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2008年9月19日 本会議 中森辰一議員の一般質問

保育行政について
  「質の高い保育」を行うことについて
  市民から集めた財源を未来を担う子どもたちのために
  再質問:私立保育園の労働条件を公立と同等に、市として最大限の努力をつくすことについて
学校施設の整備について
  再質問:手立てがないときには、クーラーを設置する判断をされるお考えがあるのか
後期高齢者医療制度
高速道路問題
  再質問:高速道路公社の対応について
青年・学生対策について
  青年の雇用問題などについて
  「高い学費」の問題について
  再質問:授業料減免制度の前向きな改善を

(中森辰一議員)
日本共産党広島市会議員団を代表して、一般質問を行います。

 サブプライムローン問題に端を発して、名だたる大企業が大きな損失を抱えただけでなく、世界的な大手証券会社が次々と破たんして世界経済に新たな深刻な影響を及ぼしつつあります。国内では、とりわけ国民の安全にかかわる食品偽装が後を絶たず、今回の汚染米の不正転売問題は、大きな広がりを見せ、重大な事態を招いています。まさに、新自由主義が腐り果てた資本主義の姿をさらし始めています。

 その新自由主義の社会を、わが国で徹底しようという構造改革政治の保育分野への影響の表れが公立保育園の民営化であり、あとで触れる保育の直接契約などへの転換は構造改革政治の保育への具体化であります。

保育行政について

 まず保育行政について質問します。
 市長は、6月議会の答弁で「もっとも重要なことは、公私にかかわらず、市内のすべての保育園で『質の高い保育』を子どもたちに提供する」ことである、とのお考えを表明されました。
 しかし、財政が厳しいから保育園も「効率化」が必要であるとも述べられました。「効率化」というのは「コストダウン」ということです。

「質の高い保育」を行うことについて

 「質の高い保育」とはどういうものでしょうか。
 「保育の質」とは、保育者の援助によって繰り広げられる、人間として成長するための「学び」である遊び、保育者が子どもと心を通わせながらその発達に関われているか、父母とともに子どもを育てる関係をどのようにつくれているか、保育者として子どもの権利をどう代弁できているか、そうしたことの水準のことであります。

 「質の高い保育」というのは、そうした保育の要素を高い水準で実践できる「専門性」と使命感をもって保育の業務を行おうとすることではありませんか。保育の現場ではそうした立場、姿勢で保育が行われることが必要であり、そうした保育を実施する最も重要な条件が現場の保育士たちの労働条件であります。

 我が国の保育条件は、最低基準からして、世界の水準から立ち遅れています。世界の先進国の学校教育では20人学級が当然の前提となっています。ましてや、幼児30人をまとめて1人の保育士が保育する先進国はなく、どこでも10人以下であります。
 少なくとも、他の先進国と比べて手薄な体制で豊かな保育実践を行おうとすると、それだけで高い専門性とそれを支える力量が求められます。

 保育者の「専門性」を支えるのは、保育内容についての確かな知識と、乳幼児の心理特性を理解し、その後のよりよい発達のためにどういう働きかけが必要かを整理して子どもたちに具体化する能力であり、保育者は子どもたちの人間性全般に大きな影響力を及ぼすことになるので、幅広い教養と豊かな人間性も重要であります。

 さらに、子どもたちの権利の代弁性という点も大変重要であります。
 広島市はいま、子どもの権利条例の制定に向けて力を入れて取り組んでいますが、乳幼児が直接大人たちに言葉で意見を言えるわけではありません。泣いたり怒ったりといった表現で自らの状況を訴え、求めるものを表します。あるいは、悲しい表情をしたり、ふさぎこんだり、友達に暴力をふるったり、時には自らを傷つけたりして、自分の思いを表現します。

 そうした子どもたちの表現をよく見て、子供が何を訴えているかをより的確に汲み取る力が、教員もですが保育者にも求められます。
 そうした能力を、学校で獲得した力を基礎として、具体的な実践を積み重ねる中で研鑽を重ねて高めていく。そのようにして専門性を獲得していくのであります。
 そうした専門性を獲得する重要な条件が保育士たちの労働条件であります。

 一方、児童福祉法第1条では、子どもたちの「心身ともに健やかに育てられ、等しく生活を保障され、愛護され」る権利と、それを保障するべき私たちの社会の義務を謳っています。第2条と第24条では、国と地方行政の保育への責任を規定しています。
 子どもにはケアされないままで放置されることなく、「等しくその生活を保障され、愛護され」る権利があります。その権利を具体的に実現する保育は、「国及び地方公共団体」の責任に基づいて市町村が実施する「公務」であります。それを担う保育者の労働は公立であろうが私立であろうが「公務労働」であります。

 当然、公私にかかわらず、保育士の賃金は、この「公務労働」と先ほど述べた専門性にふさわしく、等しく十分なものでなければなりません。
 ところが、国基準の保育士の人件費は、短大卒数年の格付けで、勤務年数に関係なく固定されたものになっています。これは、年数をかけた継続的な研鑽によって獲得され、維持される保育士の専門性を否定するものです。

 公立の保育士の場合、自治体の職員としての賃金が支払われ、国基準との不足分を自治体が超過負担しているので大きな矛盾は起きませんが、私立保育園の場合はそうした財源がないために、固定した国基準による低い賃金しか保障されません。
 少なくとも継続的な研鑽と、専門性の獲得と維持を保障するための、働き続けられる条件があり、家庭を築き、高額の教育費の中で子育てもできるといった一般的な社会生活を保障し、高い使命感に応えるだけの条件があるのが公立保育園の保育士であります。

 こうした公立保育園の保育士と同等の労働条件を、私立保育園の保育士にも保障できるような財政的な手立てをとってこそ、広島で「質の高い」保育を行うことができます。
 以上に述べたことについて、市長のお考えをお聞かせいただきます。私の議論にかみ合った答弁をお願いします。

(市長)
 質の高い保育を提供することについて、私から基本的な考え方を述べさせていただきます。
 保育園において質の高い保育を行うためには、議員ご指摘のとおり保育士の専門性は重要な要素の1つであり、本年3月に改定された新たな「保育所保育指針」においても、保育士はその専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならないとされています。

 加えて、質の高い保育の提供は、保育士個人の技量のみに頼るものではなく、
(1) 1人ひとりの保育士が保育園の保育方針や目標について共通認識を持ち、それに基づき組織的及び計画的に保育を行うといった取組や、
(2) 保育士及び保育園が日々の保育実践を自己評価し、保育を見直すという保育改善の取組が必要です。
 さらに、外部からの評価や今日的な課題を踏まえた体系的・計画的な研修の実施も必要であると考えています。

 本市では、このような認識のもと、自己評価制度の推進、第三者評価制度の導入、研修内容や研修体制の充実・強化等により、保育の質のより一層の向上に取り組んでいきたいと考えており、私立保育園においても同様な取組が行えるような環境整備を行うことが、行政の役割であると考えています。

 このため、本市では、私立保育園に対し保育所保育指針に定められた保育を行うための経費や、保育士の専門性を高めるための研修への参加などの経費として、国の基準による運営費を支出するとともに、本市単独で助成を行っています。
 今後、私立保育園のさらなる質の向上を図るためには、質の高い人材の安定的な確保が課題となっていることから、職員の処遇向上のための助成制度等の拡充について現在検討を行っています。

 保育園の果たすべき目的・役割は公立と私立とで違いはありません。最も重要なことは、公私に関わらず、市内のすべての保育園で質の高い保育を子どもたちに提供できる体制を整備することであり、そのために必要な予算は責任を持って確保していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 また、6月の厚生委員会で指摘しましたが、私立保育園では、低い国基準の人件費も、一定部分は建て替えのための積み立てにまわるなど、経営上、全額保育士などの人件費にまわすわけにはいかず、さらに低い賃金にならざるを得ない状況になっていることを、市長は認識しておられますか。
 老朽化した公立保育園の建て替えを民間移管で引き受けた法人にやってもらおうとのお考えですが、この考え方は、私立保育園の、本来は人件費に充てられる資金を当てにするものです。この点についてどのようにお考えか、併せてお答えいただきます。

(こども未来局長)
 本市は、私立保育園に対して、国が定める基準に基づき、保育の実施のための費用として人件費、管理費及び事業費の区分により運営費を支払っています。
 この運営費は、適切な児童処遇や職員配置等、施設運営が適切に確保されていることを条件に、人件費、管理費又は事業費のほか、長期的に安定した施設経営を確保するための積立金や施設整備等の経費に充てることが、認められています。

 私立保育園が施設を建て替える場合には、こうした長期的な経営上の見通しの中で積み立てられた資金や、施設整備における国や本市の補助金、福祉医療機構からの借入金、さらには施設関係者の寄付金などを建て替えの資金に充てています。
 こうしたことから、民間移管にあたり、施設の建て替えが早期に生じる場合には、児童や職員の処遇等保育園の適正な運営に支障が生じないよう、建て替え時の資金計画についても審査対象とし、移管先法人の選定を行っていきたいと考えています。


(中森辰一議員)
 以上のことから、市長が6月議会で述べられた、「質の高い保育を子どもたちに提供するために、必要な予算を責任をもって確保する」とのお考えを実行するためには、効率化の名で公立保育園を民間移管するのではなく、厳しい財政状況ではあっても、私立保育園に適切な財政支援を行うことこそやるべきことであります。このことについて、市長のお考えを改めてお聞かせいただきます。

 また市長は、6月議会の答弁の後段で、民間移管は保育サービスを一層充実することを目的としている、と述べられまし。
 労働時間の長時間化など、社会の労働環境の変化に対応する保育サービスの充実は、就労と子育てとの両立を支援するために必要なことであります。しかしこれは、親たちにとっての利便性の拡大ではあっても、保育の質を高めることではありません。
 この点についての広島市の考え方を確認します。答弁を求めます。

(こども未来局長)
 社会経済情勢の変化や働き方の多様化、地域のつながりの弱体化などに伴い、通常の保育に加えて、延長保育、休日保育、病児・病後児保育等、多様な保育サービスの充実が求められています。
 そうした中で、例えば、延長保育の実施にあたっては、保護者の利便性の向上だけでなく、長時間保育により子どもが疲れることがないように、家庭的でゆったりとくつろげる環境や保育士の丁寧な関わりなど、子どもの生活への十分な配慮が必要であると考えています。
 このように、多様な保育サービスの実施にあたっては、保護者のニーズと子どもの福祉の両方のバランスを取りながら進めていくべきものと認識しています。


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市民から集めた財源を未来を担う子どもたちのために

(中森辰一議員)
 次に、財源の問題で、データの出し方が違うので比較できない1、2の都市がありますが、他の政令市と比較した3つの指標を紹介します。
 平成18年度決算で、保育所入所児童1人当たりの施設運営費のうちの広島市の負担額は、65万8000円余りで、京都市を除く16政令市の中で下から4番目、最高のさいたま市とは25万3000円の差があり、平均よりも7万4000円少なくなっています。

 公立だけでみたらどうでしょうか。京都、北九州市を除く15政令市のうちで下から3番目、最高の大阪市より60万4000円少なく、平均よりも24万9000円少なくなっています。
 私立だけではどうでしょうか。北九州市を除く16政令市のうちで下から3番目、最高の横浜市より38万8000円少なく、平均よりも12万8000円少ない。これが実態です。

 保育にどれだけ税金を使っているかをみると、どの指標をみても広島市は最も少ないグループに属していて、平均と比べても開きがあります。
 平均より少ない、広島市の児童1人あたり7万4000円は年間で15億円に相当します。市は、よく「他の政令市の動向を見て」と言いますが、20の公立保育園を民間移管して「10年後に8億円の財源を浮かす」と言う前に、少なくとも他の政令市並みに15億円の財源を保育行政に上乗せするべきであります。そうすれば、民間移管しなくても市がお考えの保育サービスの充実は十分に可能であります。

 問題は、市民から集めた財源をどのように配分するかの考え方であります。
 6月議会で財政局長が「都市の活力を高めるためにも財源がいる」と答弁されました。都市の活力も大切ですが、かつて片山鳥取県知事が教育費を増やしたときの考え方に倣って、未来を担う子どもたちのためにより優先的に財源を配分すると、そういう考え方に変えることが必要です。
 この点についてお考えを伺います。

(財政局長)
 議員御指摘の未来を担う子どもたちのための取組は、本市の最重要課題の1つであると認識しています。
 また、平和の推進、都市の活力や魅力の向上、地球温暖化・エネルギー対策などの行政課題は、いずれも将来に向けての取組であり、広い意味では未来を担う子供たちのための取組だと考えています。
 今後も厳しい財政状況が続くと思われますが、未来を担う子供たちのことも考えつつ、施策のバランスをみながら、市民ニーズに的確に対応できるよう、限られた財源を効果的に配分していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 次に、政府の社会保障審議会少子化対策特別部会が、今年の5月20日に「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方」(以下「考え方」と呼ぶことにしますが)、というものを発表しました。

 この新たな「考え方」は、「次世代育成支援」と言いながら、次世代育成についての国の支出を限りなく減らすことが意図され、保育の分野では「新しい保育メカニズム」という言葉で、行政が保育の実施に直接責任を負わず、保護者が「保育」という市場で「保育サービス」を購入するという直接契約の仕組みに、いまの保育所のしくみをつくり変えるというものであります。
 行政の役割は「保育サービス」事業者の紹介や保護者が負担する費用を直接補助するだけになり、「保育サービス」の必要度を数値化し、補助を行うサービスの量に上限を設ける、つまり介護保険制度と同様の仕組みにしようというものです。
 保育所は独立採算にならざるをえず、保育所運営への行政の補助はなくなっていきます。これでは、親の支払い能力によって子どもたちが受けられる保育が左右されることになり、いま議論している「保育の質」どころではなくなります。

 この「基本的考え方」という文書の中で、「保育の必要度が高い子どもの利用が損なわれないように対策が必要」だと、自ら表明していることでも問題は明らかです。こんなことになれば、生活困窮による育児放棄といった新たな虐待の問題も引き起こされかねません。
 他方で、地方分権改革の論議の中で、保育施設や保育士などの人員体制の最低基準の廃止が取りざたされています。最低基準の廃止は、保育分野に営利企業の参入を促進する手段でもあります。

 このような方向は、介護保険制度が陥った事態を保育でも引き起こすことになります。保育士の労働条件の議論をしていますが、いっそう人件費の削減が進むことになり、希望と意欲を失って職場を離れる保育士が増えて保育の担い手に悩むことになるのではありませんか。
 少なくとも「保育の質」を高める必要があるとのお考えが広島市にあるなら、政府のこうした動きは、子育て支援を進め、子どもたちの豊かな発達を保障しようという取り組みを台無しにするものとして、容認するわけにはいかないのではないでしょうか。

 広島市として、他の自治体の議論をもリードする立場で、政府に対して、このような方向は認められない、と大きな声をあげるべきではないかと考えますが、どうされるかお考えをお聞かせいただきます。

(こども未来局長)
 国の社会保障審議会少子化対策特別部会は、本年5月、「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的な考え方」をとりまとめましたが、その中では、保育サービスの量的拡大や質の向上、財源・費用負担のあり方、さらには直接契約など保育サービスの提供の仕組みについての検討が掲げられています。
 また、国の地方分権改革推進委員会は、本年5月の第1次勧告において、保育所等の福祉施設について、施設基準や職員配置基準の全国一律の最低基準という位置づけを見直し、第2次勧告において結論を得るとしています。

 この第1次勧告に先立ち、本年2月、本市は他の政令指定都市と共同して、「第二期地方分権改革に関する指定都市の意見(第2次提言)」を提出し、国における児童福祉施設の設備及び運営の基準の設定範囲は、ナショナルミニマムとして必要な、子どもの人権、安全等に直接関わる基本的な事項に限定し、その他の事業については、各指定都市の実情に応じた設定を可能にすべきであるなどの提案を行いました。さらに、現在、第2次勧告に向けた政令指定都市の意見(第3次勧告)を提出する準備を進めています。

 今後も、子育て支援や地方分権改革に関する国の動向を注視しながら、他の政令指定都市と共同し、国に対して必要な働きかけを行っていきたいと考えています。

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---中森議員 再質問(大要) -------------------
 保育の問題ですが、市長がお述べになったことは大変大事なことだと思います。そのためにも、民間保育園の労働条件などを公立保育園に近づけるために、思い切った財政的な手当てが必要だと申し上げたわけです。
 質問ですが、この私立保育園の労働条件を公立と同等に近づけていく、そのために市として最大限の努力をつくしていく、ということについてどのようにお考えなのか、もう1度お答え願います。

 それから先ほどの答弁を聞きますと、民間に公立保育園を移管する。その移管対象は結局、今の答弁によれば、建て替えを十分にできるだけの資力を持った法人にお願いするようなことをおっしゃったのかなと思うわけです。そうしますと、資力のあるところが優秀な法人かということにもなっていくのかと思いますし、そのあたりが移管先の考え方としてどうなのかということがまず1つあります。
 それから、この間の市の民間移管の方針、最近出された資料も含めてその資料から計算しますと、国基準の運営費と広島市が上乗せしている運営費、それが人件費という名目で出されたものと総額との比率で行きますと、人件費の名目で出されたのは確か8割ぐらいあったと思うのですよ。しかし実際には、人件費率8割という民間保育園は、おそらくないだろうと思うんですね。

 結局、これはやはり国が国基準の中で手立てを取らない中で、法人の努力で建て替えをしていくことにならざるを得ない、ということになっているからだと思うわけです。そういうことを考えても、やはり建て替えを民間に依存をしていくという考え方はどうも違和感があるんです。
 そのあたりをもう1度、発想自体がおかしいと思いますので、その点についてお答えしていただきます。

(こども未来局長)
 2点お答えします。1点目は私立保育園の人件費を公立のほうに近づけることの意味ということでございました。先ほど市長が答弁いたしましたように、質の高い人材の安定的な確保が課題となっているということで、職員の処遇向上のための助成制度の確立について現在検討を行っておるところでございまして、現在検討中ということでございます。

 次に、建て替え資本力のあるところが移管の対象となるのかということでございますが、それだけではございません。全体の運営する能力を評価して、決定することになると思います。先ほど申しました弾力化といいますか、繰り入れができる、これはあくまで適切な児童処遇や職員配置等、適切に行っておることが条件になっておりまして、もちろんそこはやっていただいておるというところでございます。

(中森辰一議員)
 それから、質問の中でかつての片山鳥取県知事の取り組みを言いましたが、この道路よりも子供が先だというふうに判断をされたこの政策判断について、どのように受け止められていますか。この3点についてお答えをお願いいたします。

(財政局長)
 片山知事の財源配分の評価ということでございますが、評価する立場ではございませんが、いずれにしても施策、バランスを見ながら、そういう判断をされたものと受け止めております。

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学校施設の整備について

(中森辰一議員)
 次は、教育条件の整備の問題について伺います。
 広島市の学校現場では、ずいぶん以前から教室などの暑さが問題になり、授業を受ける環境ではなくなっており、クーラーを設置してほしいと強く要望されてきました。

 現場の声を聞くと、授業参観のときに、教室が暑すぎるために保護者が教室に入ろうとしなかったということもあったようです。大人である保護者たちが教室に入ろうとしないほどの暑さの中で、子どもたちが汗びっしょりになりながら授業を受けている状況を、私たちは想像できなければなりません。これではまるで虐待です。
 はたしてこういう状況で、まともに授業になるのか疑問であります。
 今日、学校での授業は過密になる一方ですが、年々暑さを増す教室の中で十分集中できないような環境では、教育行政の役割が問われます。2学期制以降、夏休み返上で登校を促すようなことになっているだけに、その責任は一層大きいと考えます。

 既に京都市では全公立学校の教室にクーラーが設置され、さいたま市も昨年と今年で設置しました。東京では杉並区を除く22区で設置されています。国は昨年、普通教室へのクーラー設置への助成制度をつくり、千葉県浦安市、兵庫県宝塚市など次々と設置を始めています。子どもたちの学習環境を整える教育行政の責任として、普通教室へのクーラー設置が流れになりつつあるということではありませんか。

 質問ですが、
1.今年、教育委員会は教室の暑さがどうなっているかの調査を行っています。まだ、調査の途中だということですが、8月までの状況について簡単に説明していただきます。また、教育委員会としてどのように受け止めたのかも、お聞かせ下さい。

(教育長)
 教育委員会では、今年度、学校の暑さの実態を把握するため、全小・中学校において児童生徒が加わって、7月に2回、8月に1回、9月に1回、10月に1回の計5回にわたり、各1週間、小・中学校の普通教室の温度調査を実施することにしています。
 調査方法は、測定時刻を午前10時、正午、午後2時の3回に分けて、校舎内の最も室温が高いと思われる教室と最も低いと思われる教室の2教室の温度を測定しています。

 これまで集計を終えた8月までの3回分の測定結果を、測定を行った2教室の平均温度でみますと、第1回目となる7月7日(月)から11日(金)に測定した結果は、小・中学校全校平均で30.3℃となっています。また、文部科学省が定めている「学校環境衛生の基準」で夏季の教室の温度として望ましいとされている30℃以下という基準を超えている学校は、測定した131校(65.2%)でした。

 次に、第2回目となる7月22日(火)から7月25日(金)に測定した結果は、小・中学校全校平均で32.2℃となっており、測定した全小・中学校の92.4%で平均温度が30℃を超えていました。
 そして、第3回目となる8月25日(月)から29日(金)に測定した結果は、今年の8月の平均気温が過去10年間の8月の平均気温に比べて低くなっていることもあり、小・中学校全校平均で27.9℃となっております。また、測定した全小・中学校の平均温度が30℃を超えていたのは10.9%になっていました。
 なお、10年前の平成10年(1998年)7月6日(月)から7月10日(金)にも同じ方法で温度調査を実施していますが、その時の小・中学校全校平均は31.5℃となっており、今回の同時期の測定結果は10年前の結果に比べて−1.2℃となっています。

(中森辰一議員)
2.教育委員会は、教室にクーラーをつけるのは地球温暖化対策に逆行するといったことを公言していますが、職員室にはクーラーが設置され、市の庁舎や公共施設でもクーラーが稼動しています。
 職員室や市の職員が屋内の業務でクーラーを稼動させているのは、労働安全衛生法の規定から当然ですが、室内が暑いと労働の効率が下がるのと同様に、暑い中でダラダラ汗を流しながらの授業で、子どもたちの集中力が下がるのは当然です。
 今年の6月は日照時間が短い日が多かったが、7月は日照時間が長い日がほとんどで最高気温が30度を下回ったのは3日しかありません。国が決めた学校環境衛生基準では、教室の温度は夏は25℃から28℃が最も望ましいとしています。
 学力向上を言うなら、まず教育行政の責任として、こうしたことを真摯に受け止めて対応するべきではないでしょうか。どのようにお考えかお答えください。

(教育長)
 このたびの温度調査の結果によれば、夏期の教室の温度として望ましいとされている30℃以下という基準を超えている学校が、第1回目の測定では65.2%、第2回目の測定では92.4%となっています。
 こうしたことから、今年度実施している教室の温度調査の結果に加え、校舎の壁面緑化や打ち水、扇風機の活用などを行った効果の検証結果も踏まえたうえで、空調設備の整備を含めて、総合的に学校の暑さ対策を検討する必要があると考えています。

(中森辰一議員)
3.教育委員会は、壁面緑化やすだれをかけるなども取り組んでいます。そういう努力自体はいいと思いますが、そうしたことは建物の構造や施設の配置などの制約もあります。
 教育委員会は、そういうことをやっても、クーラーを設置する以外に教室の温度を下げられない場合は、クーラーを設置する考えがあるのかどうか、お答え下さい。

4.体力や体温調節に問題を持つことが多い障害を持つ子どもたちの特別支援学校は、どの教室にもクーラーが設置されている。しかし、特別支援学級の教室は他の普通教室と同様クーラーがありません。財源の問題などいろいろあっても、まずは特別支援学級にはすぐにも設置する必要があると考えますが、どうされるかお答えいただきたい。

(教育長)
 特別支援学級については、体温調節が困難な児童生徒がいるなど、特別な事情がある場合には、その実態に即して、必要な措置を行う必要があると考えています。

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---中森議員 再質問(大要) -------------------
 クーラーの問題ですが、昨日も子どもの権利を守るという市の姿勢が示されたわけです。子どもたちが十分に授業に集中できる環境になっていないというのを、「子どもに最善の利益を」という市の立場と矛盾するのではありませんか。
 10年前とたいして温度の実態は変わらないということおっしゃいましたけれども、しかしそれは測定した時期も違いますし、やはり多くの方々の実感として、年々暑くなっていることは間違いないことだというふうに思います。子どもたちは実際は熱中症になる寸前で授業を受けている、これはやはり問題ではないかなと思うんです。
 質問なんですけれども確認ですが、教育委員会の考え方として、どうにも手立てがないときには、クーラーを設置するんだという判断をされるお考えがあるのか、明確にお答えいただきたい。

(教育長)
 クーラーにつきましては答弁に申し上げましたように、空調設備含めてということでございまして、まさに言葉どおり、そういう前提も当然生じてくるということで考えております。


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後期高齢者医療制度

(中森辰一議員)
 次は、後期高齢者医療制度への対応の問題について伺います。
 4月から始まった後期高齢者医療制度に対して、政府が巨額の税金を使って宣伝をしても、医療を受ける側、提供する側の双方から、益々怒りの声が高まってきています。

 保険料の問題では、特に広島市の場合は、高齢者の多くが加入していた国民健康保険の保険料の所得割が、様々な控除が行われる住民税の所得割から算定されているために、年金控除と基礎控除しかない後期高齢者医療制度との落差が大きく、とりわけ年収200万円程度以下の夫婦などの複数世帯では国保料に比べて保険料が大幅に増えるという試算結果が出されていました。

 また、社会保険の被扶養者は、74歳までは保険料負担がないのに75歳になったとたんに保険料を請求されます。この保険料はこの10月から本来の保険料の5%分の徴収が始まり、来年度からは半額、さらにその翌年度からは全額を請求されます。
 当人たちの収入が増えるわけでもないのに、突然高額の保険料を徴収されると、日々の生活に深刻な影響を及ぼすことになります。

 日本共産党は、75歳になったとたんに負担を増やし、医療の内容までいっそうの差別を持ち込む、この制度自体を廃止するべきだと取り組んでいますが、制度が実施されている以上、行政の都合で市民負担が大幅に増えたりしないような取り組みが必要であります。
 具体的には、3月以前の国保料と4月以降の後期高齢者医療保険料との差額を、実質減額できるような制度をつくるべきです。
 また、社会保険の被扶養者は、少なくとも国が激変緩和措置としてやった程度、9割分を補助するなどの取り組みが必要だと考えます。
 市は負担の増え方の状況をみて、独自の保険料軽減対策について検討すると6月議会では述られましたが、どうされるのか答弁を求めます。

(健康福祉局長)
 後期高齢者医療制度については、制度創設の趣旨や意義についての住民への周知期間が十分に確保されておらず、また、保険料についても、所得の低い方などへの対策が十分に講じられていなかったため、結果的に大きな混乱を招き、本市にも、多くの問い合わせや苦情が寄せられています。
 そのため、本市では、この制度を設計した国に対し、これまでも、他の政令市などとも連携し、国の責任において、制度の検証や十分な財政措置などを積極的に講じるよう要望していきます。
 その結果として、国においても、所得の低い方に配慮した新たな保険料軽減策等が講じられています。

 この軽減策を踏まえ、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行した、本市の75歳以上の高齢者が属する全ての世帯、約6万6千世帯について、平成20年度(2008年度)の後期高齢者医療保険料と、後期高齢者医療制度が創設されなかったと仮定し試算した国民健康保険料とを比較した結果、制度移行に伴い概ね3分の1の世帯で保険料の負担が増えていますが、残りの3分の2の世帯では負担が減少しています。
 とりわけ、所得の低い階層、具体的には、全体の半数以上を占める総所得金額100万円未満(高齢者単身世帯で収入220万円未満)の世帯では、3万5330世帯のうち3万521世帯(86.4%)で保険料の負担が減少しており、このたびの国の保険料負担軽減策により一定の効果が表れていると認識しています。

 したがって、本市としては、制度の検証や財政措置の拡充など、必要な対策は、この制度を設計した国の責任において講じられるべきものと考えています。今後とも、国が、住民と身近に接している基礎自治体の意見と、この制度の被保険者、特に社会的弱者の意見を制度に反映させるよう、あらゆる機会をとらえて、国に求めてまいります。

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高速道路問題

(中森辰一議員)
 次に、広島高速道路公社の姿勢についてお聞きします。
 高速4号線西風トンネル工事によって住宅や水田に被害を受けた住民が、今年2月18日、再調査を含めた要請書を提出されましたが、広島高速道路公社は8月21日にようやく回答を行いました。
 回答は、「測量したすべての地点で沈下は認めたが、住宅や田畑の変状については、トンネルに起因したものではない」というものでした。

 その理由として
(1) トンネル工事の事前、事後の調査で影響がない、
(2) 測量の結果が地表面の変動方向とトンネルからの距離との関係に関連性がない、
(3) 地表面の変動が計測されていない、
という説明をしました。

 しかし、調査が行われたのが、工事に向けて地下水を抜いている最中であったり、工事直後であったりと、時期が適切ではありません。また、地質の違いを無視して、現場からはるかに離れた西区天満町の基準点が沈下していることを理由に沈下量を小さく見せたり、これまでこだわってきたトンネルの上部45度の範囲をはずれた地域のデータも使って、高速道路公社に都合のいい結論に導いています。

 影響なしとされた工事直後の調査結果を、住民も承認していると説明しましたが、当の住民たちは明確に否定しておられます。
 回答説明会の席上、住民がこれらを指摘すると公社側は回答につまり「トンネルの影響ではない」と繰り返すだけでした。公社内部で検討したと述べましたが専門家が検討したのかと聞くと、職員が検討したものだと答えました。とても納得できるものではありません。
 こんな説明について市はどうお考えか。

(道路交通局長)
 公社は、8月21日に、己斐上地区の現地測量の結果や家屋等の被害についての見解を地元住民等に説明しました。
 その内容は、まず地表面の高さについては、計測した19地点の全てにおいて、施工前と比較し、0.5cmから3.7cm下がっていた。

 しかし、家屋等の被害については、
(1) トンネル掘削前と掘削完了後に実施した家屋調査において、トンネル建設による影響が生じていなかったこと。
(2) 沈下の傾きがトンネルとは反対方向に傾いている場所があるなど不規則であること。
(3) 本年3月以降、継続実施している宅地の地表面高さの測量では、約5ヶ月間、沈下は生じていないこと。
などの理由から、トンネル建設による影響ではない、というものでした。

 こうした説明に対し、地元住民等からは、第三者の専門家の見解を確認せずに、トンネル工事の影響ではないと判断するのはおかしいのではないか、などの意見が出されました。
 本市も、公社は、トンネルとの因果関係について学識経験者等の意見を聞いたうえで判断すべきであると考えています。
 公社ではこうした地元住民等の意見を踏まえ、今後、学識経験者の意見を聞いたうえで、対応を検討する予定であると聞いています。

(中森辰一議員) 
 西風トンネル工事で地盤沈下があったことを市民にも議会にもひと言も報告しないまま、つまり、ここから何の教訓も得ようとせず、高速1号線福木トンネルの掘削工事を実施しました。
 その結果どうなったでしょうか。トンネル上部の住民生活に大きな被害を及ぼしました。その被害補償も、住民の強い運動や議会の追及もあって、住民の要望を聞き入れながら交渉がすすめられてきたのに、最近、「見解の相違だ」と話し合いを打ち切り、「文句があるのなら裁判でも何でもしたらどうか」と言わんばかりの高圧的な態度に戻ってしまったのが高速道路公社の姿勢です。

 最も被害が大きい馬木地区大谷川沿いの家屋の補償に関わって、公社が窓口になって改修を進めたいとしていた護岸があります。改修が必要になった事態にトンネル工事が関わっていたからですが、この護岸改修問題でも、年度が替って職員が代わったとたんに話し合いがまったく進まなくなりまた。そのために住民は、台風シーズンを前にいつ家が倒れるかと精神的苦痛が強まるばかりです。どこまで住民を苦しめようというのでしょうか。このような高速道路公社の姿勢を見るにつけ、高速5号線二葉山トンネルの関係住民の公社への不信は募るばかりです。

 データを隠していたり、都合のいい資料しか公表しない。その一方で、個人情報だから公表できないと説明していたデータを専門誌には載せていたりと、これまでの公社の対応は不信感を高めることばかりでした。
 今後、二葉山トンネルの検討委員会を設置し、周辺住民の安全について調査検討をしていくことになるわけですが、円滑に進めていけるようにするためにも、公社のこういった姿勢を改めさせていく必要があります。
 高速道路公社の設置者である市は、公社を指導する責任があり、県と市、公社の3者でこうした問題に責任をもって対応しなければなりません。

 以上のことから、広島市として次の4点を推進する必要があります。
(1) 4号線の被害実態について、科学的な納得のいく調査と説明を行うこと、
(2) 1号線の被害住民に対して真摯に対応し、必要で十分な補償を行うこと、
(3) 住民の不安に応えて、大谷川護岸工事は早急に対応すること、
(4) 5号線計画沿線の住民が納得できる形の検討会を設置すること、
以上について、どうされるのか答弁を求めます。

(道路交通局長)
1号線の被害住民に対する真摯な対応と十分な補償
 高速1号線の福木トンネル工事で、地元住民の方々にご心配とご迷惑をおかけしたことについて、本市としても大変申し訳なく思っています。
 公社に対しては、地元住民との補償交渉を誠心誠意行い、トンネル工事に起因する家屋等への被害に対し、適正に補償するよう申し入れを行っています。

5号線の検討委員会
 高速5号線の検討委員会は、住民の方々が推薦する専門家なども参画した公平・中立なものとし、公開の場において、審議・検討を行う必要があると考えています。
 現在、こうした点などについて、本市と県が密接に連携しながら協議、調整を行っており、協議が整えば住民代表の方とも調整したうえで、検討委員会を立ち上げたいと考えています。

大谷川護岸の早急な対応
 大谷川につきましては、ご要望の区間は護岸の老朽化が進んでいることから、トンネル工事の影響の有無にかかわらず、整備の必要があるものと判断しております。
 なお、大谷川は砂防指定地内の普通河川であるため、砂防設備管理者である広島県と調整を図りながら予算確保のうえ緊急性の高い箇所から順次取り組んでまいりたいと考えています。

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---中森議員 再質問(大要) -------------------
 高速道路公社の問題ですけれども、1号線のトンネル工事で大幅な地盤沈下があった時に公社が真っ先に関心を持ったのは、変電所施設がどうなるか、あそこに被害が及んでいないかということで、結局住民の被害には関心がなかったということがありました。このことを地元の住民は決して忘れないというふうに思うんです。
 「とにかく道路を早く作ればいいんだ」、こういう体質が改善されないと今進められつつある5号線の問題でも、協議会そのものもなかなか簡単にはいかないのではないかなと思っております。この点は、県にもよくお伝えいただきたいと思います。

 それから4号線の問題ですけれども、これは住民が問い詰めたらまともに答えられないわけですよ。今、道路交通局長が流れ、成果を説明されましたけれども、これが現状なんです。だから、もっと科学的な調査を再度やり直すということも必要ではないかと思うんです。
 住民から追及されてまともに説明できないような状態で、終わらせてはいけない。専門家、科学者に検討をゆだねるぐらいではだめで、やはり改めて調査をやり直すということも必要ではないかというふうに思います。この点についてもう一度答弁をお願いします。

(道路交通局長)
 高速4号線の家屋への影響でございますけれども、公社の判断ではなく第三者の学識経験者の意見を聞いて、それで判断して最終判断をしたいと思います。

(中森辰一議員)
 4号線についてはもう一度ですね、やはり住民が納得できるような説明のためにはですね、調査の在り方自体が問題になっているわけです。調査をもう一度やり直す、住民の意見を聞きながら、ということをですね言っているわけです。
 調査をやり直すことについて、ご答弁をお願いします。

(道路交通局長)
 今までどういう調査をしたかということをもう一度確認して、今後どういう調査を導入するかということを公社と検討しながらやっていきたいというふうに考えます。以上でございます。

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青年・学生対策について
青年の雇用問題などについて

(中森辰一議員)
 青年の雇用問題などについて質問します。いま、若者を「使い捨て」にして働かせる派遣労働の根本的な見直しが求められています。
 働いても働いてもまともに生活できない若者が急増する中で、大企業の経常利益は最近の5年間で15兆3000億円から32兆8000億円に、大企業の役員の平均報酬も1200万円から2800万円に倍増している。
 大企業が若者をどのように搾り上げているか。滋賀県長浜市に、日本経団連の御手洗会長の企業キャノンの工場がある。

 周りは田んぼばかりというところに、8棟に約300人の派遣社員が住む寮とコンビニがあります。寮はペラペラの薄い壁で仕切られ、1つの部屋は3畳のスペースだけ。トイレ、風呂、キッチンは共同。そんな部屋でも、光熱費、テレビ利用代、布団代、備品代まで給料から差し引かれるので10万円以下しか残りません。まさに、現代の「たこ部屋」。
 そして、コンビニはその派遣会社が経営しているが、日用品などがひどく高い。しかし、近くにまともな店がありません。つまり、24時間丸ごと搾り取られている状況であります。さながら現代の「蟹工船」です。

 そうした実態が今年2月の国会で、日本共産党の志位委員長によって告発され、さすがにキャノンは派遣を解消しましたが、期間工や請負などの不安定雇用は未だに続いています。
 若い人にこんな働かせ方をして日本の未来があるだろうか。

 政府と財界は、こんな若者たちに「まともな仕事に就けないのは自分の努力が足りないから」だと「自己責任論」を押し付け、人間としての誇りも尊厳も深く傷つけています。
 しかし、そんな青年たちが、「人間らしく働きたい」と連帯し、声を上げ、闘いに立ち上がりつつあることは、日本の未来にとって本当に大切なことだと思います。
 以上、今日の青年がおかれた状況を踏まえて、自治体として何をやるべきか、数点伺います。

 1つ目は、この8月に発表された国の「就業構造基本調査」では、県内の非正規雇用は41万人と過去最高となり、とくに若い労働者の非正規雇用が目立っています。
 そうした中で最近、日本民主青年同盟広島県委員会が街頭での「青年雇用アンケート」を実施しました。回答者は100人程度ですが、その中間集計の特徴の1つは、正規雇用でも違法、無法の働かせ方が、回答者の職場の5割以上にも及んでいるということであります。
 残業代が払われない(56%)
 有給休暇がない、またはとれない(51%)
 社会保険がない(30%)
となっています。

 2つ目の特徴は、極めて低賃金で、まさにワーキングプアといわれる状況に、とりわけ青年たちがおかれていることであります。中には時給640円という広島県の最低賃金以下という違法な賃金で働かされている例もあります。
 この広島で若者たちが、こうした低賃金や不安定雇用から抜け出せないとしたら、一体広島市の将来はどうなるのでしょうか。こうした青年の問題は、広島市の将来にとっても無視できないところに来ています。

 こうした点から、広島市としても国任せでなく、青年の雇用実態調査、とりわけ派遣労働者の実態調査をやるべきだと思いますがいかがでしょうか。

(市民局長)
 本市としても、青年の雇用問題は重要であると認識していますが、現状では、労働行政は基本的に国、都道府県の所管に関わるものであり、本市に財源も措置されていないことから、市単独で調査を行うことは難しいと考えています。

 国が実施している調査について調査について申し上げますと、5年に1度行われる総務省の「就業構造基本調査」において、年齢別の正規・非正規就業者の数や割合、所得階級の状況などの数値を把握することができ、毎月行われる総務省の「労働力調査」、年1回行われる厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」において、年齢別の雇用者数、労働時間、給与等の状況、正規・非正規就業者の数などの全国又は都道府県の数値が公表されています。

 これらの調査を活用し、また必要に応じ商工会議所等が実施している調査なども参考にしながら、青年の雇用実態の把握にできる限り努めたいと考えています。

(中森辰一議員)
 また、広島市では、これまで正社員を増やすためにどのような取り組みをしてこられたのか、今後どうされるのか、お聞かせいただきたい。

(市民局長)
 企業が、正社員を採用しない理由の1つとして、福利厚生費の企業負担が挙げられています。
 このため、本市では、中小企業の従業員を対象に、少ない会費負担でレクリエーション事業への参加や結婚祝い金の給付が受けられる中小企業勤労者共済事業(ドゥプレ)を実施しています。また、勤労青少年ホームにおいて、働く青年に対し、レクリエーション、サークル活動等の場を提供するとともに、文化・教養等の講座を実施しており、今後、中小企業の経営者と連携しながら、こうした事業を拡充することについて検討したいと考えています。

 このほか、国との共同事業として、広島ワークサテライトにおいて、若者就職相談窓口を設置して職業選択、就職活動、職業能力開発に関する相談などを行うとともに、勤労青少年ホームにおいて、正社員に求められるキャリア形成のための相談事業や講習を行っています。
 今後とも、職業紹介や求人情報の提供を行う公共職業安定所(ハローワーク)や、職業能力開発を行う独立行政法人雇用・能力開発機構(ポリテクセンター)等の関係機関と連携をとりながら、青年の雇用支援に適切に取り組んでまいりたいと考えています。

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「高い学費」の問題について

(中森辰一議員)
 つぎに、高校、大学の「高い学費」の問題について伺います。
 「貧困と格差」の拡大の中で、学費が高すぎるために毎日深夜までアルバイトをして体を壊したり、学校をやめざるを得ない若者が増えています。
 子育て世帯についての実態調査によれば、高校入学から大学卒業までにかかる費用は1人平均1045万円。我が子のための教育費は年収の34%に達している。
 とりわけ“学費は教育で利益を受ける学生本人が負担する”という「受益者負担」の考え方が教育に持ち込まれてから、毎年のように学費値上げが行われ、1970年に1万2000円だった国立大学の授業料は、今では53万5800円で、これほど高騰した公共料金はありません。

 国際人権規約第13条は、「高校や大学の教育を段階的に無償にする」と定めています。わが国政府は、この国際人権規約に加わりながら、この条項については「留保」しままま。欧米のほとんどの国では高校の学費はなく、大学も多くの国で学費を徴収していません。
 教育を受けることは基本的人権の1つであり、経済的理由で妨げられてはなりません。若い世代が高校や大学で新しい知識や技術、理想を身につけることは、社会の発展にとって不可欠な営みであり、それは社会全体にとって貴重な財産となります。だからこそ、学費をできる限り低く抑え、無償に近づけていくことが世界の大勢になっています。「世界一高い学費」をとっている日本に対して、国際的な批判の声も上がっています。
 国に対して、世界の流れに沿って、こうした現状を是正するよう求めると共に、市としてできることを取り組む必要があります。

 そこで質問ですが、
1.広島市立大学及び、市立高校の授業料減免制度はどうなっていますか。その適用を受けている生徒、学生はどれだけですか。その推移はどうでしょうか。

(市立大学事務局長)
 市立大学の授業料の減免は、
(1) 生活保護の受給世帯
(2) 学資負担者の死亡、失職などにより総所得が生活保護基準以下となった世帯
の学生について授業料を全額免除しています。
 また、
(1) 市町村民税の非課税世帯
(2) 市町村民税の所得割が非課税で、かつ、前年度の市町村民税が非課税の世帯
(3) 市町村民税の所得割が非課税の母子・父子世帯
の学生については、成績等の状況により、授業料の2分の1又は4分の1を減額しています。

 市立大学における授業料の減免の状況は、平成16年度(2004年度)は学生、院生を合わせて前・後期延べ230名、全学生の5.9%に授業料を減免しており、
平成17年度(2005年度)は211名、5.4%、
平成18年度(2006年度)は152名、3.9%、
平成19年度(2007年度)は181名、4.6%となっています。

(教育長)
 市立高等学校の授業料減免制度には、2分の1減額、10分の3減額があります。
 全額免除の対象は、
(1) 生活保護の受給世帯
(2) これに準ずる程度に生活が困窮している世帯
(3) 学費負担者が失業した世帯
などの生徒です。

 2分の1減額の対象は、
(1) 市町村民税の非課税世帯
(2) 市町村民税の所得割が非課税となる母子家庭
などの生徒です。
 10分の3減額の対象は、定時制の生徒で自ら学費を負担している生徒です。

 次に、減免制度の対象となっている生徒の人数ですが、平成19年度(2007年度)においては、全生徒5724名のうち、
(1) 全額免除者が464名
(2) 2分の1減額者が80名
(3) 10分の3減額者が85名
で、合計629名となっています。
 授業料の減免制度の対象となっている生徒の割合は、平成15年度(2003年度)には10.5%でしたが、平成19年度(2007年度)には11.0%増加しており、微増傾向となっています。

(中森辰一議員)
2.東京大学では、世帯年収400万円以下の学生に対しては、授業料を免除するという思い切った制度をつくりました。独立採算の東京大学がそうした措置をとったことは画期的なことだと思います。行政が運営する広島市立大学でも、現在の減免規定を見直し、同程度の水準に拡充するお考えはありませんか。
 また、広島市立の高校も同様の水準にするべきだと考えるが、お考えを伺います。

(市立大学事務局長)
 経済的な不安を抱える学生への支援策としては、これらの減免制度に加え、各種奨学金制度への推薦、金融機関と提携し、授業料の融資を受けた学生に対し、在学中の利子を市立大学が負担する制度(授業料奨学融資利子補給制度)の紹介などをしており、今後とも学生に対して経済的理由で勉学を中断することのないよう支援をしてまいりたいと考えています。

(教育長)
 経済的な不安を抱える生徒への支援策としては、これらの減免制度に加え、広島県高等学校等奨学金や生活福祉基金、母子及び寡婦福祉法による修学資金などの奨学金制度があり、これらの制度の周知に努め、今後とも生徒が経済的な理由で就学が困難とならないよう、支援してまいりたいと考えています。

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---中森議員 再質問(大要) -------------------
 授業料の問題ですが、東京大学の例を申し上げました。400万円ということなんですが、全員が該当しているということではないというふうな説明を事前に頂きましたけれども、その中身はともかく、独自の減免制度とって減収となったといっても国から新たに補助金で埋め合わせがあるわけではありません。
 そういうことがありながら、あえて400万円という所得基準で授業料を免除することを(東京大学は)決めました。それが非常に画期的で大事なことだと思うんですね。この400万円というのをですね、高校生、大学生をかかえた世帯の生活保護基準と比べますと、だいたい1.1倍を少し超える、そういう基準です。

 広島市では生活保護基準の1.1倍は、国民健康保険一部負担を免除していますし、1.3倍以下は保険料を大幅な減免する基準になります。1.3倍程度以下で就学援助の対象にもしております。そういった点でこの400万円以下の所得基準というのは、非常に大事な1つの見識ではないかなと思っております。
 広島市としてですね、この400万円という世帯所得の基準と広島市の事業の減免制度、この比較検討して制度の前向きな改善もしていただきたいというふうに思っていますけれども、その点についてどのようにお考えかもう一度お願いしたい。

(大学事務局長)
 東京大学の例を出していただきましたけれども、大学の間では東京大学だからこそできた制度だというふうに思ったのでおります。いずれにいたしましても、社会の変化にともないまして諸制度は常に見直す必要はあろうかと思いますが、今のところ減免の制度につきましては、ただちに見直す状況にはないと考えております。

(教育長)
 減免等につきましては自治体のほうで討議をいたしましたが、基本的には現段階ではそのように解釈をしています。

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