議会での質問・答弁

2018年08月28日

2018年第3回 8月臨時会 議案討論 中森辰一議員

 日本共産党広島市会議員団を代表して、本臨時市議会に提出された議案、このたびの豪雨災害への対応に関わる、補正予算案3件と専決処分の承認案3件、平成30年度広島市一般会計補正予算第3号、同じく水道事業会計補正予算第2号、及び下水道事業会計補正予算第2号、平成30年度広島市一般会計補正予算第2号と、同じく水道事業会計補正予算第1号、及び下水道事業会計補正予算第1号のそれぞれ専決処分の承認について、について討論を行います。いずれも広島市行政全体の問題として、一括して意見を付して賛成とします。

 今回の、専決処分も含めた補正予算は、広島市行政として被災市民の救援の取り組み、今後の復興のあり方に関わるものですから、広島市の災害対応への取り組みがどうであったか、どうあるべきかということについて、意見を申し上げます。

 7月に、大規模な災害が発生して、またしても、たくさんの命が失われ、大勢の市民が家を失い、あるいは市民に対して、住宅再建と生活の再建に多大な負担を強い、あるいは今後の暮らしの先行きに大きな不安を生じさせることになったことを、行政はどのように受け止めているか、どのように責任を感じているか、ということが、いま深刻に問われています。つまり、そのことが、今回、被災された市民への当座の救援活動のあり方に反映しますし、今後の地域の復興と、生活再建、生業の再建をどう支援するか、行政がどうかかわっていくかに反映します。

 広島市では、19年前の6月29日、4年前の8月20日と、最近では、2度も集中豪雨による大規模な土石流災害が発生しました。これらの災害を教訓に、国や県が防災対策に力を尽くしてきたかとなると、そうなってはいませんでした。県も国も砂防予算や河川対策予算を急速に減らしてきたのが実態で、そのために防災事業が遅れていて、県議会の答弁では土砂災害危険箇所対策の完了までに200年かかると平然と述べています。そういう対策ができていないところで、また災害が発生したわけです。広島市行政が、こうした防災事業の遅れに対して、国・県に早急な推進を厳しく要求してきたということは聞いたことはありません。その点で、広島市行政にも今回の災害発生には大きな責任があったと言わねばなりません。

さらに言えば、民有林対策を含めて、急傾斜地崩壊対策をやる必要がある箇所が、あと7割も残されているのに、地元負担があるので住民から対策の要望があるところしか、対策工事をしないという姿勢では、いつまでたっても対策は終了しません。危険箇所があるところに対して、行政として、積極的に対策工事を提起し、地元負担はできるだけ軽減するあるいは免除する制度を創設するなどの努力が必要です。

 3度も豪雨による災害を経験した広島市は、もう、想定を超えていたという言い訳はできません。今度こそ思い切った防災対策を進める、これを厳しく国・県に要求する立場に立たなければなりません。もちろん、広島市がやるべきことは早急に取り組まねばなりません。
 そのような、市民に対して責任を負った行政が十分に行われてきたわけではない中で、今回の災害が発生したのだということを認識したうえで、被災した市民に対する救援活動でも今後の復興活動でも、被災者に寄り添う立場で取り組むことが求められています。

 救援活動という点では、避難所での食事の問題ひとつとっても、4年前の災害の到達点が生かされず、方や「乾パン」が3日間も続く、方や初日から弁当が出されると、区によって避難所の食事の内容に大きな差がありました。他の自治体に比べて広島市が先進的にやった、と報道されていた宅地内の土砂撤去についても、4年前の到達が生かされず、道路の土砂撤去のついでにやりたいと言っていたのが当初の状況でした。それどころか、末端の方では、宅地内の土砂撤去はできないという対応もありました。
 それに対して、日本共産党市議団が、4回にわたる要望書を出す中で、実態を示し対応を統一するよう改善を求めましたし、土砂撤去については4年前と同じ対応を求めました。

 日本共産党市議団は、災害の発生に当たって、改めて災害救助法とその施行令を読み、広島市行政の対応では、法が活かされていないことを、痛切に感じました。災害救助法をきちんと読めば、避難所での食事は温かい食事を提供する必要があるし、プライバシーが守られ、きちんと眠ることができる設備の提供が求められることが分かります。早急な生活再建のために、宅地内の土砂・がれきは行政が迅速に撤去するよう取り組む必要があります。災害救助法に則って取り組む立場に立つなら、行政の責任は道路などの公共施設だけではないことが分かるはずです。その点で、先ほどなされた答弁は極めて不十分です。

 19年前に続いて4年前にも大規模豪雨災害に見舞われた広島市では、少なくとも4年前の対応がどうだったのか、すべての職員が土砂災害防止法及び施行令を学び、災害の際にどういう対応をすべきか、日ごろから確認しておく必要があったのです。突然の災害に遭い、前の日までの暮らしとは打って変わった事態の中で、肉体的にも精神的にも打ちひしがれている状態の被災市民に、いかに寄り添った対応をすべきか、できるかを、日ごろからよく話し合っておく必要があったのです。それが、きちんとなされていなかったということです。大規模災害の可能性は今回で終わりではありません。このことは、今後、職員研修のプログラムに入れるなど、きちんと取り組んでいただくよう求めます。

 今回のような災害への対応の際によく、国の支援が、財源がということが行政の現場からも出てきます。しかし、私は、災害への対応は、財源の問題ではないと思います。市の行政は、市民の暮らしの安全と安定に責任を負わねばなりません。地方行政の災害対応に国が最大限の財政的支援を行うのは当然ですが、そういうことを国が決めてくれる前でも、市長の判断で、いかに安心の避難生活を保障するか、いかに迅速な生活再建を図るか、地域復興を進めるか、という立場で、被災地、被災市民の一人一人の実態に即した対応を進めていくべきです。

 仮に、国の支援が得られない状況があっても、被災地、被災者への対応が何よりも優先するはずです。今年度計画していた建設計画を後年度にずらしてでも、やる必要があるのが災害対応だということを、そういう覚悟が求められるのだ、ということを広島市行政として、よく考えて下さるよう求めておきます。そういう実践から、国の法整備も行われていくわけです。何よりも被災者優先という考え方が行政にも議会にも求められています。

 災害発生から2カ月近くになるのに、未だに土砂・ガレキの撤去が終わらないところが残されているのは被災者の生活再建にとって重大な障害です。行政の手が届かないから、待ちきれずに被災者がみずから業者に頼んで土砂などの撤去をしている例がたくさんありますが、このことは、業者がいないわけではないということです。行政が、これまでの枠にとらわれて、あらゆる手を打つということになっていないからではないのでしょうか。市内の業者が足りないとするなら、それこそ自衛隊の手を積極的に借りるということがあるでしょうし、全国の業者に目を広げて、積極的な被災地での業務活動を要請するなどの決断も必要ではないかと考えます。最初から無理だと考えずに、柔軟に知恵を絞るという姿勢が求められるところです。

 国がやると言っているのに、いまだに支援の枠組みさえできていないのが、民地内の土砂撤去の事後清算です。国が金を出すと言うが、あとから査定されるかもしれないから、国が基準を出してから市の基準を決める、ということになっています。国が出すと言っているのですから、さっさと市の方で制度の枠組みをつくって申請を受け付け、それに基づいて国と交渉する、そういう姿勢が求められています。これは、早急に取り組むべきです。

 最後に、日本共産党の仁比聡平参議院議員が、8月2日の参議院災害対策特別委員会で、災害救助法と最近の全国の災害対応での到達点に基き、現場の実態や被災者の声を受けて質問を行ったことに対して、政府が答弁し確認したことを6点指摘しておきます。この度の災害対応については、国も柔軟に対応しようとしていることがわかります。このことをよく吟味して、被災者への対応を行われるよう求めます。

① 二次災害の懸念があり、公益上支障となる場合は、自治体が民有地内の土砂を直接撤去可能である。環境省の災害等廃棄物処理事業と国交省の堆積土砂排除事業、公共施設の災害復旧事業は契約事業者を分けず一体で土砂等を撤去し、事後的に費用を各事業で案分できる。

② 環境省の災害等廃棄物処理事業費補助金による自治体のがれき撤去経費の被災者負担は必要ない。所有者が業者に依頼して撤去した場合も、市町村の事業として整理すれば補助対象となり、事後償還も可能である。

③ ②については、空き家のがれき、屋内の床下を埋めた土砂の撤去についても、被災市町村が生活環境保全上実施した場合は補助対象である。

④ ②については、全壊・半壊・床上浸水・床下浸水などの住家の被害状況、災害救助法の適用のいかんにかかわらず補助対象となる。

⑤ 持ち家に直接の被害はないが、二次災害で住宅が被害を受ける恐れや、ライフラインの途絶、地滑りなどで避難指示を受けている場合など、長期に自宅に住めない被災者も仮設住宅に入居可能である。

⑥ 商工業者への直接支援について、グループ補助金による設備復旧支援や持続化補助金による小規模事業者の販路開拓支援への要望も踏まえ、速やかに必要な支援措置を実現できるよう取り組む。

 以上の6点を、国会で、政府がはっきり言明しています。
例えば、床下浸水の場合は、現状で行政の支援は何もないように見えますが、昔と違って、今の住宅は床が低くて、しかもフローリングの場合は、床をはがさなければ床下に入った泥を取り除くことはできません。この作業と元に戻すのには大変なお金がかかります。この場合の、少なくともフローリングをはがして土砂を撤去するところまでは、国の補助を受けて市町村の事業として整理すれば、行政が床下の土砂撤去をすることができるし、業者が実施した場合は、その費用を事後清算で出すことができることが考えられます。政府がやると約束していることをしっかり踏まえて、いかに被災者の負担を軽くできるか、知恵をしぼることができる行政でありたいものです。

 以上、いろいろ申し上げましたが、被災者の救援と生活再建支援のために、必要なことを述べたつもりです。広島市行政として、取り組んでいただくよう強く要請して討論を終わります。