トップ議会情報・議員の発言2008年第 3回 9月定例会 議員の発言 > 議案質疑


2008年9月22日 本会議 皆川けいし議員の議案質疑


第96号議案「広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例」について

 これまでの質問と重なる点もあると思いますが、あらためて4つの点についてお伺いします。

 まず第1は、今回の条例制定にあたっての市の基本姿勢についてであります。
 地球温暖化対策は、人類の生存にとって「待ったなし」の課題として、世界各国にCO2の削減を義務付けた京都議定書から10年が経過しました。この10年間の世界各国の取り組みはどうだったのか、その検証が鋭く問われています。

 EU各国が温暖化対策をあらゆる活動に優先する課題として位置づけて、軒並み削減目標を大幅に達成している中で、わが国では1990年対比で6%削減する目標を掲げながら逆に6.2%も増やしており、「先進国」のなかでも決定的に立ち遅れており、恥ずかしくてとても「環境立国」などと口に出せる状況ではありません。
 昨年公表された国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による「第4次評価報告書」は、「地球規模の気候変動はすでに始まっている」と深刻な警告を発しました。

 このIPCCの報告に携わった日本の科学者が連名で発表した緊急メッセージでも、「温暖化は、私たち市民の予想をはるかに超えたスピードで進行しつつある」「CO2の大幅削減に向けて直ちに行動を開始する必要がある」と訴えています。直近の例でも、アメリカのメキシコ湾では大型化したハリケーンの相次ぐ直撃により、その度に数百万人もの人々が避難を強いられ、もはや人類が定住できない地帯になろうとしています。
 いまや我々人類には、世界を覆っている貧困や投機マネーの暴走も含めて、「世界と地球の管理能力」そのものが問われています。

 人類の生存に関わるこれらの重大問題に対して、国、地方のレベルを問わず、それらにしっかりとした処方箋を示すことのできる指導者が求められています。その処方箋を示すことのできない指導者は、人類の英知によって淘汰されてゆく、そういう時代になっているということを、まず私たちはしっかりと受け止めなくてはならないと思います。
 この点で、今回、広島市が地球温暖化防止に向けて、実効性を伴う条例を制定することは、地球温暖化防止に向けての広島市の大きな一歩として歓迎するものであります。
 まず、条例制定にあたっての広島市の基本的な姿勢、視点についてお伺いします。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 地球温暖化問題は人類の生存を脅かす喫緊の問題であり、この問題の解決に向け、直ちに確固たる決意をもって対策を実施する必要があります。
 本市は2050年までに温室効果ガス70%削減を目指すカーボンマイナス70を掲げ、本年度を温暖化対策行動元年と位置付け、この問題の解決に向け数多くの新たな取組を実施しています。

 こうした取組を一層推進するため、条例において、本市、事業者、市民等の責務を明らかにするとともに、大規模事業者に対して温室効果ガス排出の抑制等に関する計画書の提出等を義務付けるなど、地球温暖化対策等の推進に関する基本的事項を定めようとするものです。
 この中には、事業者の取組内容に係る評価制度など、政令指定都市の中でも先駆的な内容を盛り込んでおり、条例制定により、地球温暖化対策等に関する取組がさらに進むと考えています。
 また、市民の環境意識は高まっており、市民ニーズを的確に把握した製品の提供など、企業の自主的な取組を促進することにより、広島経済を発展させる新たな景気にもなると考えています。

 また、「待ったなしの課題」であるとはいえ、広く市民の支持と社会的合意が不可欠であること事実です。この点で、広島市はこの条例をつくるにあたって、どういう努力をされてきたのかおうかがいします。
 今議会にマンション業者等から「趣旨はよくわかるが、対応のために施行日をあと2年延期してほしい」などとの陳情が出されており、つまり「待ったなし」の課題に対して「待った」をかけてきているわけですが、この業界とのこれまでの協議の経過と、要望事項に対する市の考えをお答えください。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 本市では、昨年11月29日、広島市環境審議会に対し、条例の基本的な考え方について諮問し、環境審議会では、条例の検討部会を設けて、条例に盛り込む項目等について、精力的に審議し、本年3月4日に中間まとめがとりまとめられました。
 この中間まとめについては、3月15日から4月14日までの間、市民及び事業者に対して意見募集を行いました。

 これら寄せられた意見を踏まえて、さらに審議が行われ、5月14日、同審議会から市長に対して、条例の基本的な考え方についての答申があり、この答申を基に条例案を作成し、本議会に提案しております。
 また、条例の基本的な考え方や条例で定めようとする事項については、地域に出向いての出前環境講座などで市民に説明してきました。
 さらに、関係団体及び関係企業には、本年2月以降、それぞれ資料を提供するなどして説明してまわっております。

(都市整備局指導担当局長)
 マンション業界等関係団体への説明については、本年2月以降、環境審議会の中間とりまとめ案や答申の内容を基に、条例制定に向けた作業と平行しながら、情報提供を行ってきました。
 さらに、条例案がほぼ固まった、本年8月から9月にかけて、資料の提供や説明を行いました。
 マンション業界等からは、「条例の施行時期お2年程度の繰り延べ」、「建築物環境計画書の提出及び分譲マンション環境性能の表示の対象となる建築延べ面積の緩和」、「条例を促進する施策の充実」などの要望を受けています。
 施行時期については、地球温暖化対策に向けた取組は、もはや、一刻の猶予もないと考えています。

 また、建築物環境計画書の提出及び分譲マンション環境性能の表示の対象となる建築延べ面積は、先ほど太田議員にご答弁しましたように、省エネ法による省エネ設備等の届出義務のある建築物の規模と合わせて、延べ床面積2,000u以上にするよう考えています。
 また、条例を促進する補助制度等の施策については、先ほど平木議員にご答弁しましたように、現在行っている制度を活用するとともに、条例の施行後、事業者の取組状況を見ながら必要があれば新たな補助制度の導入などを検討していきたいと考えています。
 この条例の運用を円滑に進めるためには、事業関係者の理解と協力が必要であり、今後、規則を定めるにあたっては、関係団体等と十分協議してまいりたいとかんがえています。

 2点目は、この条例の実効性についてであります。
 いくら良い条例でも、本当に実効性が保障されたものでなくては作った意味がありません。そこで実効性について数点おうかがいします。

(1) 広島市は、今から5年前の2003年に策定した「広島市地球温暖化対策地域推進計画」で、2010年度までに市域内のCO2排出量を「6%削減する」としていました。この目標は、今年度スタートした「カーボンマイナス70」、つまり2050年度までに70%削減する計画にも引き継がれています。2010年といえばあと2年間です。
 今回、この防止条例をつくることで6%削減という目標達成にどういう効果が期待できると考えておられますか。現状からいっても、あと2年間で6%削減という目標の達成は困難ではないかと危惧されますが、もし、この条例が実現しなかったら、あるいは実現しても実施が先延ばしにされたら、目標達成は更に困難になるのではないかと危惧されますが、どう考えておられますか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 条例制定による温室効果ガスの削減効果については、この条例が事業者の自主的な取組を促すものであること、削減効果の試算のもととなる個々の事業者や建築物におけるエネルギーの使用実態などが明らかになっていないことから、現時点では算出することはできません。しかし、条例が施行されれば、目標達成に少しでも近づいてゆくものと考えています。

 今後、条例が施行され、計画書や報告書の提出を受けることにより、温室効果ガスの削減効果を算出することができると考えています。
 こうした取組をもししない場合、または、遅れた場合、温室効果ガスの削減が難しくなり、目標達成もますます難しくなると思います。

(2) 今回の条例の大きなポイントは、一定の大口排出事業者にCO2削減を求めるための規制措置を設けるものですが、問題は肝腎のCO2の排出削減については、あくまでも各事業者の「自主性」に委ねられており、「義務化」されたものではありません。
 同様の条例をすでに先行実施している京都市では、2005年度に報告書を提出した149社のうち、実に半分以上の75社がCO2の排出量を増加させています。また24社は2007年度の目標としてCO2などの排出量を増加させる計画となっています。
 これでは、せっかくの削減計画が「増加計画書」になってしまっています。CO2削減に実効性を持たせるために、市はどういう手立てを考えておられるのか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 本市では、事業所への現地調査を行うなど、事業者の状況を詳細に把握し、計画書等の提出段階でも事業者へのヒアリングを行うことにしています。
 また、大量に温室効果ガスを排出する大規模事業所については、目標の設定や取り組み状況を本市が評価し、優良な事業者を公表する仕組みを導入することにより、事業者の取組がより高い水準となるよう取り組んでいきたいと考えています。

 目標値等については、従来からの取組の進捗度や設備・機器の状況、事業者の経営状況など、個々の事業者によって状況が異なるため、全ての対象事業者が温室効果ガス排出量を削減することは、現実的には困難であると想定されます。
 この場合においても、排出量の増加等の原因をよく確認し、その後の取組に反映していただけるよう、指導・助言等を行い、排出量を確実に削減していきたいと考えています。

 また、第4条は「事業者は、その事業活動に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を自主的かつ積極的に講ずるよう努める」とありますが、「講じなければならない」と、より義務的表現に改めるべきではないかと思いますが、いかがですか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 条例案第4条は、「事業者は、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を自主的かつ積極的に講ずるよう努めるとともに、本市の地球温暖化対策等に協力しなければならない」と規定して、市内の全ての事業者に対する温室効果ガスの排出の抑制等の努力義務と本市の施策への協力義務を定めているものです。
 なお、事業活動その他の地球温暖化対策等における事業者の具体的な義務については、第2章に規定しています。

(3) 広島市の統計によりますと、1990年度の基準年度の市域内の温室効果ガス総排出量636.5万トンのうち、事業者関係が48.14%、運輸部門が29.52%、民生・家庭部門が21.08%となっています。つまり、78.66%、約8割を産業部門が排出していることになっています。
 このうち、今回の防止条例で規制対象となる事業者数あるいは建物の数はどれくらいの割合になるのですか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 事業活動に係る計画書提出義務対象となる事業者数は、省エネ法による届出義務対象者数等から150事業者程度と想定しています。
 自動車に係る計画書提出義務となる事業者数は、市内の輸送事業者の実態等から100事業者程度と想定しています。
 建物及び緑化の計画書提出義務対象となる建築物は、市内における建築実績等から、それぞれ年間150件程度の提出件数を見込んでいます。
 エネルギーに係る計画書提出義務対象となる事業者数は、国のデータ等より広島市内に電気を供給している数社を想定しています。

 また、24時間営業で大量の電力を消費しているコンビニや大型スーパー、各種チェーン店等は、この条例の対象になるのですか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 コンビニエンスストアなどのチェーン事業については、一店舗当たりの温室効果ガスの排出量は少ないものの、多数の店舗があり、チェーン全体としては大量に排出しています。
 また、一般的に、チェーン事業では、本部が、チェーン店に対する経営に関する指導や店舗で使う設備等の指定などを通じ、チェーン全体でエネルギー管理を行っています。

 このようなチェーン事業については、全体を一事業者として捉え、市内での規模が一定以上になる場合は、対象となります。
 なお、いわゆる省エネ法でも同様に取り扱われます。

(4) 今後、広島市が各事業所に示す「事業活動環境配慮指針」は、いつごろ策定されるのですか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 事業者が平成21年度から円滑に取り組めるよう、必要な事項を年内にとりまとめ、年明けに説明します。

 また、各事業所に求められる「環境計画書」の計画期間は何年間を想定しておられますか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 事業活動環境計画書の期間については、今後、規則で定めることにしていますが、事業者が省エネのための設備導入等を計画的に実行するのに必要な期間を考慮して、3年間とする予定です。
 なお、他の政令市等の事例においても、大部分は期間を3年間としています。

(5) 公表についてですが、各事業所の計画書、報告書および広島市の評価についての公表は、事業所名も含めてすべて市民に公表すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 事業活動環境計画書等は、製品当たりのコストや技術ノウハウ、また個人名など、公表することにより事業活動に支障が生じる事項を除き、全て市民に公表します。
 大量に温室効果ガスを排出する大規模事業所を対象とした市の評価結果の公表は、経済上の理由から十分な対策を行うことができない事業者に対する配慮から、当面は優良な事業者について行うよう考えています。

(6) CO2削減に向かって、今回のような社会的誘導策を導入するにあたっては、当然、経済的なインセンティブがあっても良いのではという議論がありますが、これについての広島市の基本的な考えをお聞かせください。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 本条例案は、各事業所が自主的に温室効果ガスの排出の抑制等に取り組むことを基本的な考え方としています。
 本市としては、住宅環境性能向上補助金や中小企業融資制度の環境保全資金など、既存の補助制度等を活用しながら、事業者の取取組を支援していきたいと考えています。
 条例の施行後、事業者の取組状況等を見ながら、必要があれば新たな補助制度等の導入を検討していきたいと考えています。

 3点目は、CO2削減に向けての広島市全体の削減目標の設定についてであります。
 先程、2010年まで6%削減という短期目標について触れましたが、この目標達成に向けて残された2年間を最大限努力することは当然のことですが、さらに次の目標年次をどこに置くべきか。現行計画では、中期目標2030年度まで50%削減となっていますが、これではあまりにも遠すぎです。
 仮に、各事業所に求める削減目標の計画期間を「3年間」とするのであれば、今後少なくともそれに見合う短期目標を設定して取り組む必要があると思いますがいかがですか。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 本市の短期計画である「広島市地球温暖化対策地域推進計画」は、平成22年度(2010年度)を目標年度としていますが、その後も、中長期の削減目標のもと、同計画を改定し、短期的な目標設定や進行管理を行うことにしています。
 その計画期間については、今後策定される国の計画などを参考に検討していきたいと考えています。

 4点目は、今回の条例に掲げられていない、その他の地球温暖化対策についての課題ですが、CO2排出量の2割を占める民生家庭部門の排出抑制をどう進めるか、自然エネルギーの開発、普及をどう進めるか、こういう問題とともに、行政独自の課題としては高速道路計画も含めて、今後の交通政策の抜本的な見直しと、廃棄物対策に更に力を入れることがポイントだと思いますが、この点についての基本的な認識をお伺いします。

(環境局エネルギー・温暖化対策担当局長)
 温暖化対策を進めるためには、排出量が増加している家庭部門の対策が急務となっています。
 家庭部門の排出量を削減するためには、市民一人ひとりの取組をより一層促進することが重要であり、ひろしまエコライフポイントや省エネ電球キャンペーンなど、市民に温室効果ガス削減につながる行動とその効果を具意的に示し、取組が市民運動となるような施策を進めていきたいと考えています。

 本市の交通政策については、自動車に過度に依存するこれまでの交通体系を見直し、交通体系の軸足を公共交通や自転車にシフトしていくことにより、環境にやさしい交通体系づくりをめざしています。
 このため、公共交通サービスの充実強化や「マイカー乗るまぁデー」の推進、「自転車都市ひろしま」の推進など、環境負荷の少ない交通手段への転換を促すための施策を、より積極的に推進していきたいと考えています。

 また、廃棄物対策については、現在、平成20年度(2008年度)までの減量プログラムに基づき、ごみの8種分別や事業ごみの有料指定袋制度を実施するなどにより、ごみの減量・リサイクルに取り組んでいます。
 平成21年度(2009年度)以降も、時期プログラムを作成し、より実効性のある施策を実施することにより、一層のごみの減量・リサイクルに取り組んでいきたいと考えています。

上にもどる


トップ議会情報・議員の発言2008年第 3回 9月定例会 議員の発言 > 議案質疑
日本共産党広島市議会議員団
〒730-8586 広島市中区国泰寺町1−6−34 広島市役所議会棟内
電話 082-244-0844 FAX 082-244-1567 E-Mail
k-shigi@jcp-hiro-shigi.jp