すると、将来的に定員超過が生じないよう、正規教員に代替する臨時的任用教諭、すなわち定数内臨採を、一定程度配置する必要があるとも考えています。
こうした認識の下、少子化に伴う児童生徒数の減少、教員の年齢校正の平準化、国の定数改善の動向に考慮した上で、中・長期的な支店に立ちつつ、毎年度変動する、学区ごとの児童生徒数、中途退職者数、再任用希望者数などを踏まえ、毎年度、採用者数を決定しているところです。
今後とも、関係部局と連携を図りながら、定数内臨採の削減に向けて、適切に対応してまいります。
4.性的マイノリティの問題について
(きせ康平議員)
つづいて性的マイノリティの問題についてお聞きします。
性的マイノリティの人は、左利きの人の数ほどいるといわれ、男か女かという限定されたものではなく、多様な性のあり方があることを教えてくれます。その生き方を理解することを通して、誰もが個人として尊重される社会を築いていけるのだと思います。レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを総称したLGBTは、広く知られるようになりました。
新たに、性的指向と性自認を合わせたS・O・G・I「ソジ」という言葉を使用することが提唱されています。好きになる性・性的指向を表す「セクシャル・オリエンテーション」と体の性ではなく心の性・性自認を表す「ジェンダー・アイデンティティー」の頭文字をとった言葉です。この呼び方が、すべての人が持っている属性を対象としているので望ましいと広く使用されてきています。
今年、台湾では、アジアで初めてとなる同性婚を法律で認める制度が創設されました。日本も2011年国連の性的指向と性自認に基づく国連人権決議に賛成していますが、G7(先進主要国7か国)で、同性婚やそれに準じた制度を持たないのは、とうとう日本だけとなりました。そのため、日本の状況は、国際的な人権水準を満たしていないといわれています。
その一つとして、同性愛などの性的指向や性自認を本人の了解なく第三者に漏らす「アウティング行為」による被害が報告されています。2015年には、大学生が同性の友人に告白したところ、そのことが仲間の間に広まり、奇異な目で見られて、その後命を絶つという痛ましい事件がありました。私たちの社会が、あまりに無理解・無関心な状況にあるため、性的マイノリティの多くが、自らのセクシュアリティを隠して生きていかざるを得ないところに追い込んでいます。
共同通信社が、都道府県と政令市に調査を行ったところ、こうしたアウティング行為禁止を定めるマニュアルを作成する自治体は、少数であることが、7月14日の中国新聞に報じられました。残念ながら、本市もアウティング行為の防止の対策も研修もおこなっていない政令市6市の一つに数えられていました。
一方で、三重県では、「多様な性のあり方を知り、行動するため職員としての姿勢・行動」を6か条にまとめた職員ガイドラインを作成しています。第1条で、性のあり方は多様であり、ひとり一人の人権にかかわることである。多様な性的指向・性自認(SOGI)について正しい知識を身に着け理解を深めると明記しています。また、第3条には、カミングアウトや相談を受けた場合は、真摯に受け止める。アウティングは絶対しないことを強調しています。京都市や千葉市などの政令市でも同じような職員向けのハンドブックを作成しています。
そこでお聞きします。広島市の職員として、性のあり方をどのようにとらえ、性的指向・性自認SOGIについての知識を理解し、身に着けることの取り組みについてどのように考えておられますか。
(市長)
吉瀬議員からのご質問にお答えします。「性的マイノリティの問題について」のご質問がございました。
私は、「世界に誇れる『まち』広島」の実現を目指して、「平和への思いを共有するまち」づくりを掲げていますが、本市が目指すべき「平和」とは、世界中の核兵器が廃絶され、戦争のない状態の下、都市に住む人々が良好な環境で、尊厳が保たれながら人間らしい生活を送っている状態であると考えています。
本市は、この「平和都市」の実現に向け、すべての人々が、年齢、性別、人種、障害の有無などにとらわれず、互いに認め合い、多様性を尊重する人権尊重社会の形成に取り組んでいるところです。
性的マイノリティについても、このような考え方の下、偏見や差別が生じないよう、市民の関心や理解を深めるための人権教育や意識啓発を実施しているところですが、こうした取り組みを進めていく上で、本市職員が性的マイノリティに対する正しい知識を持ち、こうした方々を取り巻く様々な課題に対する感度を高めていくことが重要です。
このため、本市では、「階層別研修」や「公務員倫理研修」、啓発パンフレットの配布など様々な機会を通じ、職員の性的マイノリティについての理解の促進と人権意識の向上を図ってきたところです。
21世紀は「人権の正規」と呼ばれており、本市としても、性的マイノリティを含めたすべての人々の人権を尊重し、誰もが平和の尊さを実感できる豊かな文化と人間性を育む都市づくりに今後も努めてまいります。
その他のご質問については、関係局長から答弁いたします。
(きせ康平議員)
また、アウティング行為による被害と対策についてどのような認識かお尋ねいたします。
(市民局長)
議員ご指摘のアウティングは、性的マイノリティであることを本人の了承なく暴露し、当事者のプライバシーを著しく傷つける行為であり、全国で被害が報告されています。
こうした状況を踏まえ、本市職員がアウティングについて質しく認識するよう、性的マイノリティに関する職員研修や啓発活動の中で取り上げたところであり、今後ともアウティングの防止に努めていきたいと考えています。
(きせ康平議員)
体と心の性が違うため名前と外見から予想される性が異なる場合があります。そのために、役所の窓口で名前を呼ばれて、周囲から奇異な目で見られるため、窓口を訪ねることが怖いという当事者の声があるといいます。こうした性的マイノリティの市民への対応についてどのようにお考えかお聞きいたします。
(市民局長)
現在、本市の区役所の窓口等においては、受付番号や名字での呼び出しを行うなど、性的マイノリティの方に限らず、できるだけ市民のプライバシーに配慮するような対応を行っています。
今後も、職員研修などを通じて、性的マイノリティに対する職員の意識を高め、受付窓口などの各職場において市民のプライバシーに配慮した対応ができるよう、取り組んでまいります。
5.被爆地ヒロシマの役割について
(きせ康平議員)
つづいて被爆地ヒロシマの役割についてお聞きします。
2018年10月、文科省は1億8000万円をかけて、全国すべての小・中学校、多くの高校に1450万部の再改訂版「放射線副読本」を送付しました。小学生用は「放射線について学ぼう」 中高生用は「放射線について考えよう」となっています。
2011年の福島原発事故の直後にも初版の副読本が送付されましたが、原発事故に触れず、原発は安全、放射線は役に立つと強調した内容であったために、全国から撤回運動が巻き起こったといういきさつがあります。
この事態を受けて改訂されたのが今回の副読本ですが、やはり福島原発事故被害の実態に反し、放射線の危険について事実と科学に反する内容が記載されています。たとえば、100ミリシーベルトの放射線を受ける場合の発がんリスクは、野菜をとらない、塩分を取りすぎたときと同程度の発がんリスクだとしています。「食事による発がんリスク」と「放射線による発がんリスク」とを同列に扱い、放射線が安全であるかのような印象を植え付けるものです。
他にも、こんな記述があります。「事故がおきれば冷静に避難しなさい。事故による被曝は低線量なので心配ない。福島原発事故はチェルノブイリ原子力発電所の事故の7分の1だった」としていますが、放射性物質の排出量はフクシマの方がチェルノブイリの4.4倍に上ります。また、低線量を強調し、内部被曝の危険性を無視した記述といえます。
さらに、福島県民に実施した健康調査では172人に小児甲状腺がんが確認されているもかかわらず、「原発事故との因果関係は確認されていない」という政府の判断にそくして、副読本では「全員が健康に影響の及ぶ数値ではなかった」として、福島県下で子どもの甲状腺がんが多く見つかっていることには触れていません。
このような教材は、学校教育を使ってウソの「安全性」を子どもたちに教え込み、被害を小さく見せ、修学旅行等に福島に「来てもらう」という復興大臣主導の「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」の指示により行われたものです。
福島原発事故の被害者を切り捨て、事故に幕を引き、オリンピックまでに福島事故をなかったことにしようとする安倍内閣の「福島復興政策」そのものです。
東京電力福島第1原発事故から8年が過ぎましたが、今も8万5千人もの避難者が生業と故郷を奪われたままです。事故の原因究明もされないまま福島第二原発の全4基の廃炉が決定しました。福島第一原発では、いまでも溶け落ちた核燃料の冷却が続き、トリチウムなど高濃度の放射性物質を含む汚染水が発生し続けています。昨年7月に福島県沖で採った試験操業のヒラメから、自主規制値を越える放射性セシウム137が出て出荷がストップしたという事実がありながら国は汚染水を海へ放出するとしています。漁業関係者や地元住民から「海はごみ捨て場ではない。海は人、生物すべての共有の家であり、保護されるべきだ」と強い反対の声があがっています。汚染水対策に全く見通しがないだけでなく、解体による放射性廃棄物の処分地も見つかっていません。トイレなきマンションと呼ばれた使用済み核燃料の処分問題など、国の原子力政策の矛盾が廃炉でもあらわになっています。原発こそハイリスク・ハイコストであり、こんなにも深刻な事故は他に例を見ない異常なものであることを痛感するところです。
そこでお聞きいたします。広島市の各学校にも文科省から改定版の放射線副読本が送られてきていると思いますが、市は副読本の中身を精査されましたでしょうか。そしてどんな評価をされ、どのように利用されているのか伺います。
(教育長)
お尋ねの副読本については、文部科学省が作成したものであり、教育委員会が、その中身を精査し、評価することなく直接、文部科学省から各学校へ配布されたものです。
こうしたこともあって、教育委員会として利用状況につて把握はしていません。
(きせ康平議員)
また、再改訂版放射線副読本は、誤った知識を教える情報操作であり、学校教育への不当な介入ではないでしょうか 市の認識をお尋ねいたします。
黒い雨の降雨地域の拡大を国に求めている広島市は、内部被爆が人体に及ぼす影響があることを訴えてきた被爆自治体です。低線量被爆の危険性を軽視し、科学に反する内容を子どもたちに副読本として配布せよと求める国に対し、被爆地広島市は抗議すべきではないでしょうか。
滋賀県野洲市では東京電力福島第一原発事故の被災者への配慮がなく、放射線が安全との印象をうける記述が多いとの理由から教育委員会が改定副読本を回収しています。
被爆地の自治体として、再改訂版放射線副読本を回収するとともに、文科省に副読本の撤回を求めるべきではありませんか。国への抗議も含めて、市の対応をお尋ねいたします。
未来を担う子どもたちにとって、エネルギー問題や地球温暖化防止は深刻な課題です。温暖化の深刻さ、省エネ、再生可能エネルギーなど、エネルギーに対する全体を知らせること、伝えることが必要です。
福島事故の実態と放射線の危険性、子どもたちの人権を守るような内容で、子どもたち自身で考えることのできる「副読本」にすることが求められます。国に作り直しを求めるべきではありませんか。市の見解を尋ねします。
(教育長)
当該副読本の内容を確認したところ、「児童生徒が放射線に関する科学的な知識を身に付け、理解を深めることができるようにすること」、「避難児童生徒に対するいじめを防止すること」などを意図し、公表されている科学的知見を基に、学校現場の代表者や放射線医療の専門家などの協力を得ながら、文部科学省において作成されたものとなっており、ご指摘のようなことはあたらないと考えています。
(きせ康平議員)
最後に核兵器廃絶へ向けた取り組みについてお聞きします。
被爆地ヒロシマには核兵器禁止条約の批准を日本政府に求める責任があります。今年の平和宣言で市長がようやく、「唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかり受け止めていただきたい」と「核兵器禁止条約への署名・批准」を日本政府に求められたことは、被爆者を始め核兵器廃絶を求める全世界の市民社会を大きく励ます宣言になったと感じています。
核兵器が初めて人類の頭上で使用されて以来、被爆者による命がけの被爆実相を語り広げる活動や、被爆者を先頭に、署名をはじめとした多くの人々の長年の努力の結果、人類の生存のためには「核兵器は廃絶すべき」との声が広がり、核兵器禁止条約の採択へと実りました。現在、核兵器禁止条約に署名した国は70か国、批准した国は26か国となり、禁止条約が発効する50か国の半分を超えました。来年2020年は被爆75年の年です。2020年はNPT再検討会議に合わせて、初めてニューヨークで原水爆禁止世界大会も開かれます。
「命あるうちに核兵器が廃絶される日を見たい」というヒバクシャの願いを実現させるため、今年から来年が、核兵器禁止条約を発効させ核兵器廃絶の歴史的転機の年とするために、今一度 被爆自治体として市民社会に核兵器廃絶を積極的に働きかけようではありませんか。
その意味から二つ提案をします。
まず、これまでにも求めてきましたが、国連での核兵器禁止条約の採択を祝い、一日も早い条約発効を願うたれ幕を、資料館をはじめとして庁舎や区役所などにかかげてはいかがでしょうか。
(市民局長)
本市としては、核兵器禁止条約の内容や発効には50か国の批准が必要であることを含めた今後の流れなどを市民に周知することに重点を置くこととしており、これらを説明したチラシを作成し、平和記念資料館や各区役所、公民館等の施設に配布するとともに、市のホームページにも同様の情報を掲載し、周知に努めています。
平和記念資料館では、観覧した方の多くが集まる東館1階の情報コーナーにおいて、世界各国の批准状況や発効までに必要な50か国までの残りの国数などを世界地図を用いてわかりやすく伝える展示を行っているところです。
今後とも、こうした市民の条約に対する理解を深めるための取組に注力していきたいと考えており、垂れ幕の設置は考えていません。
(きせ康平議員)
つづいて、ヒバクシャ国際署名の取り組みについてです。
現在 広島市は平和首長会議の長として各区役所などで「核兵器禁止条約の早期締結を求める署名」コーナーを設けて、署名活動に取り組まれていますが、兵庫県西宮市では、核兵器廃絶国際署名(ヒバクシャ国際署名)を広げるために、折りたたむと「受取人払い封筒」になる署名用紙を市民に配布して署名を広げる取り組みを実施されています。
被爆地ヒロシマとしても、一筆でも多くの署名を集めようと知恵や工夫をされている自治体の取り組みに学び広島市でも実施されてはいかかですか。お考えをお聴きして私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
(市民局長)
本市では、平和首長会議として、「核兵器禁止条約の早期締結を求める署名」に取り組むこととし、その推進に力を入れており、同じ目的のヒバクシャ国際署名については、その支援に徹することとしています。
具体的には、同署名のウェブサイト及びパンフレットへの市長メッセージ提供や本市が作成する核兵器禁止条約の啓発チラシにおける紹介、また、国内外の平和首長会議加盟自治体への賛同依頼文書の送付や加盟都市に毎月送付しているメールマガジンでの紹介などを行っているところであり、今後とも、ヒバクシャ国際署名の主催者のニーズをお聞きしながら支援に努めたいと考えています。